月と蟹

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 2880
レビュー : 551
  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163295602

作品紹介・あらすじ

「ヤドカミ様に、お願いしてみようか」「叶えてくれると思うで。何でも」やり場のない心を抱えた子供たちが始めた、ヤドカリを神様に見立てるささやかな儀式。やがてねじれた祈りは大人たちに、そして少年たち自身に、不穏なハサミを振り上げる-やさしくも哀しい祈りが胸を衝く、俊英の最新長篇小説。

感想・レビュー・書評

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  • 父を亡くし、祖父と母と暮らす慎一。
    慎一の祖父のおこした事故で母を失った鳴海。
    親から暴力をふるわれている春也。

    ヤドカリあぶり。慎一と春也が始めた他愛ない、けれど残酷な遊びはいつしかヤドカリを神に見立て(ヤドカミ)、その犠牲と引き替えに願いをかける儀式へと変わり・・・
    大人の理不尽な暴力にさらされ狂気を芽生えさせる春也、母がふいに見せた女の顔に戸惑い苛立つ慎一、自分の父と慎一の母の関係に勘づく鳴海・・・鳴海への淡い初恋(のようなもの)が彼らの関係をさらに歪に変え・・・

    子供特有の残酷さ・暗さにぞわぞわとする。

  • 子供たちのヤドカミ様の儀式怖かった。火でヤドカリをあぶりだすなんて…。
    集まった3人がそれぞれ闇を持っているものだから、ストップがかからなかった。
    誰かがこんなことやめようよって言えたなら…。
    子供の心の闇って、ある意味大人よりどす黒いかも。純粋な分だけ傷つくとすごい。
    慎一と春也の「新しい何かが欲しかった。」と言う気持ち驚いた。私が小学生の頃そんな事、
    思い付きもしなかった。それだけ、彼らは重い何かを背負っていたのだろう。

  • 第144回(平成22年度下半期)直木賞受賞作

    父親を亡くし母親と祖父と暮らす少年の、転校先での出来事を通じて少年期特有の寂しさや成長への焦りを描いた作品。

    道尾秀介作品の経験は、「龍神の雨」に続いて2作目。
    共通しているのは少年の目線を中心に描かれている事。純粋であるがゆえの、大人への期待や甘え、大人や友人との接し方に敏感で傷つきやすくて素直になれないという感情がよく表現されている。


    母親に対しては級友の父親と仲良くする事への驚き・戸惑い・嫉妬が、クラスで唯一仲の良い男友達・女友達とは日々の無邪気な遊びの裏に潜むお互いの家庭環境への憧れ・妬み・同情、また初めて異性として意識する感覚などが丁寧に描かれている。読み進めるうちに自分の少年時代を思い出すが、単に懐かしいというだけでなく、当時の喜びや悲しみや戸惑いが有り有りと蘇って来て不思議な感覚になる。

    著者はこのような少年時代の複雑で敏感な感覚を大人になった今よく書けるなと思う。父親が病気で死ぬことや、祖父の事故で級友の母親が死んでしまう事など、本書の特別な設定はあるものの、描かれている少年少女の感情にはどんな境遇であれ感じるであろう普遍性があるからこそ読者の心に響くのだしその点が素晴らしいと思う。

    個人的には、主人公の少年の一人称で描かれている点について、女性がこれを読むとどう感じるのか気になるところである。女性は早熟であり少年の心は元よりお見通しなのだから、心配せずとも共感を得られるから心配ご無用というオチであろうか。

  • 第144回直木賞受賞。
    小学生の主人公が海辺の町で見つけた
    「ヤドカミ様」をめぐる物語。
    著者は少年の持つ
    拙く儚い絶望感を
    とてもうまく表現される。
    「どうしてぜんぶ、上手くいかないのだろう」と
    口にしてしまう切なさ。
    深く重く余韻が残る作品です。
    もっと年齢を重ねたら読んでみたいと思う。
    同著者「光媒体の花」は同じ年頃の少年が感じる
    「きらきらした世界」を描いており
    本作とは対極にあるが、一緒に読んでみると
    なお一層良いかと!

  • 家庭に複雑な事情を持つ2人の少年と1人の少女。
    親の恋人、家庭内暴力、初恋。
    読みやすくてページをめくる手が進んだけど、何処かパンチに欠けるというか・・・。
    気になった少年2人の友情の行方は満足な終わり方だった。

  • 我が幼少期を思い出して、心が痛くなる……

    湘南の海辺の町に住む小学生が主人公の物語。学校ではクラスメイトから疎外され、実家の家族とは折り合いが悪く、行き場のない閉塞感が苦しい。そんな主人公ともう一人の似た境遇の男の子と、裏山の頂上で始めた儀式。初めはたわいもない遊びだったはずが、いつの間にか深刻さを増して、いつしか彼らの内に狂気をはらんでいく、その心模様が胸を打つ。

    この作品はいつもの道尾作品のように、どんでん返しのドミノ倒しはない。丹念に子供の心情を描いているところが、ちょっと珍しいか。

    子供の時って、突然意味もなく誰かを傷つけたくなったりしたな。それが近い人であればなおさら。
    そんな幼少期を思い出して、胸が痛む。

  • 暗かった。どよっとしていた。あまりにどよっとしていたので、変な夢をみてうなされた。が、嫌いではない。

  • ああ、すごい。これだけの量を書いて、無駄がなく、特別なことも起こらず、舞台は日常で、
    ヤドカリをこんなふうに登場させてヤドカミ様とし、しかしタイトルは月と蟹。

     父親の暴力に気まぐれの食事抜き。心が矢だらけになったように痛む。

     変わりゆく環境のなかで、ずっと、いつも、幸せでいることは不可能なのだろうか。
    幸せでなくとも、「普通」に暮らすことは不可能なのだろうか。
    「落ちる」時期がなくてはならないのだろうか。そしてそこから再び上がることは無理なのだろうか。

     「何でうまくいかへんのやろな」
     「ぜんぶ、何でうまくいかへんのやろ」
     春也の言葉にいろいろなことを考えた。

  • 子どもの秘密めいた心の動きや罪悪感。
    人の弱さと強さ。
    よい話なんだと思うけど、個人的にはあんまり入れず。

    道尾さんにやや苦手意識があって、あんまり読んだことないんだけど
    これはそこまでグロくなかったです。
    全体的に冷たい感じでした。

  • 2012/9/14読了、直木賞受賞作ということで以前から気になっていた本、会社の図書コーナーに入荷したので読んでみた。子供の頃の様々な悩み。「なんで自分だけがこんな境遇なんだろう」、「なんで足が遅いんだろう」、「なんであの子と仲良くなれないんだろう」・・・誰しも何か悩んでいたと思う。春也が「ぜんぶ、何で上手くいかへんのやろ」という言葉がすごく心に残った。思い起こすと子供の頃にすごく悩んでいたことって、今になると何でもないようなことも多い。でもその時は答えが一つしかないような気がして苦しいんだよね。成長するに連れていろいろな経験も積んで「まぁ、何とかなるでしょ」って思えるまでが大変なんだろうと思う。登場人物の慎一、春也、鳴海が、子供の頃の苦しい思い出を乗り越えてどんな大人に成長するんだろうか。この本を読んで、自分の子供達も持っているだろう悩みを、少しでも楽にさせてあげられたらいいなと思いました。

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