- 本 ・本
- / ISBN・EAN: 9784163457406
作品紹介・あらすじ
ビアズリーの、乱歩のの挿し絵を画いた竹中英太郎、ベックリンの、生涯を描きつづけた高島野十郎-。テレビ界の鬼才が、数々の絵との出逢いと、を綾糸のように織りなした妖かしの世界。
感想・レビュー・書評
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父の世代の教養主義を、
いかがわしいとかイヤラシイと感じることがある。
この人はそのど真ん中を生きた人らしい。
けれど文章はわかりやすく飾りがなく、
好みが終始一貫しているからか潔い。
誰でも思い出せばこっぱずかしい青春時代の流行り、憧れを
多かれ少なかれ老人になるまで引きずっているのかもしれないし、
それを時代っていうんだろう。
挿絵画家の話は非常に面白かったが、
最後、今時の若者は怖いものを知らないから明るく不幸的な話。
あれは残念。
怖いものは自分だというのに、
表面的なことだけ見て怖いもんがないなんて。
ああ、怖い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今、人気の中野京子さんの『怖い絵』シリーズ。
だが久世光彦はすでに遡る事20年前に同名の作品を書き上げていた。
しかも、かなり近似値で、かつ個人的な一冊を。
面白いのは同じ作品が両方の収められていることだ。
失礼ながら中野さんはこの本を読んで着想を得られたのではないかと邪推してしまいたくなるが、どちらかというと「怖い」と感じる作品を選んでゆけば同じ作品にたどり着いてしまったということだろう。
「怖い」のは疚しさを言い当てられるからだ。
うっすらと気づいているものの、認めがたく目を背けていることを見ず知らずの画家に「絵」という形で白日の下に曝されてしまい、愕然とする。
自分がずっと隠していたことを暴かれてしまってどうしようもなくなってしまう。
そんな絵が世界の各地に散らばっている。
中野さんは文化史家の視点で絵の真実にたどり着き、
久世さんは演出家の視線でその真意に気付いたのだろう。
「卑怯」や「狡さ」、「怠惰」を書かせればだれも勝てないであろう久世光彦の筆が冴え渡る。
それにしても自分の弱さと女々しさ、狡さをここまで曝すことのできる作家はそうは居ない。
自分自身を演出して煙に巻いてしまう男、久世光彦。
誰より「怖い」男である。
著者プロフィール
久世光彦の作品





