無理

著者 :
  • 文藝春秋
3.45
  • (85)
  • (294)
  • (339)
  • (66)
  • (20)
本棚登録 : 1950
感想 : 363
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163285801

作品紹介・あらすじ

合併でできた地方都市、ゆめので暮らす5人。相原友則-弱者を主張する身勝手な市民に嫌気がさしているケースワーカー。久保史恵-東京の大学に進学し、この町を出ようと心に決めている高校2年生。加藤裕也-暴走族上がりで詐欺まがいの商品を売りつけるセールスマン。堀部妙子-スーパーの保安員をしながら新興宗教にすがる、孤独な48歳。山本順一-もっと大きな仕事がしたいと、県議会に打って出る腹づもりの市議会議員。出口のないこの社会で、彼らに未来は開けるのか。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 東北の地方都市。3つの町が合併してでできた人口12万人のゆめの市。国道沿いの大型ショッピングセンター「ドリームタウン」が唯一の盛り場で、昔からある商店街はシャッター街と化している。

    この町で暮らす5人の群像劇。


    県庁からゆめのの社会福祉事務所に出向になり、生活保護支給業務を担当する相原友則。
    卒業後はゆめのを出て東京での大学生生活を送りたい女子高生の久保史恵。
    詐欺まがいの商品を売りつけるセールスマン、暴走族あがりの加藤裕也。
    スーパーの保安員をしながら新興宗教にのめり込んでいる堀部妙子。
    親の地盤を引き継いで市議会議員になった山本順は県議会議員になるつもりでいる。

    5人はそれぞれ ゆめの市に不満や不安を持ちながら生活を送っている。

    増え続ける生活保護申請者に辟易し「いずれ県庁に戻るんだし」と仕事をサボり女を買う者。「卒業後にゆめのに残るのは不良か地味な奴だけ」と同級生を心の中で見下している者。老人をだまし詐欺を働きながらも「俺が立派に家族を養ってる」と勘違いする者。

    なんてクズな生活なんだ!と思いながらも、この5人を というかゆめの市民をこうさせているのは、閉鎖的でただ錆びれていくだけのこの土地がそうさせているんじゃないかと。 景気も良くならない。行政もアテにならない。何度も作中に出てくる空の描写はいつも分厚い雲に覆われたグレーな空で 気分が塞がる。まるでゆめの市。この町で夢や希望を持てというのはとても「無理」だと思わせる。合併後にできた『ゆめの(ドリームタウン)』という名前とのギャップもまた悲哀を感じる。

    5人の人生はどんどん悪い方へ転がり落ちていく。ノンストップに!スピーディに!

    少し前の言葉で言えば「無理ゲー」。

    終盤 少しづつ絡まり合う5人のたどり着いた先は…。

    ラストは賛否両論あるみたいだけど笑

    5人まとめて詰んだな。
    というより、ここから新たな地獄のスタートなのか。
    それとも人生やり直せるのか。

    • ゆーき本さん
      ザビエルは教科書に載ってる人物の中でも落書きされ度 1位2位を争う人物だと思う笑
      ザビエルは教科書に載ってる人物の中でも落書きされ度 1位2位を争う人物だと思う笑
      2023/10/04
    • 1Q84O1さん
      はい!やっぱり落書きしましたw
      すみません(_ _;)
      はい!やっぱり落書きしましたw
      すみません(_ _;)
      2023/10/04
    • ゆーき本さん
      コラ!教科書は大切にしなさい!٩( ö̆ ) و





      って怒られたよね笑 わたしも。
      コラ!教科書は大切にしなさい!٩( ö̆ ) و





      って怒られたよね笑 わたしも。
      2023/10/04
  • 分厚い…
    おまけに舞台となる地方都市も
    出てくる人々もどんよりとした灰色の空のよう。
    読んでいて楽しい、おもしろい!とは一切思えないのに、なぜか途中で読むのをやめることが出来なかった。
    このどうしようもない人たちの最後はどうなるのか、
    見届けたかった。

    ここに出てくるのはきっと、この世界のどこにでも存在する人。
    そして本人たちは自分の考え方がごくノーマルだと信じて疑わない。
    そして何かの瞬間に事が悪い方へ傾いた時、正しくかじを切る術を持たないので、どんどん制御できなくなる。
    最後には吸い寄せられるようにすべての人がひとつの大惨事へと突入。
    ちょっと出来すぎな結末だったけれど。。
    それぞれのその後はどうなったんだろう、と想像すると、また暗い気持ちになった。

  • タイトルがなんとも特徴的な一冊。
    ある地方都市に住む5人の人物が主な登場人物で、1章ずつ登場人物が代わる代わる登場して、それぞれの時間軸で出来事が進んでいく。
    その5人を簡単に説明すると、市役所に勤める生活保護受給者担当の公務員、若くして強固な地盤を引き継いだ二世市議会議員、大学進学を機に地元脱出を目指す女子高生、万引き保安員の傍ら新興宗教にのめり込む主婦、元暴走族で詐欺まがいの商売に明け暮れる若い男。
    それぞれの5人のストーリーは普通に読んでいて楽しめる。地方で住む人間の考え方、生き方、人間関係、お金事情がとてもリアルで読んでいて嫌な気持ちになる程。私自身も地方出身者なので分かる部分が多分にあった。「井の中の蛙、大海を知らず」とは良く言ったもので、まさにそういった登場人物のオンパレード。地方で暮らす人たちが悪いとは言わないが、一度外に出てみるのは改めて大事だなと感じた。
    さて、ストーリーだが、当然のようにこの5人が最終的にどう交わりどういった結末を生むのか、そしてタイトルの「無理」という言葉がどう絡んでくるのかを楽しみに読み進めたが…正直結論は「それーー??」という感じ。計500ページ以上引っ張って、その雑なオチなんだよと。。
    それぞれの5人のストーリーが面白かったので☆3だが、そうでなければ☆2ですね。
    うーん、私にはわからないような深い意味があるのかな…どちらにしてももやもやが残る一冊でした。

  • 地方都市で、様々な状況におかれた人々のドタバタ劇。
    雪の降る寒い中、たいした娯楽もないゆめの市。
    リアルに想像できそうな描写がさすがだと思った。

  • 合併でできた地方都市「ゆめの」、希望に満ちているのは、名ばかり
    娯楽施設は、ショッピングセンターのドリームタウンだけ、駅前の商店街はお決まりのシャッター街

    閉塞感漂うこの街に暮らす5人の群像劇
    県からこの市に出向してきたケースワーカーの相原友則
    東京の大学に進学しこの町を出ることを夢見ている高校2年の久保史恵
    暴走族上がりで詐欺まがいの商品のセールスマン加藤裕也
    スーパーの保安員をしながら新興宗教にすがる孤独な48歳、堀部妙子
    親の地盤を引き継ぐ市会議員だが県議会に打って出るつもりの山本順一

    各自それなりの夢を抱いているが、なぜか空回り、悪い方へ悪い方へと回り出す5人の人生
    このパターンは、前作の「最悪」「邪魔」と同じだ

    5人はほとんど交錯することなく、並行して5人の物語が
    進んでいくが、それなりに5人の人生の転がりようと心理描写がおもしろかった

    5人がそれぞれ追い詰められ、希望の糸口も見出せないまま、車を走らせ、凍てついたドリームタウン下の交差点で前代未聞の玉突き衝突!

    ええーっ! 奥田さん、こんな片付け方あります??

    読者諸君、この後は、どうぞご自由に物語を作ってくださいということか

    どんよりと曇った冬の寒空、肌を切られるような凍てつく寒さと閉塞感漂う街の描写が巧みで、読んでいて身につまされた

    奥田さんの小説って、おちゃらけた伊良部一郎シリーズは別として、人生があまりうまく行っていない人を題材にした作品が多いなと今までの奥田作品を思い返していた


     

  • 読了日2010.6.26

    p.10
    (夢の市は、三つの町が合併して一年前にできた新しい市だ。市になるなり、生活保護家庭が激増した。これまでの世間体が薄れたことが要因だと、ある議員は分析していた。案外そんなものだろう。)分母が大きくなれば、個人は図々しくなるのだ。

    p.60
    地方の離婚の多さは、少ない出逢いの中で結婚してしまうせいだ。さして惚れ合ってもいないから、いとも簡単に浮気をする。

    ”人口十二万人の寂れた地方都市・夢の。この地で鬱屈を抱えながら生きる五人の人間が陥った思いがげない事態を描く渾身の群像劇”

  • これはほんと……「無理」。笑
    ずっと降り続いてる雪がこの町から出られない檻のようだと感じた。しんどすぎる。
    田舎ならではの閉塞感とか、どう転んでも絶望みたいな環境がすごいよく描かれてる。田舎の富裕層、一流って都会の中流層であり三流なんだよね……。
    ここの登場人物は市議会議員の山本を除き、『田舎の』中流層〜貧困層の人達。慎ましく普通に生活していたはずなのに、なんか知らないうちに蟻地獄みたいにどんどん堕ちていく。
    頭文字とっただけとはいえ『ゆめの』という市名があほらしく感じてしまう。夢も希望もありゃしない。
    生活保護とか詐欺セールス、新興宗教とか色んな闇が描かれてて面白かったなぁー。

    500ページ越えだからなかなか骨の折れる読書だったけど、一章一章が短めなので読みやすくはあった。

    • れにさん
      読了お疲れ様でした〜。奥田さんが書く田舎の閉塞感はリアルで好きです!社会の底辺っぽい人たちの世界観を見るのが好きなので…(笑)高評価嬉しいで...
      読了お疲れ様でした〜。奥田さんが書く田舎の閉塞感はリアルで好きです!社会の底辺っぽい人たちの世界観を見るのが好きなので…(笑)高評価嬉しいです(ヽ´ω`)
      2024/02/15
  • 週刊ブックレビュー(2/20)学習院大学教授中条省平さんがお薦めの一冊で紹介したものです。
    図書館に予約して7ヶ月で届きました。
    続きが気になって、3日で読んでしまいました。
    分厚いけど読みやすかったし、面白かったです。
    文藝春秋に3年間かけて連載されたそうですが、私なら耐えられなかったでしょう。

    (一応)常識的に生きている人たちが非常識な人たちに振り回されていきます。
    先日戦国時代の本を読んで、平成に生きてよかったと思いましたが、こういう本を読むと平和とか自由とかいったものも悪や不幸を産むのだと思わされます。
    この数年のドキュメンタリーに登場したたくさんの問題が凝縮されています。
    憂鬱な気持ちになりました。

    でも読みすすめていくうちに、自分の中でコメディーになりました。
    電車の中で読みながら、何度も笑って、怪しい人になりました

    何十年かして読んだら、「平成ってこんなだったなー」と思うのでしょうか。

  • 登場人物それぞれの人生、最後にやっと交わるのね。
    長かった!
    どこまでも悲劇的、あまりの悲劇には笑っちゃう

    ナオミとカナコを書いてる方なのですね

  • 物語が五本軸くらいあり、それが皆で同時進行していくのだが、そこは奥田英朗の小説なので、大変に分かりやすくこんがらがることなくストーリーは進んでいく。登場人物も多いは多いが、それほど煩雑ではない。お話が進んでいくと、微妙にキャラクターたちが絡んでいくが、本筋にかかわるほどは影響してこない非常に上手な距離を保つ。

    そしてクライマックスへ。

    物語のキャラクターたちは普通の人間なのか、ちょっと何かがずれただけなのか、初めからもう普通ではないのか、いろいろだが決して他人ごとではない怖さが今の日本だ。11年前に発行されている書籍だが、この当時生活保護者は「エアコン」を所持できなかったのね。2020年の日本の夏はもうエアコンを使いましょうと政府が推奨しているほどの暑さ。

    題名の「無理」とお話の関連性はよく分からないなぁ。

全363件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

おくだ・ひでお
1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライターなどを経て1997年『ウランバーナの森』でデビュー。2002年『邪魔』で大藪春彦賞受賞。2004年『空中ブランコ』で直木賞、2007年『家日和』で柴田錬三郎賞、2009年『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『最悪』、『イン・ザ・プール』、『マドンナ』、『ガール』、『サウスバウンド』、『無理』、『噂の女』、『我が家のヒミツ』、『ナオミとカナコ』、『向田理髪店』など。映像化作品も多数あり、コミカルな短篇から社会派長編までさまざまな作風で人気を博している。近著に『罪の轍』。

「2021年 『邪魔(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

奥田英朗の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×