マリー・ルイーゼ: ナポレオンの皇妃からパルマ公国女王へ

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (483ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163680507

感想・レビュー・書評

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  • 人非人のように言われることも多い人物だが、本書では大いなる共感をもって描かれている。
    著者の専門のためかあらぬかハプスブルク寄りで、マリー・ルイーゼは時に「誰かにすがらなければいられない弱い女性」、時に「意外に政治的才能を持ち、パルマに善政を施した慈悲深き女王」と変遷しつつもほぼ全肯定、フランツ帝も「苦悩する優しい父親」という人物造型。ナポレオンとライヒシュタット公については、マリー・ルイーゼは紛れもなく彼らを愛し、また彼らからも愛されたとして、彼女が彼らに示した(ように見えた)「冷たい」対応は、風雲急を告げる乱世の中で心ならずも起こってしまったものとされる。メッテルニヒはもっぱら悪役である。
    当事者たちの書簡からも多く引用されているので、まるっきりの牽強付会でもないのだろう。パルマの街にいまなおマリー・ルイーゼを顕彰する数々の事物が残るのは、紛れもない事実である。
    本書読了直後、「名画で読み解くハプスブルク家12の物語」(中野京子)をぱらぱらと再読したところ、あまりの温度差にのけぞった。いろいろな視点から書かれたものを読んでおくのは、とにもかくにも有用だと思った。

    2016/6/8~6/13読了

  • 高校生のとき、日本史を履修していました。
    そのため、まったくといっていいほど世界史が分からない。

    正直、イタリアが140年位前まで現在の形のイタリアじゃなかったことも知らず…

    刻々と変化していく情勢、利害の絡み合った外交、政略結婚。
    登場人物は次々と現れて、情勢は刻々と変化し、国境も支配国も変遷していきますが、とても分かりやすい解説ですんなり頭に入っていきました。

    誰かに特別肩入れして描いているわけではないのに、それぞれの人の内面が心に迫る。
    宮殿のシーン、公園を歩く女王、夜の逃亡など、
    大河ドラマを見ているかのような、臨場感が印象に残っています。

    父(ナポレオン)に憧れながらも、親ナポレオン派による担ぎ出しを恐れられて、
    結局ウィーンに閉じ込められて短い生涯を終えるプリンスが印象に残っています。
    臨終のシーンでは、涙が止まりませんでした。

    マリールイーゼには、今ここでやるべきことを淡々とやる、
    という内に秘めた強さを感じました。
    野心に燃えて目標を達成していくぎらぎらとした強さとも、
    独立心旺盛に自分の考えを貫くのでもない。

    愛する人にすっかり頼り切る柔らかい面も持ち、
    情勢に翻弄されて、時代の要請をのむ受動的な面も持つ。

    でも、出来る範囲内で、自分の考えを貫き、
    こつこつとものごとを達成していく。
    謙虚だけれど、確実に人の心をつかんでいく、
    そんな強さを持っている。

    著者の前書きで、平和には努力が必要だ、と書かれていましたが、
    本当にその通りだと感じました。
    政治には正解がなく、刻々と変化していく現実に即して、
    平和を守る手段も変えていかなければならない、
    その見極めが大切なのだろうと感じました。

    ナポレオンやメッテルニヒのように、独裁が続けば、
    どうしても本人の思考回路が固くなってしまう。
    かつて自分が威力を発揮し、信頼を勝ち得たことばかりが
    頭をよぎって、目の前の過ちを見過ごしてしまうこともある。
    成功からは、何も学べないのだろうか。
    成功からは、ただ堕ちていくことしかできないのだろうか。
    そんなことまで考えました。

    遥か昔の時代の、自分とはまったくかけ離れた身分の人の
    波乱万丈物語、ではなく、いかに生きるのかを自分の身に
    引き寄せて考えられた一冊でした。

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