ジミーの誕生日 アメリカが天皇明仁に刻んだ「死の暗号」

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163721309

作品紹介・あらすじ

昭和23年12月23日零時1分30秒、死刑執行開始。皇太子明仁の誕生日に、なぜA級戦犯7人は処刑されたのか?近代天皇制の研究から作家生活をスタートした著者が、戦後のアメリカと皇室の関係に新たな光を当てた作品。

感想・レビュー・書評

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  • 第16回アワヒニビブリオバトル「id(ナンバー)」で発表された本です。
    2016.08.02

  • ジミーとは現在の平成天皇明仁が、太平洋戦争が始まる前、学習院おいて外国人教師から英語の授業でつけられたニックネームだという。そして、ジミーこと明仁天皇の誕生日の12月23日は、所謂A級戦犯が絞首刑となった日でもあるのである。

    太平洋戦争の戦後処理にあたって、昭和天皇の戦争責任についての取り扱いは、日本だけではなく戦勝国側、特にアメリカにとって非常に大きな問題だった。

    マッカーサーは、占領統治政策の中で、天皇が仮に戦犯として処刑となった場合に国民に与える衝撃を憂慮していた。その場合に起こりうる米軍側の負担は、局地的な軍事抵抗やテロ行為などにより、沖縄戦で経験した以上の犠牲を強いるものになる可能性があり、それだけは避けたいとマッカーサーは考えていた。彼の最大の目的は日本の軍装解除であり、そのため、彼は天皇が訴追されないための工作を様々な面で行う事となるのである。そしれ、マッカーサーの思惑通り、昭和天皇は戦争責任を免れ訴追されることなく東京裁判が閉廷する。

    東条英機他7名が絞首刑の宣告を受ける事となるが、A級戦犯の起訴は昭和天皇の誕生日である5月3日に行われている。そして、現在の明仁天皇の誕生日に、A級戦犯達の処刑が行われたのである。これは、天皇に対して、マッカーサーが仕込んだメッセージなのである。彼らが、天皇の戦争責任も一緒に背負って処刑されていったのだと。現在の天皇は、外遊において戦没者の慰霊を積極的に行っている。また、交戦した国において過去の日本の過ちを遺憾とする発言を度々行っている。天皇はこのメッセージを重く受け止め、定められた自らの役割を知っているのであろう。

  • 「読者代表」的な子爵夫人の孫娘と著者との対話という形式で構成されているため、敗戦前後の事情に特に詳しくない読者にもわかりやすくなっている。反面、そうしたおさらい的記述が多く、本来のテーマであるだろう「天皇の戦争責任」をめぐる記述についてはやや隔靴掻痒の感を免れない。また別の評でも指摘されていたが、本書の核心部分は、子爵夫人のエピソードも含めて特に目新しい「スクープ」ではない。一部では既知とされている事実である。
    ただ、著者のような「有名作家」が「文芸春秋」という出版社の書物として、現在の象徴天皇制がどのような歴史的背景の下で成立したか、そのあたりの相場観を形成することに力を注ぎ始めた、ということは心に留めておいていいように感じる。

  • 教養か日本史のつもりで読んでみて欲しい、著者読者の政治的立場は置いといて。自分には知っておくべき歴史がまだ多すぎる。

  • いわゆるお勉強です。

    この本の内容はすごく興味深いです。終戦時の話なので、今の天皇がまだ少年の時が舞台。14歳の少年が担うには重すぎる話だけど、皇太子という立場から仕方ないのかなと思ったり。。。天皇が平和について、皇室についていろいろお考えをお持ちなのは知っていたけれど、こういう背景があったのだなぁと思うと深い。

    ただ、いちいち著者が出てくところは好きくない。

  • 何時もながらのしっかりとした取材を元にまとめる猪瀬直樹の本。
    戦後の日本を非武装にするため、マッカーサーが行った事がわかりやすく書いてある。
    ただ、何故マッカーサーが昭和天皇に戦争責任を負わせ無くしたかったのかが、今ひとつすっと入ってこない。
    昭和天皇から今上天皇に変わっても、日本が二次大戦犯した事を国民に思い出させるため、また天皇が国家の象徴として生き残る事で間接的にその責を負わせるために戦犯の処刑日を決めたのであれば、マッカーサーは日本にものすごく重いものを背負わせたかったのかもしれない。
    途中挿入される「手紙」のエピソードは不要だと思う。読んでいて没入できないし、リズムが崩れてしまう。

  • タイトルのようなショッキングな内容ってわけでもなく
    ミステリーな感じでもなく

    ところどころ差し挟まれる現代の部分も読む勢いを削がれるし
    子爵夫人てのもほとんどでてこないし

    読みやすいんだけど もやもや

  • 事の是非は別にして、戦略がある国とない国の差を実感。内容的には誕生日に関わる話がもっとあるかと思った。

  • 「読んで良かったな」久しぶりにそう思えた本。猪瀬さんの本にしてはストーリー展開が柔らかく読みやすかった。『東條英機処刑の日』として再販されるそう「ジミーの誕生日」の方が合っているように思いますがお薦めできる一冊。

  • 今上天皇の誕生日が12月23日。
    で、極東国際軍事裁判でA級戦犯で死刑を宣告された
    東條英機、土肥原賢二、松井石根、武藤章
    板垣征四郎、広田弘毅、木村兵太郎の七人が
    絞首刑にされた日が12月23日。

    A級戦犯とは「平和に対する罪」
    B級戦犯とは「捕虜や非戦闘員に対する残虐行為に対する罪」
    C級戦犯とは「すべての民間人に対する残虐行為に対する罪」
    で、ABCは罪の軽重ではなく、単に分類しただけらしい。

    そしてA級の「平和に対する罪」は、なんと事後法とのこと。
    行為の後から作った法律で裁かれ死刑になる、納得いかないなあ。

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著者プロフィール

猪瀬直樹
一九四六年長野県生まれ。作家。八七年『ミカドの肖像』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。九六年『日本国の研究』で文藝春秋読者賞受賞。東京大学客員教授、東京工業大学特任教授を歴任。二〇〇二年、小泉首相より道路公団民営化委員に任命される。〇七年、東京都副知事に任命される。一二年、東京都知事に就任。一三年、辞任。一五年、大阪府・市特別顧問就任。主な著書に『天皇の影法師』『昭和16年夏の敗戦』『黒船の世紀』『ペルソナ 三島由紀夫伝』『ピカレスク 太宰治伝』のほか、『日本の近代 猪瀬直樹著作集』(全一二巻、電子版全一六巻)がある。近著に『日本国・不安の研究』『昭和23年冬の暗号』など。二〇二二年から参議院議員。

「2023年 『太陽の男 石原慎太郎伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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