完全なる証明 一〇〇万ドルを拒否した天才数学者

  • 文藝春秋 (2009年11月13日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (328ページ) / ISBN・EAN: 9784163719504

みんなの感想まとめ

世紀の難問であるポアンカレ予想を解決した数学者の評伝は、彼自身の人生を描くだけでなく、70年代から80年代のソ連数学界の厳しい状況をも浮き彫りにしています。ユダヤ人迫害の影響を受けた環境の中で、才能を...

感想・レビュー・書評

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  • #4130-160

  • 世紀の難問・ポアンカレ予想を解決したグレゴリー・ペレルマンの評伝であると同時に、70年~80年代当時のソ連数学界がどのような状況に置かれていたのかを活写した貴重なドキュメンタリー。
    ユダヤ人迫害半端ない。名前がユダヤ人っぽいと大学に入学できないとか。(できない、は正確ではないけれど一事が万事こんなかんじだ)
    歪んだ体制のなかでも、才能ある若者をまっとうに育てようとするしたたかな大人達が奔走するのも見所。
    さらには、ポアンカレ予想解決の際に多数の数学者を巻き込んでいく構図もだぶってきて興味深い。

    ペレルマンが世間と断絶していく過程がじっくりと描かれている。
    それは言い換えれば自己を強固に確立していく過程でもあるのが見て取れ、必然だったのかもしれない、と妙に納得もしてしまった。

  • ポアンカレ予想云々の話ではなく、世紀の予想を証明した数学者の伝記、というのがこの本の正しい表現。

  • なんといっても印象的だったのはペレルマンが幼少だったソ連時代の人々を取り巻く環境やイデオロギー
    自分の力ではどうにもしようがなさそうにみえる壁に立ち向かって道を切り開き数学を守ろうとした人々
    ペレルマンが数学に失望したと言って雲隠れした気持ちも分かるが、失望したのは完全無欠の正解がある数学ではなく、有名になるにつれ膨れ上がった関係者や社会に対してなのではないだろうか
    数学者の本は何冊か読んだけれどもやっぱり数奇で面白い

  • サイエンス

  • ずっと、気になっていた作品。
    多分、数学者とか物理学者とか、そういう、自分と真逆な人だからこそ、憧れているし、興味を持って読んだんだろう。
    普段、こんなジャンルの本は読まないけれど、つまらないミステリィよりは、ずっとミステリィらしく、面白かった。数学の問題は理解できなかったけれど。


    でも、天才は変わり者だと思い込むのは間違っていると思いますよ。


    数学を学ぶということは現実における魔法を学ぶことと、同じようなことだと知っていれば、あんな成績にはならなかっただろうな。

  • 図書館

  •  ポアンカレ予想を証明しながら、100万ドルの懸賞金も、「数学界のノーベル賞」と呼ばれるフィールズ賞も辞退した、変わり者の数学者グレゴリー・ペレルマンに迫るノンフィクション。
    (一般担当/匿名希望)平成30年3月の特集「数学っておもしろい!」

  • 1904年にフランスの数学者によって提出されたポアンカレ予想は約100年間、
    未解決のまま残されアメリカのクレイ数学研究所によってミレニアム懸賞問題
    のひとつに指定された。

    この難問を解決したのが本書に取り上げられている、ロシアの天才数学者
    グレゴリー・ペレルマンである。

    社会主義体制下の旧ソ連に生まれたユダヤ人は、どんなに才能があろうとも
    英才教育を受ける機会を奪われていた。しかし、幼いころから数学の才能を
    認められたペレルマンは指導者や庇護者に恵まれ、国際数学オリンピックへの
    出場をはじめ、不可能とさえ思われたレニングラード大学への入学を果たす。

    アメリカ留学で世界への扉を開き、有名大学からのオファーがあったにも関わらず、
    「履歴書を提出せよ」という大学側の要求に腹を立て、ロシアへ帰国。取り組んでいる
    研究課題を数学仲間にも語ることなく、ある日、インターネット上にポアンカレ予想の
    論文を発表する。

    クレイ研究所はポアンカレ予想を証明したとして、ペレルマンに数学のノーベル賞と
    言われるフィールズ賞受賞を決定するが、当人は「自分の証明が正しければ賞は
    必要ない」として、受賞を頑なに拒否し勤務していた研究所も辞め、人々の前から
    姿を消した。

    「数学界に絶望した」。こんな言葉を残して。

    100万ドルの賞金である。私のような凡人なら素直に受け取るだろう。だが、未解決の
    問題を証明することに時間を費やす研究者には、解決した問題はその時点で過去の
    出来事になってしまうのだろうか。

    ペレルマンが世間との接触を断っている為、本人のインタビューこそなされていないが
    彼を育てた庇護者や付き合いのあった研究者の多くに話を聞いており、ペレルマンの
    人となり、数学へ取り組む姿勢が描かれている。

    また、著者自身も旧ソ連に生まれたユダヤ人であり数学を専攻していたので、社会主義
    体制下での数学界の様子がよく分かる良書である。

    それにしても、論文の剽窃をしてまでポアンカレ予想を証明したのは自分たちだって主張
    する中国人研究者には驚きである。

    尚、数学が大の苦手な私には、何度ポアンカレ予想の概略を読んでも理解出来ない。
    本書は数学に拒絶反応がある人でも、楽しめると思う。

  • ソ連時代の数学の取り巻く環境の記述は興味深かった。

  • ポアンカレ予想を証明した数学者・グリゴーリー・ペレルマンを追ったルポ。
    ポアンカレ予想の本ではなく、ペレルマンの足跡を辿る本です。
    ポアンカレ予想じたいは、ざっくり簡単な説明だけが記載されていましたが、質問自体が何言ってんだかサッパリ分かりませんでした。

    本書を読む限り、数学の鬼才にふさわしい奇人、という印象。生きていくのに難儀しそうなキャラです。
    きっと、世の中を支えている圧倒的多数は凡人だということがよく分からなかったんだろうなぁ。

    旧ソ連のスターリンの体制で、数学と数学者を守ろうと闘った知識人たちがかっこいいです。
    周りが自分のために水の中で息を継ぐような闘いをしていても知らん顔のペレルマンには、凡人の私なら腹を立てますが、彼を守ったり導いたりしてきた人たちには、この証明を世に出したことが既に恩返しになっているのかな。
    そういう価値観のつながりって素敵です。

    訳者が青木薫さんなので、読みやすいです。
    ペレルマンさん、今、どこで何をしてるんでしょうねぇ。

  • 「ポアンカレ予想」なるものが、どんな難題なのかはよくわからなかったけれど、数学界におけるとてつもない難題であるらしいことはわかった。
    その難題を見事に解いたペレルマン。常人では成し得ないことをやり遂げる人というのは、やはり常人ではない考えと感性を持った人だ、ということもよくわかった。
    それより何より、このような数学の天才を生み出した旧ソ連の教育システムというのも、おそろしいものである。
    しかし、いくらシステムがしっかりしていても、天才は時と場所と人を得ないと生まれてはこないのである。
    現在、ペレルマンが何に興味をもって、どうしているのかということも知りたくなった。

  • ポアンカレ予想を証明した天才数学者ペレルマンの人物像を周囲の人々へのインタビューによって浮き上がらせていくドキュメンタリー。一方で旧ソ連下の教育体制の記録が興味深い。

    本書によれば、ペレルマンは絵に描いたような「天才と何とやらは紙一重」な人物であった。

    読んでるうちにふと、「賢さ」とは「人が思いもよらない疑問を持つこと」と同義なのかもしれないと思った。

  • ソビエト時代の背景が克明に表れていて興味深く読んだ。本人にインタビューしたわけではないので彼の意見や本音は少し靄がかっているけどそれも当然。
    米版と日本語版て違うアプローチをした真意を聞いてみたいと思った。私は勿論日本語版で満足。訳者の方が”専門的な数学や物理を美しく訳す”と書かれてあったので他の著書も読みたいと思った次第。
    数学の解明が詳細に知りたい人はこの本は物足りないだろうな。人間ドラマですから。

  • ミレニアム問題であるポアンカレ予想を証明した、ロシアのトポロジスト、グリーシャ・ペレルマンの物語。ユダヤ人であるが故に、人種差別に翻弄され、名声や賞も避けて森に逃避した。数学に純粋に向きあおうとして叶わなかった彼の思いが胸を打つ。数学の世界を引退した彼は、今何をしているのだろう。

  • ポアンカレ予想を解決するも賞や賞金をことごとく固辞し、表舞台から姿を消した希有の数学者について書かれた伝記。
    伝記というか、本人がインタビューを全く受けなかったために、彼の友達や恩師、同僚など周囲の人物からインタビューすることで人物像を練り上げた評伝といえるでしょうか。
    手法が手法だけに作者の思い入れが出来を左右するな、と少々警戒しつつ読み始めましたが、同時代に数学に関するエリート教育を受けたユダヤ人、というペレルマンと同じ境遇であったからこそ書ける視点で客観的に筆を進めていて好ましいです。

  • ポアンカレ予想を証明した数学者グリーシャ・ペレルマンは受賞を拒否し、数学を捨て、人間関係を捨てて姿を消した。著者のマーシャ・ガッセンはペレルマンと同い年のユダヤ系ロシア人であり、同じように数学専門学校で学んだ。ペレルマンとは接触できない分を周囲の人たちに丹念に取材しペレルマンがどうやって育ち、なぜ受賞を拒否し、数学を捨てたかに迫って行く。

    ポアンカレ予想そのものについては簡単に触れられているだけで全く理解できないので
    コメントできないが一般的にはアメリカのクレイ研究所が2000年に未解決の7つの数学問題の証明に100万ドルの賞金を出したことで知られている。容疑者Xの献身にも問題の名前だけ出てた気がする。

    前半はペレルマンの少年時代から当時のソビエトの空気がわかる。これは同時代を同じように過ごした著者だから書けたのかもしれない。スターリンは自らをソビエト科学アカデミーの最高権威と見なしソビエトのイデオロギーに合わない学問を弾圧した。後に第二次世界大戦後の軍拡競争の中で数学と物理は軍事研究の基礎として重要になるという建前で専門学校の設立を申請した。これを実施したのが若いころのブレジネフだった。

    グリーシャ・ペレルマンは才気走った生徒ではなかったがタフな頭脳を持っており、一度コンテストでトップになれなかった後はひたすら数学に打ち込み、決して間違った回答をしなくなって行く。また、この頃から自ら認めた規範には厳粛に従うがそうでない規則は価値が無いとして無視するようになって行く。後には数学クラスでトップと認められて行く。

    1981年の国際数学オリンピックでは成績1位の少女がユダヤ人であることを理由に直前で参加の許可が下りずソビエトは9位と惨敗する。そして1982年勝利を優先するソビエトはペレルマンの参加を認めた。ペレルマンは金メダルと満点での最高点、そしてレニングラード大学入学と言う賞品を手に入れた。当時のレニングラード大学はユダヤ人枠は2名で3人目になるには数学オリンピックに勝ち希望の大学に入れる特例を得るしかなかったのだ。

    大学院進学もユダヤ人には閉ざされていたが周囲はペレルマンのために奔走する。一方のペレルマンの規範では大学院はその能力を持つ物に門戸が開かれるべきであり、人種や政治などで決まるのは受け入れられないことだったようだが都合の悪いことは自分の中では無視したようだ。大学院入学の教科は選考分野と共産党の歴史の二つだった。

    大学院を出る頃にはソ連は崩壊を始めた。ペレルマンの生まれるのが少し早ければユダヤ人と言う理由で大学には進めなかっただろうし、もう少し遅ければ経済的な理由でやはり大学に行けなかっただろう。時期にも周囲の人間の保護にも恵まれている。ペレルマンはアメリカに渡り重要な予想を証明する。この後プリンストン大学から准教授としてまねかれた時のエピソードがその後のペレルマンを象徴している。型通りに履歴書を要求する大学に対し、講演を聴いた(数学の能力を理解した)上でそれ以上なんの情報がいるのかと言う様なことを言ったらしい。その後もいくつかのエピソードが有るがペレルマンの証明を理解できる物が全力を尽くして証明を検証し、業績を称えることのみを求めていて、賞金やそれに伴う教授職など全てがペレルマンに取っては勝ちの無い物で有ったらしい、100万ドルの賞金のために研究したと言われることはペレルマンに対しては侮辱でしかなかった。

    2000年2月に30ページの論文をウェブに投稿したペレルマンは3年がかりで続く22ページと7ページの3部作の論文を投稿する。しかもポアンカレ予想を証明したとは一言も言わずにその中身が理解できる研究者にのみ論文掲載をメールで知らせている。通常の論文審査であれば審査員は一人で審査に当たるが、今回は4人の1流数学者が協力して2年がかりで証明をほぼ間違いないと確認するに至った。論文発表直後のペレルマンは数学に関する講演に出かけ気軽に討論を受けている。一方でメディアの取材には過剰に反応しフィールズ賞の受賞(なぜ数学を理解しないスペイン国王に表彰されなければならないのか?)や100万ドルの賞金をけることにつながって行く。

    ペレルマンはポアンカレ予想の研究者ハミルトンを尊敬していた節があり自分の証明を最も認めてもらいたい相手だったようだ。しかしハミルトンは何も言わず、講演にも現れずペレルマンを失望させる(後にハミルトンはペレルマンの証明が正しいと認めている)。別の研究者はペレルマンの功績で100万ドルの賞金が減り幾何学の志望者が減るだろうとインタビューに答えこれもペレルマンからすれば数学の堕落と映ったようだ。さらには中国人研究者が自分たちこそがポアンカレ予想を証明したと割って入る。(後にペレルマン論文の剽窃であったことが明らかになる)

    あらゆる干渉に反発するペレルマンは数学を捨て、人とのつながりも捨ててしまった。彼のルールは世間のルールとあまりにも違ってしまったようだ。

    この本は日米同時出版ながら日本版にはアメリカ版では削られた著者自身のエピソードが含まれており、著者がわざわざ後書きでそのことに謝意を示している。
    翻訳者は青木薫、たぶん物理系ノンフィクションでは日本で最高の翻訳者でサイモン・シンのシリーズも手がけている。理論物理博士号を持つ青木氏もポアンカレ予想そのものの理解は難しかったそうだ。

  • 世紀の難問・ポアンカレ予想の証明に成功しながら、懸賞金(100万ドル)とフィールズ賞の受賞を拒否し、人前から姿を消してしまったグレゴーリー・ペレルマンの半生について記した本。彼の知人たちに対する粘り強いインタビューを通じて、現在は口を閉ざしてしまったペレルマンが、人生の節目で何を考えていたのかを明らかにしようとしている。
    また、著者自身が旧ソ連の数学エリート育成プログラムの選抜者だったことから、そのプログラムが開設された歴史的経緯や、プログラムの詳細についても詳しく記載されている。さらに、スターリンによるユダヤ人迫害や科学追放運動において、旧ソ連の数学者がどのように立ち回ったかについても書かれており、ソビエト数学史の一端を知る上でも本書はとても興味深い。このように史実を紐解くだけでも、ソビエト数学界に残したコルモゴロフ先生の功績の大きさは計り知れないことが分かる。
    もちろん私はペレルマンのような天才ではないのだが、本書に描かれた彼の性格や価値観には私と共通している部分がかなりあるように思え(自分の理想に合わない外界は見なかったことにするところとか…)、いろいろと共感しながら読むことができた。

  • 20世紀から解けないだろうといわれた7つの数学の難問のひとつ「ポアンカレの予想」を解いた数学者グリーシャ・ペレルマンを追ったノンフィクション。難問を解いた本人は数学のノーベル賞といわれるフィールズ賞を断り、ひいては百万ドルの賞金がかかっていたクレイ賞まで断って周りの人ととのかかわりをたってしまった数学者ペレルマン。どうしてそのような結末を迎えるにいたった人の形成の物語をペレストロイカ前のソ連時代からロシアにいたる激動の時代での差別されていたユダヤ人数学少年がどのように守られ、勇気付けられ、その才能を研ぎ澄ませて휐き、ついには誰もが敗れ去った超難問を解くにいたったか。またなぜかれは賞を断るにいたったか。かなり面白いエピソードが最初から最後まで網羅されている。変人といえば変人だが、それくらいの人間でなければこの難問をひとりで解くことはできなかったのかも。久々にノンフィクションを読んだが楽しめた。問題の説明は何度読んでもわからなかったけど。数学を見直すかも。

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