交渉術

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (399ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163685809

感想・レビュー・書評

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  • 著者の外交官時代の実録であり、ロシア高官や日本の首相とのやりとりが書かれている。北方領土返還にまつわるトップクラスの交渉の実態が分かって面白く、交渉や人脈を築く際に、、いかに内在的論理を駆使する必要があるか分かり参考になる。

  • 10年前に読んだ本の再読。

    10年前はいまいち価値がわからなかったが、その後も交渉の経験をつみ、かつ、いろいろな本に触れることで、この本の価値を改めて認識するようになった。

    これまでの筆者や筆者の周りで行われた生きた交渉のエピソードを通すことで、実用的な交渉の要諦が多数描かれている。

    自分自身も交渉ごとに関わることが多くなり、筆者の描いたような場面は(外交場面とはスケールが異なるものの)何度か出くわしている。彼我の力関係の比較や、正論といったロジックだけでは無く、人間の機微を織り交ぜた交渉でないと成功は得られない、ということが大変よくわかる。

    特に、考え方や価値観が異なる者とのタフな交渉を求められる場面では、この本や「交渉力(橋下徹著)」を頭の片隅に置いて事に当たると、幾分か良い仕事ができるのではないか、と思う。

  • 本当に文章を書くことに生きがいというか息をすることのように感じていると思う。
    とてま自然な文体でロシアでの経験を中心に語っている。

  • [図書館]
    読了:2020/4/6

    掲載誌が文藝春秋というおっさん向け雑誌なせいか下世話な話もたくさん。
    でもところどころ本質をつくような言葉がある。特にロシア人の発言。修羅場の数が違うからか…


    p. 170 「どこが、普通の軍人とチェキストの大きな違いなんだい」
    「普通の軍人は部下に命令する。俺たちは、命令はしない。そのかわり、プラシュー(お願いします)と言う」
    「どうして命令しないの」
    「最終的に命令はする。その前にお願いをしてみて、部下が引き受けてくれたときにだけ、後で正式に命令する」
    「どうして」
    「難しい仕事は、部下がよろこんで引き受けない限り、うまくいかない。そのために大きな犠牲が出ることがある。インテリジェンス機関における上司と部下は、運命共同体であるという意識がなければ、よい仕事はできない。それは、命令によって実現できるようなものじゃない」

    p. 215 情報屋は会談相手に関する情報を徹底的に集める。特に相手以上に相手について知っていると言うことが、交渉で有利な立場を確保するためには不可欠だ。

    p. 217 「知ってしまうとあなたも当事者になりますよ。覚悟はできていますか」

    p. 396 ゲンナには、近未来がどうなるかがあまりにもよく見えるので、他の政治エリートから警戒されるのだ。ゲンナにいつも言われたことは二つだった。
    一つは、「過去の歴史をよく勉強しろ。現在、起きていること、また、近未来に起きることは、必ず過去によく似た歴史の雛形がある。それを押さえておけば、情勢分析を誤ることはない」
    二つ目は、「人間研究を怠るな。その人間の心理をよく観察せよ。特に嫉妬、私怨についての調査を怠るな」

    p. 396 メドベージェフ大統領、プーチン首相が現在進めている権威主義的な国家戦略は、1990年半ばにエリツィン提案していた内容だ。
    →自分がシナリオを描いているから、近未来がどうなるのかよく見えるのだ…あの人と同じだ。

    p. 360 「何も見返りを求めず、相手の懐に入ることによって、自己の利益を極大化するのが交渉の弁証法だ」
    「本当の取引とは取引ということを相手に悟らせずに行うものだ」とブルブリスは言った。

  • 面白い。本書は交渉術を語るようなハウツー本ではない。本書はエッセイと考えてもらった方が良い。外務省、外交官の裏側がわかるような面白エッセイである。しかし、佐藤優氏と言う人物をあまり知らない方が読むと鼻につく

  • 交渉術というタイトルの通り、実践的な交渉術のノウハウ術(但し著者は失敗例と断っているが)としても読めるし、ロシア外交のノンフィクションとしても読める。

    橋本、小渕、森と三代に亘る総理大臣が語られているが、マスコミには矮小化された映し出された3総理の器の大きさも垣間見れて興味深い。

    とかくパッシング記事しか見られない官僚だが、その仕事の実態を垣間見ただけでもつくづく凄い人たちである。

    とにかくラインを引きながら読みふけった。

  • 著者「佐藤優」は、鈴木宗男の外務省絡みの事件で、逮捕、収監された元外交官。たまにテレビにでも出演しているのでご存知の方もいらっしゃると思う。 外務省のラスプーチンと呼ばれた彼が、政治家(鈴木宗男、橋本龍太郎、森喜朗、小渕恵三など)、キャリア官僚の実名を挙げ、メディアに出てくる外交の裏でどのような交渉が行われてきたかを暴露する。ただし、いわゆる暴露本的ないやらしさはまったくなく、著者の剛直な人柄を物語るような臨場感、迫力がある。また、この手の本にありがちな「昔の敵討ち」的要素もほとんどなく、むしろ実名を挙げられた政治家に対する敬愛さえ感じさせる。どこまで、実話なのか判然としないが、おそらく著者の視点からの事実なのであろう。  外交、政治などに興味がなくても、交渉を避けて通れるビジネス・パーソンは少ないだろう。という意味で、すべてのビジネス・パーソンにお勧めしたい。

  • 聖書に駆け引きを学ぶ→人間の代表として、預言者が出てきて神と交渉する。

    インテリジェンスの専門家 対象国や民族の神話、宗教経典、義務教育で使用される歴史、国語の教科書に目を通す→相手の内在的論理を捉える。

    1945年4月 ソ連軍ベルリン侵攻 日本人の帰国のための保護 小さな信用→対日参戦という陰謀を隠した。☆すごい戦略 対〇外交で活用できないか?

    ハニートラップ 恋愛を装う→当該外交官を帰国させることが唯一の処方箋

    アンドレ先生 ソープ

    有力政治家には信頼する官僚に偶然を装って、政治の世界の奥の院を見学させようとする傾向がある。

    滅私奉公 自分のカネ→権限を持って組織のカネを自由に使えるようになったとき、過去に組織のために持ち出した分を取り返してもいいという気持ちになる。

    鈴木氏が西村氏の瞳を見据えて言った。
    「これは嘘つきの目だ」
    恥を棄てるサバイバルの極意

    霞が関(中央官庁)の掟では、政治家に呼びかけるときは、その政治家が過去に占めた最高ポストの公職名を使う。従って、総理経験者は「総理」で、閣僚経験者は現役でなくても「大臣」となる。

    森喜朗氏「…いつも気にはしていた。君の書いたものはいろいろ読んでいるぞ。俺のことも書いてるな」
    「ご迷惑をおかけしています」
    「迷惑はしてないよ」
    こう話しているうちに現役外交官時代、北方領土交渉を巡って、森氏にいろいろは報告をしたときの情景が走馬燈のようによみがえってきた。

    「小渕総理とエリツィン大統領の会談で、北方領土について前進がないときは」、鈴木氏は少し間を置いてから続けた。「あんた、「赤の広場」で焼身自殺してくれないか」
    鈴木氏としては、つまらない期待値下げ工作にエネルギーを使う余裕があるならば、死ぬ気で首脳会談の準備をしろというメッセージを鈴木氏独特のブラックユーモアで伝えたのである。

    政治家の言葉を翻訳すると

    どのような激しい権力闘争でも、大きな政治目標を持っている人間には憎しみを超える何かがある。

    エリツィン 晩餐会欠席→合意文書を事務局で折衝していることにする。→健康問題に関する質問なし

    政治家のスイッチを見抜く訓練 動物園→猛禽類を観察

    外務官僚だって人間だ。血もあれば、涙もある。チェチェンにあけるロシア軍の人権侵害、蛮行には憤りを覚える。しかし、外交戦略の組み立ては国家を主語にして行う。国益増進の観点から、政策を組み立てるのが、外務官僚の職業的良心なのである。

    森氏は、機中記者会見の後、あえて私の席に立ち寄り、周囲の外務官僚に聞こえるように、私を評価する発言をして、私の外務省内における立場を強化しようとしたのである。

    米原万里 スハーノフは少し手の込んだインテリジェンス工作を行った。

    政治家の動機は名誉か利権か

    命のビザの名誉回復 イスラエルユダヤ人の世界への影響力

    ほんものの政治家の意思疎通が行われる様子

    叱られた経験がない→叱責→動物的恐怖心を感じてしまう。

  • 元外交官の佐藤さんが北方領土返還交渉の実相、インテリジェンス活動、国際政治の実情を通じて国家、組織、個人の関係の本質をえぐります。すごく参考になりますね。

  • ◎1800円
    ●深い世界感がある。
    ●視野を広げるには良い

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著者プロフィール

1960年1月18日、東京都生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了 (神学修士)。1985年に外務省入省。英国、ロシアなどに勤務。2002年5月に鈴木宗男事件に連座し、2009年6月に執行猶予付き有罪確定。2013年6月に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』(新潮社)、『自壊する帝国』(新潮社)、『交渉術』(文藝春秋)などの作品がある。

「2023年 『三人の女 二〇世紀の春 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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