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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784163546001
みんなの感想まとめ
人間の多面性や宗教の本質について深く考えさせられる作品です。地下鉄サリン事件を題材に、著者はオウム真理教の信者へのインタビューを通じて、何が「悪」であるのかを問い直します。感情や理想が交錯する中で、事...
感想・レビュー・書評
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悪人は一人もいなかった。
ただ真理を正しさを求める中で行き場がなくなったものがああ言う形で外に出される事になってしまったのだろうか。
本当に人間は多面体で人を殺めたからといってその人が悪でしかないということはないということを改めて思った。
後半河合先生との対談も非常に興味深く、物語が人を動かすとかファクトと真実などの話は特におもしろかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「オウム真理教」に関する村上春樹によるノンフィクション。
同様のテーマで書かれた『アンダーグラウンド』の続編、別視点で書かれたのが本書。つまりはオウム真理教の信者・元信者へのインタビューがそのメインの構成に据えられている。
インタビューでは、信者個々人のオウムに対する思いや当時の心境が生々しく書かれる。特に彼らがどのような思いや経緯でオウムに辿り着いたのかという部分は読み応えがあった。
筆者も前作よりはつっこみや質問が多いものの、基本的には客観的に彼らの声を把握するようにしていて、質の高いインタビューだと思う。
巻末には、ユング心理学研究者の河合隼雄氏と村上春樹との「オウム真理教」に関する対談が収録されており、こちらも非常に面白い。
主なテーマは「善と悪」であり、陳腐なテーマであるが考えさせられる内容になっている。
「善と悪」を明確に切り分けて考えてしまうことはとても危険で、特に自分たちを「純粋な善」と捉えて自分たちだけの世界に閉じこもってしまうことが悲惨な事件を引き起こしてしまう。組織の中に「純粋な善」のみを抱えてしまうと、バランスを取るためには外に「絶対的な悪」を作り上げてしまう。
そしてその虚構を信じてしまうと、人間はどんな残虐な行為もすることができる。戦争しかり、宗教弾圧しかり、地下鉄サリン事件しかり、それは歴史が証明している。
世界はカオスと矛盾に満ちている。これが真実なのだ。これを否定してシンプルで一貫したストーリーを信じ込むことは楽だし、気持ちが良いだろう。
インタビューの中で女性の信者が発言した
「指示が出たらみんなでさっと動くとか、そういうのってあるじゃないですか。こういうの楽だなあと思いました。言われたことをそのままやっていればいい。」
という言葉が印象的で、信者の人たちはそうした人が多いと思った。
でもそれはやっぱり間違っていて、世界の本質的な混乱を強く受け入れなければならない。
経営論には「シングル・ループ」という用語があるが、正しくオウム教団はこれなのだ。ある程度は自分たちの外側に開けて、そこからフィードバックを得なければならない。「ダブル・ループ」が必要なのだ。
これは宗教だけじゃなくて、会社にも家庭にも当てはまる。内側に悪(異質なもの)を抱えて共存することが必要だと思う。
しかし村上春樹曰く、オウム信者とわれわれを隔てる壁はそこまで強固ではない。多かれ少なかれ誰もが「世界における自分の意味」を求めて生きているし、オウム信者たちは少しばかりこれに偏っていたに過ぎない。
だからこそ彼らのことを知って、理解はできないかもしれないけれど、そう努めなければならないと思う。
示唆的で、精神の糧となる一冊。ぜひ読んで欲しい。 -
迷ったけど読んで良かった!1995.3/20の地下鉄サリン事件の根源に迫りたい村上さんが1997.3の被害者側へのインタビューに続いて1998.4-11の加害側?へのインタビューを実行し、加えてこの作品でも河合さんとの対談を掲載しているので、朧気ながらもオウム真理教への知識を持てた気がする。つまるところは不可思議な人間の心に迫る端緒になる本でした!そして不可思議な日本人の根源にも思いを廻らす深い本でした!やっぱり村上春樹は凄いなぁ と再認識する本でした♪
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河合隼雄氏との会話が一番印象に残った。
「ネガティブなものをかかえこんで、抱きしめている時期が必要なのです。熟成する期間といいますか、そういうものがたっぷりとあるほど、それに見合ったポジティブなものが自然に出てきます。それはポジティブなものに関しても言えることですよ。ポジティブなことを単純に思いついた人の話というのはアホくさくてとても聞いていられません。」
この一言は予想もしていなかったけれど、僕の意識の奥の方を突然鋭く、深くえぐってきた。 -
警察や医者にピンキリがあるように、ホームレスにもピンキリがあるように、宗教にもピンキリがある。良い人も居れば悪い人も居る。政治だって会社だってそうでしょう。膨れた組織の多様性は確実に、当然ある。でも何故かそれは僕は気付けない事だった。読んでるとあからさまな宗教的な思想や行動強制さえなければ、僕は末端の純粋な信者とは話しが合ってしまう気がする。あくまで個人的に哲学的な意味で。一義的な自分の考えが恥ずかしくなった。幹部のした事は僕の価値観の中で正しくないし、被害者の方からしたら当然許されないと思うけれども。例えば大企業の幹部が社長命令で汚職をして、それが露見して会社が社会的なダメージを受けて、そして当然何も知らされずに純粋に愛社精神すら持ち営業を毎日汗をかきながら頑張っていた末端の平社員が首を切られる。それに感じる矛盾と似た事を僕は社会に感じた。
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アンダーグラウンドを20年くらい前に半分くらいで中断。この本をたまたま見つけた。
興味深い。この方の小説に出てくる小洒落た感じでなく、違和感なく読める。 -
だいぶ前に読んだまま感想は書けてなかった。ワタシには宗教をする人の気持ちは絶対全然わからないけれど、こんな風に外側から見て考えることはできる。
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麻原彰晃死刑にあたり、本書を読んで見た、こちらは加害者側つまりオウム信者のインタビューであり、もうひとつ被害者側のインタビューでアンダーグランドというのがあるらしいがそれは後日読むことにしよう。結局現在日本における社会システムに馴染めなかった者たちが、そのシェルターのようなオウムに入れば救われると思い知らず知らず現実に即した判断を無くしたようであるが、確かにこれさえ信じていれば救われるとなれば、人々は楽な方を選び思考を止めてしまいそうだ、しかし不幸なことに麻原彰晃はパラノイヤだったということだろう。しかしあらゆる巨大化組織においては常にその危険性が孕んでいると言えるかもしれない。
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これもなんか、すごかった。ほんと。
「アンダーグラウンド」よりも、
村上春樹個人が出ている感じがした。
信者とか、元信者のインタビュー
なんだろう。違和感をずっと感じながら読んでいた。
そうなんだけど、なんか違うよ、って思いながら。
説明できる世界、というのが、とても大事なのだった。
その人たちには、説明できない世界、とつき合う隙間がない。
でも説明できないことは溢れている。
この人たちにとって説明できないことは、
きっと愚かなことなんだろう。
村上さんのあとがきが非常にわかりやすかった。
文章を生業としている人なんだなぁ。と、当たり前な感想。
そして裁判で村上春樹が持った印象を読んで、
なんだか泣きたくなった。
それは村上春樹の印象だから、事実は違うのかも知れない。
だけどすごく腹が立った。
そうだとしたら、すごく失礼だ。人に対して。
でも、その人は、私であったかも知れない。
あぁ怖いなぁ。
怖いけど私はこの説明できないものがもたくさんの世界を
すごく好きなんだなぁ、とか思い直しました。
あと、河合隼雄との対談もよかった。
なんか話している村上春樹と一緒に、
私の頭の中も整理されていくような気分になった。
いろいろ興味深い話が多かったよ。
願わくば、違うもの、人に対して、
もうちょっと優しくなりたいなぁ、なんて思ったよ。 -
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2009.03.08. ポスト・アンダーグラウンド。今度は信者・元信者へのインタビュー。視点が変われば意見ももちろん変わる。正直、こちらの人というのは、偏っている印象を受けた。もちろん、普通にいても問題ないんだろけど、なんというか。この現実世界では、生きづらい人なんだろうなぁ・・・と思ってしまうような人もいて。村上さんのインタビュアーとしての姿勢が、とても真摯なのも印象的だった。
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エリートだから、か…
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面白かった
オウムに行ってしまった人は、自由にできない、指示待ち人間。幼少時代のインタビュー見ててもなんか色々深く考えてしまうのか。オウムに行けば何も考えず言われたことをやればいい。
サリン事件が起きた時もまさかオウムがそんなことを起こすとはってみんな思ってたのが意外。純粋な気持ちで入ったみたい。
宗教が心の拠り所になることはある、サリン事件が終わったから終わりではなく、社会に居場所がない人の受け皿が必要 -
地下鉄サリン事件の被害者へのインタビューをまとめた「アンダーグラウンド」の続編。前作は意図的に排除されていたオウム真理教関係者へのインタビューで構成されている。
犯罪に関与していない現役・元信者ばかりなので、内容の重かった前作と比べると、インタビューが軽い印象を受ける。そして、皆どこか考え方に浮世離れしたところがあった。それもあってか、村上春樹氏も前作と異なり相手に詰め寄るような聞き方をしているし、同情の視点というのはあまりないようだった。自分も、現世的な利益が第一に考えられない人がいるのは理解できるが、簡単に俗世を捨て去って出家してしまうのはいかがなものかと感じてしまった。生まれた家庭に問題のある人もおり、そういうところも影響しているのだろうか。
興味深いのは、オウムと縁を切ったり、批判活動を行っている人ですら、オウムで過ごした時間は無駄ではなかったと述べている点。この点は、あとがきで筆者も触れている。犯罪に走ったとはいえ、宗教的には魅力のあるところがあったのだろう。 -
p.1998/11/26
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村上春樹と河合隼雄が「悪」と呼んでいるものは、私なりに解釈するなら(つまり、私の尺度に合わせて言葉を歪めるなら)多分に「俗」であり「矛盾」なのだろう。麻原彰晃が俗物であったことは多く語られているしこの本の中でも触れられるが、そうした「俗」が孕む力の恐ろしさと崇高さを思い知る。そうした「俗」「悪」はもちろん私の中にもある。そしてそれを「原罪」として抱えること、そこから自由になれるとはゆめゆめ思わないようにすることを課してきたつもりなのだけれど、まだ甘かったかもしれない。『アンダーグラウンド』よりも好きな1冊
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「アンダーグラウンド」を読んだ後、信者及び元信者をインタビューした本があると知り読んだ。
この本では、村上春樹さんのインタビュアーとしての冷静さが感じられた。
後半の、河合隼雄さんとの対話が興味深く、面白かった。
以下、抜粋。
河合氏 …だからね、本物の組織というのは、悪を自分の中に抱えていないと駄目なんです、組織内に。これは家庭でもそうですよ。(中略)そうしないと組織安泰のために、外に大きな悪を作るようになってしまいますからね。…
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2021/02/24 読了
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あとがきから********
自己表現の手段をうまく見つけることができなくて、プライドとコンプレックスとのあいだを激しく行き来しているかもしれない。 それは私であるかもしれないし、あなたであるかもしれない。 私たちの日常生活と、危険性をはらんだカルト宗教を隔てている一枚の壁は、我々が想像しているよりも遥かに薄っぺらなものであるかもしれないのだ。
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