月と蟹

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163295602

作品紹介・あらすじ

「ヤドカミ様に、お願いしてみようか」「叶えてくれると思うで。何でも」やり場のない心を抱えた子供たちが始めた、ヤドカリを神様に見立てるささやかな儀式。やがてねじれた祈りは大人たちに、そして少年たち自身に、不穏なハサミを振り上げる-やさしくも哀しい祈りが胸を衝く、俊英の最新長篇小説。

感想・レビュー・書評

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  • ヤドカミ様にお願いをしよう…。
    慎一と春也は一体ヤドカミ様に何を叶えて欲しいと願うのか・・・
    とにかく全体を通して暗く、夜の海を思わせるような雰囲気でした。
    思春期ならではの両親との距離感や、友達との関係性がぐらぐらしている不安定さがとてもリアルで水の中で息が出来なくなり、どうしたらいいのか分からない苦しさや切なさ、辛さを感じました。
    そんな苦しさをヤドカミ様にお願い(縋ることで)することで救われると思わないと先が見えない現実。
    でもそれは本当に救いなのか・・・ヤドカミ様は本当に願いを叶えてくれるのか・・・
    最後のシーンでは誰かが悪いというわけではないのになぜか、誰かを責めたい気持ちなりました。
    この気持ちがなんとも言えない作品です。

  • 父を亡くし、祖父と母と暮らす慎一。
    慎一の祖父のおこした事故で母を失った鳴海。
    親から暴力をふるわれている春也。

    ヤドカリあぶり。慎一と春也が始めた他愛ない、けれど残酷な遊びはいつしかヤドカリを神に見立て(ヤドカミ)、その犠牲と引き替えに願いをかける儀式へと変わり・・・
    大人の理不尽な暴力にさらされ狂気を芽生えさせる春也、母がふいに見せた女の顔に戸惑い苛立つ慎一、自分の父と慎一の母の関係に勘づく鳴海・・・鳴海への淡い初恋(のようなもの)が彼らの関係をさらに歪に変え・・・

    子供特有の残酷さ・暗さにぞわぞわとする。

  • これは、落ち込むというか沈むというか、つらい気持ちになる話でした。
    本を読んであまりこういう気分になることはないので、道尾秀介さんやっぱりすごいですね。

  • 大人でもない子供でもない
    思春期特有の
    不安定な気持ちの変化が細かく表現されとって
    夜の海みたいな
    暗い本やった

  • 子供たちが置かれた境遇の中で抱く
    様々な感情が描かれています。
    お話しは静かに重く進んでいきます。
    ヤドカミ様の儀式など
    それぞれの切実な願いが伝わってきました。

  • 第144回直木賞受賞。
    小学生の主人公が海辺の町で見つけた
    「ヤドカミ様」をめぐる物語。
    著者は少年の持つ
    拙く儚い絶望感を
    とてもうまく表現される。
    「どうしてぜんぶ、上手くいかないのだろう」と
    口にしてしまう切なさ。
    深く重く余韻が残る作品です。
    もっと年齢を重ねたら読んでみたいと思う。
    同著者「光媒体の花」は同じ年頃の少年が感じる
    「きらきらした世界」を描いており
    本作とは対極にあるが、一緒に読んでみると
    なお一層良いかと!

  • 家庭に複雑な事情を持つ2人の少年と1人の少女。
    親の恋人、家庭内暴力、初恋。
    読みやすくてページをめくる手が進んだけど、何処かパンチに欠けるというか・・・。
    気になった少年2人の友情の行方は満足な終わり方だった。

  • 暗かった。どよっとしていた。あまりにどよっとしていたので、変な夢をみてうなされた。が、嫌いではない。

  • ああ、すごい。これだけの量を書いて、無駄がなく、特別なことも起こらず、舞台は日常で、
    ヤドカリをこんなふうに登場させてヤドカミ様とし、しかしタイトルは月と蟹。

     父親の暴力に気まぐれの食事抜き。心が矢だらけになったように痛む。

     変わりゆく環境のなかで、ずっと、いつも、幸せでいることは不可能なのだろうか。
    幸せでなくとも、「普通」に暮らすことは不可能なのだろうか。
    「落ちる」時期がなくてはならないのだろうか。そしてそこから再び上がることは無理なのだろうか。

     「何でうまくいかへんのやろな」
     「ぜんぶ、何でうまくいかへんのやろ」
     春也の言葉にいろいろなことを考えた。

  • 子どもの秘密めいた心の動きや罪悪感。
    人の弱さと強さ。
    よい話なんだと思うけど、個人的にはあんまり入れず。

    道尾さんにやや苦手意識があって、あんまり読んだことないんだけど
    これはそこまでグロくなかったです。
    全体的に冷たい感じでした。

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著者プロフィール

1975年生まれ。2004年『背の眼』で「ホラーサスペンス大賞特別賞」を受賞し、作家デビュー。同年刊行の『向日葵の咲かない夏』が100万部超えのベストセラーとなる。07年『シャドウ』で「本格ミステリー大賞」、09年『カラスの親指』で「日本推理作家協会賞」、10年『龍神の雨』で「大藪春彦賞」、同年『光媒の花』で「山本周五郎賞」を受賞する。11年『月と蟹』が、史上初の5連続候補を経ての「直木賞」を受賞した。その他著書に、『鬼の跫音』『球体の蛇』『スタフ』『サーモン・キャッチャー the Novel』『満月の泥枕』『風神の手』『N』『カエルの小指』『いけない』『きこえる』等がある。

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