- Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163287508
作品紹介・あらすじ
北九州のシャッター商店街に映画の撮影隊がやってきた。俳優たちの退屈しのぎの思いつきから、街は最高に心ない賭けのワンダーランドに。人の心の黒さと気高さを描きつくす、奇才4年ぶりの小説。
感想・レビュー・書評
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賭けの対象が地味だが、後からジワジワくる。シャッター街として地元黒崎が舞台なので、星一つ割増。
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先生→三浦春馬
センセイ→リリー・フランキー
小関→北村総一朗
ヤマザキ→松重豊
プロデューサー→小林薫
監督→八嶋智人
を当てはめて読んだ -
ソフトクリームを持って哀しげな顔をしているおじいちゃんのイラストが
書かれている表紙が強烈。
もうろくしかけているおじいちゃん俳優がスパイスガールズを全力で
熱唱する所や、完全にいじわるとしか思えない長セリフにNG出しまくる
シーンは面白すぎる。ただ笑えるだけでなくて人間の黒い部分や孤独を
感じるところもあって、コメディとシリアスのバランスが絶妙。
楽しく読めたんだけど、ちょっともやもやする所もある。
テーマが見えづらいし、かと言って完全に娯楽小説に振り切れている
わけじゃないし。心のない、即席の「関係」や「善」なんて結局
すぐ壊れちゃうのよって事なのかな。
松尾スズキの作品だから尖った面白さがあると信じているけど
もしこの違う作家の作品だったら「で、一体何だったの?」としか
思わなかったかも。 -
松尾スズキは初めてで、期待していなかっただけに、冒頭の展開の速さには惹きつけられた。しかし、映画の収録に入ったあたりからだれてきて、それもそのはず、いい映画を作ることより主役の老人が何回NGを出すかの賭けにスタッフたちが一喜一憂するというつまらない展開には憮然としてしまった。漫画や演劇では面白いかもしれないね。
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完全に題名で読み始めた。主人公は借金返済のため日夜仕事ををしていたらマッチョになったマッサージ師。そんな彼の師匠は売れない映画監督。そして始まる映画撮影。
人生必死にもがいてもドラマにならないことだらけ。頑張れば頑張るほど滑稽な人間を書くのが、松尾さんはうまいと思います。 -
『モーニング』で、すぎむらしんいちによるマンガ化が進行中(※注/2011年の話)の小説である。マンガ版が妙に面白くて毎週読んでいるので、気になって原作も読んでみた。
原作も、かなり面白かった。ちなみに、単行本の装画もすぎむらによるものだ。
タイトルから、老人たちが賭博をする話なのかと思いきや……。うーむ、そうきますか。「まさかそこに連れていかれるとは思わなかった」と、読者の多くが驚くであろう展開を見せる小説。最初から最後まで、話の展開がまったく読めなかった。予定調和的な「よくあるストーリー」とはおよそかけ離れた物語なのである。
あらゆるストーリーが語り尽くされたかに見える21世紀にあって、「こんな小説、初めて読んだ」と読者に思わせる(少なくとも私はそう思った)のはすごいことだ。
しかも、人物や舞台の設定はとくに突飛なわけではなく、むしろありふれている。寂れた町での映画の撮影中、主人公たちが、主演の老優のNG回数などを賭け合う話(ゆえに『老人賭博』)で、骨子を先に聞いたらとても読む気がしないようなちまちましいストーリーなのだ。それを、読み出したら止まらないジェットコースター的展開にしてしまうのだから、恐るべき独創性である。
映画撮影のディテールの濃密なリアリティは、松尾の映画界での豊富な経験の賜物だろう。俳優や映画スタッフの心理描写も、すこぶるリアル。それでいて、展開は超シュール。そのギャップが、この小説を独創的なものにしている大きな要因だ。
芥川賞候補にものぼった作品だが、むしろ直木賞にふさわしい気がした。「映画撮影の舞台となった北九州の町が、史上最高に心ない賭博のワンダーランドと化す。爆笑がやがて感動に変わるハイパーノベル!」という惹句にウソはない。
すぎむらしんいちのマンガ版は、いまのところ、細部はアレンジしてあるものの、基本は原作に忠実。今後、どれくらいすぎむらのカラーが出てくるのか、こちらも大いに楽しみだ。
この原作にはすぎむらの大傑作『ホテルカルフォリニア』を彷彿とさせるところもあるし(ストーリーではなくテイストが似ている)、相性はバッチリだと思う。 -
2018/7
松尾スズキに惹かれて。読んでいる途中で老人賭博の意味に気づく。九州弁がいい。なーんか読んだことある話だと思っていたら、昔、モーニングで連載してたみたい。
ハラハラさせられる場面が多く、面白かった。 -
映画の地方ロケの最中、年老いた主演俳優のNGをめぐり周囲の人たちが賭けをする、ブラックなコメディ。
ベテランだが主演は初めてで記憶力の衰えてきた老俳優を初め、「心なく優しく」がモットーのグラビアアイドル出身の新人女優、金欠の脚本家、経験の浅い監督など、登場するのは冴えない面々ばかりで、撮影はトラブル続き。
製作の現場を熟知している作者ならではの、力の抜けたリアルな描写が笑いを誘う。とくに、改稿した長セリフのくだりは舞台を観ているかのようで、声に出して笑ってしまった。
ちょうど先日、大人計画の舞台を観てきたばかりということもあり、作者の作り上げる世界に浸って登場人物とともにブラックな気持ちになりながら読了。芥川賞候補作も早く読みたいな。 -
波がない小説