心はあなたのもとに

著者 :
  • 文藝春秋
3.50
  • (37)
  • (68)
  • (63)
  • (32)
  • (4)
本棚登録 : 599
感想 : 107
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163300009

作品紹介・あらすじ

どんなに愛していても、ずっと一緒にいることはできない。だから、心は…投資組合を経営する「わたし」が出逢った、風俗嬢サクラ。彼女とのメール交換から、すべてが始まった-。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 『文学界』に連載していた当時、図書館でいつも読んでしまうのが、この小説だった。
    読んでいたのは毎号ではなくたまにだったので、金持ちのオジサンが若くてきれいだけど病弱な風俗嬢と付き合う話、という程度に思っていたのだが、あらためて通して読んでみて、だいぶ印象が変わった。

    村上龍お得意の、お金を持っている人特有っぽい意識とか、風俗や料理や旅行やビジネスや、その他贅沢なお金の使い方についてのうんざりするような描写がやまほどあって、それが全体的になんだかゴージャスで中年オヤジな印象になっているのだけど。

    病状の推移について著者がどれほど勉強し、何を参考に想像して書いたのかは分からないが、病状が良くなったり悪くなったりし、その都度精神状態が上下し、だんだんと状況がかんばしくなくなっていく様子の描写を読んでいると、これは本当にあったことなんじゃないのか、という気持ちになってくる。

    不倫だとか風俗嬢だとかはオマケのようなもので、これは小説という形式をとったⅠ型糖尿病の闘病記、と私には読めました。闘病記として、引きこまれるように読んでしまった。

  • 心がギューっとなった。不安だったり、幸福だったり、それは誰にも分からなくて自分でもコントロールが難しい。
    心の奥にある物を覗かれたような気分になった。

    何年後かにきっともう一度読むと思う。

    (2011.5読了)

  • 成功しているファンドマネージャー西崎が主人公で、家族もあり、愛人もたくさんいる。

    一番のお気に入りの愛人香奈子は、1型糖尿病を患うデリヘルで働くバツイチの女。

    いつもの龍さんらしくなくまるで彼は恋をしてるんじゃないか??って感じ@@!

    (そう思わせるほどというのはある意味すごいことなのかも。)

    彼の小説の破壊的、暴力的な部分が嫌いじゃない私としては

    ちょっとした違和感があったけど彼の思考とか、文体とかすきだし、経済の話も風俗の話も大好物なのであっという間に楽しく読み進めた。



    印象に残った言葉。


    ◎人生でもっとも大事なことは、殺されないこと、つまり死なないことで、二番目が楽しむこと、そして三番目に世界を知ること


    ◎自分にとってどんなに大切な人でも,非常に重要でしかも自分が関与できないその人固有の現実があり,その人が大切であればあるほど,自分はその現実を受け入れなければならないという理解が,他人という概念を育てる。他人という概念を持っていない人間は、愛されているという実感を持つことができない。




    ◎丁寧になれる何かをつかんでいる人は具体的に努力できる,その何かと出会えれば,目標がどんなに遠くても,近づくように少しずつ努力できる


    ◎人生には目標が必要で,自立すること,一人でも生きられるようになることが,結果的に大切な人を救う

    • aida0723さん
      『いつもの龍さんらしくなくなるまで彼は恋してるんじゃないか』
      同感です。
      『いつもの龍さんらしくなくなるまで彼は恋してるんじゃないか』
      同感です。
      2015/02/18
  • 文章は確かに巧い。
    最後までさらりと読ませてくれた。
    でも、内容がね・・・。
    金持ちの勘違い男が 風俗嬢を好きになって付き合うのだけれど(不倫)複数の女性とも関係を持ち続けることに何ら違和感を持たないどころか、当然だと思っている。
    風俗嬢は体の不調から銀座のホステスに転進するが、生活費はすべて男にせびっている。
    二人の関係性がそもそも 違和感だらけで全く別世界の話、という感じ。
    自暴自棄的な生活としか思えない。もう少し堅実な生き方をすればまた違った未来が開けていたのではないか?
    メールの最後にとってつけたような言葉がそのままタイトルになるとは思いもしなかった。(何かひねりがあるのだと思っていたから)
    作中にやたらと母親や父親との関係について意味深な言い回しをしている部分があって、ケンジには何かトラウマみたいなことがあるのだろうか?とか思っていたけれど、それももやもやしたままだったし、
    最後までなんのどんでん返しもなく、想像通りの結末に、読み終えたときは脱力感が残った。

    主人公の男は最後までエゴイストだった。
    でも、世の男性はケンジのような人生を送りたいと思っているんだろうな。

    相手の気持ちを真剣に読み取ろうという気持ちはとても大切だと思うけれど、ケンジのように、かけひきして相手の反応を見る、という恋愛のやり方には、反感を覚える。

  • 最近の村上龍が持っている、なんというか悲しみの中にも「人生への肯定感」を感じる作品のひとつ。人を助ける、ということに真剣な(最近の)村上龍に好感度大。

    本作は、著者自らが自身の短編としては最高傑作と称する「空港にて」が下敷きとなっている。
    この比較は愚劣だが、売れ行きにおいて劣る「空港にて」はしかししの読後感において勝る、とまあ言い切ってしまいますか、個人的感想としては。

  • かなり長い小説だが、素晴らしい大人のラブストーリーだ。
    流れて行くストーリーの中で挟み込まれる人生観、恋愛観、女性観、男性観がいちいち納得と共感と発見を呼んで、中々先に進めない。
    読んで良かった。

  • 久しぶりに龍さんの本を読んだ。昔は荒々しかった龍さんも、こんな本を書くようになったんだ。
    龍さんも、大切な人を亡くす経験をした事があるのかな。
    何年たっても喪失感や精神的な傷は消える事はなく、隠して忘れたくなるけど、心をふさいで時間の経過とともに負の感情は去って行った。
    最後のページに、表紙のベンチが出てきてちょっと泣きそうになった。
    どんなに大切な人でも、ずっと一緒にいる事はできないから「心はあなたのもとに」

  • この忙しいときに、逃避するように恋愛小説にのめりこんでしまいました。
    後半はほぼ義務感で読んでいた。

    結局は不倫の話で、何の参考にもならないのだけれど、
    相手と一緒にいられない時に送るメールに「心はあなたのもとに」と添える可愛げはいいなぁと思った。

  • おっさんが書いた恋愛小説だけど、付箋貼ってマーカー引きたいとこだらけで困った。全編たんぶりたい。

  • 今まで「××だから○○だろう、それが××というものだ」だったのに「だが違った」が付いてる!
    それが興味深くて、心に触れる何かがある
    こんなでホントに本気なの?とも
    歳を取ってから人を愛するってこういうことなのかなとも思う

    この本好きです
    ただ今の私は病気ではないけど似たような状況にあって
    読むのが辛かった
    愛する人の死は辛くて乗り越えられそうにないよ
    その時が来るのが怖い
    でも「心はあなたのもとに」って伝えよう、伝えなきゃ

全107件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

村上龍の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×