黒澤明という時代

  • 文藝春秋 (2009年9月14日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784163717203

みんなの感想まとめ

黒澤明の作品とその時代を深く掘り下げた本書は、著者の豊富な知識と独自の視点が光る一冊です。著者は黒澤作品をリアルタイムで追い続け、その成長や変遷を自身の体験を通じて描写しています。特に、黒澤の初期から...

感想・レビュー・書評

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  • 「生きる」をまだ見ていないのが心残り。

  • 海外の友人たちと話していて、
    あるとき黒澤明監督とその作品の話になった。
    よくよく考えてみればそのとき僕は
    黒澤作品は数えるほどしか観ていなかった。
    日本人としてこれじゃちょっと恥ずかしいなと思って、
    全32作品を一通り観てみた。

    ひとりの作家の全作品を観たり読んだり聴いたりすることは、
    作品群の骨格・構造を知り、
    作家の成長・円熟・衰退を観察することになる。

    そんな個人的背景があり、
    小林信彦の新作『黒澤明という時代』を興味深く読んだ。
    この作家のいい点は伝聞、噂によっては一行も書かず、
    自分が見聞きしたことをベースに書いてゆく姿勢である。
    メモ魔であり、博覧強記である著者だからこそ
    なし得る技とも言える。

    小林は黒澤全作品を同時代の作品として劇場で鑑賞している。
    その上でDVDで作品を観直し、作家論としてこの本を書いた。
    「黒澤流ヒューマン・アクション」として小林が認めているのは
    「姿三四郎」(作品01/昭和18年)から
    「天国と地獄」(作品22/昭和38年)までである。

    黒澤の初期から中期までは時代の空気を吸いながら
    人々が映画に期待するエンターテインメントを提供していた。
    「世界のクロサワ」と称され
    ジャーナリズムに持ち上げられる頃から
    映像は美しくなるが気持ちを揺さぶる映画的醍醐味は減ってゆき、
    やがて、作品が枯れてゆくのはなぜだろうと考えていた。
    小林の著書は僕の疑問のいくつかに小林なりの視点で答えている。

    ちなみに僕の黒澤映画ベストワンは、
    「羅生門」(作品11)でも
    「七人の侍」(作品14)でもありません。
    「椿三十郎」(作品21)です。

    読書の秋、映画を愛する諸兄はぜひご一読を。

    (文中敬称略)


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  • ほぼリアルタイムで黒澤作品を追い続けている著者の観る目は確か。参考文献の引用も、自身でインタビューをするなど丁寧。それだけに、もう少しボリュームがあってもよかったかなと思う。

  • この本を手に取ったとき、ふと、何気なく淀長さんこと淀川長治センセのことを思い出しました。

    つい先日、何かの番組で<眼力>の特集をやっていて、それは二十歳を境に衰える一方だとか、でも鍛えればなんとかなると言ってましたが、このたび歴史上始まって以来の未曾有の記録=9年連続200本安打を達成したイチローは、小学校の時に7年間だかバッティングセンターで超高速の球を打つ練習に明け暮れた成果で、時速150や160?のボールがひどくゆっくりのスピードに見えて打てると言いますが、淀長さんも、小さい頃から映画を見続けたおかげで、80歳を越えても映画の一場面の細部にわたる詳細を、たとえば主人公とその相手とホテルの従業員がいて、相手は蝶ネクタイで胸の赤いチーフがお洒落で,くわえた葉巻にはまだ火が付いていなくて、従業員のはいているズボンは少し短くて高級ホテルにしてはなってないとか、テーブルの上にはワインがオープナーをつけたままで抜こうとしていることが分かり、壁にかかった絵には明らかにちょっと前に動かした形跡があるような少し傾いた感じがあるし、ソファーの端には子猫が眠っていて、窓の外にはチラホラ雪が降っているのが見え、部屋の暖かさから出来た水滴の三つ四つが流れ落ちていて、窓の外には遠くに黄金に輝く何かの塔が浮かび上がっている・・・、とかなんとか、今まったく口から出まかせ、思いつきをデタラメに書き連ねましたが、そういう、私たちなら3回以上は見ないと見えて来ないような瞬間の実像=場面の細部を、ヨドチョウさんは一回見ただけで、パッと瞬時にわかってしまうという、人間業とは思えない特殊能力を持っていたそうです。

    これは、私が確かめた訳ではありませんが、同席して一緒に見た映画を、直後に話し合うという体験をした人が証言していることですから、間違いありません。蓮見重彦などは、衝撃の体験をして自慢の鼻をへし折られたようですから。

    私も、実は淀長さんには多大な恩恵をこうむっていますが・・・、話が例によって大いに脱線してしまいましたので、そうそうに戻りますけれど、淀長さんも亡くなって、なんとすでに早や11年。そういえば、1909年生まれですから、彼も今年が生誕100年なのですね。

    ・・・・・肝心の本書ならびに小林信彦のことが書けませんでした、後述します。

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著者プロフィール

小林信彦 昭和7(1932)年、東京生れ。早稲田大学文学部英文科卒業。翻訳雑誌編集長から作家になる。昭和48(1973)年、「日本の喜劇人」で芸術選奨新人賞受賞。平成18(2006)年、「うらなり」で第54回菊池寛賞受賞。

「2019年 『大統領の密使/大統領の晩餐』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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