Me キャサリン・ヘプバーン自伝

  • 文藝春秋 (1993年1月1日発売)
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本 ・本 (576ページ) / ISBN・EAN: 9784163479408

感想・レビュー・書評

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  •  マーティン・スコセッシ監督の映画「アビエイター」を観た。この映画にはキャサリン・ヘプバーンが登場する。レオナルド・ディカプリオが演じる主人公ハワード・ヒューズの恋人として、ケイト・ブランシェットが演じている。
    映画は大変面白かったのだが、どうもケイト・ブランシェットの演技が気になってしまった。大女優の若かりし頃ということでそれなりの工夫もあったのだろうし、スコセッシ監督が意図するところを表現するための脚色もあったのだろうけれど、何か、キャサリン・ヘプバーンってこんな感じだったかなという疑問符が残ったのだ。
    そこでご本人が書いた「Me キャサリン・ヘプバーン自伝」を読んでみた。
     ヘプバーンは1907年生れ。この本が出版されたのは1991年(翻訳は1993年)、ヘプバーン84歳の時だ。その後、2003年96歳で亡くなっている。この本は、80代の婆さんがゴースト・ライターの手を借りずに書いた回想録なのだ。そのため決して読み易くはない。まず、話がぽんぽんと行ったり来たりする。それから、ご本人にとって当たり前のことは説明されないので背景が見えてこないことがある。場所柄などが特に。また、当人も自覚していたようだが基本的に「私、私、私」の人なので、他人に対する観察がそれほど面白くない。
    それでも、翻訳者による「キャサリン・ヘプバーンとその時代」という解説とヘプバーンの年譜、さらに「おもな登場人物と映画作品に関する訳注」という大変有り難いガイドがあるので、これらを頼りにすれば、ヘプバーンが語っていることに近づくことができる。
     そしてどうやら、キャサリン・ヘプバーンは活発な、あるいはじゃじゃ馬娘だった。それが演ずることに魅せられ、ハリウッドと映画の黄金期に成長し、努力を重ねて大女優になったのだ。我の強い、自立した人だったのだろう。プロらしく、自分の欠点も冷静に把握できていたようで、発声法を改善すべくチャレンジしていたという。
    20年以上のパートナーだったスペンサー・トレイシーについての条りはやはり面白い。「全面的な献身」として語られるトレイシーに対する愛は陰影も深い。さばさばした性格が伝わる語り口が逆に、トレイシーが亡くなった後の寂寥感を感じさせるが、一方では、トレイシーがキャサリン・ヘプバーンの掌の上に乗っていたような気もしてくる。
    ハワード・ヒューズとの関係も語られている。ここを読むとスコセッシ監督の映画がどんな脚色を施しているかが分って興味深い。ケイト・ブランシェットの演技はやはり再現ではなくて、別物と捉えたほうがよさそうだ。

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