少女外道

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 67
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  • Amazon.co.jp ・本
  • / ISBN・EAN: 9784163292403

作品紹介・あらすじ

この感覚は、決して悟られてはならない。人には言えない歪みを抱きながら戦前〜戦後の日本をひとり生きた女性を描く表題作のほか、ラスト一頁で彼岸と此岸の境を鮮やかに越える「巻鶴トサカの一週間」など、名手・皆川博子の傑作短篇七篇を収録。

感想・レビュー・書評

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    公共図書館で途中まで読んでた本

    あいかわらず好みの文体、どこか儚げ

  • 言葉の使い方が美しい。

    この時代の東京ことば、すきです。



    生死って、息をしているかどうかってことじゃない。
    からだが生きてても死んでしまうような出来事もあるし、
    その逆もまたある。

  • 「開かせて…」を読んだ時翻訳本みたいで、読みにく感じたが、この本は同じ著者が書いたとは思えないくらい文章が美しくあるときは妖艶であるときはぞわっとする一言では言い表せない作品だった。
    この世とあの世の境を漂っているような不思議な魅力がある。

  • 香りたつような文章の美しさ、旨さには惚れ惚れとするが、各小説自体に関してはいつもの皆川博子で、目新しさはないように感じた。相変わらず、という言葉がふさわしいように思う。安定した筆致で構築される幻想世界を求めている人にとっては本書はまさに最良のものだろう。ただ、「蝶」とはまた別の雰囲気を求めていた自分にとっては、いささか物足りなかった。

  • 戦争期の少女たちの短編集。
    道を外れていく狂おしい偏愛。
    背き歪んだ先にある不幸。
    残された者の悲哀。
    残酷な戦争下で交わされる、ひとときの夢のような美しい言葉たちに魅了されてしまう。
    『標本箱』『有翼日輪』が好みだったが、特に『祝祭』のラストは息を呑む鮮やかさで、何度でも味わいたい。


  • 戦中戦後の、少年少女たちの日常。
    日常なんだけれど、踏み外してしまいそうな、あやうさ。戦争という環境が、あちらとこちらの境目を曖昧にしている。あちらにいってしまうときの、背徳感、エクスタシィ。
    それらは日常と繋がっている、と思えるとなんとなく安心する。あちら側を感じながら、いきていくこと。
    少女外道、というタイトルがもう全て。

  • 少女外道
    巻鶴トサカの一週間
    隠り沼の
    有翼日輪
    標本箱
    アンティゴネ
    祝祭

    読み始めには耽美的な文章と映りましたが、その実、とても読みやすく、手を止めることがありませんでした。
    舞台は戦中戦後が主で、当時の特殊な状況が描かれています。ただ、泥臭いということはなく、むしろ逆でしょう。
    上品かつフェティッシュな場面が所々にあり、どきりとさせられました。
    皆川さんの著作は、エッセイ的な『辺境図書館』を別にして初めてですが、読み続けていくと思います。

  • 7話からなる短編集。
    2017.6再読。

  • 世界観に入り込めず途中でリタイア。

  • 内容は例えるならば指先から痺れていくようなひたすら甘美な甘い毒・・・。
    「外道」というのは「道を外れてしまった」という意味での外道なのかな、と・・・。
    初めから周囲とは違う道を進んでいた少女と、ふとしたきっかけで道を踏み外してしまった少女。
    表題作「少女外道」はラストの・・・孫の流血に目の色変えて蘇る少女時代の欲望・・・。いつまでもきっかけになった男性に執着する様がいいですね・・・。
    「巻鶴トサカの一週間」は少女らしさを失わない浮き世離れした女流画家と彼女に惹かれる男・・・そのまま文字通り道を踏み外していく二人・・・。
    「隠り沼の」は少女の正体が分かったときは(あぁー・・・)となりましたね。傷付けられて傷付くことを諦めて道を外れて行き着いた果ては・・・という。
    「有翼日輪」は少年が友人の兄に崇拝と、それから破壊を求め、その外れた道に大切な物を置いたまま生き続ける・・・みたいな・・・。圭雄(たまお)くんが少年でありながら少女めいた気持ちで友人の兄を見ていたっていう倒錯的なアレな気もするけど、名前が少女とも取れるから心は女の子だったっていう暗喩なのかな?とも思ったが、どうなのかな・・・女性器のアレとかもあったし・・・どうなんですか皆川博子先生・・・。いや単純に青年になった圭雄くんに話しかけた女性がまた道を外れた少女だったってだけかも分からんが・・・うーん・・・。
    「標本箱」はめっちゃ好みでしたね・・・心中という分かりやすい道の外れ方なのですが、どこか美しい・・・。失敗して一人生き残り気が狂ってしまったというのすらも美しく感じてしまう・・・。鉱石と骨と、惹かれ合った二人の会話がどこまでも甘やかで、この世のものとは思えない皆川博子ワールド。
    「アンディゴネ」は皆川博子先生といえば女子校の鬱屈ネタ(というと陳腐に聞こえるが)ラストの江美子の、女の業のような道の外し方・・・こういうのも先生描かれるんだな・・・。
    「祝祭」がどこか一番戦時中~戦後雰囲気強かったですね。ジュール・ルナールの『にんじん』読む少女とかロマンすぎる。
    やっぱり傷口を重ね合う二人っていう構図は・・・耽美でたまらんなあ・・・皆川博子先生やっぱり分かってらっしゃる・・・。それから「傷付いて血を流す男」に言いようのない感情を燃やしてしまう少年少女・・・ああ・・・。人には言えない、道を外れた少女達の辿り着く果ての詰め込まれた一冊でした。

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著者プロフィール

皆川博子(みながわ・ひろこ)
1930年旧朝鮮京城市生まれ。東京女子大学英文科中退。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』で第12回本格ミステリ大賞を受賞。2013年にはその功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。

「2023年 『天涯図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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