ええもんひとつ とびきり屋見立て帖

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163292908

作品紹介・あらすじ

幕末の京都で道具屋「とびきり屋」を営む若夫婦・真之介とゆず。わけありの道具を「見立て」、癖のある人々を「目利き」しながら、ふたりは少しずつ成長してゆく-。動乱の京都を舞台に、「道具」と夫婦愛を描いた佳品六篇を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 駆け落ち夫婦が古道具屋<とびきり屋>を営む中で様々な事件や道具に出会いながら道具屋として夫婦として成長していくシリーズ第二作。

    前作の終盤で、ゆずの両親に何とか夫婦として認めてもらえたからか今回はゆずの実家<からふね屋>との絡みはなし。
    しかし前作同様、幕末の京都らしい不穏な空気は更に濃密になってきている。
    坂本龍馬の動きは激しくなっているし、桂小五郎も登場。

    表紙絵同様にほのぼのした雰囲気を期待しているのだが、真之介・ゆず夫婦の恩人<桝屋>喜右衛門もまた勤王派であることが分かり、<とびきり屋>は否応なく勤王の志士たちの拠点として、また彼らの武器調達に巻き込まれていく。

    京の町は不穏でも商売はやっていかないと暮らしていけない。そのために今回も様々な道具の買付や新たな目玉商品発見に忙しい。
    そんな中で妻・ゆずの目利きや買付けさせてもらうためのアイデアが光っている。奉公人たちから真之介よりもゆずに目利きの極意を請うシーンがある。
    しかしゆずの答えはなんと『ええ道具というのんは(中略)お金のにおいがする』とのこと。
    老舗の有名道具屋のお嬢様として育ったゆずからそんな生々しい言葉が出てくるとはと驚く一同だが、それこそが道具屋商売ならではの言葉だろう。

    値段などあってないようなもの。いくら高価な材料と高い技術で作られた価値の高い道具であっても、それを買ってくれる人がいなければ商売にはならない。逆に対した価値のない道具であってもそれを必要とする人、価値を見出す人がいれば高値で売れる。
    道具屋は様々な道具で人と人を繋ぐ商売といえるかも知れない。
    だが買う人売る人が正直で純粋な人ばかりではないだけにしたたかな駆け引きが重要となることもあるのだが。

    またもや出てきた壬生狼の芹沢のせいで価値のない壺を大金で買うことになってしまったり、ゆずを諦めきれない茶の湯の若旦那から仕入れたばかりの茶壺を強奪されそうになったりと悪縁もまだ続きそうだ。
    それでもゆずの機転や目利きで何とか切り抜けていく。
    …と書くと、真之介の良いところはないようだが『道具屋は、一に度胸、二に金、三に目利きや』と言うだけあっていざというときの行動力と腹のくくり方は頼もしい。
    逆にゆずも道具屋商売を甘く見ていたことを知らされるシーンもある。二人ともまだまだ成長途上ということだろう。

    最終話はシリーズ前段の二人が夫婦になるまでの話。ここでも真之介はゆずと夫婦になるため、道具を手に入れるための駆け引きを繰り広げている。
    何となく黒川博行さんの作品に出てきそうな騙しもあるのだが、それもまた道具屋商売をやる上での成長と言えるだろうか。

    第三作もあるようだが、<とびきり屋>と夫婦がどう時代の荒波を乗り越えていくのか注目していきたい。

    シリーズ第一作「千両花嫁」レビュー
    https://booklog.jp/users/fuku2828/archives/1/4163270507

  • 行事だったり、食事だったり。
    季節を大切にする生活が、魅力的。
    やわらかな京都の言葉づかいも、素敵。

    歴史上の人物を絡めながら進む、シリーズ。
    着実に、歴史が進んでいる。

    なぞかけ仕立てで面白かった。
    http://koroppy.cocolog-nifty.com/blog/2012/08/post-d87d.html

  • やわらかなほのぼのとした夫婦愛が心ひかれる。 
    歴史上の人物を絡めながら物語を進めていく作者は流石。
    「神様にお願いするときはかなえてくれてありがとう」
    まさに、これはよかった。

  • 11/14/10図書館

  • 読みやすく数時間で読み終えてしまいますが、内容的には楽しめる本です。

    とびきり屋のおかみさんが、神社でお願い事をするときに、「過去形」~でありがとうございました。とするところが気に入りました。

    丁度、今読んでいる「山崎拓巳」さんの本にも同じような事が書かれていたので。

    結構人生のコツを書いてくれていたりもします。
    そして内容も暖かくて読んで楽しい本です。

  • ゆずと真之介、いい夫婦だなぁ。大文字の送り火を見ながら「ええ女房や」とつぶやく真之介が可愛い。2人はこんなにほのぼのしているのに、攘夷志士たちがとびきり屋を利用していて怖い。血生臭いものに巻き込まれそう。やめてー。

  • このシリーズよい。
    山本兼一大好き。

    ええもんひとつ
    が、いーかな。
    坂本龍馬が出てくるし、香りの話。

    しかし、ゆずちゃん⁉︎
    「そうえ。神様にお願いがあるときは、いつも先にお礼を言うことにしてるんよ」
    そして⁉︎ええ道具=「お金のにおい」って。

    ふむふむ

  • 真之介さんとゆずさんの気持ちがぎくしゃくしそうになり、ハラハラしましたが、お似合いの夫婦。お互いを補いながらお店も繁盛してます。でも、幕末の不穏な空気が。
    新選組のキャラはどうしても、香取さん、佐藤さんを当てはめてしまう。

  • 前作よりも読みやすく感じた。
    茶壺の結びなど茶道に関する話が
    多くありまたさらに興味惹かれた。
    今回も桂や新選組などの偉人の面々も
    現れ、またまた面白い展開に…
    次作も読むぞー!

  • 道具屋「とびきり屋」の2作目

    手代の牛若がゆずに道具の目利きの教えを乞うくだり
    主人の真之介にでなく女将に…
    熱心さのあまりとはいえ、ひやひや
    クスリと笑える部分もあり、ゆずの答えも意外性あり

    因縁の若宗匠や芹沢との一悶着にはらはら

    人間模様も面白く
    香炉箱や茶壺、軸や刀の見立ても面白く

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著者プロフィール

歴史・時代小説作家。1956年京都生まれ。同志社大学文学部を卒業後、出版社勤務を経てフリーのライターとなる。88年「信長を撃つ」で作家デビュー。99年「弾正の鷹」で小説NON短編時代小説賞、2001年『火天の城』で松本清張賞、09年『利休にたずねよ』で第140回直木賞を受賞。

「2022年 『夫婦商売 時代小説アンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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