少年A 矯正2500日全記録

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163658605

作品紹介・あらすじ

神戸児童連続殺傷事件から七年、少年Aがついに仮退院した。医療少年院で行われた極秘の贖罪教育・矯正教育を初めて明かす衝撃のリポート!東京少年院の単独室に取り付けられたカメラで、Aの生活は二十四時間監視されていた。壁にぐったり寄りかかっている丸坊主のAは、まるで萎びた野菜のようだった。少年に生きるエネルギーを取り戻させるには、赤ん坊から育て直すプロセスが必要だ。「赤ん坊包み込み作戦」がスタートした-。

感想・レビュー・書評

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  • 過去に罪を犯した人を再び社会で受け入れることは、再犯防止と社会の安全のために必要だということはわかるが、感情が追いつかない問題に関してはどうしていいかわからない。著者は情報公開が鍵だと述べ、本書で加害者の矯正を前向きに描いているが、後半に突然の手のひら返しがある。著者の個人的な恨みなど記載する必要のない内容もある。少年Aの矯正記録も興味深かったが、読了後は執筆中の著者の心境の変化の方が気になってしまった。

  • 思ったより加害者側の内容だった。
    やっぱ日本って加害者守られてるよなーって感想。
    母親の育て方が原因だとしてもそんな子たくさんおるやろ。
    それでもあんな悪魔みたいなことしないよ。
    矯正して生き直しとか必要なのかな。殺された子は生き直しなんか出来ないのに。
    名前とかも変わって恐怖しかない。

  •  自身にとっても衝撃的で、長年その後の経緯がずっと気になってる事件の一つだ。私たちは数ある報道の中からしか、その事実を知り得ることはできない。しかし、その報道の中にある真実を見抜くことができるのだろうか。
     本書はその事実の一側面として、少年Aの矯正教育に関わる事実を追求したものである。生々しいやり取りを始めて知ることになる。そんな中で、彼に真摯に向き合い、愛を伝えてきた関係者に頭が下がる一方で、やはりどこまでも彼の真意はわからないと言わざるを得ない。
     社会復帰を成して後、遺族の想いに反し『絶歌』を出版しHPまで立ち上げて自己表現をしてきた元少年A。彼は今なお社会で何を思い生きているのだろう。そして、私たちはこの事件をどう捉えるべきか。自身の中で、課題提起させられる一冊となった。

  • 全国民を震撼させた猟奇的殺人犯がたったの14歳。これは事件もともかくこの年齢に驚いた。心を失くした少年を“人“へと導くこの少年院の教官方には本当に頭が下がった。こんな風に愛情を持って、行動の逐一を見逃さず共に笑い悩み…その中でどの位の人間性が育まれたことか。文中に「再犯の恐れなし」とあるが、私も同意する。こんなに緻密に組まれた愛情プログラムをうけたのだ。彼がもしまた疼く時があったとしても、この教官達の顔が愛が間違いなく疼きを抑える特効薬だと信じて止まない。最後に著者が受けた残念な対応は許されることではない

  • 矯正教育はどこまでのことができるのか。
    社会に出てやっていけるレベルまで成長できる子とできない子の差異は何だろう。

  • 最後まで読んで、この著者は本当に取材をしたのだろうか?記載内容が信用に足るものだろうか?という疑問を抱いた。

    直接取材して得られた情報なのか、伝聞情報なのか、他文献からの引用なのか、著者の想像なのか、よく分からないので全体として信用のならない本という評価になる。

  • 「絶歌」の刊行で再び話題となった少年Aだけど、若い人たちにしてみれば、あの恐ろしい事件自体をよく知らない人も多いのかも。衝撃的すぎる事件を起こした彼の矯正の記録は凄まじく、苦労と愛に満ちていたようだけれど、どこまで成功しているのかわからないままに進められていた。「絶歌」の後となっては、全てマヤカシだったのか…とさえ思えてしまう。

  • (2015.08.24読了)(2015.08.21借入)
    【※刺激的表現が含まれていますので、心臓の弱い方はご注意ください※】
    1997年の神戸児童連続殺傷事件の犯人である「少年A」が逮捕されてからどうなったのか?
    その疑問に答えてくれるのがこの本です。
    少年Aの父母の手記、被害者の親御さんがつづった手記、等を読んでも少年Aがなぜあのような犯罪を犯したのかが、見えてきません。
    この本によると、犯行の原因は、「男子としての性中枢が未発育だったことによる」ということです。表現を変えると「性的サディズム」というのだそうです。
    脳とか精神の発達というのは、不可思議です。
    14歳で二人も殺害しているので、扱いが異例ずくめだったようです。
    医療少年院で四年間治療し、一年間の職業訓練の後、再び医療少年院で一年半過ごしたのちに、仮退院し、その後、正式退院したものと思われます。

    1982年7月7日、少年A誕生
    1997年3月16日、山下彩花ちゃんと堀川ひとみちゃんを襲う
    1997年5月24日、土師淳君殺害
    1997年6月28日、少年Aを逮捕
    須磨署に拘置
    1997年7月25日、神戸少年鑑別所へ
    1997年8月4日、第一回審判(60日間の精神鑑定、鑑定留置を命じた)
    1997年10月6日、第二回審判
    1997年10月9日、第三回審判(Aの両親出席)
    1997年10月13日、第四回審判
    1997年10月17日、最後の審判(「医療少年院送致決定」)
    1997年10月20日、関東医療少年院へ(東京都府中市)
    三カ月、心理テスト
    四階の「精神寮」個室へ
    二年半過ぎたあたり
    『淳』(新潮社刊)を読ませた
    2001年1月、両親との面会再会
    『「少年A」この子を生んで……』「少年A]の父母著、文芸春秋刊、も読んだ
    三年目くらい
    『彩花へ―「生きる力」をありがとう』山下京子著、河出書房新社刊、を読ませた
    2001年11月27日、東北少年院へ(宮城県仙台市)、職業訓練の為
    2002年7月12日、審判開催、2004年12月31日まで少年院収容継続を決定
    2002年11月、関東医療少年院へ還送
    2004年3月10日、少年A仮退院
    2005年7月6日まで保護観察の予定(23歳直前まで)

    【目次】
    序章 入院
    第一章 事件
    第二章 審判
    第三章 精神寮
    第四章 生い立ち
    第五章 疑似家族
    第六章 贖罪
    第七章 退院
    終章 神戸市須磨区
    あとがき
    参考文献

    ●自殺の恐れ(14頁)
    Aには常に自殺の恐れがあった。しかもこの医療少年院で、やがて良心が目覚めていくとすれば、その過程で自分が犯した罪の重大性と残虐性に直面し、絶望して自殺に走る恐れも否めなかった。
    ●美術(17頁)
    たった一つ、Aが興味を示したジャンルがある。
    「入院当初、美術の教科書を食い入るように見ていました」
    図書室から美術全集を借り出し、読書の時間に、自分の部屋で静かに画集を見る。特にサルバドール・ダリが大好きで、(略)
    もう一つのお気に入りがミケランジェロの「ダビデ像」だ。
    ●性的サディズム(18頁)
    Aの「性的サディズム」は、鑑定留置時に行われた精神鑑定の、最初の質問で明らかになった。
    「いやだったら答えなくてもいいけれど、自慰行為はどのようなシーンでする?」
    「中学一年生の時に、人間を解剖し、貪り食うことを想像して自慰行為をはじめました」
    Aの性的衝動は、ホラービデオ、動物への残忍な虐待、そして殺人妄想によって引き起こされた。
    ●事件の原因(21頁)
    「100%、男子としての性中枢が未発育だったことによる問題」
    関係者は事件の原因をそう分析した。
    ●死にたい(23頁)
    「もともといつか捕まって、人を殺した自分も殺される、死刑になると思っていた。社会復帰なんかしたくない。このまま施設内の静かな場所で早く死にたい」
    ●医療少年院(60頁)
    医療少年院とは、少年審判で「心身に著しい故障がある」とされた十四歳以上二十六歳未満の者を収容する施設で
    ●電話(66頁)
    少年Aに関する報道が過熱し、新聞、テレビ、雑誌で取り上げられる度に、「あんなやつは殺せ!」「なぜ生かしておくのか!」などと、関東少年院の電話は昼夜を問わず鳴り響いた。
    ●母親(73頁)
    親の教育方針に偏りがあったことは否定できない。スタッフも「なぜ、これほどまでに母親を怖がり、心を閉ざしてしまったのか」と理解に苦しんだ。
    ●漢字(114頁)
    月に一度、関東少年院では「漢字昇級テスト」が行われる。十級から始まり三段まであるテストだが、Aは漢字を覚えるのが得意だったため、かなりの漢字を覚えた。後に漢字検定一級に合格している。
    ●ノート(118頁)
    通常、少年たちは教官と、「交換ノート」と「内省ノート」の二種類をやりとりする。「交換ノート」は雑談も兼ねて、生徒が考えたことを自由に書くという形になっている。「内省ノート」は、担任の教官がテーマを出すなど、自分の犯した非行についてのみ取り上げ、生徒が綴っていく。書かれた内容に対して教官がコメントを加え、それをさらに深めた問いを生徒に投げかける。
    ●更生(120頁)
    「酒鬼薔薇聖斗」と名乗った少年の更生には、「性的サディズム」と「対人障害」という二つの病理の克服が必要だった。
    ●人格形成(121頁)
    家庭における親密体験の乏しさの背景に、弟いじめと(母親からの)体罰との悪循環の下で「虐待者にして被虐待者」としての幼時を送った。
    ●清め(145頁)
    Aは「聖なる実験」のため彩花ちゃんをハンマーで殴って殺害、そして、「自分の血は汚れているので、純粋な子供の血を飲めば、その汚れた血が清められる」と思い、ビニール袋に溜まっていた淳君の血を口一杯飲んだ。それはまるでホラー映画、オカルトの儀式のようで常軌を逸している。

    ☆関連図書(既読)
    「彩花へ―「生きる力」をありがとう」山下京子著、河出書房新社、1998.01.02
    「彩花へ、ふたたび―あなたがいてくれるから」山下京子著、河出書房新社、1998.12.25
    「彩花がおしえてくれた幸福」山下京子著、ポプラ社、2003.11.09
    「「少年A」この子を生んで……」「少年A]の父母著、文芸春秋、1999.04.10
    「淳」土師守著、新潮文庫、2002.06.01
    「犯罪被害者の声が聞こえますか」東大作著、新潮文庫、2008.04.01
    「なぜ君は絶望と闘えたのか」門田隆将著、新潮文庫、2010.09.01
    「天国からのラブレター」本村洋・本村弥生著、新潮文庫、2007.01.01
    (2015年8月28日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    神戸児童連続殺傷事件から七年、少年Aがついに仮退院した。医療少年院で行われた極秘の贖罪教育・矯正教育を初めて明かす衝撃のリポート!東京少年院の単独室に取り付けられたカメラで、Aの生活は二十四時間監視されていた。壁にぐったり寄りかかっている丸坊主のAは、まるで萎びた野菜のようだった。少年に生きるエネルギーを取り戻させるには、赤ん坊から育て直すプロセスが必要だ。「赤ん坊包み込み作戦」がスタートした―。

  • 矯正に関わった人たちが、こんなに努力したのに、少年は「絶歌」を書く大人になってしまったんですね。
    矯正教育って難しい・・・。

  • 【図書館本】話題の『絶歌』を読む前に(図書館でリクエストをかけた)、ほとんど知らなかった事件のあらましを知るために。
    当時小学生だった自分は、事件があったという事実しか知らなかった。残虐で胸が痛くなる事件、胸糞が悪くなる加害者の心理。14歳という年齢で国家に守られてる様子に、何だかなぁ……とやりきれない思い。
    矯正(という言葉は何か違う気がするが)内容は興味深く読んだが、加害者も被害者だ、母親の責任だと強く読み取れてしまう表記が多くそれも違う気がするのと、終章やあとがきの蛇足感、どうでもよさが何とも……。評価が低いのも頷ける。
    近いうちに被害者・加害者の親の手記も読んでみようと思う。

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著者プロフィール

ジャーナリスト・ノンフィクション作家。日本発達障害システム学会員。地方局アナウンサーからブルームバーグL.P.でファイナンシャル・ニュース・デスクを務め、独立。著書『少年A矯正2500日全記録』(文春文庫)など。

「2018年 『となりの少年少女A 理不尽な殺意の真相』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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