- 本 ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163477107
感想・レビュー・書評
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安倍政権になり、近隣諸国との歴史認識の違いをネタにしたニュースが増えている。本書は1993年に出版されたものであるが、人文・社会科学の分野で高い学識を持たれてい小室氏が「天皇」をどのように捉えているのか興味がわいて読んでみた。
本書は全8章からなるが、最初の6章では天皇を理解する伏線としてユダヤ教、キリスト教、仏教について詳細に特徴が論じられており、天皇の話は出てこない。残りの2章でようやく天皇について論旨の展開が始まるが、幕末に「崎門の学」に端を発する尊王思想が高まったところで本書は終わる。
近代以降の天皇に関する著者の見解を期待して本書を読んだ人は他にもいると思うが、おそらく自分と同じように「肩すかし」をくらったように感じたのではないだろうか。
実は本書の序文に『(皇太子殿下の)御成婚記念にとしたい希望により急いだため、崎門の学の展開過程についての「詳論」は次回にまわさざるを得なかった。乞御了承。』との断りがある。天皇に関する論述の少ない本書が御成婚記念にふさわしのか、やや疑問ではあるが、諸般の事情があったようだ。
よって、本書は天皇論としてではなく、宗教論として読む方が適切であろう。小室氏は2000年に「日本人のための宗教原論」を執筆しているが、おそらく本書がその原型になっていると思われる。
では、天皇に関する論述を期待していた人はどうすればよいか?そのような方には2005年にワック出版から出版された「日本国民に告ぐ~誇りなき国家は滅亡する」をお薦めしたい。第4章に幕末以降の天皇の位置づけについて詳細な解説がある。また、この本では天皇論だけでなく、歴史認識問題を含め、現代日本の諸問題の本質が指摘されている。こちらはタイトル通りの憂国の書である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、仏教と儒教、この違いを比較分析しながら、日本における天皇の歴史的位置付けを解説してくれる。各宗教の救済の対象が個人と集団(国家)と異なる点や、神や天皇の位置付けを予定説と因果律で説明してくれる点が興味深い。
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奇跡の有無を論じる前に 140818
知識の宝庫としては面白い内容だと思う
しかし奇跡に対して短絡的で傲慢すぎるのではないか
例えば
わたしの無知な領域を利用しただけの
奇跡だと考えれば
どんな奇跡だろうが答えを見つけるまで
保留しておく意外にないだろう
もしもキリスト教やユダヤ教が
この程度のトリックで相手を依存させて
信者を募らなかばならないのだとすれば
その依存心以上に大自然の真理に足る内容の無さを
自ら暴露しているようなものであって
その事の方が余程底が浅く学ぶに値しないと思うのだけれど
例えば日食を計算出来ない社会に対してのみ有効な予言をしたり
その日食の瞬間を奇跡に見せ掛ける如くのことである
自分の無知を棚に上げて非科学的だと奇跡の具体的な現象を
否定出来るだけの証明もできずに
NOと言える無知さのほうが恥ずかしい
知らないことやわからないことは差し当たって
ペンディングにしておくべきなのだと思う
自分を知るために自分が理解も納得もできないままに
知っている気になっている自分を見つめる必要がある
これを傲慢と謙虚の違いと見ることができるまで・・ -
承久の乱の敗北により天皇(上皇)が神性を失ってから、江戸の終りに、再び神格化されるとともに、明治維新の断行を可能ならしめたのは何故かを、キリスト教、ユダヤ教の教義を補助線として、説明してみせた怪書。歴史に疎い私にその適否は直ちに判断できないが、面白い視座であることは間違いない。
著者プロフィール
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