独居45

著者 :
  • 文藝春秋
3.20
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感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (195ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163281803

作品紹介・あらすじ

くたびれた一戸建て(平屋・貸家)に引っ越してきた男(45歳、作家、独居)。やがて、夜となく昼となく呻き声・悲鳴・絶叫が漏れ、屋根には血塗れの全裸女(マネキン)と巨大な赤剥けの手(粘土細工)が据えられ、はては探検を仕掛けた小学生が…。眠ったような町の住人-自殺しそこなった老人、うつの主婦、つやつや教信者の理髪店主、鳥インフルエンザにおびえる会社員等々と独居男がくりひろげる阿鼻叫喚のご近所狂詩曲。

感想・レビュー・書評

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  • 記録

  • ひなびた平屋に越してきた作家、坂下宙ぅ吉。彼はたいてい上半身裸、もしくはビキニパンツ一丁でいることが多い。

    彼が引き寄せてしまうのか、周囲にいるのはおかしな人々。
    男色を好むが妙な宗教で性的欲求を抑え込もうとする隣人の理髪店の主人、公民会クラブの理事会で圧力を感じている老人、飼い犬が狂犬病に罹っていると思い込む老人、日々の生活に無限の空虚さを感じている主婦。そして、坂下宙ぅ吉に陶酔する公務員試験浪人中の若い男。

    公民館で行われた、坂下宙ぅ吉の講演会はあまりにも酷く、途中で中止となった。
    その後、坂下宙ぅ吉に憧れる男が彼の平屋に忍び込んで私物を漁っている最中、部屋の主が帰宅する。経過は不明だがそれ以後、彼らの全裸で絡み合いながらいたぶり合う宗教みたいな行為が始まる。

    小学生たちから妖怪扱いされ、近隣の住民から忌み嫌われ、石を投げられても彼らの奇行は続く。

    ---------------------------------------------

    奇人のふりをした貧乏小説家の話かな、と思ったら本当におかしな人だった。一緒になって全裸で転げまわる若い男も同等に狂っているし、隣の家の理髪店の主人やそれ以外の人たちもわりと変な人たちばかりだった。

    頭のおかしい小説家と彼に陶酔した若い男が迷惑行動をとりながら死んだのか生きているのかわからないけど、四肢は多分欠損した、という話だったと思う。

    話の流れとかどうでもよくなるくらいに嫌な描写(自慰や自傷)が繰り返されて、目が離せなくなってしまった。正か負で言えば間違いなく負なんだけど、負のパワーが圧倒的過ぎて何も言えない。
    劇薬みたいな小説。

    狂って全裸で絡み始めちゃった男、彼のお母さんが不憫だった。誰も自分の子どものそんな姿見たくないよなあ。

  • よくこんなに気持ち悪い表現ができるなぁと感心します

  • 読了直後に書こうとした感想は「『Nルウェイの森』よりよっぽど健全な文学作品!」云々、支離滅裂になったので、日を置いて心落ち着けてσ(^-^;)
    『ボラード病』でやめておけばよかった!
    これ読んだ時点で、作者さんに屈服させられたでしょうよ(笑)。
    すりガラスのモチーフが繰り返し描写されたり、ミニバンが登場したり…坂下宙ぅ吉は…ゼッタイ吉村さんご自身ですよね??
    トキコだかトミコだか忘れたけど、なんだか羨ましくなっちゃった私が恥ずかしいー!
    おぞましくて早く読み終えたかったのに、何この爽快な読後感(笑)。
    ボラードといい独居といい、どうなってんだ海塚市〜┐(´ー`)┌
    もーうヤダヤダ。こんな自分に正直すぎる作品いやだー(*^-゜)b
    『巨女』を読める精根は尽き果てました…今のところ^^;
    一旦美しき現実に戻って、出直してきます!

  • 『クチュクチュバーン』や『臣女』とはまた違ったグロさがあってゲンナリ。現実にありえそうな設定は、いやー、きつい。
    まずもって一文目から篩にかけてくる。そして制止することなく歪さが加速していく。カタルシスも何もなく、読後にどんよりとしたものが残ってしまった。
    …だってのに、小説が三冊目。なんにはまってしまっているんだろうか。

  • 絶版となっている作品だが、図書館にあったので読むことができた。

    この作品に合わない人は冒頭の一文でふるいにかけられるのである意味親切な作品と言える。

    作品的には初期のエログロなディストピアそのものを描こうとしていた初期と、メッセージ性を分かりやすくした現在(「臣女」「ボラード病」の時期)の中間ということもあり、世界観と主張のバランスが良い作品だと思う。
    吉村萬壱人気が高まっている今なら文庫化しても採算が取れるんじゃあないですかね?
    様々な変人奇人が交錯し、宙ぅ吉のもとに集まってくる構成はとても面白かった。ある意味ドラクエ4である。

    海塚市はこの後にボラード病の舞台となるわけだけど、この市民が特別同調圧力に染まりやすいという市民性を持っているわけではなくて、宙ぅ吉が講演会で述べているのと同様、誰にでもそういう素地があるということなのだろう。

    終始堤くんが幸せそうで何よりです。

  • 吉村萬壱氏の作品はこれで2作目であるが、この作品も独特である。作家とその作家の熱狂的なファンの物語を軸に、作家の近所に住む人たちの逸話が周りを添える。もともとは近所の一人でしかなかった、作家の熱狂的な若きファンはあることを境に一緒に住むことになって、それをきっかけに作家の生活は常軌を逸することになる。死んだ者の魂も二人の怪しげな宗教的行為(?)の為に成仏が出来ないのだった。
    それにしてもこの表紙の写真はいい意味で騙されるよなぁ。

  • 文学

  • 鬼才。
    異常。

    自分の中のどこを探しても、同じ言葉は出てこない。
    同じ展開は想像もできない。
    途中読み続けるのが面倒になりそうになったが、何か惹かれて読み続け、最後の方は一気読み。

    一種異常なこの物語を書く根っことなったであろう、作者がこの世界に抱く違和感が、なんとなく腑に落ちるところもすごく気に入った。

  • 最終的には町が壊滅するくらいの悲惨なラストを予想していたのですが、作品中の見せ場ともいえる事件後も特に変化はなく、煮え切らないままジメジメ陰鬱な気配が漂い続ける、そういう嫌な感じ。
    これでもかという位の破壊があれば、ある意味これでおしまい、これ以上はない、という安心も生まれるのですが、それすらも描いてくれないのがすごい。「稲瀬一戸建ては今日もむっつりと黙り込んでいる」で終わる。
    作家と作家志望者がどのような経緯を辿ってあそこまでエスカレートしていったのか、侵入を境に2人の心情吐露パートが一切無くなったことで窺い知れないのも、喉に骨が引っかかった感じを助長させてくれました。
    そんな中でも銭湯のシーンや騒動の中での脇田老人のゲラの要求、メンソレータムなど、個人的に笑いのツボに来る場面もあってよかったです。

  • 悲しいなあ。切ない話です。きっと世の中にはこの手の人はいて、自分も眉をひそめて毛嫌いしてしまっているのでしょう。

  • 冒頭から強烈だった。

  • 適当にヤイトスエッドを借りて読んだ後に、この本を読みました。
    続編のようなものなのでしょうか

    何がしたいんだ

    もうそれだけ。
    平凡な私にはわかりませんでした。

  •  描写がとにかくエログロで、読んでいて終始不快だった。不条理・不可解だけを集めた怪作といった感じ。おそらくホラーに入るのではないかと思うが、そちらに免疫・関心が薄いためにいまいち理解できなかった。タイトルから受ける印象ギャップがあり、間違って手に取ると残念なことに。

  • タイトルと中身のズレ
    心地良さとは別種類

  • 読後、不安になる感じがして面白かった。奇抜な設定のようでいて、「藪の中」みたいな面白さもあり。その辺の人だって、或いは家族親友恋人だって、一皮剥いてみたらその内面はこの小説のように、結構グロテスクかもしれない。

  • 文学界2009年12月に書評されていた本
    群像2009年12月に書評されていた本

  • 吉村 萬壱 、初読!凄いなあ。

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著者プロフィール

1961年愛媛県生まれ、大阪府育ち。1997年、「国営巨大浴場の午後」で京都大学新聞社新人文学賞受賞。2001年、『クチュクチュバーン』で文學界新人賞受賞。2003年、『ハリガネムシ』で芥川賞受賞。2016年、『臣女』で島清恋愛文学賞受賞。 最新作に『出来事』(鳥影社)。

「2020年 『ひび割れた日常』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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