盲導犬クイールの一生

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 610
感想 : 97
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  • Amazon.co.jp ・本 (150ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163572604

作品紹介・あらすじ

『人間らしい歩き方を思い出させてくれた』との言葉を残して、パートナー(使用者)はこの世を去った。そのあと、クイールはどのように生きたのか。生まれた瞬間から息をひきとるまでをモノクロームの優しい写真と文章で綴る、盲導犬クイールの生涯。静かな感動の記録。

感想・レビュー・書評

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  • ブックトーク用に読了。
    映画にもなったしテレビでも採りあげられたこともあるしだが、本では初めて。
    盲導犬には「産ませの親」「育ての親」「躾の親」とがいるのだが、その三つに等しく眼を向けた、ノンフィクション絵本。
    子犬から盲導犬になるまでの様子、そして死に至るまでの日々を豊富なモノクロ写真で紹介している。特に犬好きでもない私だが、その優しい眼差しには不覚にも涙ぐんでしまった。
    事実を述べているだけなのだが、やはり心に強く訴えかけてくるものがある。

    盲導犬の話というと、その使用者との親密な関係を描いたものが多いのだが、この本では使用者と巡り合うまで育成を支えた人々のことが詳しく書かれている。
    また、平成11年度の調査では実際に働いている盲導犬の数は850頭という少なさ。
    これがアメリカだと約6千頭となり、英国では約4千頭にも及ぶらしい。
    理由のひとつに資金不足があり、盲導犬訓練士の数もまるで足りないらしい。
    訓練士になりたいというひとは決して少なくはないものの、長い研修期間の間に約9割近くのひとが脱落していくという。
    なんとまぁ、道は遠いことだろう。

    「盲導犬は、ただ道を教えてくれるだけと思っていましたが、でも違いました。
     いっしょにいるだけで気持ちを明るくしてくれる。友だちなんですね」

    こう言って喜んだ使用者は病魔に侵されて、クイールとは二年間共に過ごしただけだった。
    その後盲導犬協会に戻されたクイールは、各地の学校などに訓練士さんとともに出向いて
    盲導犬についての知識を広めるデモンストレーション犬として活躍する。
    そして、亡くなる日までを必死で支えたのがパピーウォーカーだった仁井さん夫妻。
    育ての親の元に帰るというのは非常に稀なケースらしいが、結果的にこれが双方にとって幸福だったと思いたい。
    98年に12歳で亡くなったクイール。
    その足跡をたどり、盲導犬の普及が少しでも進むように、もっと広く理解が進むようにと願う。

    最後にクイールの訓練士だった多和田さんの言葉もある。
    この、多和田さんとクイールの写真が、私は一番好きだ。
    多和田さんに走り寄るクィール。見つめる多和田さんは満面の笑みだ。
    邪念が多い人間は、動物ものはあざといとか、盲導犬など犬への虐待だと批判する。
    だが、盲導犬を取り巻く現実をどこまで理解しているか、一度自分に問いかけてみると良いかもね。私はクイールに頭が上がらない、たぶんこれからもずっと。

    • 夜型さん
      nejidonさん、おはようございます。
      いつもコメントくださり、ありがとうございます。
      それなので、小生もコメントさせていただこうとお...
      nejidonさん、おはようございます。
      いつもコメントくださり、ありがとうございます。
      それなので、小生もコメントさせていただこうとお邪魔しました。
      nejidonさんにはブクログを始めた当初から相互フォローしていただきました。
      いつもレビューが全体像をしっかりと、感想もはっきりと思いを述べておられて、大変勉強になります。
      読友さんにコメントするなど気配りもなさっていてすごいなあと思っています。陰ながら貴殿を模範にしているかもしれません(?)。
      マドンナ本のお話から読ませていただきましたが、察するに、小生よりも一つ上の世代の方なのかなと思われます(そういう小生はゆとり世代です)。
      マドンナといえば、小生にとってハングアップで初めて知って、独特のサウンドだったので繰り返し聴いた歌手です。
      「マイケル・プリンス・マドンナが同期さんでマドンナだけ生き残っちゃったのよね〜」などとお世話になってる女医の先生から聞いて、ほーってなった思い出もあります。

      口下手であまり人付き合いは得意ではない性分ですが、コメント述べさせていただきました。
      凛としてしっかりとした文章で、愉しく読ませていただいてます。
      もうすぐ暖かい季節が来ます。風邪など引かぬようお大事になさってください。
      2018/01/21
    • nejidonさん
      読書猫さん、こんにちは(^^♪
      コメントありがとうございます。
      おお、そうでしたね!相互フォローがすんなりと行った例が、読書猫さんでした...
      読書猫さん、こんにちは(^^♪
      コメントありがとうございます。
      おお、そうでしたね!相互フォローがすんなりと行った例が、読書猫さんでした。
      こちらからフォローしてもリフォローがないと案外寂しいし(笑)でもこればかりはお願いすることも出来ず
      何とも言えないものがありますよね。
      あの時のレビューは、そちらの本棚で今も時たま読ませていただいてます。
      咀嚼していると色々な味わいの出るレビューで、私は大好きなのです。
      私の方は、いつも同じようなフレーズを繰り返しているようで、読みにこられる皆さんには何だか
      申し訳ないような・・でもプロではありませんので、そこは甘めに見て欲しいなぁというところです。
      既に読書猫さんにはかなり甘めに見ていただいてるようで(笑)、感謝でいっぱいです。

      はい、マドンナの件ですね・笑
      言われる通りたぶん、ひとつ上の世代だと思いますよ。
      弟がゆとり世代で、何だか読書猫さんと少し似ています。
      それと私も、人付き合いは得意ではありません。終日ほとんど一人でいるようなものです。
      それに片田舎の一軒家なのでひとも通りませんから、猫も喜ぶ住環境なのです・笑

      私も読書猫さんのレビューがいつも興味深く、楽しみです。視点が、とても参考になります。
      季節柄、読書猫さんもどうぞご自愛くださいね。また本棚をのぞきにまいります!
      2018/01/21
  • 盲導犬、それは目の不自由な人の道具として役に立つことを使命として生きているが、やはり生き物として全力で生きている。最近、赤ちゃんが生まれる場面とか見るだけで泣けてくるが、それがなんでだろうと思うと、やはり命を輝かせているからだと思った。自分の子どもが一生懸命に踊る発表会、人形無くして悲しくて大泣きする姿、それと同じものをこの本で感じた。
    自分も命を輝かせて生きたいと強く思った。
    盲導犬がもっと増えて街中で普通に見かけるようになって欲しい。そのために自分ができることはなんだろう?

  • 動物と人との交流のお話はなんかもう無条件にいい…そして泣けてくる。
    とりわけ賢い犬はひたむきで無心に人のことを信頼してくれて、私は猫しか飼ったことがないけど、犬とも友達になりたいなぁ。

  • 盲導犬クイールは七歳の時に盲導犬としての役割を離れ、そのあとはデモンストレーション犬として福祉関係のイベントなどに参加していた。しかし、七歳という若さで現役を離れたのにはわけがあった。
    盲導犬と人間の絆を感じられる一冊。【中央館/369.275/IS】

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:369.275||I
    資料ID:50200362

  • この本を読んで盲導犬を知った
    どうやって盲導犬になっていくのか、これを読んだのなら今後盲導犬をみる目は変わるのではないだろうか。
    何度読んでも最後に泣いてしまう

  • 4-16-357260-0 151p 2002・3・10 24刷
    ○盲導犬の一生を追った実話。

  • 盲導犬ボランティアとして特別な思いがあるのだけれど、最後は涙ナミダ…

  • 小学生の時、私が初めて読んだ本です。その頃、盲導犬について興味を持っていたことがきっかけで手に取りました。
    写真も掲載されている為、より命の大切さや人の気持ちを動かす力などを感じることができ、心に響く作品でした。何回読んでも感情的になってしまい、涙なしに読み切る事は出来ませんでした。

  •  今まで、盲導犬ユーザーが書いた本じゃないんだろうなと思って、読んでいませんでした。
    あぁほんと、読まず嫌いでごめんなさい。
    短い中に、クイールに関わったたくさんの人たちの愛情を感じました。
    これは映画になる作品ですね。。

    そして、この本に登場する当時盲導犬訓練師だった多和田さん。
    先日盲導犬の里富士ハーネスに行ったとき、お会いしてお話ししました。
    それだけではなく、PR犬との体験歩行も一緒にやっていただきました。
    私、クイール読んでなくって。
    こんなすごい方だとは知りませんでした。
    夫に話すと
    「野球で一郎知らんぐらいありえへんで」
    と言われました…。
    あぁ、サイン貰っておけばよかったな、と思ったり。
    色んな人の愛情を受けて使用者と一緒に暮らしたクイールの「その後」も素敵な人生ではなく犬生だったなと思います。
    今度DVD借りて映画観てみよう。


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著者プロフィール

いしぐろ・けんご
◉著述家。1961年金沢市生まれ。叔父がシベリア抑留体験者。
映画化された『盲導犬クイールの一生』(文藝春秋)をはじめ、
『2択思考』(マガジンハウス)、
『分類脳で地アタマが良くなる』(KADOKAWA)、
『7つの動詞で自分を動かす』(実業之日本社)、
短編集 『犬がいたから』(集英社)など著書多数。
編集者としても『日本は、』(G・D グリーンバーグ/彩流社)、
『ナガオカケンメイの考え』(ナガオカケンメイ/新潮社)、
『読む餃子』(パラダイス山元/新潮社)など、
手がけた書籍は200冊以上。

「2016年 『シベリア抑留 絵画が記録した命と尊厳』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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