真綿荘の住人たち

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163289403

感想・レビュー・書評

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  •  三浦しをんさんが、書評本「本屋さんで待ちあわせ」で紹介していた一冊。さっそく読んでみました。

     2食付き、お風呂と台所共同の下宿「真綿荘」に暮らす面々の日常。
     女子高生と付き合う事務員、大柄であることにコンプレックスを抱き、人とうまく距離を取れない女子大学生、人の心のきびを理解せず、知らず知らずのうちに人を傷つける新入りの男子大学生、かつて画家に与えられたものを忘れられず、17年間彼に縛られ、そして自らも彼を縛り続ける小説家兼、大家。

     お互いがお互いに、「あんたの人との関係の取り方、おかしいよ」と思っている。「自分の人との関係もおかしい」とも思っている。だからこそ、お互いがお互いを傷つけ合う。そして、後日、お互いが腕を伸ばし合い、関係を修復し合う。
     人は、愛や恋や友情や、そういういろんな形で繋がり合う。ここの住民たちは、そういった普通の関係ではないけれど、同性愛やレイプなど、他の人と共感しにくい事情を通して芽生えた関係ではあるけれど。

     けれど、だからこそ、そういった関係からでも他者を想う関係は芽生え、長く成立していくのだと、知りたい。
     これから先も、彼らは誰かを傷つけるのだとしても、そんな彼らが同時に誰かを救いうるのだと、そう信じていきたい。

  • 真綿荘に住む人たちの様々な恋愛、人間模様を綴った物語。
    全6章それぞれの物語があるし価値観もそれぞれ。
    正直自分的にはあまりのめり込む作品ではなかったけど。
    たまにはこういうものも良かったのかなと。

  • 能天気で無神経な天然坊やの大和君、男嫌いで現在は女子高生と交際中の椿さん、礼儀正しく気遣いも完璧なのに大柄な外見にコンプレックスを抱える鯨ちゃん、やけに色っぽい大家(兼作家)の綿貫さんと、その内縁の夫で画家の晴雨さん。

    下宿モノでこのキャラクター陣ならドタバタラブコメ展開か…と思って読んだらまさかのトラウマ・心の闇テーマでした…。
    そりゃ愛のカタチなんて、各々自由で良くって、何が正しいか分からないけど…

    三浦しをんさんがオススメされているらしいけど、私はしをんさんが書かれた「木暮荘〜」の方が好きです。文庫版解説は江古田つながりで瀧波ユカリさん。

  • 真綿荘に住む男女それぞれの恋愛模様を描く。
    ○○荘や○○アパートや、こういった下宿ものの話は押し並べて同じ印象を抱く。人生様々、色んな事があるよね、でも一歩踏み出そう!的な。この真綿荘の面々も同じだけれど、少し複雑な恋愛をしている人が多かったので、展開が気になり最後まで飽きずに読めた。大家さんと晴雨さんの展開には驚いた。え!そっち!?と(笑)でもまあ結局、印象通り皆が幸せになったから良かった。

  • 自分の理解できる型の中に当てはめようとしてはいけない、こういう捉え方する人もいるのだなという感覚で読む。
    一人一人の心情の描写はさすが!としか言えない。
    こうなんじゃない?という自分なりの理解はしてみたものの、多分理解しきれていない感情がありそうだ。
    282冊目読了。

  • 「島本理生」のエッセンスが詰まった一冊だとおもった。アパートで暮らす面々のオムニバス形式の物語。
    話の快不快はさておいても、著者の技術が万遍なく注がれているように読めた。純粋な恋愛模様から、良くも悪くも人間の感情が乱暴に上下する様子、そして彼女おなじみの(もはやお得意の?)「暴力」という素材。最後の章は少し濃いけど、島本著が初めてだわという人へこれを勧めておいて間違いはないんじゃないかと思う。

  • 「天然の空気清浄機」みたいな女の子を誉めた大和くん。自分はその対極にいると思い込む鯨ちゃん。人工の排気ガスだとはおもってないだろうけど、鈍い男は傷つけますね

  • 真綿荘の住民たちの恋の話で、いろんな愛の形があってこのカップルもいいなとか思って読んでたら、まさかの綿貫さんが最後にヘビーな馴れ初めだった。
    ドライに見せかけて、実は年下でしかも高校生の八重子ちゃんに支えられてる感じの大人な椿さんかわいい。
    大和は結局八重子ちゃんが椿さんと付き合ってることを知らないままなのかな。
    私は鯨ちゃんと荒野先輩カップルが一番好き。
    ほんわかカップルになりそうに思えた二人の公園ですがりつくような急展開は本人視点で読みたかった。
    荒野先輩の影の部分とそれを鯨ちゃんが優しく包み込む姿とか見たい。

  • 本の構成が好き
    登場人物のキャラがしっかりしてて読みやすい
    的確な表現ではないのに伝わってくるものが多い

    ラストは衝撃だった
    そうなっちゃうんだって。。。

    愛しい想いなんて
    みんな自分のモノサシだもんね

    この人が描く
    内面から揺さぶられるような描写が、すごく好き

  • こういう同じ下宿に住んでいるいろんな登場人物がでてくる話、てよくあるけど、
    この物語は、どの登場人物の話も、心に響くものがあって、とても面白かった。
    恋人や好きな気持ちにはいろんな種類があることや、人を愛することって素敵なんだな、て知った。
    島本理生さんの本は好きだけど、作風がここで少し変わった気がする、良い意味で。
    感動して、あたたかい気持ちになれた。

  • 下宿の中で住む、いろいろな人たちが
    穏やかに繊細に交わっていく姿が
    興味深く読みやすかった。
    傷付き、何かを求める人がいれば
    その人たちを優しく包み込む存在があることを知れた気がする。
    そして最後は、予想もしていなかった「束縛関係」に
    切ないようなホッとしたような
    なんともいえない気持ちになった。
    一言で言い表せない感情にさせてくれる、島本理生さんの文が
    とても好きです^^

  •  島本理生の作品は、最新作と『あなたの呼吸が止まるまで』以外は、単行本として刊行されているものは多分すべて読んでいる。世間的に島本理生の代表作と言えば『ナラタージュ』なんだろうが、私はノータイムでこれを選ぶ。
     あらすじは、真綿荘という下宿に集まる若者たちと、管理人とその恋人(?)の話。童貞のライトな話もあれば、耽美な百合話、性格はいいのに容姿に自信の持てない女の子の話(この話は非常に気持ちがいい)、そして最後は管理人とその恋人の、捻じれに捻じれまくった当人たちにしかわからないトンデモ展開。これがすごい。本当にすごい。月並みな言い方だけど、愛の形は一つじゃない。
     今までの島本理生の作品から頭が一つ抜けている。『ナラタージュ』あたりから、ずっと女性と暴力との対峙を少しずつモチーフを変えつつ描いていたけど、今までは真剣に問題に向き合うあまり作品自体が張り詰めすぎて、読み終わるとごっそりHPを削られる感が否めなかった。そりゃ重大な問題だし取り組むことは全然いいのだけど、正直設定が似たり寄ったりで、そろそろ違う味の話も読みたい…と思っていたところへの僥倖。「クローバー」ほど軽すぎず、「あられもない祈り」ほどダウナーにかっ飛ばしてもおらず、面白いし島本理生独特の繊細な筆致も冴えわたっているし、今まで取り組んでいた性と暴力も扱いつつそこに余裕が生まれている。今まではひどい目にあった女性が、なんやかんやして救われていく(ほとんどは草食系男子との新しい恋愛)捻じれていない救済の話だったけど、今回は「こういうケースもあってもいい」という余裕がある。「!????」みたいな関係性も、「当人たちがいいなら、ありでしょ?」とさらっと言われている感じ。

     今年の正月に読んだ、もしかしたら今年の三本指に入るヒット作かも。
     まじでおすすめ。☆いつつ!!

  • すごく変な感想になるんだけど、この世にはわたし以外の人が大勢いるんだなと感じた。

    自分の当たり前とか常識とか、全部自分だけのもので、それぞれ人はそういうものを持っていることを認識できた。
    これまでの人生で知っていたはずなのに、全然ピンときてないなかった。
    上っ面だけで、なんとなく判断していたんだな。

    読んでいくうちに実際に真綿荘にいて住民と深く話して、その考えや思いがわかったりわからなかったり、納得したり出来なかったり、そんな経験を通して、自分以外の人間について少し知れたような気になる。
    もっともっと、人の気持ちを知りたくなった。

  • 恋愛要素もありながら、あったかく爽やかな読みごこちの小説。どろどろはほぼなし。
    わたしは鯨ちゃんみたいな友達ほしいな、と思いました。

  • 島本理生さん、初読みのような気がします。「真綿荘の住人たち」、2010.2発行。天然の大学1年大和葉介、女子高生の八重子と関係している山岡椿、身体が大きい大学2年の鯨井小春、引きこもり画家真島晴雨(せう)、晴雨を内縁の夫という作家で大家の綿貫千鶴、この5人が真綿荘の住人。それぞれの生き方、人間関係が順々に描かれ、最後になってこの物語のテーマがわかったような気がしました。それなりに面白くはありましたが、読み疲れもしました。

  • 必要とされたい。所有されたい。関わってもらいたい。関わりたい。体を重ねたい。一人になりたくない。日常では、いろんな欲望が「好き」とか「愛」という言葉に置き換えられているのかもしれない、と読んでいて感じた。自分が「これが愛だ」って言い切れればそれまでなんだろう。所詮、言葉で置き換えられる人と人との関係なんて、社会にとって都合がいいように構築されたものなのだから。だから私は、千鶴と晴雨さんの最後の選択がとても心に残った。社会は関係ない。あなたと、わたしの、二人。それが世界の全て。という、決意の現れ



  • こんなにも、まったくの赤の他人たちに守られていることは、ただ眠っていただけで百年の眠りから救われることに匹敵するほど贅沢な幸運だという気がした。


    「でも、好きなものがあるから、嫌いなものが生まれるんですよね。きっと」


    「今日できることは今日しましょう。今日できないことは明日もできません。」


    人間は、本当のことを言われたときに最も腹を立てる生き物だ。


    「葉介、女子は口に出したことよりも、空白の方が百万倍、重要なんだよ」


    「あんな言葉のために、言ったわけじゃなかったのに」


    箱の中の猫がフタを開けるまでどうなっていたかなんて、たしかに誰にも断言できないけれど、猫自身だけは、そのすべてを知っているように。


    それでも上質なコートに覆われた須磨さんからは上品な性の気配が漂っていて、底に寄りかかってしまえたら私の人生はどれほど簡単なものになるだろう。休日のデート、食後の他愛無い会話、不安に駆られることのない抱擁。たくさんの月並み。


    愛されないことを受け入れるのは、いったんあきらめてしまえば、たやすかった。だけど、こんなにも長い間、持ち続けていた悪い夢が色褪せていくなんて、想像もしていなかった。
    私が晴雨さんを愛さなくなる。
    そんな日が来るぐらいなら今すぐに死んだ方がましだと思いながら、須磨さんまで一人ぼっちにして、私は迷子の子供のように泣いていました。


    「誰一人、私を守らなかった。実の母親でさえ。私を完璧に所有してくれる人。それだけが、私のただ一つ、欲しいものだった」





    鯨ちゃんの、清潔さが、まぶしい

  • 真綿荘に住むひとたちの恋愛模様を書いた作品。圧倒的に空気が読めない大和、女子高生と付き合う事務員の椿、自分に自信がなく恋愛をするのが怖い鯨ちゃん、そして晴雨さんを「内縁の夫」と呼ぶ綿貫さん。みんなどこかいびつな恋愛をしていて、上手くいっていない。
    椿は、まっすぐに自分を慕う八重子との距離がつかめずにいる。大和はすきな先輩に駆け落ちをしてくれと頼まれて駆け落ちをするけれど、自分のことを見てくれていないことに気付く。鯨ちゃんはすきなひとには片想いのひとがいる。晴雨さんと綿貫さんは、なんだかお互いを柵の中に追い込んでいるような、そんな状態。
    みんなみんな不器用だよなあ、と思う。でもそれが魅力なのだとも思う。そんな上手いこといかないよな、恋愛って。けれど、最後にみんな少しだけ進んでいく。それがちょっと明るい未来を暗示しているかのようで。
    最後に、けっきょく晴雨さんと綿貫さんが落ち着いた関係はなるほどなあなんて思った。

    (275P)

  • 東京にある「真綿荘」
    その下宿先に住む5人の男女を視点に、様々な愛の形を綴った物語。

    選り取りみどりの恋愛の数々。様々な愛の模様が見える。
    6つの章に分かれ、それぞれの視点で紡がれる彼らの思いや理念。
    女性同士の愛、内縁の夫との歪な愛、境遇が似た者同士の寄り添う愛、真っ直ぐな猪突猛進の愛…など。
    彼らを取り巻く人々も様々な憂いや迷いがある。

    私は鯨ちゃんと荒野先輩の、境遇が似た者同士の寄り添う愛に惹かれた。
    荒野先輩は人間的に完璧ではない。だからこそ感じる自分自身の欠陥。
    泣くほどに鯨ちゃんへの愛に気付いた時、何かが溢れるように過去への清算と、鯨ちゃんと一緒に見る未来が彼には見えたのではないのだろうか。

    また、大和もド天然な悪気が無く空気を読まない台詞が、ある意味物語に良いスパイスを加えている。
    今時の健全な少年である大和に、笑わせてもらいました。

    この物語は吉田修一の「パレード」に似ている。
    章に分かれた物語構成と、歪な愛、そして同居人のそれぞれの役割。
    別々の家で暮らしているとその人の本質に気付かない。
    一緒に暮らしているからこそ見えてくる歪で不確かなそれぞれの個性。
    それらがこの物語でも彩っていて私も下宿した気分になり、登場人物たちに家族のような親近感を沸きながら読むことが出来ました。

  • ショートストーリーのような形で、下宿に住む住人一人ひとり恋愛観が表現されています。住人全員が個性的で性格もバラバラなので、読んでいておもしろかったです。

  • 表紙から、少し怖そうなイメージを持って読んでいった。
    すると真綿荘の日常で、全然怖い印象は無く、するすると読んで行った。
    様々な関係性、人への感情を持った人がいて、それぞれの目線で描かれていく。特にラストは、そういう形に落ち着くのかとびっくりした。

  • いろんな住人が居るもんです。愛情表現にもいろんな形が有るかと思うけど、最後はどうも理解しにくい思いになりました。

  • シェアハウスというより賄い付き、大家さんのいる下宿屋「真綿荘」に住む男女、それぞれの不器用な恋を描く連作短編集。

    著者初読み。
    住民の恋の有り様、気持ちは理解できないものが多いけれど、著者が26歳の若さでこの本を書かれたことに驚いた。
    (図書館)

  • なんとも変わった人達が住んでる下宿だなと感じた。1番は大家さん。ほとんど納得できないまま話が進んで終わった感じ。

  • 晴雨さんと千鶴はそうだったのかぁと思いました。けっこう衝撃でした。最後は結婚ではなく養子縁組っていうのが意外でした。くじらちゃんと荒野先輩がうまくいってよかったです。

  • 恋愛ものであり、人間ドラマでもあり、成長記でもある、味わい深い作品でした。
    共感も反感もなかったというのが正直な印象。個性的なキャラも受け入れられた。
    管理人の綿貫さんと晴雨さんの関係…最初は全く理解できなかった。
    読後は「あるんだろうな。」と思えた。囚われている状態って案外気持ちいいものですからね。

  • 登場人物にそれぞれ独立した複雑さがある。住人たちがあまり友好的でなくドライな感じがよかった。

  • 面白かった。
    真綿荘の個性が強い住人のクセのある日常が展開される。
    冒頭、大和君の話で折れそうになるものの、八重子と椿のそこはかとなく耽美で微妙にエロい話で引き返した。

    大和君の人の良さ、人畜無害加減とは対象的に、大家の綿貫さんが時折見せる、爬虫類的な性格がちょっと怖かった。

    ラスト、顛末の展開は意外であったが、求めていた、欠けていたのはこれだったのか、納得感65ポイントの結末でした。

    結末として、インパクトはありました。

  • はじめの章、大和君にいまいち共感できずに読むのを辞めようかと思ったが、後の椿さん鯨ちゃんの章で持ち直す。ラストは少し意外。

  • 真綿荘に住む左利きの皆さんの連作。

    女子高生と付き合っている男性不振の椿さん。
    背が高い事を気にしているけれど、同じ大学の先輩に好意を持たれている事に気がつかず、真綿荘の大和君が好きな鯨ちゃん。
    どこか足りないというかデリカシーがないのだけれど、憎めない大和君。
    謎多き小説家で大家の真綿さん。
    真綿さんの内縁の夫で絵描きの晴雨さん。

    よくぞここまで個性的なメンバーが集まったものだと嘆息してしまいます。それぞれに苦しい恋をしていて、それがなんだか羨ましかったです。

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著者プロフィール

1983年東京都生まれ。2001年「シルエット」で第44回群像新人文学賞優秀作を受賞。03年『リトル・バイ・リトル』で第25回野間文芸新人賞を受賞。15年『Red』で第21回島清恋愛文学賞を受賞。18年『ファーストラヴ』で第159回直木賞を受賞。その他の著書に『ナラタージュ』『アンダスタンド・メイビー』『七緒のために』『よだかの片想い』『2020年の恋人たち』『星のように離れて雨のように散った』など多数。

「2022年 『夜はおしまい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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