今日も映画日和

  • 文藝春秋 (1999年9月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (352ページ) / ISBN・EAN: 9784163555409

感想・レビュー・書評

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  • 映画を見ていて、何気なく挿まれた一カットが気になったりすることがある。あれにはどんな意味があるのだろう。以前見た映画によく似た場面があったぞ。この俳優は、どこかで見たことがある。こういうときに、ああ、あれね、と話し合える人が傍にいればいいが、なかなかそううまくはいかない。もし、そんな人がいたらいつまででも映画について話していたいと思う。

    映画を見る事が好きな人は多いのだが、映画についての知識や意見をキャッチボールできる相手は少ない。まず第一に、お互いの興味や関心がずれていれば会話がはずまない。古い映画や評判にならなかった映画もある。どんなボールが飛んできても受けとめる守備範囲の広さも大事な条件である。趣味や考え方が似ていて、相手の意見に寛容な、相当の映画マニアなんて滅多にいるわけがない。ここにそんな貴重な話し相手を見つけた幸せな三人組がいる。

    この三人について言えば、映画が大好きなことがまず伝わってくる。その上で、A級B級は言うに及ばず、どんなつまらない映画でも食指に乗せる。いわゆる名画やシネアストと呼ばれる監督の作品と、場末の三番館で見た作品を差別せず平等に論じるその精神の在り様が貴重だ。仲間同士の会話という気易さもあって、映画マニアの口吻が伝わってくるのが、また楽しい。自身映画監督でもある和田誠が終始ファンの立場を崩さないのが印象的である。

    どんな映画も分け隔てせずに論じていても、そこにある種の傾向というものが出てくる。多くの映画に少し顔を出すだけの脇役や、悪役専門でアカデミー候補になりながらも受賞を逸した役者に肩入れし、彼らの路線を踏襲することで三度もアカデミー賞をもらうジャック・ニコルソンには厳しかったり、『十二人の怒れる男』に東部のインテリがプアホワイトを叩きのめす後味の悪さを見たりするのがそれである。

    ティム・バートンがインタビューに対して答えた、殺される怪獣の側に共感して映画を見てしまうという言葉を引いていることからも分かるように一貫して(その時点における)弱者の側に立った視点が貫かれていることが、読後に爽やかなものを感じる原因かも知れない。古くからの洋画ファンで、近辺に映画の話をする相手のいない人に特にお薦めしたい。読みながら相槌を打ったり、「そうかなあ」と呟いたりすること請け合いである。

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著者プロフィール

一九三六年大阪生まれ。多摩美術大学図案科(現・グラフィックデザイン学科)卒業。
五九年デザイン会社ライトパブリシティ入社。六八年に独立し、イラストレーター、グラフィックデザイナーとしてだけでなく、映画監督、エッセイ、作詞・作曲など幅広い分野で活躍した。
六五年創刊の雑誌「話の特集」アート・ディレクターを務める。
講談社出版文化賞、講談社エッセイ賞、菊池寛賞、毎日デザイン賞など受賞多数。
七七年より「週刊文春」の表紙(絵とデザイン)を担当する。二〇一九年死去。

「2022年 『夢の砦 二人でつくった雑誌「話の特集」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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