ディープ・スロート 大統領を葬った男

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163675800

感想・レビュー・書評

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  • 2019年12月23日読了

  • まぬけな不法侵入事件だったのに、犯人が多額の現金と盗聴器を
    所持していたことからアメリカ政府史上最大のスキャンダルとなる
    ウォーター・ゲート事件の幕が開いた。

    アメリカ・メディアはこぞってこの事件を取り上げ、各紙が報道合戦を
    繰り広げる。

    報道をリードし、後に顛末をまとめ、調査報道の金字塔と言われた
    『大統領の陰謀』を書いたのが「ワシントン・ポスト」の若手記者、
    カール・バーンスタインと、本書の著者であるボブ・ウッドワードだ。

    彼らの報道の裏には複数の情報提供者がいた。その中でも最も
    重要な情報提供者が存在した。ディープ・スロートと呼ばれた、
    完全なる謎の存在。

    海軍士官だった著者が、偶然、ディープ・スロートと出会い、言葉を
    交わす場面から、ディープ・スロートの家族と弁護士が正体を公に
    するまでを描いている。

    その正体が判明するまで、ディープ・スロートではないかと疑われた
    人たちが何人もいた。ディープ・スロートと接触を持った著者は、
    正体を憶測する記事や本が出る度にコメント求められる。だが、
    ヒントになることさえも一切口にしない。

    それはジャーナリストとしての矜持だから。情報源については
    提供者の生前には絶対に正体を明かさないとの。

    ディープ・スロートはペンタゴン・ペーパーズのエルズバーグのように
    内部告発をした訳でも、文書を持ち出した訳でもない。著者が事件の
    核心に迫るようヒントを与え、正しい方向に導いただけだ。

    しかし、それはかなりの程度、捜査状況に精通している者にしか
    出来ない誘導だ。事件当時の、著者とディープ・スロートとの
    やりとりは緊迫感に溢れている。

    事件から30年近く経って、著者は再びディープ・スロートと接触する。
    しかし、再開したディープ・スロートは昔日の彼ではなかった。

    認知症を患い、過去のほとんどを思い出せない。あの頃の彼と、
    今の彼とは同じ人物ではない。ならば、あの時、正体を明かさない
    とした約束は無効ではないのか。

    いや。ディープ・スロートは覚えていたことがある。自身の上司であり、
    FBI帝国を作り上げたエドガー・フーヴァーのこと。そうして、著者と
    友人であったこと。

    この再会の部分がとても切ない。思い出せないことばかりが多く
    なったディープ・スロートの記憶を、無理矢理こじ開けるような
    ことを控えた著者の気遣いのなかで交わされる会話に泣けて
    来る。

    露悪的な暴露本ではない。ディープ・スロートの役割、加えて情報
    提供者とジャーナリストの関係が分かりやすく書かれている。

    ディープ・スロート。元FBIのNo.2。彼の名はマーク・フェルト。
    2005年にディープ・スロートであることを公表し、2008年にこの
    世を去った。

    彼が何故、ディープ・スロートとなりニクソン政権崩壊に手を貸した
    のか。動機は永遠の謎となった。

  • 2005年刊行。ニクソン米国大統領を失脚させたウォーターゲート事件。著者は、この事件報道にて名を上げたが、その主たる情報源となったのが、ディープスロートこと、フェルト元FBI副長官である。フェルトの隠れた面を明らかにし、事件の一端を描写するが、最も知りたい情報漏洩の動機は判然としないままである。隔靴掻痒の感なしとしない。

  • ウォーターゲート事件というのは、なんとなくでしか知らなくて「ニクソン大統領が辞任に追い込まれた政治犯罪」と言われると「あぁそうだったかな」というレベルでしかなかったけど、1970年代初頭の話を、30年以上経ったあとに秘密を公開するというのはすごいことだ。まさに、事実は小説より奇なりを実感する。ちょうど、日本の記者クラブについての新書を読んだあとだからというのもあり、ウッドワードの調査報道のやり方は本当にすごいと思われた。独自のルートを開拓して、時にはしつこく、悩みながら真実を暴いていく。
    この本はウォーターゲート事件は半分ぐらいで、あとはその後ディープ・スロートとどう関係していくか、いつ公表するかという過程を書いている。ディープ・スロートであるマーク・フェルト側の立場で考えてみてもおもしろい。自分の理想とする方向性を、どうやって導くか。自らの組織ではそれが達成できない場合に、マスコミへのリーク(厳密にいえばリークではないが)によって社会を導くというやり方は一つの考え方だと思う。
    ひとつ、情けない話をすれば、向こうの名前に慣れておらず、この人誰だっけ?感を多々感じた。もともとの無知のためという面もあるが。。。なかなか難しいところ。

  • 「ディープスロート」とは誰なのか、ウォーターゲート事件に興味のある人は誰もが推理したはず。本書でその正体が明かされます。「大統領の陰謀」と併読すると、更に面白く読めました。

  • 【概要】●20世紀アメリカ史における最大の政治スキャンダル“ウォーターゲート事件”。
    そのきっかけは、ウォーターゲート・ビル内の民主党本部に盗聴器を仕掛けようとした五人の男が、警備員に掴まったことだった。
    当初、ただの不法侵入として片付けられようとしていたこの事件に隠された事実を、調査報道によって白日の下に曝し、当時の大統領ニクソンを辞任に追い込んだのは、ワシントン・ポストの新米記者だったウッドワードとバーンスタイン、そして内部からの情報提供者“ディープ・スロート”。
    ディープ・スロートとは何者か。
    彼の正体はその後も秘密にされ続け、多くの人々が何者か論じ合い、多数の研究書が出版された。
    そして,事件から33年を経た2005年,ディープ・スロートは当時のFBI副長官であったことが、ディープ・スロート本人の孫娘によって、明らかにされた。
    本書はそれを受け、ボブ・ウッドワートが彼と出会った経緯,情報源の秘匿と理由,その後の彼との関わりについて、語った本である。  ●・・・ちうわけで、「ヴァニティ・フェア」でスッパ抜き記事が出た後、10日間で原稿に手入れを行い、あっちゅうまに出版してのけた告白本。
    もともと、ディープ・スロートことマーク・フェルト没後に出版する予定だった原稿があったので、これほど早く出来たのですね。
    荒川静香が金メダルを獲った翌日、さくっと特集を1本まとめて流したNHKのようなもの。古。私は『大統領の陰謀』を読んだことも観たこともなかったので、これで、ようやくウォーターゲートの概要がわかりました。
    ネタがいいので、普通にエンターテイメントとして、読めなくもないと思います。 ●なお
    孫娘が暴露した頃には、フェルトさんはだいぶ老衰が進んでいて、自分がなにをやったか、すでにあんまり記憶になかったようです。孫め・・・。

  • 知識としてはなんとなく
    知っていた、ウォーターゲート事件や
    情報漏えい者の正体
    しかし、そのことのもつ意味を
    まるでわかってなかった自分に気づかされた。
    日本に置き換えて考えもしなかったしね
    歴史をあまりにも過去のただの事実としてしか考えていなかったのかもね

  • ディープストートの正体は当時のFBIのNo2、マーク・フェルトだった。ニクソンはフェルトがディープスロートだというのをかなり早い段階から知っていた。知っていたにも関わらずフェルトが正面切って告発に乗り出すのが怖くて手を出せなかった。
    じつはウォーターゲート事件をしのぐような大きな事件が闇に葬られているとか?

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著者プロフィール

米国を代表するジャーナリスト。1943年生まれ、イェール大学卒。50年間にわたりワシントン・ポスト紙の記者、編集者を務め、ニクソンからバイデンまで歴代大統領を取材・報道しつづけている。
ウッドワードは同紙の社会部若手記者時代に、同僚のカール・バーンスタイン記者とともにウォーターゲート事件をスクープし、ニクソン大統領退陣のきっかけを作ったことで知られる。このときの二人の活動から「調査報道」というスタイルが確立され、また同紙はピュリツァー賞を受賞した。ウッドワードはその後も記者活動を続け、2002年には9.11テロに関する報道でピュリツァー賞を再度受賞。
『大統領の陰謀』『ブッシュの戦争』『FEAR 恐怖の男』『RAGE 怒り』など、共著を含めた20冊の著作すべてがノンフィクション書籍のベストセラーリスト入りを果たしている。そのうち14冊は全米№1ベストセラーとなった。現在はワシントン・ポスト紙アソシエイト・エディターの責にある。

「2021年 『PERIL(ペリル)危機』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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