「劇画の星」をめざして 誰も書かなかった「劇画内幕史」

  • 文藝春秋 (1996年1月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (360ページ) / ISBN・EAN: 9784163523200

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  •  1960年代から70年代にかけて劇画界の大スターであった著者が、波瀾万丈の劇画家人生を綴った自叙伝である。

     昨日読んだ桜井昌一著『ぼくは劇画の仕掛人だった』と時代も舞台も重なるため、前半で振り返られる貸本劇画時代についてはエピソードの重複も多い。とはいえ、桜井(本書にも重要な役割で登場)とは異なる視点からの回顧だから、本書は本書で十分楽しめる。

     貸本劇画が急激に衰亡していく過程をつぶさにたどるあたりは、なにやらいまのマンガ界の状況とオーバーラップする。
     貸本劇画が週・月刊マンガ誌に取って代わられたように、いまはマンガ誌そのものが急激に衰亡していく時代。栄枯盛衰の歴史はこうしてくり返されていくわけだ。

     いっぽう、佐藤まさあきという「劇画の星」の栄光と転落の歴史は、小室哲哉のそれを彷彿とさせる。
     佐藤は、人気絶頂期には「佐藤プロ」のオフィス兼仕事場となる自社ビルを都心に建て、クルーザーを所有し、江ノ島の海を見下ろす鎌倉の高台に「家の中に滝のある」(!)豪邸を建てる。そして、スタッフの給与やビルのローンなどで、「最低一ヵ月に五百万円の収入がないことには過ごせない」という状態にはまりこみ、馬車馬のように多数の連載をこなしていくのである。

     だが、劇画ブームが終わると、時代に合わない古臭い作風となっていた佐藤は連載を次々と切られていく。引退を考えた佐藤は、「第二の人生」としてレストラン経営に乗り出す。新宿歌舞伎町の一等地に、「権利金だけで四千万円もした」という店舗をオープンさせるのである。

     だが、シロウト商売のレストランは大赤字を出して4ヵ月で閉店に追い込まれ、ビルも豪邸も手放す羽目になる。それでもなお、夫人のほかに4人もの若い愛人をもちつづけたというのだから、すさまじい。
     小室とちがって犯罪には手を染めなかったのが救いだが、呆れるほど破天荒な人生である。
    「羽振りのいいときに、もっと地道に暮らして貯金しておけばよいのに」と我々凡人は思うわけだが、地道な暮らしができるようなタイプには、そもそもこのような極端な栄光はけっして訪れないのかもしれない。

     家計の内幕や女性関係、編集者などとのドロドロの人間関係、失敗談など、ふつうなら人には言いたくない事柄まで、包み隠さず書かれている。露悪的なまでの赤裸々さが、本書の魅力である。

  • 描いて稼いで派手に使って追い詰められてまた描いて行く。
    義理の兄の家で暮らした数年が劇画ストーリーの原点となり復讐劇画を描き続ける。当時そんなに売れていたのにびっくり。たしかに劇画史の裏話満載、漫画家同士の人間関係も分かり辰巳ヨシヒロの「劇画暮らし」読んだ後なのでさらに楽しめた。

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