- Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163300009
作品紹介・あらすじ
どんなに愛していても、ずっと一緒にいることはできない。だから、心は…投資組合を経営する「わたし」が出逢った、風俗嬢サクラ。彼女とのメール交換から、すべてが始まった-。
感想・レビュー・書評
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『文学界』に連載していた当時、図書館でいつも読んでしまうのが、この小説だった。
読んでいたのは毎号ではなくたまにだったので、金持ちのオジサンが若くてきれいだけど病弱な風俗嬢と付き合う話、という程度に思っていたのだが、あらためて通して読んでみて、だいぶ印象が変わった。
村上龍お得意の、お金を持っている人特有っぽい意識とか、風俗や料理や旅行やビジネスや、その他贅沢なお金の使い方についてのうんざりするような描写がやまほどあって、それが全体的になんだかゴージャスで中年オヤジな印象になっているのだけど。
病状の推移について著者がどれほど勉強し、何を参考に想像して書いたのかは分からないが、病状が良くなったり悪くなったりし、その都度精神状態が上下し、だんだんと状況がかんばしくなくなっていく様子の描写を読んでいると、これは本当にあったことなんじゃないのか、という気持ちになってくる。
不倫だとか風俗嬢だとかはオマケのようなもので、これは小説という形式をとったⅠ型糖尿病の闘病記、と私には読めました。闘病記として、引きこまれるように読んでしまった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
心がギューっとなった。不安だったり、幸福だったり、それは誰にも分からなくて自分でもコントロールが難しい。
心の奥にある物を覗かれたような気分になった。
何年後かにきっともう一度読むと思う。
(2011.5読了) -
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2015/02/18
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文章は確かに巧い。
最後までさらりと読ませてくれた。
でも、内容がね・・・。
金持ちの勘違い男が 風俗嬢を好きになって付き合うのだけれど(不倫)複数の女性とも関係を持ち続けることに何ら違和感を持たないどころか、当然だと思っている。
風俗嬢は体の不調から銀座のホステスに転進するが、生活費はすべて男にせびっている。
二人の関係性がそもそも 違和感だらけで全く別世界の話、という感じ。
自暴自棄的な生活としか思えない。もう少し堅実な生き方をすればまた違った未来が開けていたのではないか?
メールの最後にとってつけたような言葉がそのままタイトルになるとは思いもしなかった。(何かひねりがあるのだと思っていたから)
作中にやたらと母親や父親との関係について意味深な言い回しをしている部分があって、ケンジには何かトラウマみたいなことがあるのだろうか?とか思っていたけれど、それももやもやしたままだったし、
最後までなんのどんでん返しもなく、想像通りの結末に、読み終えたときは脱力感が残った。
主人公の男は最後までエゴイストだった。
でも、世の男性はケンジのような人生を送りたいと思っているんだろうな。
相手の気持ちを真剣に読み取ろうという気持ちはとても大切だと思うけれど、ケンジのように、かけひきして相手の反応を見る、という恋愛のやり方には、反感を覚える。 -
最近の村上龍が持っている、なんというか悲しみの中にも「人生への肯定感」を感じる作品のひとつ。人を助ける、ということに真剣な(最近の)村上龍に好感度大。
本作は、著者自らが自身の短編としては最高傑作と称する「空港にて」が下敷きとなっている。
この比較は愚劣だが、売れ行きにおいて劣る「空港にて」はしかししの読後感において勝る、とまあ言い切ってしまいますか、個人的感想としては。 -
かなり長い小説だが、素晴らしい大人のラブストーリーだ。
流れて行くストーリーの中で挟み込まれる人生観、恋愛観、女性観、男性観がいちいち納得と共感と発見を呼んで、中々先に進めない。
読んで良かった。 -
久しぶりに龍さんの本を読んだ。昔は荒々しかった龍さんも、こんな本を書くようになったんだ。
龍さんも、大切な人を亡くす経験をした事があるのかな。
何年たっても喪失感や精神的な傷は消える事はなく、隠して忘れたくなるけど、心をふさいで時間の経過とともに負の感情は去って行った。
最後のページに、表紙のベンチが出てきてちょっと泣きそうになった。
どんなに大切な人でも、ずっと一緒にいる事はできないから「心はあなたのもとに」 -
この忙しいときに、逃避するように恋愛小説にのめりこんでしまいました。
後半はほぼ義務感で読んでいた。
結局は不倫の話で、何の参考にもならないのだけれど、
相手と一緒にいられない時に送るメールに「心はあなたのもとに」と添える可愛げはいいなぁと思った。 -
おっさんが書いた恋愛小説だけど、付箋貼ってマーカー引きたいとこだらけで困った。全編たんぶりたい。