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本 ・本 (352ページ) / ISBN・EAN: 9784163292809
作品紹介・あらすじ
恩田陸が贈る、日本版・地獄の黙示録
犯罪者や暗殺者たちが集まり、国家権力さえ及ばぬ無法地帯である〈途鎖国〉。特殊能力を持つ〈在色者〉たちがこの地の山深く集うとき、創造と破壊、歓喜と惨劇の幕が切って落とされる――極悪人たちの狂乱の宴、壮大なダーク・ファンタジーをお楽しみください。
感想・レビュー・書評
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『仔鹿が浮かんでいる。』、上巻から続く恩田さんのファンタジー世界。上巻で山のように出てきた意味不明な名詞たち。その幾つかの意味が少しづつ明らかになっていきます。
でも名詞の意味は明らかになってもこの奇妙な世界はどんどん不思議さを増して行くばかりです。『吊り橋が笑っている。彼をあざ笑うかのように、橋は笑い続ける。ぎしっぎしイ/ぎしっひいひいひい。』グロテスクなおぞましい情景も登場して作品はホラーの雰囲気も纏っていきます。あまりの突き抜けっぷりに感動する一方で、これ、最後に纏められるのだろうかという一抹の不安。そしてどんどんスピードが上がる。残りのページ数ヤバシ。放り出される…強烈なデジャ・ビュが頭をよぎります。
そんな中、『いったい、この力はどこまで行くのか。どこまで行けば極限なのか。誰が最強なのか。』、『出てきてしまう。あたしの中の/リミッターが外れる/制御不能』、そもそもの謎な主人公・実邦が『覚醒』する瞬間。上巻に引き続き激しい生身の戦闘シーンが繰り広げられ、上巻よりもさらに読者に要求される想像力のレベルが引き上げられます。物凄い表現の数々。凄いなぁこれ、と思いつつも一方でついて行けなくなっている自分にも気づきます。
そして、その時、物語の終わりも唐突にやってきます。振り落とされまいとしがみついていたのに、気づいたら路上に佇み、恩田さんの遠くなった後ろ姿を茫然と見送るしかない結末。『理解したいという欲望は、不幸だな。人は理解していなくても暮らしていける。幸福でいられる。何も知らないことを幸福と呼ぶのであれば。』
なんだろうこの作品。なんだろうこの虚無感。恩田さんの作品の中でもここまでの振り落とし、突き放され感は経験がなく、気持ちの持って行き場がない自分がここにいます。
でも落ち着いて思い返すとこの不思議な世界に、生身の戦闘シーンに、想像力をめいっぱい働かせた時間がありました。そう、エンディングだけが読書じゃない。途中の世界観を楽しむ読書のススメ。そういう意味ではとても恩田さんらしい作品だったと思いました。 -
冒頭はヨーロッパあたりの国境の話かと思った。
寒々しい雰囲気が一気に頭のなかに広がった。
一瞬、鎖国かと思ったが、違う、「途鎖国」なのだ。
途鎖という特別地区には入国管理局がある。
そこには特殊な能力をもつものたちがいて
在色者と呼ばれる。
その途鎖を出ていた実那がある目的のために戻ってきた。
関係者と綿密な計画を立て、山に入る。
その山はもちろんただの山ではない。
怖いのがとても苦手な人には
ところどころ「ギャッ!」と言いたくなるような場面がある。
それにホラー的な場面も・・・。
できるだけ文字だけ追うようにして読んだ。
(想像しない)
それなのにページをめくるスピードが加速していくほど
先が知りたくなる。(「24」みたい)
そんなこんなで早起きして読了。
(夜は余計怖い)
全く想像しないラストだった。 -
えええ~~~!!そこで終わり~!?
で、結局あの人はどうなったの?あの姿は何だったの??
先生が連れて行った人達はどこに行ったの?
教えてくれ~。
またしても恩田先生にやられてしまった。
謎だらけ。
でも、良いんです!!(カビラ風)
恩田先生だから良いんです!!
引っ張って引っ張って・・・、唐突に終わる。
これで良いんです!
もう私は多くを望みません。だって恩田作品だもの。
直木賞なんて取れなくったって良いんです!頭ガチガチの審査員に評価されなくたって良いんです!(←しつこい?)
内容について少々。
特殊能力を持った在色者と呼ばれる人たちが、日本とはまた別の途鎖国の山奥に潜むソクをそれぞれの思惑で打倒しようとするお話。
手に汗握る密入国シーン、血なまぐさい決闘シーン、はたまた空を飛んだり天井からぶら下がったり超人的なシーンも盛りだくさん。
これがただのSFではなく恩田ワールドならではの何ともいい難い不思議な雰囲気で包みこまれ、ページをめくる手が止まらない。
間違いなく面白い。
でも正統派ミステリーが好きですっきりと伏線を回収してほしい人には不向きかな。
答えを提示しないのは慣れてるけど、この作品に関しては是非続編を書いてほしいな~。無理だろうな~。 -
全てを語りきらず、想像の余地が残るいい終わり方だなと思った。
が、最後は怒涛の展開すぎて半ば、追いつけなくなっていった。以前読んだドミノのような疾走感が面白くもあり難しくもあった。
物語の結末について余地はあるがもう少し、色々と説明が欲しいなと思う部分もあった。 -
なんというか、とても恩田陸だった。こんな奇怪な事を堂々とやってのける作家は恩田陸ぐらいである。
物語の舞台となる〈途鎖国〉(とさこく)がとてもおかしい。笑える、という意味ではない。我々の常識など通じないという意味だ。犯罪者や暗殺者が集まり、油断ならない。
この中を突き進む主人公ももちろん普通ではない。恩田版『地獄の黙示録』というからどんなものかと思いきや目眩がしそうだった。これは普通じゃない。 -
雰囲気は好きだ!けどまた行間を読む作業が始まるのか……
著者プロフィール
恩田陸の作品






はじめまして、こんにちは。
恩田さん作品の中でもここまでの突き放され感は経験がない…という感想、すごくわかります(笑)
恩田...
はじめまして、こんにちは。
恩田さん作品の中でもここまでの突き放され感は経験がない…という感想、すごくわかります(笑)
恩田さん作品は、わかりやすいものとわかりにくいものにかなり両極端だなと思うのですが、私の中でもこの作品は、わかりにくいものの中でも突き抜けていました。
でもエンディングだけが読書でない、というさてさてさんの姿勢にわが身振り返り反省しました。確かに、エンディングはわかりにくかったけれど、世界観は楽しませてもらいましたし、そこを忘れちゃいけませんね!この本読んだ後に抱いていたモヤモヤが少し晴れた気分です。ありがとうございました。
読書を始めて間もないの...
読書を始めて間もないのですが、ブクログ のお陰で最初から感想とワンセットが読書だと思っています。単純に読み終えた瞬間と、振り替えりの時間を入れた後では違うものが見えてくるように感じるからです。この作品だって、単純な読後感は決して良くはないと思います。でも感想を書き終えて、読書中の色んなことを思い出して、思い出されてこの感想でまとまりました。小中高と大嫌いだった読書感想文の意味が分かった気がする今日この頃です。
ありがとうございました。