失われるアジアのふるさと ミャンマー

  • 文藝春秋 (2008年6月13日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (208ページ) / ISBN・EAN: 9784163701400

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

軍事政権下のミャンマーの市井の人々や文化に焦点を当てたこの作品は、旅行記としても楽しめる内容です。特に地方都市の詳細な描写が印象的で、ミャンマーの現状や人々の生活を身近に感じることができます。読みやす...

感想・レビュー・書評

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  • (2015.11.15読了)(2015.11.12借入)
    副題「失われるアジアのふるさと」
    作家によるミャンマー紀行です。ミャンマーとは別のところに行くつもりで、スケジュールを空けていたら、爆弾テロのためそちらへは行けなくなったので、代わりの行き先として決まったのが、ミャンマーということです。それでも何度か足を運んだようです。
    通常の観光地もあるようですが、観光地ではない田舎とか、目的の観光を行う前後の、目的のない散歩が、心に残ったようです。
    見知らぬ人たちに親切にしてもらったり、珍しいものをもらったりしたけれど、お金を渡そうとしても、決して受け取らないので、持ち合わせの飴で、感謝の意を伝えたとか。
    観光地では、ドルを喜ぶけれど、田舎では、近くにドルの交換所がないので、現地通貨でないと役に立たないけれど、あまり現地通貨の持ち合わせがなかったとか。
    軍事政権下だったので、軍事政権に対する不満はあっても、なかなか口にはできないとか。
    ミャンマーの人たちの暮らしの一端がわかります。

    【目次】
    たそがれ・かわたれ
    ケの日ハレの日
    女・少女
    働く人々と考える僧たち

    ●ビルマ(6頁)
    ビルマとミャンマー。
    何も知らないものにしてみれば、まるで無関係な印象の二つの言葉だが、実は語源は同じなのだそうだ。簡単に言えば、口語的な表現と文語的な表現くらいの違いなのだ。さらに「ビルマ」と称する場合には、国民の七割近くを占める「ビルマ族」のみを限定して指す印象があると考えられることから、多民族国家でもある国の名称としては「ミャンマー」の方がふさわしいのではないかと、現地に暮らす人は言った。
    ●バスタオル(22頁)
    パオ族の女性の衣装は、黒や濃紺の単色使いの服で、頭に華やかな色彩の布を巻いているというものだ。その服装は龍を表しており、また団結を意味するとも聞いた。
    その頭の布を外してみてもらった。すると、髪はごく普通の三つ編みだったが、巻いている布の方に驚いた。なんと、バスタオルではないか。
    ●停電(34頁)
    電力事情の良くないこの国では、日常的に停電が起きる。だから、どんなホテルの客室にも必ずマッチとロウソクが用意されているし、レストランなども電力だけに頼ることなく、ランプやロウソクなどを多く使用していた。
    ●乗り合いバス(46頁)
    ミャンマーでは、地方に行くと普通トラックが乗り合いバス代わりに多用されている。その荷台部分に「〇〇青果店」とか、「〇〇工務店」などという日本語の文字を見つけることも珍しくはなかった。
    ●働く(74頁)
    貧しいこの国では、多くの子どもたちが、与えられた環境の中で、まず働いて生きることを学ばなければならない。農村で暮らす子どもは牛を追い、葉タバコが取れる村では葉巻を巻く。観光地の子どもは絵葉書を売り、湖上に暮らす子は魚を獲る。そして、まだ作業の出来ないような年齢の子は、さらに幼い弟妹の面倒を見る。
    ●パダウン族(170頁)
    パダウン族の女性は幼いころから首と両手足とにコイル状の真ちゅうをはめている。そのコイルを徐々に長いものにしていくことによって、少しずつ首を長くしていく。
    ●僧侶(186頁)
    ミャンマーの僧侶たちには殺生をしない、盗みをはたらかない、嘘をつかない、アルコールを口にしないなどという戒律がある他、化粧品や装飾品を身につけてはならず、正午以降は飲み物以外は口にしてはならず、現金に手を触れてもいけない。また、音楽を聴いたり奏でたりしてはならないという戒律もある。
    ●若い修行僧(199頁)
    「私は、ミャンマーは悪いと思います。政府が悪いです。いまのミャンマーはいい国ではありません」

    ☆関連図書(既読)
    「トゥインクル・ボーイ」乃南アサ著、新潮文庫、1997.09.01
    「凍える牙」乃南アサ著、新潮文庫、2000.02.01
    「ビルマの竪琴」竹山道雄著、新潮文庫、1959.04.15
    「ビルマ敗戦行記」荒木進著、岩波新書、1982.07.20
    「アウン・サン・スーチー 囚われの孔雀」三上義一著、講談社、1991.12.10
    「ビルマ 「発展」のなかの人びと」田辺寿夫著、岩波新書、1996.05.20
    「ビルマからの手紙」アウンサンスーチー著・土佐桂子訳、毎日新聞社、1996.12.25
    「ミャンマーの柳生一族」高野秀行著、集英社文庫、2006.03.25
    (2015年11月19日・記)
    (「MARC」データベースより)amazon
    ふと訪れたデモと軍政が対峙する国で、作家の心を深く捉えたのは、不思議な「懐かしさ」だった。それは、わたしたちアジア人の「ふるさと」なのかもしれない-。ミャンマーで普通に暮らし、生き続けている人々の姿を描く。

  • 文章の中に「貧しい」と言う言葉がよく出てくる。

    ただ目の前にあるものを文字におこして紹介しているだけなのかもしれないけれど、
    「日本の飴はさぞ甘かろう」という文章に対しては、もしかしたらミャンマーには日本の飴より美味しいお菓子があるかもしれない(そう思っているミャンマー人が居るかもしれない)じゃないか!って思って
    日本人の旅行者が日本の価値観をおしつけているように見えてしまった。

    「住んでるホテル教えたの?」「まさか!」という会話とか 暗がりの夜道を歩いて帰るお話があるのに、知らない男性には警戒心をしっかり出してて どこまでしたいの?この話はいるの?って思った。

  • ミャンマーの旅行記。
    地方の都市まで細かく書かれているし、読みやすい文章なので、ミャンマーを知るにはいい一冊。
    ただ、やはりミャンマーは貧しい。
    その貧しさを目の当たりにしてきたからか、貧しいという目線で書かれている章もあり、その視点がどうしても上から目線にしか見えず、ちょっと微妙だった。

    所々歴史も挟んでくれているので、勉強にはなる。

  • 2008年6月15日初、並、帯付
    2013年8月11日松阪BF。

  • 乃南アサさんのミャンマーの紀行文。

    これを読んでミャンマーがどんな国なのか、おぼろげながら分かりました。
    まずミャンマーとビルマが同じ国だったということ。
    恥ずかしながらそんな事すら知りませんでした。

    そして、ミャンマーという国名となったのは軍事政権が樹立されたからだということ。
    私ですら知っているアウン・サン・スーチーさんをはじめとする運動家や多くの人権団体などはその国名を認めずに今もこの国を「ビルマ」と表記し続けていること。

    国民は信仰深く、いたる所で僧が見られる。
    そして、まだ夜が明けきらぬ暗い内かから人々は働く。
    子供も働く。まだ働けない小さい子は自分よりも幼い子の面倒をみる。
    それなのに、皆とても貧しい・・・。
    だけどこの国には日本がなくしてしまった何かがあるように思いました。

    私が心に残ったのは、乃南アサさんの友人が牛のフンを踏んでしまった時、ティッシュなどで拭っていると、店のひとつから女性が飛び出してきて、その汚れた靴を丁寧に洗ってくれたという話です。
    見知らぬ旅人のために、何の見返りも期待せずにそんな事が出来るんてんて・・・。
    もう「優しい」なんて生半可な言葉を超えてる。

    彼女の店の奥は住まいらしき空間があり、そこはとても狭い土間で電気も通ってない所だったそうです。
    そんな所で寝泊りしながらそんな心の豊かさをもっていられるなんて・・・。
    『その献身的な心の豊かさは、どこから来るのだろう-。』
    とあり、本当にそうだと思いました。

    「日本はいい国です。豊かです。それに、自由です。」
    とミャンマーの若い僧は言ったそうです。
    「いつか日本に行きたい」と。
    確かに日本は物は豊かな国だけど、心の豊かさはミャンマーと比べてどうなんだろう?
    実際に日本に来たら彼はどう思うんだろう?
    と思いました。

    この本は文章だけでなく、写真もたくさんあってそれも素敵です。
    ちょっとユーモラスな仏像や色鮮やかな寺院。
    南国らしい花々。
    そして写真に映る人たちはどれも神々しく見えました。

    この本を読み終えて、ミャンマーは恐い国だという印象は変わらないけど、反面魅力的な国なのだとも思いました。

  • シンマ!山の!タナカ!!!!!

  • ところどころ写真が載っているので、そこの人の様子がわかります。

  • 作家の乃南アサが、デモやテロが多発する以前に訪れた、軍事政権下にあり貧しいがまだツーリストが旅行できる状況だった頃のミャンマーについて語った一冊だ。
    渡航時期は異なるが、最近読んだばかりの池澤夏樹のイラク訪問記との類似点に驚いた。
    懸命に生きる実直な人々と、アメリカの暴力的な正義感による功罪。とても似ている。
    内紛に明らかに問題があるように見えたとしても、簡単に他国が干渉し、価値観と自らの優位性を押し付けていいものではないのだ、たぶん。
    内容はノンフィクションだが、乃南アサはやはりジャーナリストではなく作家なんだな、と思った。
    単純な紀行文ではなく、想像があり、創造がある。
    たとえば功徳を積もうとする民の心を、彼女は「代弁する」。
    だけどそれは本当に「過たず正しい代弁」なのか?
    文化も生活も土壌の異なる旅行者の感傷的な推測ではないのか?
    想像はいい。感傷もいい。でも創造してしまったらフィクションになってしまう。
    彼女の感じたことがミャンマーの人々の考えとイコールとは限らない。それを言い切ってしまうのは偏見であり乱暴だ。アメリカのように。
    それでも写真は美しく、描写される世界は透明感があって、ミャンマーという国を知るきっかけにするには十分な内容だった。

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。88年『幸福な朝食』が第1回日本推理サスペンス大賞優秀作となる。96年『凍える牙』で第115回直木賞、2011年『地のはてから』で第6回中央公論文芸賞、2016年『水曜日の凱歌』で第66回芸術選奨文部科学大臣賞をそれぞれ受賞。主な著書に、『ライン』『鍵』『鎖』『不発弾』『火のみち』『風の墓碑銘(エピタフ)』『ウツボカズラの夢』『ミャンマー 失われるアジアのふるさと』『犯意』『ニサッタ、ニサッタ』『自白 刑事・土門功太朗』『すれ違う背中を』『禁猟区』『旅の闇にとける』『美麗島紀行』『ビジュアル年表 台湾統治五十年』『いちばん長い夜に』『新釈 にっぽん昔話』『それは秘密の』『六月の雪』など多数。

「2022年 『チーム・オベリベリ (下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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