ルリボシカミキリの青

  • 文藝春秋 (2010年4月26日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784163724300

みんなの感想まとめ

日常の出来事から生物学への洞察を織り交ぜたエッセイ集は、著者の独自の視点と深い感受性を感じさせます。福岡ハカセは、難解に思えるテーマも分かりやすく解説し、読者を引き込む力を持っています。特に教育に対す...

感想・レビュー・書評

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  • 福岡ハカセのエッセイ。
    一見難しそうな事でも、すごく分かりやすく書かれていて、福岡ハカセは読む側聞く側の立場に立てる人なんだなぁと。こんな先生の講義受けてみたかった。
    ちなみに子供の頃田舎で育ったせいか、大人になった今でも私は案外昆虫が大丈夫です。特にルリボシカミキリは大好き。でも、もう何年も見ていないなぁ。

  • 新幹線のお供に何か雑誌でも買おうという時につい『週刊文春』を選んでしまうのは福岡 伸一のエッセイがあるからです。
    もちろん、阿川佐和子の「この人に会いたい」も好きだけど。

    本書にはその福岡ハカセのエッセイが70編詰まっています。

    タイトルにもなったルリボシカミキリは、それはそれは美しい青色をしたカミキリ虫だそうで、表紙にもなっています。
    ググったら確かに美しい。

    福岡ハカセは、本業は生物学者で、狂牛病を取り扱った 『プリオン説はほんとうか?』や、動的均衡について書かれた『生物と無生物のあいだ』で有名ですが、文章も上手くて、

      蝶への興味はやがてもっと硬質の美しさへの希求にとってかわる。あこがれたのはルリボシカミキリだった。小さなカミキリムシ。でもめったに採集できない。その青色は、どんな絵の具をもってしても描けないくらいあざやかで深く青い。こんな青は、フェルメールだって出すことができない。その青の上に散る斑点は真っ黒。高名な書家が、筆につややかな漆を含ませて一気に打ったような二列三段の見事な丸い点。大きく張り出した優美な触角にまで青色と黒色の互い違いの文様が並ぶ。私は息を殺してずっとその青を見つめつづけた。

    って、科学者というより文筆家の域ですよね。生物学者はやはり観察力が半端じゃないので、表現力を伴うと恐ろしく魅力的な文になりますね。

    それから、

      生物の特徴は、実は、指揮者やリーダーがいないということである。ヒトの細胞は全部で六十兆個もあるけれど、どの細胞も全体の地図や構造を一切知らない。個々の細胞が絶えず連絡を取り合っているのはせいぜい自分の前後左右上下の細胞だけである。にもかかわらず全体としては組織だった統合がなされている。中央集権ではなく地方分権的な仕組みだという点がポイント。脳ですら、身体全体を鳥瞰的に見ているわけではなく、むしろ個々のニューロンは近隣のニューロンと情報を交換しているにすぎない。ローカルなグリッドが相互に連結するだけで、グローバルなシステムを作り上げる。つまりここには「部品」と呼ぶべきものはなく、ローカルは連続的に全体を構成する。このようなモデルは、生命の本質を探る上でとても重要なヒントとなる。

    という文章。考えてみれば、DNA鑑定ができるということは、六十兆個の細胞には、すべて同じDNAが組み込まれているわけです。なのに、部分部分で全く違った形や機能を有し、さらにそれが80年位の人生で部分部分で継続して新しい細胞に置き換わっているのはすごい不思議なことだと思いました。

    もちろん、分子生物学的にはその辺も解明されつつあるのでしょうが、神秘だよなぁと思います。
    一時期、「企業のDNA」なんて言葉が流行り、また、兼子先生が日本型組織の良かった点として「向こう三軒両隣を大切にした」と仰っていましたが、そう考えると成功したトヨタなんて会社は大きな一つの生物なのかなと思いました。

  • 分子生物学者のエッセイ集。

    ダイレクトに生物学の話というよりは、日々のよしなしごとから連想される話題が多く、これまで読んだ『動的平衡』、『生物と無生物のあいだ』よりちょっと日常的な色が多いところが特徴。
    これまでの著作とかぶる内容も多いが、ノックアウトマウスのその後の研究成果だったり、少し視点を違えたりとどれも興味深い。ひとつのテーマで概ね3ページ程度のものが多く、内容的には浅いのが残念だが、そういう書き物なのでそこはしょうがない。他の本を読もう。

    それにしても、著者自身も裏テーマと言っている教育に関する洞察、向き合い方が秀逸。一番心に響いたのは(文言は厳密ではないが)”教科書的に事実を伝えてもしょうがない。なぜそうなったのか、どんな議論があったのか、自分がおもしろいと思ったこと、感動したことを伝えることが大事”というものである。全くそのとおりだ。

    著者の文章から、このことがにじみ出しているのがまた素晴らしい。
    きっと授業もおもしろいんだろうなぁ。

  • 福岡ハカセの本を薦めるなら、『動的平衡』『生物と無生物のあいだ』あたりじゃない?と言われそうですが、私のイチオシは、このエッセイ集。
    一篇一篇が物語のようで、読み終わるころには海外旅行…いや宇宙旅行…なんなら時間旅行でもしたような充実感に包まれます。
    【枝豆番長】
    【エリアC:ちょこっと生き物のはなし
    植物、昆虫、動物…生き物について書かれた本を読むと、自分が抱えていた悩み事が、ちっぽけなものに思えてくることがあります。
    自分って…という狭い視点から、生態系、何億年の進化、生命とは…といった、ものすごく大きなものを捉える視点にシフトするからかも知れません。心の健康におすすめです。


    ●図書館で借りられます。貸出中の場合は予約できます。下記URLからどうぞ。
    https://library.auhw.ac.jp/CARIN/CARINOPACLINK.HTM?IS=9784163724300

  • 著者である福岡ハカセの気づきや思い出が綴られる、エッセイ集。
    相変わらず文書がとても感動的で、美しい。
    動的平衡、センス・オブ・ワンダーという著者のメッセージはこの本でもブレない。
    特に、最後の、初めて著者が本物のルリボシカミキリに出逢えた時の文章は心動かされる。著者を突き動かすものは、今も昔もセンス・オブ・ワンダーであるという思いが強く伝わってくる。

    心に留めておきたい言葉は、
    Think globally,act locally
    -微生物学者で抗生物質を発明し、その後地球思想家になったルネ・デュポスの言葉。

    また、ほかの本にも載っていたが、プロフェッショナルと呼ばれる人たちに必ず共通する「1万時間」の話は、いつも考えさせられる。

  • [p. 174 以降]

    読了。動的平衡というのが、この方が世界を見る/読むときの軸になる考え方なのだろうと思う。科学的な考え方もつ人であれば同じ結論にたどり着くものである、という示唆を知人からいただいたことがあるが、やはりそれはシンプルな話に限るもので、ものの考え方というのは、自身にとっての軸というものに左右されるのではないかと思った。

    --

    [pp. 112-173]

    読みやすいしわかりやすい話なのでさくさくと読める。とそこへ、Kindle デバイスの話が出てきた。まだ日本語版はない時代の話。紙の辞書と電子辞書とについても言及されており、時代の流れを感じる。随分と昔の本だっただろうかと単行本の奥付を確認してみたところ、2010 年。連載されていたのがその直前と考えると、約 15 年前ということになるのか。今や書店の数は減り続け、出版文化も変化してきた時代。当時と今とでは作業用のツールも随分変わってきているんじゃないかなとぼんやり考えてみる。でも自分はこの本に関しては単行本で読んでいるので、時の流れはまだらだなぁと思う。

    --

    [pp. 74-111]

    いろいろと悪いことが続いて重なり、部屋にひとりでネット相手に SNS を含む読み物などを読んでいると、どんどん自分の至らなさに頭を抱えてしまい、世の中の人たちはこんなに皆素晴らしいのになぜ自分だけがこんなに駄目なのか、などと解決しようのない物思いに苛まれてやりきれなくなるのだけれど、動的平衡を考えた途端に、いま自分の吐いている CO2 もまわりまわって誰かの役に立っているのだから、生きている意味はある、などと意味なく楽観的になり、元気が出てきてしまった。底に非難や冷笑がにじんで見える読み物であれば、こうはならなかったのではないかと思う(そういう読み物すべてに意味がないわけではない)。感謝ひとしおです。その直後に、入試問題やご著作のミスの話が出てきて、ひゅっと背筋が冷えた。印刷物や受験に関わるものであれば、修正の責任は大きそう。ネットの情報も誤報を完全に止めることはできないので、どちらが厳しいのだろうと考えてみる。今ならどちらがということもないのかな。いずれにせよ文章の力というのは大きい。

    --

    [p. 73 まで]

    短めのコラムがまとめて収載されている本。学校の教科書にも掲載されているらしい。読みやすくて、自分の世代的にもわかるわかると思える話が多く、さくさくと読み進めている。全体的には、昆虫少年が生物学博士になるまでの人生の断片が切り取られており、なかなかすごい体験もされている。そのひとつひとつについて、同じ経験をした人は少なくなくても、これらすべてが合わさってやっとひとりの人物になるのだと思うと、そのときどきの人の選択のありようを考えさせられる。それぞれ面白いエピソードなのだけれども、「光陰矢のごとし仮説」では、ふむふむと読み進めたあと、仮説かよ! とつい口に出してしまい、笑ってしまった。少年や若者の可能性の大きさに思いをはせながら、たどり着いた今現在の積み重ねの尊さも感じられる。

  • 馬を水辺に連れて行くことはできても水を飲ませることはできない
    教育の不可能性と希望

  • ・タイトルの「ルリボシカミキリ」に関する学術的な図書ではない。
    ・エッセイ集だが、福岡氏が子供の頃、昆虫少年だったエピソードも多く含む。
    ・数多くのエッセイの中から、最後に収録されたルリボシの話からタイトルに。
    ・福岡氏は表現力の豊富さから、読書量はかなり多いと見受けられる。
    ・昆虫好きの人にとっては興味深い話が多いが、そうでない人はつまらないかも。
    ・男の子は蒐集癖がある、メカ派(鉄道・車)か生物派に分かれる、というのは共感できる。

    抜粋P182
    脳死問題
    最先端科学技術は私達の寿命を延ばしているのではない。両側から生命の時間を縮めているのである。(ヒトをどの段階で生まれたことにするか、死んだことにするか)

  • 好きなことがあって、それに没頭できることって幸せだよね。人それぞれに、それは違うだろうけど。

    どんなにつらいことがあっても、”好きなこと”があればね。耐えられるよ。なんてこととないよ。

    プロローグ、あるいはエピローグを読むだけでも価値あり。

  • 2010/6/5  借りる。6/23 読み終わる

    福岡 伸一の本を読みたくて借りる。
    「生物と無生物のあいだ」の後に読む。すごく面白かった。

    内容と著者は

    内容 :
    分子生物学の最前線で活動する一方、生命科学の魅力を一般に伝え続ける著者が、
    その研究生活を中心に、ときどきの事件・ハヤリごと、身辺のよしなしごとなどを綴る。
    『週刊文春』連載のコラムを再構成・再編集して書籍化。

    著者 :
    1959年東京生まれ。京都大学卒。青山学院大学理工学部教授(分子生物学専攻)。
    第1回科学ジャーナリスト賞受賞。「生物と無生物のあいだ」でサントリー学芸賞・新書大賞受賞。

  • 週刊文春に連載しているコラムをまとめたもの(ウチの母はこれを読んでいたのだな)なので、一篇一篇は読み切りサイズ。時事と絡めたり思い出話を引っ張り出したりと多彩で、短く自由な形で書いているために著者の文章のうまさが余計に目立つ。うますぎてほとんどイヤミを感じるくらいに。

    GP2遺伝子ノックアウトマウスの後日譚。実はGP2遺伝子は消化管内での免疫システム発動に関わっていた。実験室はクリーンなためノックアウトマウスでも不都合が起きなかっただけだと。

    フタバスズキリュウの鈴木”元少年”は今でも博物館の職員である(爆問学問で見たな)。その鈴木さんが講演の最後に引いた与謝野晶子の短歌「劫初より造りいとなむ殿堂にわれも黄金の釘一つうつ」。

    Think globally,act locallyとはルネ・デュボス(抗生物質を発見したそうな)が言い出したセリフ。着眼大局、着手小局。

    矯正に関する歯医者の流儀はそれぞれであるようだ。行こうかと思っていたが少し思いとどまる気持ちに。

    ブラウン運動の勘違いや、思い出とは自己愛であるなど、他にも面白い話がたくさん。

  • 読者に気付きを与えたい、身近なところから「面白い」と感じさせる学びのきっかけを紹介したいという(裏の)狙いを込めて書かれたエッセイ集。
    ・何かを始めた時のこと
    ・学問の考え方
    ・理科的解釈
    など
    自分がどきどきするまでには至らなかったけど、福岡さんの狙いは分かった。

  • 読んだあとなら、ルリボシカミキリで画像検索しても割と平気!!

  • 著者は「生物と無生物のあいだ」の福岡氏。週刊文春に連載されていたコラムを単行本化したもの。

    1本1本が短く、とても読みやすい。独特の視点で物事をとらえ、それを表現する文章能力の高さに嫉妬。

  • 買ったまま積ん読になってたことに気付いて読みました。やっぱり、福岡先生の文章はいいですね。

  • 第1章 ハカセの研究最前線
    第2章 ハカセはいかにつくられたか
    第3章 ハカセをいかに育てるか
    第4章 理科的生活
    第5章 『1Q84』のゲノムを解読する
    第6章 私はなぜ「わたし」なのか?
    第7章 ルリボシカミキリの青

  • 楽しく興味深く 読みました。

  • 読んでいる間ずっと福岡氏の顔と声が思い浮かぶような、言文一致の文章でとても感動したのだけれど、私の移り気のためか、終盤はくどく感じてしまったのが残念だった。

  • いいエッセイだと思います。
    教育者としての福岡ハカセの一面も出ていて、
    若い世代の人たちが読んだらいいのにな、と思いました。

    もちろんハカセと同世代の私が読んでもとてもおもしろく読めます。
    着眼点がやはり科学者ですね。刺激になります。
    そして、
    「ほたてとえびのあいだ」
    「花粉症を止めたい!」
    同じ悩みを持つものとして、ハカセとともに一喜一憂しました。

    覚書
    ◆生物は「動的平衡」状態
    記憶は、生物のどこに保存されているのか?
    ・・・・
    第6章
    「なつかしさとはなにか?」

    ◆私という自己意識は体のどこにあるんだろう?
    脳の中? そんなこと証明できないじゃない
    ・・・
    川上未映子の小説を参考に 
    第6章「わたくし率」

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著者プロフィール

福岡伸一 (ふくおか・しんいち)
生物学者。1959年東京生まれ。京都大学卒。米国ハーバード大学医学部博士研究員、京都大学助教授などを経て、青山学院大学教授。2013年4月よりロックフェラー大学客員教授としてNYに赴任。サントリー学芸賞を受賞し、ベストセラーとなった『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)、『動的平衡』(木楽舎)ほか、「生命とは何か」をわかりやすく解説した著書多数。ほかに『できそこないの男たち』(光文社新書)、『生命と食』(岩波ブックレット)、『フェルメール 光の王国』(木楽舎)、『せいめいのはなし』(新潮社)、『ルリボシカミキリの青 福岡ハカセができるまで』(文藝春秋)、『福岡ハカセの本棚』(メディアファクトリー)、『生命の逆襲』(朝日新聞出版)など。

「2019年 『フェルメール 隠された次元』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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