四国八十八ヶ所感情巡礼

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (142ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163705705

作品紹介・あらすじ

極楽へ行きたいと思う愚かしさ。それでも作家は歩き、祈りつづける。

感想・レビュー・書評

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  • 本書の10年前に直木賞を受賞した作家がどこまで真面目に書いているのかよくわからない四国遍路の旅日記、というよりも「糞巡礼」となってしまったのは、持病の薬のせいだとはいえ罰当たりです。夫婦で開始するも、奥さんの捻挫で、宿泊先は同じでも二人が終始助け合って一緒に歩いたわけではないようです。それにしても、筆者の所かまわず野糞をする病(1日5回の時も)は、ある日我慢できず留守の交番の前でやってしまって、「誰が片付けるんだ?」「それはあなたの給料のうちです」と心の中で正当化する様に、それは違うだろうとツッコミを入れたくなります。そんな人物が、車を使った他人の遍路の旅を「楽して極楽に行こうなんて虫が良すぎる」だとか誰かに親切にされなかったからと嫌味たらたらなのには、ほとほと呆れます。
    旅先で詠んだ句も収録していることからも、いたって真面目な作品だとは思うのですが、であればかえって作者の「狂気」、それが言いすぎなら「非常識」を感じてしまいます。そのような作者気質を前提にして本書を眺めると、例えば「奥さんが土踏まずをもんでくれたので足が楽になった」の後に、「私の土踏まずはどうなるのでしょうか」と奥さんが言った・・のは、夫婦で旅しながらお互いにもみっこしたわけではないことがわかりますが、非常識な自己中ですから相互いという思いやりが欠けているのがわかります。さらに言えば、男なのでキレイな女性が気になるのはわかりますが、奥さん同伴の旅日記で頻繁に出てくる「○○一の美人」という描写はデリカシーに欠けていますが、これも変人なので仕方がありません。
    それでも最初は、歩き遍路をしている自分たちこそが極楽浄土へと行けると自信満々だった気持ちも、2ヶ月半かけて第87番札所までくると「人間は死んだら終わり、極楽へ往生したいという欲望そのものが悪である」とある種の境地に至ったのは、お遍路巡礼のご利益だったのでしょう。
    本書では、お遍路道を世界文化遺産に申請する話題も度々でてきますが、案内板の不備や歩道専用の遍路道が整備されず危険で、途中の休憩所や公衆便所もない状況を嗤っていますが、その通りです。
    蛇足ですが、変人だからこそ書ける小説があるのも事実ですが、ファクトがベースの紀行文とはどうも折り合いが悪いようですね。

  • 徳島はごみだらけ、らしい。
    味があってそれなりに面白くはあるのだが、そこら中でうんこをする人だ。

  • 極楽へ行きたいと思う愚かしさ。それでも作家は歩き、祈りつづける。(アマゾン紹介文)

    タイトルの『感情』という表現に惹かれ読み始めたのですが、合いませんでした。

  • 2018/03/26
    どこでもうんこしすぎ....
    野道はいたしかたないとして、駅前とかばびる。

  • リリース:茂樹さん

  • 単純に自分自身が四国八十八か所巡礼をしたことがあるという経験から、四国遍路関連書籍とみれば読む傾向があるので、著者の名前と主著の作品名は知っていても、ご本人や作品そのものについて基礎知識のないまま手に取った。

    果たして、個人的な四国遍路の記録が主で、内容的には微妙なものとなった。

    強迫神経症の治療薬によるという、車谷の排便トラブル。これが、遍路中、田んぼでも山道でもどこでももよおせば出す、につながり、日々うんこ・野糞の文字が躍る。仕方のないことなのだが、毎日のように出てくるので、途中で「何回野糞をしたのか数えておけば良かった」と思ったほど。

    また、歩き遍路以外への執拗な批判(地獄へ落ちる、など)、自分は(仕方のないこととはいえ)所かまわず糞をひっては放置していくのに、これは一体なんなのだ、と読んでいて非常に嫌な気持ちになる。

  • 面白い。
    また、歩いての八十八ヶ所巡りに行きたくなった。まだ一度もないけれど。
    2月15日に発ち、4月29日に一番札所に結願している。
    毎日休み無しで歩いている。歩いたのは本当だがどこまで本当か? フィクションはないように思う。
    末尾に掲載の嫁さん高橋順子の遍路五十首がいい。

  • 野糞 するのも大変だと思いますが
    後始末もちゃんとしてくださいね。

  • ほぼ「日記」な内容で一気読み。
    作家の辛口な一面とは裏腹な、奥さんへの心使いがなんともよい。

    巡礼に、タクシーやバス、自家用車で来ているお遍路さんたちへの辛辣な批判も何度も出てくるが納得してしまう。
    私も歩いて巡礼してみたくなった。半端な気持ちではできないが・・・

    それにしても長吉さん、う○こしすぎ!

  • あっという間に読めるのですが、変な本。

  • 車谷長吉が、お遍路マニュアル本なわけないよなーという期待に見事こたえてくれた一冊。

  • 奥さんの順子さんとの歩き遍路記。
    バスや自動車でまわるエセ遍路は地獄に行くとか、
    そこここに投げ捨てられた多くの不法投棄ゴミに対してお遍路道を世界遺産になどとはちゃんちゃらおかしいとか・・このヒトの偏屈で真正直な気分が面白い。
    強迫神経症の薬によるのか、このヒトは毎日のように野糞をする。
    人間が歩くこと、糞をするというのは本当はとても自然なことだ。

    厭世気分と生きることのマットウさがミックスしていて、
    毎度の長吉節を楽しむ。

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著者プロフィール

車谷長吉

一九四五(昭和二〇)年、兵庫県飾磨市(現・姫路市飾磨区)生まれ。作家。慶應義塾大学文学部卒業。七二年、「なんまんだあ絵」でデビュー。以後、私小説を書き継ぐ。九三年、初の単行本『鹽壺の匙』を上梓し、芸術選奨文部大臣新人賞、三島由紀夫賞を受賞。九八年、『赤目四十八瀧心中未遂』で直木賞、二〇〇〇年、「武蔵丸」で川端康成文学賞を受賞。主な作品に『漂流物』(平林たい子文学賞)、『贋世捨人』『女塚』『妖談』などのほか、『車谷長吉全集』(全三巻)がある。二〇一五(平成二七)年、死去。

「2021年 『漂流物・武蔵丸』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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