田舎の紳士服店のモデルの妻

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 145
  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163297101

作品紹介・あらすじ

田舎行きに戸惑い、夫とすれ違い、子育てに迷い、恋に胸騒がせる。じんわりと胸にしみてゆく、愛おしい「普通の私」の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 過去2作しか読んだことないけれど、この作家さんとは微妙に会わないのかもと思っていた。
    だが、この本を読んでひっくり返った!あまりにも共感する部分が多すぎて、読み終わるのが惜しいほど。
    細やかな心の機微も手に取るように分かり、これほどまでに主人公の気持ちにシンクロした事がかつてあっただろうか。

    主人公の梨々子はうつ病の夫とともに夫の実家に移り住むわけだが、その都落ちの気持ちも痛いほど分かる。
    私自身も状況は違うが似たような都落ち(笑)の経験があるので、梨々子の心もとないような情けないような気持ちは手に取るように分かった。

    自分の居場所はここではないと思いながら過ごす梨々子が年月を経て、次第に背伸びすることをやめ自分自身を穏やかに見つめる姿が丁寧に描かれている。
    何年も経て、子供に話しかける際にとっさに方言が出た場面にはグッと来たな~。

    梨々子がやけに良い子ちゃんだったり、のん気に専業主婦をしているのはなんだかな~とは思う。それに元アイドルとの純愛ごっこもつっこみどころ満載だけど、それはそれでご愛敬。物語の良いスパイスになっていると思う。

    転勤族の主婦の皆さん、子育てに行き詰っているママさん、田舎で腐っているそこのあなた、そんな人たちに是非読んでほしい。
    珠玉の作品です!!

    • まろんさん
      私もこの本、「うんうん!」と頷きすぎて、首が痛くなるかと思うくらい
      共感できる言葉がいっぱいありました。
      引用しようと思ったところがありすぎ...
      私もこの本、「うんうん!」と頷きすぎて、首が痛くなるかと思うくらい
      共感できる言葉がいっぱいありました。
      引用しようと思ったところがありすぎて、本にはさむ栞が足りなくなったほど!
      周りで読んでいる人がほとんどいなかったんですけれど、
      vilureefさんが読んでくださって、しかも珠玉の作品と言ってくださって
      とてもうれしいです!
      2013/02/22
    • vilureefさん
      まろんさん、コメントありがとうございます!

      そうなんですよね。
      もうセリフがどんびしゃで心にずんずん響いてくるというか、代弁してくれるとい...
      まろんさん、コメントありがとうございます!

      そうなんですよね。
      もうセリフがどんびしゃで心にずんずん響いてくるというか、代弁してくれるというか・・・。

      なぜかブクログでもレビューも少ないし、評価も微妙・・・。
      やっぱり読者を選ぶんですかね~。
      確かに私が子を持つ前にこの作品読んでも途中で投げ出してたかもしれませんが(^_^;)
      でもだからこそ妻の気持ちの分からない夫たちにも読んでほしいですよね☆
      2013/02/23
  • 主人公梨々子が、夫の鬱病を機に、
    夫の実家のある田舎に引っ越してからの10年を
    2年ごとのエピソードで辿っていく物語。

    引っ越しの際に贈られた10年日記のページが各章の扉絵になっていて、
    10章では一番下の行になっているのが
    梨々子の10年を追ってきた読者の感慨を誘います。

    東京で、「いい幼稚園」のママ友仲間の価値観から外れない暮らしこそが
    何よりの幸せの基準だと信じていた梨々子が
    どこにいたって人はひとりなのだ、と悟った上で

    人生は持ち時間が尽きるまで編み物をするようなもの。
    人と交わることで編みかけのセーターの模様が少しずつ変わってきている

    と、10年かけて踏み出す一歩が清々しい。

    親が子どもに与える影響の大小や、
    夫婦として「わかり合う」ことへの固執などについての
    梨々子の(というか、著者宮下奈都さんの)独白に
    とても腑に落ちるものが多く、深く共感しました。

  • 都会だとか田舎だとか関係なく
    環境が変わるということは大変なことだ。
    夫が病気で、小さな子どもがいて、ではなおのこと。
    でも夫の鬱はわかりにくかった。
    引っ越す原因になるまでのものなのに
    聞いているからそうだと知っているだけ、という感じだった。

    夫の梨々子への感情表現は本当にわかりにくい。
    紳士服店の人がアサヒへ話したというくだりで
    そうなのか・・・と思えたぐらい。
    だから梨々子の気持ちにとても寄り添うことができた。
    ラストの梨々子へ伝わった言葉もわたしには響いてこなかった。
    逆にいきなりな気がした。
    (梨々子に伝わったからいいけれど)

    梨々子とアサヒがいっしょにいる雰囲気がよかった。
    これは不倫になるのかな。
    それらしくなくて、そういうことをまったく考えなかった。
    もうどうしようもなくなっていた梨々子にわたしの気持ちは重なっていた。
    だからかもしれないし、
    ふたりから漂う空気があまりに純粋だったからかもしれない。

    梨々子の感情の変化の描き方が素晴らしかった。
    夫、子ども、おかあさんたち、お義母さんに自分の母親。
    その間にある梨々子の気持ちはだれかから聞いているかのようだった。

    • まろんさん
      「他人から幸せいっぱいに見えること」が何より大事だった梨々子が
      「幸せのかたちを自分で選ぶこと」へとゆっくりゆっくり
      軸足を移していく感じが...
      「他人から幸せいっぱいに見えること」が何より大事だった梨々子が
      「幸せのかたちを自分で選ぶこと」へとゆっくりゆっくり
      軸足を移していく感じがよかったですよね!
      そうなのよ!と大きく頷きたくなる言葉があまりに多くて
      引用に書き込む文章選びに頭を悩ませた本でした。
      2013/03/03
    • macamiさん
      ☆まろんさん
      まろんさんのコメントに「そうなのよ!」と
      大きく頷いたわたしです。
      いつもお上手ですよね・・・・・
      まろんさんのコメン...
      ☆まろんさん
      まろんさんのコメントに「そうなのよ!」と
      大きく頷いたわたしです。
      いつもお上手ですよね・・・・・
      まろんさんのコメントが素晴らしすぎて
      言葉がありません。笑
      2013/03/04
  • 会社を辞めた夫と田舎に移り住んだ専業主婦の10年。
    宮下さんならではの丁寧な筆致で、こまやかに、淡々と描かれます。
    宮下さんの作品では辛口なので、これが気に入らなくても~ほかもお試しを!

    梨々子は結婚して4年。
    夫の竜胆達郎は営業部のホープで、付き合って2年半で結婚にこぎつけ、潤と歩人という二人の男の子にも恵まれた。
    歩人はよく泣く赤ちゃんで、子育ては大変だが。
    幼稚園のバザーに何を着ていくかで頭がいっぱいの日、夫に会社を辞めると告げられる。
    夫がうつだと初めて知った梨々子。
    東京にずっと住むと信じて疑わなかったのに~一気に運命は暗転!?

    夫の父は小さな工場を経営しているため、落ち着けばそこで働ける。
    リハビリと思えばいいと実家の母。
    幼稚園の母友達には、10年日記を餞別に渡され、これからはお茶もできないけど、不満はここに吐き出せばいいと言われるのでした。
    都落ちの身と憐れまれた気がする梨々子。

    夫の郷里は北陸で一番目立たない県?(おそらく作者の出身地の福井)の県庁所在地。田舎というほど自然が豊かというのでもない。
    小さな不満や葛藤を抱えつつ家事をこなし、自分もちょっときれいなだけ(!)で取り柄はないと自覚する梨々子。
    とくに善良な人柄ではないけれど、悪い人ってほどでもない。リアルさを出すためなのか、いい子ぶらない冷静な書きっぷりは、共感もてない人もいるでしょうねー。

    夫は地元の紳士服店でチラシ写真のモデルを頼まれ、ちょっと嬉しそう。
    「なんだ、うつでも嬉しいのね」と思う梨々子。
    夫との間のことは詳しく書かれてはいないけれど、この時期でも会話は少なかったのか? 結婚の現実が垣間見えるような。

    苦しさが募った頃、若い頃に憧れたグループのメンバーに偶然出会い、会うようになる。
    たまにお茶を飲むぐらいの付き合いだけど、元気を取り戻していきます。
    深い付き合いに踏み出しかけたとき‥?

    上の子・潤は素直で出来は悪くないのだが、小学校があまり面白くないらしいと知って衝撃を受ける。
    それに、発達障害という言葉は出ないけれど、歩人はどうやら問題児。
    何かと先生に呼び出されることに。
    子供達が小さい頃に、梨々子が地元になじめず夫に不満を抱いていたことも、ほんの少しは影響していたのかも?
    でも梨々子は、母親としては肝が据わっていて、そう悪くない感じ。
    歩人が連れてきた友達の様子がおかしいのを、あたたかく受け入れることができるのだから。
    子育て中の孤立感や夫との微妙な関係は、結婚して数年以上たった女性ならかなり共感できそう。

    人はみな一人なんだと自覚したことから、かえって楽になるのです。
    しだいに、地元にもなじんでいきます。
    マンションの隣室の住人で、笑顔になることが少ない原田さんに、病院のボランティアをやらないかと誘われる。
    「主役やりたい人は家にいたらつらいやろ」とは、かなり痛烈な言葉だが。
    若ければそれだけでめげそう?
    いろいろ乗り越えた梨々子は、ちゃんと役に立つ人間になっていたのだ。
    少しずつ人と関わって、少しずつ人生を編み上げていく。
    笑いが増えた家庭に、ほっとする読み終わり。

  • 割合好きな作家さん、そしてちょっと面白そうなタイトル。なんだかのんびりした感じなのかな、と読んでみたら全然予想と違っていた。
    全体的にぼんやりしている。時間の経過ぎ早い。
    多分、自分が主人公の立場と全く違うからうまく想像出来なかったんだろうな。子供どころか結婚をしていないから、なんだか悩みの全てが贅沢に思えた。
    時間をかけて、自分にとっての幸せを考える、考え続ける穏やかな物語。最後、かつて東京にいた頃は心通う仲ではなかった主婦の友人と初めて本音で語り合い、何もない田舎だけどおいでよ、と声をかける場面が一番好き。

  • 幸せな結婚をして子供を設けたら「あがり」だと思っている人にぴしゃりと冷水をかける一冊。あかの他人が一緒に人生を歩むっていうのは並大抵じゃない。でも、たくさんのひとたちがその並大抵じゃない日常を生きている。「思ってた事と違ーう!」by笑い飯 本当に人生は思ってた事と違うことだらけだ。人生をひとさまを見くびるな、それは自分をみくびることだ。10年越しの、かつてのママ友への「遊びにこない?」の一言に込められた万感を思う。何度も読みたい。

  • 確かに、田舎の、紳士服店のモデルの、妻の話だった。
    東京生まれ東京育ちだと夫の田舎に引っ越すというのは惨めな気持ちなんだろうか? 近所付き合いとか大変だと思うけど、都会で張り合って生活するよりはマシだと思うけど。
    梨々子は、自分の存在価値がはっきりしないことに焦っているような感じがした。アサヒとの出会いはそれが救われたのかも。お茶を飲むくらいいいじゃないか、と思ってしまうけど、田舎だとそうは理解してもらえないかもしれないな。

  • ただの田舎暮しの日常。
    なにが起こるわけでもなく、
    平凡な毎日を描いた作品。

    つまらなすぎて全然進まない。
    まだ途中ですが、読むのをやめたいくらい。

    頑張って最後まで読めば、何か面白い出来事でも待ってるんでしょうか。

    でも意外と評価いいんですね。
    私にはハマりませんでした。

  • 東京から夫の故郷に移り住むことになった梨々子。田舎行きに戸惑い、夫とすれ違い、一時の恋に胸を騒がせ、変わってゆく子供たちの成長に驚き…。
    30歳から40歳、“何者でもない”等身大の女性の10年間を2年刻みで描く、じんわりと胸にしみてゆく愛おしい“普通の私”の物語。

    若い頃は自分自身に希望を持っていて、“何者か”になることを望んだりする。
    有名人になることだったり、何かで名誉を得ることだったり、高いステイタスを持つ人間の妻に収まることだったり。
    そこら辺にいる人間と自分は違うはずだ。私は“何者か”になるべき人間なのだ。という、思い込みを持って生きていたりする。
    だけど現実は、“何者でもない”人間に収まることがほとんどで、何者でもない自分に、徐々に折り合いをつけていく。

    この小説の主人公・梨々子もそうで、東京に住み、普通より美人で、エリートサラリーマンである竜胆達郎の妻の座に収まり、子どもを2人得て、まさに順風満帆の人生を歩んでいた。
    だけど夫の達郎がうつ病になり、仕事を辞めて郷里の北陸に帰ると言い出したことで人生が一変する。
    生まれも育ちも東京である梨々子には、人と人の距離感が近い田舎での暮らしは慣れないことばかりで、そこで家庭を営むことやなかなか元に戻らない夫に不満を覚え、いつかまた東京に戻りたいという希望を当初は抱く。
    だけど日々をそこで暮らし続けることで、意識が徐々に変化していく。

    田舎で暮らすということは田舎で暮らしたことがある人にしか分からない感覚があると思うけど、世間が狭いから人間関係は自然と密になるし、都会と比べて視野が狭い人が多いのも事実だと思う。
    何が幸せかは人それぞれだけど、“何者か”になりたいと強く望む人が居続けるのは、きっと耐えられない。
    そんな中で少しずつ自分にとっての幸せを確認し歳を重ねていく梨々子の姿はとてもリアル。単純に善い人じゃなくて、愚痴っぽかったり他人に対して黒いことを思ったり、失敗も多々あるところがさらにリアルだった。
    著者の宮下さんは福井県出身のはずなので、もしかしたら土地のモデルは著者の地元なのかもしれない。

    東京であんなに格好良かった夫の達郎が、地元に戻ってから小さな紳士服店のチラシのモデルを務め始めた。
    そんなダサいこと嫌だ。と、最初は思っていた梨々子だったけど最後には…。
    その土地に10年住んで受け入れてしまえば、その人も立派な地元人だ。

    “何者でもない自分”を受け入れていくということは、けして諦めることではなくて、自分なりの幸せを見つけて育んでいくことなのだと思う。
    結婚や出産を、するしないに関わらず。
    30歳から40歳までの女性のリアルが、ここには詰まっている。

  • 「どこにでもいる」「ふつうの」主婦の話だという。たしかに大事件も起こらないし、日々をたんたんと過ごしているのだけれど、その中には嬉しい日もあるし、悲しい日もある。希望も絶望もある。宮下さんだからこそ書ける話だと思う。完成図のわからない編み物を続けるだけの人生、自分を必要としている限られた何人かのためだけの人生。それっていけないことだろうか?むしろそれが本質なのでは?女性の持つつよさも感じられる、私は好きな小説でした。

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著者プロフィール

宮下 奈都(みやした なつ)
1967年福井県生まれ。上智大学卒業。2004年、「静かな雨」で文學界新人賞に入選し、デビュー。日常に起こる感情の揺れを繊細で瑞々しい筆致で描きだす作品で知られる。『スコーレNO.4』が書店員から熱烈な支持を集め、注目を浴びる。代表作に、2016年本屋大賞、ブランチブックアワード2015大賞、「キノベス!2016」などを受賞した『羊と鋼の森』があり、2018年6月映画化。『静かな雨』が2020年新春映画化が決まり、2019年6月6日文庫化される。ほか、福井からトムラウシに移り住んでいた頃の日々を描いた『神さまたちの遊ぶ庭』や、福井での身辺雑記や本屋大賞受賞前後のエピソードなどを描いた『緑の庭で寝ころんで』がある。

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