撫で肩の男 ロシアの殺人鬼を追って

  • 文藝春秋
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  • 本 ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163482804

感想・レビュー・書評

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  • 「チャイルド44」の解説で勧められていたので。

    「チャイルド44(以下、44)」の元となった
    実際のロシアでの連続殺人事件について書かれた本。
    殺人犯チカチロとコストエフ主任取調官の両者を、
    その生い立ちから同等の配分で取り上げている。

    1950年代に設定され、
    「1984年」的恐ろしさに満ち溢れていた「44」ほど怖くはないだろうと思っていたが、
    アフガニスタン侵攻やモスクワ・オリンピックといった聞き覚えのある言葉に、
    1980年代前後の実際の事件であるという現実、別種の恐怖をつけつけられた。

    まず最初に衝撃を受けたのは、
    最初の殺人でチカチロが目撃者、血痕、前歴とそろった容疑者の一人として事情聴取までされたのに、
    他の人が自白を強要され有罪となったこと。
    この最初の事件さえ、きちんと捜査されていれば、
    その後の50人を超える犠牲者が出ることはなかったはずだ。
    冤罪は、
    無罪の人が有罪とされるだけでも充分に暴力的な悲劇であるのに、
    有罪の人が無罪とされ無辜の人々の命を奪うことになるという暴力性に、
    怒りのめまいを感じた。

    チカチロが捕まらなかった原因の一つに、
    民警の怠慢さや自白の強要による誤認逮捕があるが、
    次々と描かれる民警の実態にはあきれるばかりだ。
    コストエフ主任取調官が捜査を進める過程で、
    次々と他の殺人犯を「発見し」逮捕していく過程は
    皮肉以外のなにものでもない。

    チカチロとコストエフの取調べの様子は、
    過度な盛り上げも修飾もなく進むが、
    その淡々とした様子がまさに現実だ。
    チカチロの「なんとも名状しがたい臭いで、これまで嗅いだどんなものとも似ていなかった」体臭とは、
    いったいなんだったのだろう。

    この本を読んでみて、「44」が、
    時代設定を50年代にした点といい、
    主人公の設定といい、
    家畜専用列車での移動といい、
    非常に上手く創られた作品だったことに感心した。

    是非、「44」の方を先に読んでほしい。
    そして、この本の後半で、
    飢饉の際に食べられてしまったと母親に聞かされていた、チカチロの兄の実在が確認されないことに、
    私と同じ衝撃を受けてほしい。
    私にとっては、この本は「44」の元ネタではなく、続編だ。

    「1984年」「チャイルド44」「撫で肩の男」の順でめぐり合わせてくれた、本の神様に感謝する。

  • “ロストフの人々の怒りをかきたてたのは、自分たちが長年にわたってこうした犯罪について闇のなかにおかれていたことを、グラスノスチの新時代に入って初めて知らされたからだった。こんな犯罪は、このほぼ完璧な社会には存在さえしないとされていた。(…)ようやく、報道に新たな自由がもたらされたいま、この殺人者が人々の想像していたものよりはるかに悪質であることが明らかになった。”

  • もしかしたら今までに読んできた小説のなかで一番怖かったかもしれない…。事実は小説よりも奇なり、じゃないけど、実際に起こった事件ほど恐怖をかき立てるものはないね。写真付きだし(チカチーロの何が怖いって見かけは「殺人者!」って感じじゃないところだよなー)。昔は幽霊やらそういった不可思議なことを怖いと感じていたが、この世で一番怖いのは人間です、間違いなく。

  • チャイルド44からの つぎつぎ 読書まだ これ以外にも 関連本はあるらしいそれだけ 驚異的な事件だったんだなぁ と

  • 初めて読んだ殺人鬼の記録系の本。
    どきどきしながら読んだ。
    被害者の写真なんてあるから最高だった。
    なんて書くと不謹慎だけど、実際それ以外の何の目的のためにあるのか謎な本。

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