真綿荘の住人たち

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 208
  • Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163289403

感想・レビュー・書評

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  •  三浦しをんさんが、書評本「本屋さんで待ちあわせ」で紹介していた一冊。さっそく読んでみました。

     2食付き、お風呂と台所共同の下宿「真綿荘」に暮らす面々の日常。
     女子高生と付き合う事務員、大柄であることにコンプレックスを抱き、人とうまく距離を取れない女子大学生、人の心のきびを理解せず、知らず知らずのうちに人を傷つける新入りの男子大学生、かつて画家に与えられたものを忘れられず、17年間彼に縛られ、そして自らも彼を縛り続ける小説家兼、大家。

     お互いがお互いに、「あんたの人との関係の取り方、おかしいよ」と思っている。「自分の人との関係もおかしい」とも思っている。だからこそ、お互いがお互いを傷つけ合う。そして、後日、お互いが腕を伸ばし合い、関係を修復し合う。
     人は、愛や恋や友情や、そういういろんな形で繋がり合う。ここの住民たちは、そういった普通の関係ではないけれど、同性愛やレイプなど、他の人と共感しにくい事情を通して芽生えた関係ではあるけれど。

     けれど、だからこそ、そういった関係からでも他者を想う関係は芽生え、長く成立していくのだと、知りたい。
     これから先も、彼らは誰かを傷つけるのだとしても、そんな彼らが同時に誰かを救いうるのだと、そう信じていきたい。

  • 能天気で無神経な天然坊やの大和君、男嫌いで現在は女子高生と交際中の椿さん、礼儀正しく気遣いも完璧なのに大柄な外見にコンプレックスを抱える鯨ちゃん、やけに色っぽい大家(兼作家)の綿貫さんと、その内縁の夫で画家の晴雨さん。

    下宿モノでこのキャラクター陣ならドタバタラブコメ展開か…と思って読んだらまさかのトラウマ・心の闇テーマでした…。
    そりゃ愛のカタチなんて、各々自由で良くって、何が正しいか分からないけど…

    三浦しをんさんがオススメされているらしいけど、私はしをんさんが書かれた「木暮荘〜」の方が好きです。文庫版解説は江古田つながりで瀧波ユカリさん。

  • 大好きな島本さんの本。作風がちょっと変化したような気がします。そして扉絵がこわい。一瞬ホラー作品かと思いました(-_-;)

    ・青少年のための手引き
    ・清潔な視線
    ・シスター
    ・海へむかう魚たち
    ・押入れの傍観者
    ・真綿荘の恋人

    真綿=絹の一種で蚕の繭を煮た物を水の中で引き伸ばして綿状にしたもの。

    最初はライトな感じでさくさく読んでいたけど、同性愛、虐待、レイプと、どんどんヘビーな内容になり綿貫さんと晴雨さんの『真綿荘の恋人』では…まさに真綿で首をしめられるような、緊迫感が。。。

    “綿”が多く使われているのでコンセプトは『真綿で首しめ』なのでは?と勝手に思ってしまったくらいです。

    でも不毛で息苦しいシーンを通り越すと、なぜか分からないけど涙が出そうになり、最後は感動してしまうという…不思議な愛のお話でした。大人の愛だと、しかも新しい愛の形だと思いました。

    『不毛だ…』と嘆きたくなる場面から、じわじわと突き抜けて展開されていくので正直ホッとしました。本当に一時はどうなることかと…はらはらしました。

    すごく響く言葉がありました。

    =怖くて口にしてしまいたいことほどいつも言葉にならない。一つ口にした途端に、ほかのすべてが失われていくから。=(271ページ)

    この言葉を読んだ瞬間、すとん、と心が落ち着きました。最後に出てくるものが…おぉ~…と斬新だと思ったしあの二人によく合うラストだと、新しい形の愛なのかな…と。

    あと大和君の成長ぶりが目を引きました。どんな恋でも、どんな形の愛でも、やはり人を成長させるんだなぁ~と、しみじみと感じました。鯨ちゃんと荒野先輩の二人が一番ホッとしました。「シスター」と「海へむかう魚たち」が好きです。

  • 真綿荘に住む男女それぞれの恋愛模様を描く。
    ○○荘や○○アパートや、こういった下宿ものの話は押し並べて同じ印象を抱く。人生様々、色んな事があるよね、でも一歩踏み出そう!的な。この真綿荘の面々も同じだけれど、少し複雑な恋愛をしている人が多かったので、展開が気になり最後まで飽きずに読めた。大家さんと晴雨さんの展開には驚いた。え!そっち!?と(笑)でもまあ結局、印象通り皆が幸せになったから良かった。

  • 「天然の空気清浄機」みたいな女の子を誉めた大和くん。自分はその対極にいると思い込む鯨ちゃん。人工の排気ガスだとはおもってないだろうけど、鈍い男は傷つけますね

  • 真綿荘の住民たちの恋の話で、いろんな愛の形があってこのカップルもいいなとか思って読んでたら、まさかの綿貫さんが最後にヘビーな馴れ初めだった。
    ドライに見せかけて、実は年下でしかも高校生の八重子ちゃんに支えられてる感じの大人な椿さんかわいい。
    大和は結局八重子ちゃんが椿さんと付き合ってることを知らないままなのかな。
    私は鯨ちゃんと荒野先輩カップルが一番好き。
    ほんわかカップルになりそうに思えた二人の公園ですがりつくような急展開は本人視点で読みたかった。
    荒野先輩の影の部分とそれを鯨ちゃんが優しく包み込む姿とか見たい。

  • 本の構成が好き
    登場人物のキャラがしっかりしてて読みやすい
    的確な表現ではないのに伝わってくるものが多い

    ラストは衝撃だった
    そうなっちゃうんだって。。。

    愛しい想いなんて
    みんな自分のモノサシだもんね

    この人が描く
    内面から揺さぶられるような描写が、すごく好き

  • こういう同じ下宿に住んでいるいろんな登場人物がでてくる話、てよくあるけど、
    この物語は、どの登場人物の話も、心に響くものがあって、とても面白かった。
    恋人や好きな気持ちにはいろんな種類があることや、人を愛することって素敵なんだな、て知った。
    島本理生さんの本は好きだけど、作風がここで少し変わった気がする、良い意味で。
    感動して、あたたかい気持ちになれた。

  • 下宿の中で住む、いろいろな人たちが
    穏やかに繊細に交わっていく姿が
    興味深く読みやすかった。
    傷付き、何かを求める人がいれば
    その人たちを優しく包み込む存在があることを知れた気がする。
    そして最後は、予想もしていなかった「束縛関係」に
    切ないようなホッとしたような
    なんともいえない気持ちになった。
    一言で言い表せない感情にさせてくれる、島本理生さんの文が
    とても好きです^^

  •  島本理生の作品は、最新作と『あなたの呼吸が止まるまで』以外は、単行本として刊行されているものは多分すべて読んでいる。世間的に島本理生の代表作と言えば『ナラタージュ』なんだろうが、私はノータイムでこれを選ぶ。
     あらすじは、真綿荘という下宿に集まる若者たちと、管理人とその恋人(?)の話。童貞のライトな話もあれば、耽美な百合話、性格はいいのに容姿に自信の持てない女の子の話(この話は非常に気持ちがいい)、そして最後は管理人とその恋人の、捻じれに捻じれまくった当人たちにしかわからないトンデモ展開。これがすごい。本当にすごい。月並みな言い方だけど、愛の形は一つじゃない。
     今までの島本理生の作品から頭が一つ抜けている。『ナラタージュ』あたりから、ずっと女性と暴力との対峙を少しずつモチーフを変えつつ描いていたけど、今までは真剣に問題に向き合うあまり作品自体が張り詰めすぎて、読み終わるとごっそりHPを削られる感が否めなかった。そりゃ重大な問題だし取り組むことは全然いいのだけど、正直設定が似たり寄ったりで、そろそろ違う味の話も読みたい…と思っていたところへの僥倖。「クローバー」ほど軽すぎず、「あられもない祈り」ほどダウナーにかっ飛ばしてもおらず、面白いし島本理生独特の繊細な筆致も冴えわたっているし、今まで取り組んでいた性と暴力も扱いつつそこに余裕が生まれている。今まではひどい目にあった女性が、なんやかんやして救われていく(ほとんどは草食系男子との新しい恋愛)捻じれていない救済の話だったけど、今回は「こういうケースもあってもいい」という余裕がある。「!????」みたいな関係性も、「当人たちがいいなら、ありでしょ?」とさらっと言われている感じ。

     今年の正月に読んだ、もしかしたら今年の三本指に入るヒット作かも。
     まじでおすすめ。☆いつつ!!

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著者プロフィール

島本 理生(しまもと りお)
1983年東京都板橋区生まれ。都立新宿山吹高等学校に在学中の2001年に「シルエット」で、第44回群像新人文学賞の優秀作を受賞し、デビュー。06年立教大学文学部日本文学科中退。小学生のころから小説を書き始め、1998年15歳で「ヨル」が『鳩よ!』掌編小説コンクール第2期10月号に当選、年間MVPを受賞。2003年『リトル・バイ・リトル』で第128回芥川賞候補、第25回野間文芸新人賞受賞(同賞史上最年少受賞)。2004年『生まれる森』が第130回芥川賞候補。2005年『ナラタージュ』が第18回山本周五郎賞候補。同作品は2005年『この恋愛小説がすごい! 2006年版』第1位、「本の雑誌が選ぶ上半期ベスト10」第1位、本屋大賞第6位。2006年『大きな熊が来る前に、おやすみ。』が第135回芥川賞候補。2007年『Birthday』第33回川端康成文学賞候補。2011年『アンダスタンド・メイビー』第145回直木賞候補。2015年『Red』で第21回島清恋愛文学賞受賞、『夏の裁断』で第153回芥川賞候補。『ファーストラヴ』で2回目の直木賞ノミネート、受賞に至る。

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