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本 ・本 (700ページ) / ISBN・EAN: 9784163494609
感想・レビュー・書評
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一カ月余りかけて漸く読み終わった。ここまでディテールにこだわって書き上げたのは恐れ入る。
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伝記というよりもドキュメンタリー。
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佐野眞一という書き手は、私にとっては最大限に敬意を払うべき人であり、読み出す前には深呼吸が必要なほど濃密な空間を提供してくれる稀代の書き手であると思う。縦令、橋下元知事への不適切な讒言の事案を起こした張本人だとしても。
私は既に『カリスマ-中内功とダイエーの「戦後」』、『あぶく銭師たちよ!-昭和虚人伝』、『日本のゴミ-豊かさの中でモノたちは』、『ニッポン発情狂時代-性の王国』、『業界紙諸君!』、『凡宰伝』、『人を覗にいく』は読んだ。全てが濃密であった。特に『人を覗にいく』は、一篇一篇は短いものの、その読後感は濃密で、理由の無い徒労感のようなものをいつも背負い込んでしまう。
だから、今回古本屋で『巨怪伝(単行本)』を見つけた時には、買おうか買うまいか、少し悩んだ。価格がこなれていた事が、その躊躇いを軽いものにしてくれたが、それが必ずしも筆価をも軽くするものではない事は言うまでも無い。
結果的には読了するのに約1週間かかってしまった。それは、大部である事だけではなく、「読めない」のだ。
本が単行本故に重たいとか、そういう事ではない。ともかく濃密なのだ。読了後に、あとがきや参考資料の項を見て驚いた。彼は9年も執筆にかけていたのだ。そして、その参考図書の莫大な量をや!
内容についてはあえてここでは取り上げないが、極めて真っ当で、しかも濃密なノンフィクションがここにある。いや、もうノンフィクションのレベルではなく、歴史を語るが如きすさまじさであった。
こんな書き手が居る事に、改めて戦慄すると共に、このような本が最近文庫本になった事を素直に喜びたい。
矛盾するようだが、読後感は「やるせない」気分である。それは、本が「やるせない」のではなく、その濃密な中身にどっぷり浸かってしまったが故に「やるせない」のだ。読売というグループは、こんなに恐ろしい人物が造り上げたのか・・・。
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