「反日」解剖 歪んだ中国の「愛国」

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  • 文藝春秋
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レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163662305

感想・レビュー・書評

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  • 2005年に書かれているので変化の早い現代中国について書くには少し古いかもしれないが、大筋は自分自身が2015年から2017年に北京に滞在した経験から、あまり変わっていないのではないかと思われる。著者本人も最後に明記しているが、強い思い入れや愛情もある中国にこれだけ批判的なことを書いて失ったものの大きさを噛み締めているとのこと。確かに中国に直に触れたことなく、この本を読むとただ嫌いになってしまうだろう。ただ反日に限らず、中国代理区内で生まれて育った人々は、特に歴史や政治、イデオロギーに関してどこかロジックが破綻している・・というかツッコミどころがある理論武装とそこを突っ込むと感情的に怒り出す傾向がある。海外に出る中国人も増えた今、香港やオーストラリアでは摩擦が増えているというニュースも散見される。やや危ないモノを感じるが、これから中国・中国人の影響力が増していくなか、どうなっていくのだろうか。実際のインタビューやあらゆる情報ソースを元にした力作でした。

    以下、気になったところを抜粋。
    P.23 西安での学生の寸劇事件に関連して
    些細なことで「馬鹿にされているのではないか」と思ってしまうほど、中国の若者に「日本人=悪」の公式が根付いている事だろう。岡田さんは言う。「中国で一番やるせなかったのは、学生や友人が僕に「あなたは悪い日本人ではないですね」と言うんです。彼らは日本人は悪いという先入観で見ているんです」

    P.35 北京サッカーアジア杯の暴動に関して
    川口順子外相は、「中国は最大限の努力をしたと思う」と、邦人の負傷者がでなかったことを評価したが、これには同意できかねる。武装警察を大量動員して武力で民衆の反日感情を弾圧したことを評価するのではなく、本来中国に対して発言すべきは、正しい日本知識を正確に報道する「日本情報の自由化」を求める事だ。普段、歪曲された日本像を民衆に与えている中国のマスコミ報道や愛国教育は、中国政府の意向が大いに働いているのだから。しかも今回の反日暴動を中国のメディアは報道していない。基本的な知識がないのに日本を敵視するなと言っても無駄である。誤った知識から形成された民意は、正しい知識によって変えることができるはずなのである。

    P.46
    実際に彼ら(反日団体)と話してみて意外だったのは、中には過激で偏向した人もいますが、ほとんどの人が対日関係の認識以外では非常に真っ当な考え方の持ち主だったということです。

    P.50
    中国の教育で問題なのは、「中華」という一つの世界でしかモノを見ていなくて、海外の世界についてきちんと教えていない事です。その結果としてインターナショナル・スタンダードが身についていない。

    P.150
    「日本人は中国を語るときよくODAを持ち出すが、中国の普通の人々の心に届き、感謝されるような援助をすべきではないのか、よく考えて欲しい」それにしても、日本のODAは形式上、中国政府からの要請で行われているわけで、しかも日本は既に総額で約3兆円を超える巨額を供与しているのだから、盧雲飛がその使途を問いただす相手は日本ではなく、中国政府だろう。すべての反日青年に言える事だが、毒野菜は言うに及ばず、新幹線購入問題にせよODAにせよ、本来であるならば自国の政府にたいして疑問の目を向け、改善を迫るべきところにどうして反日が出てくるのか。「日本の軍国主義化」を懸念する前に、なぜ自国の核に思考が及ばないのだろう。中国で教育を受けて育った優等生は、自国政府にあまり疑念を持たず、なぜ反日感情ばかりが増幅されるのか。

    P.157
    インタビューに応じてくれた青年達は、驚いたことに日本に関する知識以外では、至って常識的な人たちばかりであった。

    中核をなすメンバーに共産党員が極端に少ないこと、非党員でありながら党に絶対的信頼を置いている者が多い点も気になった。中国社会において入手できる日本情報
    、つまり「中国共産党の視点」というフィルターをかけた日本像を、絶対と信じて、モノを斜めから見たりツッコミを入れたりすることのない、ある意味純粋で「優等生」な青年たち。

    これまで中国共産党は、プロパガンダによってムーヴメントを生み出し、自在に世論を操ってきた。だが近年、民衆は上からの指導を容易に受け付けようとしない。愛国青年たちの活動は、このところ国家の実益を追求する政府官僚との間に軋轢を生んでいる。当面の間は当局と、中国共産党自らが育てた愛国青年たちの「微妙な関係」は続くだろう。

    P.178
    記念館を出て、建物の壁に目をやると、貼り付けてあった大量の「愛国主義教育基地」プレートの中に「北京日本学研究センター」のものがあった。北京日本学研究センターは、日本の国際交流基金が「対中国特別事業」と称して、多額のODAを投入し、北京外語大学内に研究棟を建設、書籍を寄贈し、日本人学者を派遣して研究している研究機関だ。果たして日本側関係者はこの展示内容を知っているのだろうか。

    P.179
    それにしても、新中国誕生後の政治弾圧で不条理に張られた汚名の返上のために、なぜ日中戦争期に抗日的であったという歴史的に更に遡った昔の事実を、記念館を立ててまで殊更にアピールしなくてはならないのだろう。

    P.321
    このところ日本の政治学者の間でよく言われているのが、次のような論理である。「中国は社会主義ではないのに一党独裁権を保持しているわけで、それが正当化されるのは、開発独裁をしているからだが、歴史を振り返れば開発独裁は過激的な政治形態で、失敗すれば・・・つまり権威主義側の経済パフォーマンスが悪すぎれば、フィリピン・マルコス政権や南米の軍事政権のように打倒される運命にあり、成功すれば不必要となる。このように見れば現体制は、政治的に脆弱だ。複雑な国内問題を大量に抱え、その解決が追いつかず、社会に不満分子が蓄積している。不安定な政権の中で自らの政権を維持していくために、共産党は体制を正当化するイデオロギーが欲しい。社会主義理論に変わってナショナリズムが台頭したのはその辺りに原因がある。抗日戦争を勝ち抜いて今があるという「人民の歴史」を常に語り伝え、自らの存在価値を人民に誇示するため、構造的に反日を掲げざるを得なくなっている」

    P.324
    日本語書籍を通じ日本を深く理解し、中国に日本情報を発信してきたものの、日本には一度も行ったことがないという高齢知識人を、私は程慎元以外にも何人か知っている。私は日本の対中交流事業に少々懐疑的である。国費で何度も招聘している中国人は、中国共産党政府の公式見解を、日本に伝えにくる政治エリートがほとんどではなかったか。日本を理解して、日本のありのままの姿を中国に紹介し続けた、中国の草の根の人々を、日本は大切にしてこなかったのではないか・・・。

    P.327
    戦犯管理所などからの帰国者について、日本人捕虜は「洗脳されたのだ」とか、中国人は「思想改造に成功した」とか言うけれど、そうではなく、日本人に体当たりで接した現場の中国人の個人的魅力が、彼らを親中派にさせたのだと私は思っている。現在の中国には、日本人を感動させる魅力ある人材が、日中交流の先端に存在しない。また、戦中戦後、日本人が敬愛した知日派中国人たちは、ことごとく反右派闘争や文化大革命で日本との繋がりを問題視され、強制労働送りになったり、命を落としたり、打倒された。政治運動で不当な扱いを受けた日本専門家への「平安」(冤罪を謝罪すること)は、中国で十分行われていないと私は感じる。終戦直後の、日本人捕虜に真摯に接した清廉な中国共産党員の亡霊に、自らの出世しか考えていない後代を叱って頂きたいものである。

  • [ 内容 ]
    反日運動家の薄っぺらな日本認識、反日教育基地のデタラメ、笑止千万な反日ゲーム・映画・テレビ──これが反日中国の現実だ!
    反日の実態を探って、自ら中国へ渡り、誰よりも早く反日人士から直接取材し、冷静な分析を加えてきた著者による衝撃のレポート。

    [ 目次 ]
    第1章 近年の中国青年による反日運動(西安寸劇事件―日本人留学生、「恐怖の一夜」を語る;北京サッカーアジア杯決勝戦反日暴動―北京・済南現地ルポ/富坂聰氏との対談・試合後、北京は「天安門事件」寸前だった ほか)
    第2章 反日活動家たちの素顔(「反日」を煽り立てる中国の「新聞工作者」;尖閣上陸で名を馳せた「中国反日活動団体」本拠地訪問記;中国「反日」運動家“紳士”録)
    第3章 愛国主義教育ってなんだ?(一直轄市十四省二自治区にまたがる「抗日スポット」;共産党プロパガンダの大行進 愛国主義教育基地を往く)
    第4章 ドラマからゲームまで、中国「反日文化」はここまでやる(イケメン八路軍が皇軍エロオヤジをぶった斬る反日ゲームをクリアした;露出で売らんかな!商売根性丸出し「反日Vシネマ」;抗日戦争映画から最新反日メロドラマまで“極悪なる日本兵”の描かれ方)
    第5章 中国の闇をみつめる(薬物大国中国と、密輸で逮捕される日本人;ネット規制「違法・不良情報通報センター」の怪―ポルノと民主を考える ほか)

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 2009.07.26

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