白い紙/サラム

  • 文藝春秋 (2009年8月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (160ページ) / ISBN・EAN: 9784163284101

感想・レビュー・書評

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  • テヘラン出身で大阪在住、日本企業に勤めている女性作家が日本語で書いた小説。

    『白い紙』
    あなたたちの人生は白い紙です。これから自分で未来を描けます。
    学校の先生はそう言った。
    ここはタリバンとの戦闘下にあるイラクの田舎の町。
    同じ学校に通っても男子生徒と女子生徒は言葉を交わすことは許されず、
    一家に一人の男は兵士として召集されている。

    父が軍医の娘は、同じクラスで医者志望のハサンに心惹かれる。
    禁止されているなか、二人は言葉を交わし、そっと相手を待ち、同じ方向へと歩く。

    「自分の手で人生を書けることを信じる?」と問う娘にハサンは白い紙を二つに破って答える。
    「努力すれば実るという話は信じる。でも、自分が描けるのはこの白い紙の、半分だけだ」

    そして今日も召集された”白い紙”たちはトラックに乗せられて戦場へと向かうのだ…。


    『サラム』
    サラムとはどういう意味ですか?
    弁護士の田中先生は尋ねた。
    ”私”は移民申請の時に違法滞在で入管に収容されたアフガン人のレイラの弁護士、田中先生の通訳だ。
    サラムとはもともとは降伏の象徴として叫んだ言葉だったが、それが互いに平和を祈る言葉になり、今では挨拶として定着している。
    レイラとの面談を来る返すごとに、イラン出身の”私”でさえ知らなかったアフガン人の苦悩を感じる。
    レイラが国に強制送還されれば命が危うい、だが日本も無尽蔵に難民を受け入れるわけにはいかない…。

    「人生でどんなことがあっても『サラム』と言うべきだ。運命だからちゃんと受けないと」

    ”私”には日本に帰る家がある、だがレイラには?多くのアフガン人には?
    そして”私”は、レイラが日本に留まれるように田中先生と調査を進めるのだ…。

  • 胸がきゅーんとなるぐらい美しい小説。
    「日本語を母語としない人が書いたとは思えない文章」という言葉が果たしてほめ言葉になるのだろうか。いや、反対に日本人も日本も出てこないストーリーを日本人ではない筆者が「日本語で」書いたことに、この小説(「白い紙」)の意義があると思う。1つ1つの言葉がその枠を越え、それでいて的確に描写していることに感動さえ覚えた。「サラム」はやや等身大の筆者の心の動きが垣間見られるようで、また違った味わいがある。
    日本語という言葉の可能性を教えてくれる不思議な魅力にあふれる文学作品だ。
    今後の筆者の活躍にも期待したい。

  • イランの田舎町が舞台の少年と少女の淡い恋を書いた『白い紙』は隣国との戦争に引き裂かれ、日本で難民認定を待つ少女を書いた『サラム』はアフガニスタンの民族や宗派と言った内情と日本の認定の厳しさが書かれていました。
    どちらも哀しい結末で切ない。

    日本語を母語としない作者の書く日本語が美しく、それがまた戦争の酷さを際立たせていました。

  • 白い紙がなんかぐっときた。
    戦争
    イラン

    戦争前のイランは凄く豊かで美しい国だったらしい。

  • 日本語以外の言語を母国語とする著者が、日本語で書き、今年の芥川賞候補作にもなった作品です。

    イラン・イラク戦争時、テヘランからも離れ前線に近い田舎町を舞台とした少年少女の淡い初恋を描いています。日本人でもあまり使わないような難しい単語を使っており、驚きました。イランの人がイランのことを、日本語で書くということの意味は・・・どういうことなのでしょうか。作品を味わうという他に、こういったことを考えてしまったのが心残り。(日本語の文章としては時々読みにくいけれども、外国の人が書いたのならスゴイ!というような。)
    異国情緒や、思春期ならではの瑞々しい感情の動きは、激しさをます戦局と対照的に美しい印象を与えました。

    もう1篇の「サラム」は難民申請をしているアフガンの少女の裁判が題材です。彼女を弁護する弁護士にアルバイト通訳として同行する女子学生が語り手となっており、「白い紙」よりも現実的。こちらのほうが文章としては読みやすかったように思います。

  • 作者はイラン出身の女性で
    日本の企業に勤めている方、
    その方が日本語で書いたこの本

    「白い紙」「サラム」の二話収録

    祖国、その周辺の不安定な情勢。

    戦争や宗教のことも淡々とした語り口で、
    抑えた筆致がクールだ。

    日本の状況とは
    あまりにもかけ離れている過酷さ、
    事の重大さに、

    結局「私は違う(だから良かった)」と言う感想を
    えてしまい、その後、無気力に。
    小者だね、私は。

  •  日本で日本語で小説を書くイラン人女性作家の初単行本。

     表題作「白い紙」は、戦時下のイランの小さな町を舞台として、医者を志望する少年の運命が、語り手の少女の視点から語られる。

     一方で、「サラム」は、日本に留学中の女性でダリ語というアフガニスタンの方言の通訳をしている女性が語り手であり、アフガンでタリバンに迫害されている少数民族に属する難民の少女が、日本で難民として受け入れてもらえるかどうか、弁護士の通訳として状況の推移を見守り、語っていくという内容になっている。

     「白い紙」において、少年は大工の父親が戦争に行っているので、少年は戦争に行く必要がなく、大学に推薦で進学できる可能性があるといように、家族の犠牲の上に将来の希望が成り立っており、「サラム」において、少女は実際に迫害されており帰国すれば命の危険があるにもかかわらず、そのことを証明できないために、日本の入管に強制送還を勧告されているというように、戦争だけではなく、法の理不尽さが傷ついた人々をさらに傷つけている様が描かれてる。

     「サラム」は、挨拶の言葉だが、運命を受け入れる言葉でもあると語る少女の姿は痛ましい。

     どちらも現代の戦争が日常化しているイスラムの理不尽で不条理な状況を主題とする小説となっているし、イスラムの宗教や慣習がわかりやすく紹介するとともに、現代のイスラムのリベラルな若者たちのそれらに対する距離感が、日本の若者が日本の伝統に対するそれとさほど変わらない(と言っては言いすぎか)こともわかり、9.11以降の状況において、もっと広く読まれてよい小説だと思う。
     
     とりわけ「サラム」は、人の移動や言語をめぐる状況がかなり複雑でねじれている様態を捉えたであり、イラン人女性の語り手が、難民化してるアフガン人がイランにも多く、イランでもよく見ていたにもかかわらず、日本で初めて通訳としてほんとうの意味で出会うというねじれも興味深い。


     参考:「イラン人美女の成功物語(シリン・ネザマフィさん)」by YUCASEE MEDIA (http://media.yucasee.jp/posts/index/1770

     「『サラム』『白い紙』は主人公はいるのだが、不思議なことに主語がない。母国語のペルシヤ語でも使わない手法だという」という辺りは興味深いと思う。

     参考:岡真理『アラブ、祈りとしての文学』(みすず書房、2008.12)http://amzn.to/gmAd7S

  • 「どこか遠い世界の悲劇」ではなく、近所や自分ごとのような悲劇だった。読むのがしんどくなるほど重く、響く。
    情景が浮かぶように表現はされているし、ストレートな表現が異国情緒を引き立てて面もあるが、文章の稚拙さが気になった。題材の力があるから物語は損なわれていないのだけれど、巧みに構成されたコース料理というよりは、旨いカツ丼という印象をうけた。

  • 2021I002 913.6/N
    配架場所:A4

  • すごくいい小説だった。良い意味で宮内悠介みたいなエキゾチックな雰囲気のある、しかしそれでとても悲しい結末の「白い紙」。価値のある読書だった。

  • イラン出身で母語はペルシャ語の筆者が日本語で書いた小説で、イラン・イラク戦争下の恋が描かれています。神戸大学、同大学院で情報知能工学を学び、在学中の2006 年に「留学生文学賞」を受賞、大手電気メーカーでシステム・エンジニアとして勤務という著者のプロフィールも、留学生に限らず東工大のみなさんに関心を持ってもらうきっかけになるかもしれません。
    (選定年度:2019~)

  • 2017.11.13 WIREDより。美人。

  • 「白い紙」はイランイラク戦争中の若者たちの話。
    「サラム亅は日本の入管に収容されたアフガン人の通訳を務めるイラン人大学生アルバイトの話。
    「サラム亅の大学生は作者に近いのだろうか。モダンなテヘランで育ち、日本へは留学に来ている恵まれた「私」の視点でみるアフガニスタン。
    興味深い話であったけれども、主人公の気持ちが日本人大学生が抱く感慨とさほど違わないことにやや失望する。そしてそんな自分の感:想に少々嫌気がさす。恵まれた環境で育った若者は世界中どこでもそんなに違わないものだろうにと。

  • 若いイラン女性作家が、日本語で書いた小説。
    戦争に翻弄されるイラン社会を、イラン人によって日本語で知らされることの意味に、思いを巡らせたい。

  • サラムのみ読了。大学の授業で扱っていたので。

  • 授業の予習にと読んでみた。
    唯一図書館になかったこの本、中古で見つけて購入。
    買ってよかった!読んでよかった。
    ネザマフィさんの日本語能力の高さにもちろんびっくり、そしてイランの高校生の淡い恋を描いた『白い紙』のストーリーに涙。。白い紙ってそういう意味だったのね。去年も授業でやったのに、そこまで意識いかなかった。白い紙にどんな夢でも描ける私は幸せだ。日本は平和で幸せだ。

    『サラム』は、とにかく私の知らない世界が広がっていて、時事問題も絡んでいて悲しかった。It's tragedy.
    ネザマフィさんの本、もっと出てるんかな。探してみようかな。

  • イラクとの戦時下におけるイランの若い男女を描いた小説で、日本とはもちろん全く異なる宗教や文化を背景に進められていく話。文自体は短絡的なのだけれど、内容にかなり引き込まれる。校庭で男子に話しかけられるだけで緊張が走る女の主人公。彼を戦争に送り出す時の姿。公共の場でほうらを交わすことが許される、唯一の男女は母息子であるということ。いつかイランに行くという気持ちをより一層強く持った。

  • 芥川賞ノミネート作品。新聞に紹介されていたころに興味を持ち,図書館が購入してくれることを待っていた。
    海外の方がノミネートされることは珍しいと思った。
    他国の事を知る日本人は少ないと思う。私は国の中や宗教の違い、民族についてあまり知らなかったように思う。
    読んでいて、初めて知ることの多さに、日本の問題に、どう向き合っていくか、考えさせられる。
    読んでほしい一冊。

  • 文學界新人賞受賞作品

  • どちらも良いけど、サラムはごうごう泣けた。作者はイラン人だけど、イスラムと日本、どちらの立場にも偏ることなく書かれていてバランスが良い。現実のやるせなさ、どうしようもなさを突きつけられるけれども、あくまで淡々としているのがまた良いな~っと。

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