完全なる証明

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163719504

作品紹介・あらすじ

一〇〇万ドルの賞金がかけられた数学の七つの難問のひとつ「ポアンカレ予想」の証明。今世紀中の解決は到底無理と言われたその証明が2002年にインターネット上にアップされる。だが、世紀の難問を解いたその男は、フィールズ賞を拒否し、研究所も辞職、数学界からも世間からもすべての連絡を絶って消えた。ペレルマンと同時代に旧ソ連で数学のエリート教育をうけた著者だからこそ書けた傑作評伝ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 世紀の難問・ポアンカレ予想を解決したグレゴリー・ペレルマンの評伝であると同時に、70年~80年代当時のソ連数学界がどのような状況に置かれていたのかを活写した貴重なドキュメンタリー。
    ユダヤ人迫害半端ない。名前がユダヤ人っぽいと大学に入学できないとか。(できない、は正確ではないけれど一事が万事こんなかんじだ)
    歪んだ体制のなかでも、才能ある若者をまっとうに育てようとするしたたかな大人達が奔走するのも見所。
    さらには、ポアンカレ予想解決の際に多数の数学者を巻き込んでいく構図もだぶってきて興味深い。

    ペレルマンが世間と断絶していく過程がじっくりと描かれている。
    それは言い換えれば自己を強固に確立していく過程でもあるのが見て取れ、必然だったのかもしれない、と妙に納得もしてしまった。

  • ポアンカレ予想云々の話ではなく、世紀の予想を証明した数学者の伝記、というのがこの本の正しい表現。

  • サイエンス

  • ずっと、気になっていた作品。
    多分、数学者とか物理学者とか、そういう、自分と真逆な人だからこそ、憧れているし、興味を持って読んだんだろう。
    普段、こんなジャンルの本は読まないけれど、つまらないミステリィよりは、ずっとミステリィらしく、面白かった。数学の問題は理解できなかったけれど。


    でも、天才は変わり者だと思い込むのは間違っていると思いますよ。


    数学を学ぶということは現実における魔法を学ぶことと、同じようなことだと知っていれば、あんな成績にはならなかっただろうな。

  • 図書館

  •  ポアンカレ予想を証明しながら、100万ドルの懸賞金も、「数学界のノーベル賞」と呼ばれるフィールズ賞も辞退した、変わり者の数学者グレゴリー・ペレルマンに迫るノンフィクション。
    (一般担当/匿名希望)平成30年3月の特集「数学っておもしろい!」

  • 1904年にフランスの数学者によって提出されたポアンカレ予想は約100年間、
    未解決のまま残されアメリカのクレイ数学研究所によってミレニアム懸賞問題
    のひとつに指定された。

    この難問を解決したのが本書に取り上げられている、ロシアの天才数学者
    グレゴリー・ペレルマンである。

    社会主義体制下の旧ソ連に生まれたユダヤ人は、どんなに才能があろうとも
    英才教育を受ける機会を奪われていた。しかし、幼いころから数学の才能を
    認められたペレルマンは指導者や庇護者に恵まれ、国際数学オリンピックへの
    出場をはじめ、不可能とさえ思われたレニングラード大学への入学を果たす。

    アメリカ留学で世界への扉を開き、有名大学からのオファーがあったにも関わらず、
    「履歴書を提出せよ」という大学側の要求に腹を立て、ロシアへ帰国。取り組んでいる
    研究課題を数学仲間にも語ることなく、ある日、インターネット上にポアンカレ予想の
    論文を発表する。

    クレイ研究所はポアンカレ予想を証明したとして、ペレルマンに数学のノーベル賞と
    言われるフィールズ賞受賞を決定するが、当人は「自分の証明が正しければ賞は
    必要ない」として、受賞を頑なに拒否し勤務していた研究所も辞め、人々の前から
    姿を消した。

    「数学界に絶望した」。こんな言葉を残して。

    100万ドルの賞金である。私のような凡人なら素直に受け取るだろう。だが、未解決の
    問題を証明することに時間を費やす研究者には、解決した問題はその時点で過去の
    出来事になってしまうのだろうか。

    ペレルマンが世間との接触を断っている為、本人のインタビューこそなされていないが
    彼を育てた庇護者や付き合いのあった研究者の多くに話を聞いており、ペレルマンの
    人となり、数学へ取り組む姿勢が描かれている。

    また、著者自身も旧ソ連に生まれたユダヤ人であり数学を専攻していたので、社会主義
    体制下での数学界の様子がよく分かる良書である。

    それにしても、論文の剽窃をしてまでポアンカレ予想を証明したのは自分たちだって主張
    する中国人研究者には驚きである。

    尚、数学が大の苦手な私には、何度ポアンカレ予想の概略を読んでも理解出来ない。
    本書は数学に拒絶反応がある人でも、楽しめると思う。

  • ソ連時代の数学の取り巻く環境の記述は興味深かった。

  • ポアンカレ予想を証明した数学者・グリゴーリー・ペレルマンを追ったルポ。
    ポアンカレ予想の本ではなく、ペレルマンの足跡を辿る本です。
    ポアンカレ予想じたいは、ざっくり簡単な説明だけが記載されていましたが、質問自体が何言ってんだかサッパリ分かりませんでした。

    本書を読む限り、数学の鬼才にふさわしい奇人、という印象。生きていくのに難儀しそうなキャラです。
    きっと、世の中を支えている圧倒的多数は凡人だということがよく分からなかったんだろうなぁ。

    旧ソ連のスターリンの体制で、数学と数学者を守ろうと闘った知識人たちがかっこいいです。
    周りが自分のために水の中で息を継ぐような闘いをしていても知らん顔のペレルマンには、凡人の私なら腹を立てますが、彼を守ったり導いたりしてきた人たちには、この証明を世に出したことが既に恩返しになっているのかな。
    そういう価値観のつながりって素敵です。

    訳者が青木薫さんなので、読みやすいです。
    ペレルマンさん、今、どこで何をしてるんでしょうねぇ。

  • 「ポアンカレ予想」なるものが、どんな難題なのかはよくわからなかったけれど、数学界におけるとてつもない難題であるらしいことはわかった。
    その難題を見事に解いたペレルマン。常人では成し得ないことをやり遂げる人というのは、やはり常人ではない考えと感性を持った人だ、ということもよくわかった。
    それより何より、このような数学の天才を生み出した旧ソ連の教育システムというのも、おそろしいものである。
    しかし、いくらシステムがしっかりしていても、天才は時と場所と人を得ないと生まれてはこないのである。
    現在、ペレルマンが何に興味をもって、どうしているのかということも知りたくなった。

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