新しきこと面白きこと サントリー・佐治敬三伝

  • 文藝春秋 (2006年3月14日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (376ページ) / ISBN・EAN: 9784163679709

みんなの感想まとめ

この作品は、サントリーの創業者である佐治敬三の伝記を通じて、彼の事業と文化への貢献を描いています。佐治は「生活文化企業」としてのサントリーを築き、ウイスキーや文化事業における先駆的な取り組みを行い、そ...

感想・レビュー・書評

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  • サントリー佐治敬三のことを伝記のように書き、それぞれの事業を文化史のように書いてある。
    長い。
    功績の大きい人だったことは分かった。
    現代にもこういう人はいるんだろうが、時代というのもあるのだろう。
    以前にもウイスキーに興味を持ったことがあったが、サントリーはなかなか面白い。
    しかし、繰り返したが話が長い。

  • サントリー二代目経営者の佐治敬三の伝記。
    父・信治郎と同じくサントリーと駆け抜けた生涯だった。

    タイトルでもある「新しきこと 面白きこと」を求め続けた敬三。
    その元となった言葉はp50に登場する。
    「エトヴァス・ノイエス」(何か新しいことはないか)
    大学で教わっていた教授がドイツに留学し、ノーベル科学賞受賞博士のもとで研究していたとき、その博士が毎日欠かさず朝夕二度、「エトヴァス・ノイエス?」と尋ねたというエピソード。
    真理の探求に休みはない。そのくらいの心がけで研究しなければと教授は思い返したという。
    その話から悟った佐治敬三の、常に革新を求め続ける、真剣勝負の毎日が、サントリーを進歩させつづけたのだな。

    2~4章の今も人気のウィスキー製造や、広告、ビール業界参入についての部分はのめりこんで読んだ。
    なかでもウィスキーに込められた思いに感動した。

    サントリーウィスキーの歴史は日本ウィスキーの歴史だ。
    スコッチの蒸留所を訪れ、それまで父が築いてきた道、山崎蒸留所が間違っていなかったことを確認したあと、敬三は決意した。
    スコッチはスコッチの道を往け。日本のサントリーはまた堂々と我が道を往くのみ。p64

    原酒や樽の種類についても説明されていて(p66,p86 etc..)、分かり易い。
    またそれぞれのサントリー銘柄へ込められた思いには、今すぐにでも飲みたくさせるものがあり、部屋に飾っているミニチュアボトルを眺めながら読んだ。「山崎」のラベル文字は、敬三本人によるものだと初めて知った。(p107)「響」の着想は、ブラームスの交響曲第一番から得たというのも興味深かった。No music, No whisky.

    敬三は、ウィスキーをアルコール飲料ととらえ、酔いに至らしめる飲物と考える生理的なとらえ方を強く否定した。「豊かな時間」の創出という文化的効用を強調した。(略)良い製品を、じっくりと時間をかけてつくり、人々にゆったりとした楽しい時間を提供する──(p113)

    ボトルに封じたのは、降り積もった時間の宝石であり、人々のくつろぎのひとときを開く豊かな時間であった。(略)敬三は、生活文化全般のマスターブレンダーでもあったといえるのである。(p114)

    先にもミニチュアボトルについて書いたが、僕は空けた酒のボトルを部屋に飾っている。その中にはウイスキーの残り香と共に楽しかった思い出の時間が詰まっていると思う。それ以前に、ウィスキー自体にも、たくさんの人々や自然が関わってきた時間が詰まっていたのだなとこの本を読んで実感した。これからひとりで飲むときには、そうした、作り手の時間を共有しながら飲みたい。


    地元関西経済界にとどまらずヨーロッパのワイン農園再興にまで乗り出し、また芸術、音楽などの文化振興と奔走する姿はとてもひとりの人間の一生とは思えない。
    開高健、カラヤン、安藤忠雄、歴代政治家など、さまざまな人物との出会いから道が開かれ、ひとりの男の人生が、小説のように面白いものになっている。
    子供たちが額の黒子をボタンのように押すと敬三が“ビー”と声を出すというエピソードがとてもいい役割を果たしていた。長女の結婚前と敬三の葬儀での“ビー”には、不覚にも泣きそうになった。(p286,p347)
    他にも面白いエピソード満載で、読んでいて自然に心楽しくなってくる。

    ビール一滴で蕁麻疹が出るほど酒に弱かったにも関わらず、人間・佐治敬三に惚れてサントリーに入社したという、元同社コピーライターの著者が書く文章が力強く、サントリーの世界に引き込まれるようだった。

    「真善美」「美感遊創」「エトヴァス・ノイエス」「やってみなはれ」

    どれも心に留めておきたい言葉である。

  • 「なんでや?」

     カランコロン・・・夏はこの氷の音がなんとも涼しげ大人な味わいウイスキー。最近ではハイボールが人気を上げてきている。サントリーといえば誰でも知っている今や大手企業である。著者は廣澤昌。もちろんサントリーの社員である。しかし彼はビール一杯で蕁麻疹が出るほど酒に弱かった・・・が人間、佐治敬三にほれこんでサントリーに入社したという。この本はその佐治敬三の生い立ち・お酒にこめた思いが詰まった一冊である。今や季節は夏真っ盛り。私たちが「とりあえずビール!」「ハイボール1つ!」と頼むお酒の裏側をちょっとのぞいてみてはどうだろうか?
     私は本の中にとても心に残る一説があったので紹介したいと思う。『敬三氏が父鳥居信治郎の仕事を代わりにやるようになった頃、業務中にたびたび姿を消すことがあった。研究熱心な彼のことだから研究室かと思いきやそこにも姿がない。そういう時はたいてい山崎の蒸溜所にいたという。彼は研究室で父が決めたレシピを見て、同じ原酒を取り寄せ机に並べ、計量しつつシリンダーに加えたりしていた。加えながらその変化を見て香りや味わいを確かめていくのだ。そうしないと父のレシピは解読できなかった。そしてわからないときは、山崎蒸留所に電話をかけ、我慢できない時は蒸留所にでかけていった。彼は毎日新しいことを一つでも知っておきたかったのだ。だから蒸留所にいったら技術者たちを好奇心から「なんでや?」と質問攻めにすることもしばしば・・・。当時の醸造学を大学で学んだ技術者たちは職人の経験に学ぶしか手がなかったため彼の質問には答えられなかった。だから敬三氏の「なんでや?」の質問は脅威だったという』
     このエピソードには彼の好奇心がにじみ出ていると思う。どうしてそうなるのか、なぜその結果になるのかを知ることは新たな発見をするのにつきものである。私も料理をするときよく彼の「なんでや?」と同じ気持ちになる。例えば大根を買うとき、なぜ根本よりも頭のほうが甘いのか?とか川魚と海魚では身と皮の焼く順番がどうして違うのか?とか様々な「なんでや?」にあたる。自分の好きな料理について探求していくことはとても面白い。いつも当たり前と思っているところに生まれる「なんでや?」あなたにはないだろうか?
     今日もお風呂上りに一杯!という方。片手にお酒、片手にこの本をもってお酒の奥深さについて考えてみてはどうだろう?

  • サントリーを「生活文化企業」と規定し、サントリーホール、サントリーミュージアム、サントリー美術館を初め様々な文化事業に手を入れていく佐治敬三。
    そんなサントリーの紆余曲折を描く本。
    この一冊にそのエッセンスがたっぷりつまっています。

    気になった箇所

    P.164
    商品を売るためのあの手、この手が、時代を先取りする創意と積極さをもって次々に展開された。
    あらゆる機会、媒体はすべて宣伝の材料とされ、奇抜と映るまでの才気も、暴走と見えるまでの強気も、後で振り返れば正確で精妙な販売促進活動の軌跡を描いていた。信次郎の商いの勘は今日の全マーケティング領域に及んでいた

    P.165
    その製品の付加価値を高める広告、心を豊かにする広告をめざした。

    P.187
    チャレンジが失敗しても責任は問わない。これが「やってみなはれ」精神の真髄であり、しくじった担当者は責任感から「なんでや」と問い返し、いっそう頑張っていくのである。

    P.206
    敬三は、文化のため喜んで金を使った商人たちの思いには、牢固とした中世の停滞に対する、生き生きとした反骨精神を感じ取り、共感しないではいられない。

    P.270
    『美感遊創』こそ、新しい時代の生活文化の確かな指標であり、私どもは、そうした価値を提供するカッコイイ事業、キラキラ輝く事業をやっていきたい。

    P.332
    日本の飲食文化と欧米のそれをくらべて気づくのは、視覚の日本と会話の欧米ということだ。日本での宴会は会食者が個々に会話を楽しむというよりは、集団の一員としてともに季節を感じ、集団の営みにリズムをつけていく行為であると言えよう。祭事をともに行って、一体感を確認しつつ更新していく行為なのである。
    本来、和をもって尊しとする「和」の国人がわれわれ日本人なのだ。

    P.351
    遊びをせんとや生まれけむ
     戯れせんとや生まれけん
    遊ぶ子どもの聲きけば
     我が身さへこそ動がるれ

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