リリー・マルレーンを聴いたことがありますか 新装版

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163420905

作品紹介・あらすじ

第二次大戦下にドイツ軍兵士が熱烈に愛した歌があった。やがてその歌を戦線を越えてアメリカ兵やイギリス兵もくちずさむようになった。それから30年の歳月が流れ、私はその歌リリー・マルレーンにめぐりあった。

感想・レビュー・書評

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  • どこで入手したかもう忘れてしまったけれど、ずっと本棚に置き去りにされていた一冊。手に取ったことはあったはずだけれど、最後まで読むに至らなかった。知らない人、知らない歌、自分が生まれる前の戦争の話に怖気付いていたのかもしれない。

    予想もつかないところでマレーネの名前に出会い、この本の事を思い出させてもらえた幸運に感謝。
    この歌が辿った運命はドラマティックだったかもしれないけれど、きっとこんな風に歌い継がれた歌は時代ごとに他にもあるのだろう。
    第一次大戦時、ドイツが作った『イギリスをやっつけろ』という歌をイギリス兵がよく歌ったということについて、「ドイツ人には、このようなイギリス式のユーモアはわからない」とあったのが印象的だった。Yankee Doodleと一緒だ!
    効率の良い取材の記録などではなく、半ば体当たりのように歌の足跡を追いかける筆者の文章からは、知らなかった世界が浮かび上がってきてちょっと辛い。大抵の義務教育における授業に、なぜかあまりきちんと登場しない東ヨーロッパの国々のこと。戦争の真っ最中だった時代の庶民の生活や兵士たちの置かれた環境。そして簡単に消えるわけもないその傷跡。

    一方でそうした歴史に折り合いをつけている逞しい庶民の暮らしぶりや、日本では想像もつかないような発想が生き生きと描かれて楽しくもなる。

    2021年の今からすれば、この本が書かれたこと自体がもう50年近く前のこと。
    変化のスピードには加速度がついて、既にここに描かれているような様子ではないんだろうな。

    戦争とは関係なく生き残った歌もたくさんあるだろうけれど、やはり非常事態ほど歌に救いを求める状況が生まれやすいのも事実。
    こんなに多くの人がこの歌を覚えていたんだ、ということが切ない。

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著者プロフィール

1953年東京都生まれ。1975年、武蔵野美術大学大学院造形研究科デザイン専攻修了。建築雑誌編集部勤務を経て、1978年、建築・都市ワークショップ設立共同主宰、神戸芸術工科大学教授(2000〜2013)、武蔵野美術大学造形学部建築学科教授(2014〜2023)。博士(工学、東京理科大学、2022)。

〈主な業績〉
「くまもとアートポリス」コミッショナー事務局運営(八束はじめディレクター・建築都市ワークショップ、1992〜2004)、「国際花と緑の博覧会・大阪フォリー」建築家コーディネーション事務局運営(1990)、「せんだいメディアテーク」プロジェクト検討委員会委員・プロジェクトチーム、バリアフリー環境デザイン(1996〜2001)
〈主な著作〉
『ビデオ ル・コルビュジエ』、『ビデオ シャルロット・ペリアン』J・バルサック監督作品、日本語版制作。翻訳監修・多木浩二。制作、建築・都市ワークショップ、1998年。テレスコープ/TELESCOPE誌、編集、建築・都市ワークショップ、1987〜1995年。『4+1/2: The Internal Landscapes of Tokyo』「Today's JAPAN展」 建築展カタログ、編著、Harbour front Centre, トロント、カナダ、1995年。Do Android Crows Fly Over the Skies of An Electronic Tokyo? Architectural Association Publications ロンドン、英国、2000年。『インタラクション・デザイン・ノート』神戸芸術工科大学大学院、2003年。Archilab-Japan 2006 Nested in the City、編著、HYX刊、オルレアン、フランス、2003年。『建築教室の教科書 子どもとあそぶ家づくり』建築・都市ワークショップ刊、2007年。『つくる図書館をつくる─伊東豊雄と多摩美術大学の実験』編著、鹿島出版会刊、2007年。
〈主な論文〉
「ル・コルビュジエのモデュロールに描かれた身体図像に関する研究(その1〜その2)」日本建築学会計画系論文集。東京理科大学学位論文「ル・コルビュジエのモデュロールに描かれた身体図像に関する研究」2022年。

「2024年 『ル・コルビュジエの身体図像』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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