17歳の軌跡

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (511ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163565507

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  • 「ドブネズミみたいに 美しくなりたい
    写真にはうつらない 美しさがあるから」
    私が大学生のとき、この歌詞を聞いてブッ飛ぶくらい衝撃を受けた。

    同じく、大学生のときに写真集「17歳の地図」を見たときも、ある意味衝撃だった。そこには、普通の17歳が、普通の生活のなかで撮影された数々の写真があったのだけど、そこに写った1人1人の「眼」が、普通という言葉でひとくくりにできないような輝きを放っていたからだ。
    「写真にはうつらない美しさ」を写真で表現しようと挑戦している写真家がいるんだと強く印象に残った。ブルーハーツの歌と同じく、自分を含めた個々のリアルな声を代弁しているように思えた。

    その後20年以上が過ぎ、偶然目に入ったのが本書。「橋口譲二」の名前を久しぶりに見て反射的に手が伸びた。
    元の「17歳の地図」(その後「17歳」として別の出版社から発行)は、モノクロ写真の横に、今何をしていて、将来何になりたいかとかのインタビューの数項目が付けられている構成で、いわば写真が主役で文章は脇役。
    それがこの本では、17歳当時の写真があって、それに橋口さん自身が元・17歳に行った膨大な字数のインタビューがあって、最後に10数年たった彼女ら・彼らの「いまの」肖像写真が掲載されている。そのインタビューの文章が、結構読ませる。考えさせられる。
    もちろん、「この世代」と輪切りにできないような、それぞれの個性が噴出した熱い内容。
    ここでも、そこらへんで会社員生活や子育てをしているような「普通の」男女が、17歳以降の人生をさらに年輪として刻んで重みを得たかのように、それぞれの人生について朴訥ながらも多く、そして深く語っている。私がとやかく語るより、この本に出てくる「普通の」青年たちが語っている内容を少し見せた方が雄弁だと思うので、紹介しておきたい。

    (あの時、将来の夢に何を書いたか覚えてる?)「『幸せな家庭の一主婦になりたい』(笑)。私、こんなこといってたんだわ、って。いとも簡単にそれができると、その時は思ってたんですよね。でもそれが一番難しいことなんですよ。」(17歳当時高校生→無職)(女)

    (当たり前のことだけど、みんなそれぞれいろんなものを手に入れて、いろんなものを捨ててきた。共通するのは、人を傷つけてきたという思いを持ってる人が多いということかな。)「ああ、そうですね。僕もそうですね。いろんな出会いもありましたけれども、決して円満な別ればかりではないですから。でも、僕の写真は僕は嫌いだけど、捨てたくないですね。もうあれが自分の人生だと思ってるから。ただ自分を見るのが恥ずかしいだけで。」(17歳当時高校生→会社員)(男)

    (17歳の頃の自分と、今の自分を比べて何が一番変わった?)「自分が何者でもないっていうことがよくわかった。十七歳の時は、まあ、ある種変わり者ってよくいわれてて、そうじゃないんだよ、普通の子だよ、っていったりするんだけれど、でもやっぱり自尊心ていうか、見栄っ張りな感情が実は心の中にあって、それを隠そうとしていたの。自分のなかでそういうややこしい作業をしなくていいんだって思った。」(17歳当時高校生→調理師学校学生)(女)

    (これまでお金がなくなった時なんてありましたか?)「それはありますよ。缶ジュースも買えなくなったってありますよ。…そういうのはありましたけど、そう何日も続かないですよ。あと数日乗りきればとか。それはみんな経験してる。」(17歳当時高校生→ゴルフ研修生)(男)

    (どう、家族ができた気分は?)「うん、嬉しいですよ(笑)。ものが怖くなくなりました、家族ができて。…」「仕事の面でも違うことでも、怖いものってなかったんですけど、家族ができてから、怖いっていうか、臆病になるんですよね、何か行動が」(それは臆病っていうより、考えるってことだよね。)「そういうことなんですよね。」(それは逆に強くなったということだと僕は思うな。)(17歳当時漁師→土建業)(男)

    (今の十七歳の人や若い人たちを見て、何か感じたり伝えたいと思うことってありますか?)「十七歳に限らず、今の若い人たち、けっこう犯罪さからんでる。あの頃もなかったっていえばおかしいけれども。考え方一つ、変わってきたんじゃないかな。人それぞれ、あの頃だって苦しみっちゅうのはみんな持ってたし、それを周りの友達が力になったり、支えてくれたり、そういう人はいたけれども。今の若い子って、周りの友達、友達であっても友達じゃねえみたいな、そういうようなあれがあっけどなあ。苦しみ持ってる奴が、相談できる友達っていうのが一人もいねえのかもしんねえ。形だけで。…」(17歳当時デパート鮮魚コーナー店員→板金工)(男)

    ((17歳当時の)写真は好きですか、嫌いですか?)「好きですね。…自分を好きになれたというのかな、最近。昔はそのまんまの自分はあんまり好きじゃなかった。昔、同じことを聞かれたら恥ずかしいとかいったかもしれないんですけど、この歳になるまできたから、だんだん自分を好きになってこれた。とっても自分が嫌いな時期もあったんですよ。自分の存在自体が嫌いな時期というのもあったんです。」(17歳当時高校生→主婦)(女)

    これらの「他者」の生きた言葉は、そのまま「自分の」言葉でもある。
    もちろん他者は他者であって自分ではない。しかし他者のなかに自分があり、自分のなかに他者がいるという“想像力”が、17歳の世代だろうと元17歳世代だろうと、つまりどの世代だろうと私たちが生きるうえで重要な意味を持つと強く思わせられる本である。

  • 「十七歳の地図」から10年
    それぞれの若者たちは
    それぞれの10~12年を
    生きてきた

    ー(まえがき より)
     僕が17歳の彼らと出会ってから今日まで、
     日本社会は様々な経験をした。 
     たくさんのものを手にしたと同時に、
     失いもした。
     バブル景気、バブル崩壊、阪神・淡路大震災
     オウム真理教、酒鬼薔薇事件…
     (中略)
     17歳の彼らが育んだ時間、僕を含めて、
     今を生きる人すべてに流れた時間

    むろん
    ひとりひとりに流れた時間の中での
    ひとりひとりの「暮らし」は
    それぞれに違う
    それでも
    いや
    それだからこそ
    橋口譲二さんは
    ひとりひとりに
    ていねいに聴き取っていく

    ー(あとがき より)
     生きるということは本当に
     価値観の異なる人間同士が係わり合い、
     面倒なことを積み重ねながら、
     自分の価値観や人格を築き上げていく、
     ということ
     (中略)
     対象が誰であれ
     人の話に耳を傾けるという単純な行為の中で
     人は共感と反発を繰り返し
     その積み重ねの中で自然に人格を育んでいく
     
    彼らひとりひとりへの
    インタビューにより
    構成された本書
    ひとりひとりへのまなざしは
    相変わらず
    温かく 優しい

  • 281

  • 17歳の写真集読んだ者として手に取らざるを得ない作品。そりゃ、読みますよ。

  • 少年少女が育んできた時間と、失ったいくつかのこと。
    あなたはどこで何をしていましたか?
    そして、あなたはこれからどう生きていきますか?
    僕は、かつて「17歳」だった彼らをもう一度訪ねる旅に出た―
    北海道から沖縄まで、さまざまな軌跡を描いた38人による青春の記録。
    (帯より)

  • 「世界」の表紙に載っている。

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