辛夷開花

著者 :
  • 文藝春秋
3.68
  • (1)
  • (11)
  • (7)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 49
感想 : 9
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (443ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163295701

作品紹介・あらすじ

西太后とビクトリア女王に初めて拝謁した、美貌の外交官夫人。幕臣の娘が薩摩の男に嫁ぎ、欧州外交界で活躍、明治初期を駆け抜けた一人の自立した女性の疾風怒涛の半生。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 2016.6.27

    文明開化にともなって、徳川の家臣だったお常が自分の信じた道を切り開いて行こうとするお話

    しかし政治的策略や個人の野望や世界の渦に巻き込まれ 失望し生きる意欲も無くしていく
    でも、そこでほんの一筋の光を見つけて立ち上がってゆくお常さんの芯の強さ!
    感動ものでした!

  • 明治の時代に生まれた主人公が、選ばれるべくして選ばれ、日本外交の顔となっていくのだが、女性であるが故の時代の偏見、アジア人であるが故の海外での辛苦が、主人公の凛とした強さを際立たせる。
    これほどに理想をなくさずに自分の人生を歩める人は現代にいるだろうか。まさに時代が生んだ、信念のある女性である。

  • 森有礼の最初の妻。旗本の娘が官軍の人間に嫁ぐ。彼女には大いなる野望と決意(不平等通商条約改正、日本のポジション獲得)があった。外交官夫人として夫の外交交渉を支えた。西大后・英国女王に謁見してもたじろくことなく役目を履行した。しかし夫の本質的な男尊女卑の感覚に違和感を感じ離縁する。
    英国人との恋など、どんな環境でも自分を解放していことにたじろがない女性がいたことに驚愕。また父母の深い愛情と薫陶が終生身を支え常の成長の原動力であったことも物語にふくらみを持たせている。どこぞの元外交官女性に読んでもらい、ご自身のお役目の参考にしていただきたいとひそかに願う

    今はちょうど辛夷の花盛り。辛夷をみるたびに広瀬常という女性がいたことを思い出すだろう。

  • 薩摩藩士から外交官になった森有礼の妻お常の物語。

  • 初代文部大臣・森有礼。
    福澤諭吉らと明六雑誌を起こし、英語を公用語にと唱えた人物。
    少々行きすぎの感はあるけれど、学制を整えて功績、
    国民皆学の精神は、今も評価されている。

    でも、外交官時代はどう????
    全然知らない……

    でも、夫人との契約結婚は知っている。
    本書は、その妻・広瀬常をヒロインに、明治初期の夫妻の不平等条約改正のための夫妻の努力を描く。
    結果として、その努力は報われず、夫妻も離婚をするのだけれど……
    森が文部大臣として活躍するのはその後のこと。
    もちろん、夫の陰で、外交努力を惜しまなかった妻の存在など全く知らなかった。
    女子教育が良妻賢母へと突き進んでいく以前の、自由な本当の意味での女子教育を受けた女性だったのだろう。

    広瀬常といえば、美貌で知られ、失恋したお雇い外国人ライマンが「一生妻を娶らない」と言わしめた女性だ。
    しかも、旗本の娘……

    黒田清隆夫人・清や大山巌夫人・捨松のように、この時代、いわゆる官軍と敗者の令嬢との結婚はよくあることだったのだろうか。
    物語の中で、「薩摩の男と踏み台にして駆け上がって見せる」そんな気持ちがあったのかもしれない。
    そういえば、捨松は津田梅子と共にアメリカへ渡った少女の一人であることも面白い。

    小説としては、意外と知られていない、でも、物語としては確実に絵になるヒロインを据えたこと、その材料選びがうまい。
    そこに勝者である薩摩藩士の森の不器用さとズルさを掛け合わせたことが絶妙だと思う。

    個人的には、佐幕派の私。
    父の友人である老・幕臣の薩摩批判に、よくぞおっしゃってくださったと快哉を叫んだ。

  • 女性のしなやかさや、粘り強さには同性としても凄いと思わせられる所が多々ある。当時の日本はまだまだ男社会であっただろうし、女性がいまほど生き易い環境で無かった筈。
    その中でも、自分を持ち力強く生き抜くという美しさを感じた作品。

  • 読んでいてすごく戦闘的になった。
    ウィキペディアで常さんを引いたが載っていなかった。
    こぶしの実を見てみたいと思う。

全9件中 1 - 9件を表示

著者プロフィール

静岡県生まれ。東京女子大学卒業。2003年『桑港にて』で歴史文学賞、09年『群青 日本海軍の礎を築いた男』で新田次郎文学賞、『彫残二人』で中山義秀賞。著書に『帝国ホテル建築物語』『万事オーライ』等。

「2023年 『羊子と玲 鴨居姉弟の光と影』 で使われていた紹介文から引用しています。」

植松三十里の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×