世紀の空売り

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163730905

作品紹介・あらすじ

世界中が、アメリカ発の住宅好況に酔っていた二〇〇〇年代半ばそのまやかしを見抜き、世界経済のシステム自体が破綻するほうに賭けた一握りのアウトサイダーたちがいた。難攻不落の鉄壁のまやかしを演出するのは、ゴールドマン・サックスやリーマン・ブラザーズなどの投資銀行ムーディーズなどの格付け機関に、米国政府。彼らに挑んだその大相場を人は、「世紀の空売り」と呼んだ。『マネー・ボール』を超えた痛快NF。

感想・レビュー・書評

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  • 2010年に発行されているものを今頃読んだ。
    それでも better than never  リーマンの元社員の泣き言本や 財務官の自慢話とは比べ物にならない充実した内容であった。

    マイケル・ルイスと言えば、20代にして「ライアーズ・ポーカー」を書き、80年代の米投資銀行のヒドさを「あまりにもホントすぎて誰も訴えられない」くらいに曝露してみせた、ウォール街の良心のような存在。
    「ライアーズ・ポーカー」は 米国債券市場史やモーゲージ市場、各種デリバティブなどなど、市場性商品の基礎知識をわかりやすくシャープに説明してくれていて、先を読み急いだ記憶がある。

    そのマイケル・ルイスが、リーマンショックの“そもそも”からを、炎上した大手金融機関の側からではなく「どう考えてもこんな商品はいずれゴミになるぜ」と考えて売りポジションを張り続けた、無名な3組を中心に据えて描く。

    これが、ドウシテ?というくらいわかりにくかった。
    それは 馴染みのない団体や名前、商品の複雑さばかりが原因ではなかろう。

    とにかく とんでもなく異常なのだ。
    もともとのローンのいい加減さはもちろん、それらをmix-upする手法、格付け方法、それらをさらにマッシュアップして作り出された商品の奇怪さは、当の本人たちも理解できないようなシロモノであった。
    もともと返済能力に全然見合わないローンをベースにしているんだから、どう捏ね繰り回そうと低リスクの商品が出来るワケがないのだが、それがどういうわけかAAAの債券に化けていく。

    そんなものを売るのは詐欺以外のなにものでもなかろうと思うのだが、ウォール街のトレイダーたちも ひき肉ステーキ並みにワケのわからない部位の寄せ集めでできた債券の正体がなんであるのかわかってないわけので、彼らが詐欺を働く意志があったということすら証明不可能。

    だが、時限装置が動き始めてからは、もっと酷い。
    脳天気だったトレイダーたちもヤバいと感づきはじめてからも、市場はマトモな方向に動こうとしない。
    債券市場という閉鎖的関係性の中で、見てくれがよく声も大きいものが力任せに正当性をねじ伏せようとする。
    この長い期間には寒気がする。。。

    それも永遠には続かず、大手金融機関はつぎつぎに信じられない額の損失を計上し、すっからかんになってその死を迎える.......はずであった。
    ところが、なんとその損失は国税であがなわれ、しかも元凶を作ったトレイダーや経営者達はお咎めナシ。それまでに受け取った信じられない額の報酬を返せとすら言われなかった。

    マイケル・ルイスは20余年前に「ライアーズ・ポーカー」を世に送り出したときに、こんな節操のない詐欺まがいの商売はもうなくなるだろう、と考えていた。
    ところが、なくなるどころか、80年代に取りざたされた額など小学生の小遣い程度にしか見えないような金額の狂った取引が過熱し、リーマンショックにつながった。

    ルイス氏が、無名の3組を主役に据えたのは、彼らの考えの道筋が至極まっとうであったから、だけではなく大手投資銀行サイドはじゅうぶんに情報を開示しなかったからであろう。
    彼らはまたもや、やった者勝ち、の成功体験にほくそ笑んでいるのだろうか。

    文庫版の解説には 藤沢数希氏がこんなことを書いている。

    「さて、この解説を書いているとき、2012年の暮れの衆院選で、民主党を破り、新たに誕生した安倍政権は、日銀にもっとお札をするように圧力をかけ、円安・インフレを発行し、大規模な公共事業を約束している。日本国政府はまるで借金が傍聴していくことを気にもとめていないようだ。それにも関わらず、日本国際の値段は下がっていない。日本の銀行が、他に融資先がないので買い続けているからだ。
    しかし、こんなことが永遠に続かないのは明らかだ。いつか破綻するのだが、問題はそれが「いつか」ということだけである。」

    日本経済は まちがいなく 次の空売りターゲットの一つになっている。 

  • 金融危機を扱ったジャーナリストの本はいろいろ読みましたが、
    ショートした側から見た視点は面白かったですね。
    他の内幕本は道徳的な説教本になったり、
    まるで的外れな糾弾をしているものも散見されたのですが
    この本は金融の基礎知識を踏まえた上で、
    CDSの仕組みも理解して書いているので、
    レベルが高い読み物になっているな、と。
    最後にはショートした側は大金を儲けたのですが、
    正しいことを指摘したがゆえに、
    他の大部分のロングしたサイドからは反感を買い、
    自らの顧客からさえも称賛は受けられなかったと。
    一読をお勧めいたします。

  • テーマとなっている「空売り」は、金融の専門用語で、下げ相場に
    賭けることを言いますが、本書の主役たちは、まさにこの「空売り」
    で財を成した人物。

    あのサブプライムローン問題のさなかに、暴落で儲けたスティーヴ・
    アイズマン、マイケル・バーリ、そしてコーンウォール・キャピタ
    ルの若者たち。

    困難に直面してもなお、信念を貫き通した彼らの姿を見ていると、
    知性とは肩書ではなく、「知を愛し、そのために事物を疑うこと」
    であると確信させられます。

    また、そのためにどんな組織を作るべきか、という点についても考
    えさせられるものがありました。

    サブプライムローン問題自体が大きくクローズアップされ、かつ関
    連書も数多く出ていることから、本書の内容も既知のものが多いの
    が残念ですが、裏舞台を知る上では、刺激的な書物だと思います。



    「オッペンハイマーのアナリストとして給料をもらうには、とにか
    くまっとうに働くことと、周りに気づかれる程度の波風を立てるこ
    とです。オッペンハイマーには、反体制の気風があります。これが
    大企業になると、社員はみんな、総意に従うことで給料をもらうん
    です」(アリス・シュローダー)
    アイズマンはやがて、波風を立てること、総意に歯向かうことに特
    別の才能を発揮するようになる

    (アイズマンの)妻が言う。「駆け引きとして、無礼にふるまって
    るわけじゃないんですよ。裏表がないから、無礼になってしまうん
    です。みんなに変人と思われてることは知ってますけど、本人はそ
    んなふうには思ってません。自分の頭の中で暮らしてる人ですから」

    ダニエルの頭に、ふと皮肉な問答が浮かんだ。収入増の望めない貧
    者に、金持ち気分を味わわせる妙策は? 金利の低いローンを与えること

    「持ち分のない住宅は借金付きの借家にすぎない」


    オッペンハイマーのセールスマンだったモーゼズの脳裡には、その
    時代のアイズマンが、売りサイドのアナリストにあるまじきありと
    あらゆる言動を見せた姿が焼きついている。例えば、トレーディン
    グが行なわれている真っ最中に、トレーディング・フロアの中央に
    ある演壇に上がって全員の注意を促し、「これから挙げる八社の株
    券は、ただの紙切れになる」と宣言したうえで、八つの社名を口に
    すると、事実、その全部がやがて倒産した

    「借り手ではなく、貸し手のほうに目を光らせるべきですね。借り
    る側は、自分にとって都合のいい条件なら、いつだって大歓迎です。
    節度を保てるかどうかは、貸し手しだいで、貸し手が節度を失った
    ときは、気をつけないといけません」(バーリ)



    投資は一個の定石に煎じ詰められるものではないし、ひとつのロー
    ルモデルから習得できるものでもない、というのがバーリの考えだった

    信じがたい話だ。あの保険会社は、年間数百万ドルの保険料と引き
    換えに、二百億ドルが一瞬にして消えかねないゆゆしいリスクを引
    き受けている

    AIG・FPという会社には、ゴールドマン・サックスのトレーダ
    ーと互角に渡り合えるごく有能な人材を集めるだけの魅力が、ちゃ
    んと備わっていた。ところが、その有能な人物の頭を、商売の機微
    もろくに心得ない鈍感で癇癪持ちの社長が押さえつけていたのだ

    ウォール街がいちばん起こりそうにないと思っていることを探し出
    して、それが起こるほうに賭けるのが、ウォール街で稼ぐ最善の方法

    バーリの顧客、つまり、預けた金をバーリに倍以上にしてもらった
    人々は、ほとんど何も言わなかった。謝罪も、感謝の言葉もなかった

    賢い決断を下す必要がないとしたら、つまり、お粗末な決断をして
    も金持ちになれるとしたら、どれくらいの数の人間が賢い決断を下
    そうとするだろう? ウォール街の報奨制度は、全面的に間違って
    いた。今でも、間違っている


    ◆目次◆

    序章 カジノを倒産させる
    第一章 そもそもの始まり
    第二章 隻眼の相場師
    第三章 トリプルBをトリプルAに変える魔術
    第四章 格付け機関は張り子の虎である
    第五章 ブラック=ショールズ方程式の盲点
    第六章 遭遇のラスヴェガス
    第七章 偉大なる宝探し
    第八章 長い静寂
    第九章 沈没する投資銀行
    第十章 ノアの方舟から洪水を観る
    終章 すべては相関する

  • この本でCDSというものを把握。終盤で、ショートする方に投資をしたヘッジファンドの名目上の持ち主がこの金融危機で危うくなる巨大銀行の一つで、こんなに利益を得たのに親玉の銀行が潰れたら全資産持っていかれるのでは?というところが皮肉で笑いました

  • 二〇〇七年のサブプライムローン破綻の際に空売りを仕掛けた少数の投資家の話
    どきどきわくわく

  • 2000年頃のITバブル崩壊の後、作り出された不動産バブル。経済弱者の二番以下抵当負債を証券化するという、クレジットカードで借金する弱者にも低金利恩恵であったはずが、より怠惰に堕落した結果3年目からは目を剥くような高金利を要求されるIOローン(元金そのままで金利だけを払う、つまり不動産価格が上昇して手数料込みでより高額で転売できないと十中八九破綻)までも横行し破綻必至…。それでもAAA格付。破滅を予見して大儲けした3グループの男たちは大成功の後でも愛されなかったし、責任を取るべき人々は政府資金で救済された

  • 1

  • 強欲な投資銀行。その本質は金融危機後も何も変わってない。賭けに勝っても負けても、どれだけ税金を投入されても、プレイヤー達は大金を手にする不合理。
    専門用語も多く素人にはかなり難しいだろう。

  • ★今なら分かる不合理★いまさらながらの金融危機の振り返りだが、サブプライムローンのおかしさに早くから目をつけていた3組を取り上げる。住宅ローンという実物だけでなく、それを賭けの素材としてCDOを複製することで米投資銀行の貪欲な賭けが際限なく膨らんだが、そのリスクをどれだけ理解していなかったのか。3組の疑問と不信、周囲の無理解、いざ世界が崩壊したときは満足だけでなく不安と静謐が訪れる。混乱の仕組みを分かりやすく描き、取り巻く人々の思いや混乱を写し出す筆致が素晴らしいのだろう。登場人物の心情を断定的に言い切る、地の文に皮肉を利かせる、トピックスの絞り方がうまいのか。やはりマイケル・ルイスは一気に読ませる。

    他人の金を元手に稼ぐ投資銀行のおかしさはもちろん、さらにすごいのは、サブプライムローンの破綻に賭けて大金を得た人々が、いままだ投資を続けているらしいことだ。本には書いていないが、アイズマンはニューバーガー・バーマンのファンドマネジャーとは。信念なのか、さらなる欲望なのか。

  • 住宅バブルからリーマン・ショックへ至る顛末は、興味のある向きには大筋だけなら周知のことと思うが、そのとき実際に現場で動いていた群像劇は圧巻。ドラマがある。世間では「バブルは予見できるか?」なんて、ややアカデミックな議論などあるが、そんな理屈が吹き飛ぶような迫力だ。これはウォール街を占拠したくなる気持ちも分かる。

    本書の主人公たちはサブプライム債(を材料に合成されたCDO)をショートしていた面々。いずれもウォール街の主流からはだいぶ外れたアウトサイダー。こういう独立独歩の人が利益を求めて行動した結果、首尾よく価格発見に至ればまさに効率的市場仮説どおりだが、簡単にそうならぬのが現実の難しさ。本書でも再三指摘されているが、債券市場の不透明性(+その不透明性を最大限に利用した強欲)がひとつの原因だろう。

    また主人公たちの「敵方」として、第9章で取り上げられるMSの特殊部隊の話がきわめて興味深い。サブプライム債がクズであることを十分承知していながら、トリプルBのCDOショート、トリプルAのCDOロングで見事に飛んでしまう。後知恵で何とでも言えるのだが笑うしかない。投資銀行、CDOマネジャー、機関投資家といった「敵方」の様子は本書でもハッキリとは分からないのだが、こうしたカオスが多々あったのだろう。

    闘い終えて、具合が悪くなるくらい疲弊した主人公たちの様子も描かれる。

    <blockquote>渦中にいた誰かが一部始終を書き残さない限り、未来の人々はこんなことがほんとうにあったことなどとは信じないだろうと思ったのだ。(略)未来の読者が、暴かれた事実のどれかに対して、あるいはわたしの体験した特殊な出来事のどれかに対して、「じつにのどかな話だ」という感想を漏らすことになるとは、まったく想像していなかった。なんというおめでたさ!
    まさかあの金融狂騒の一九八〇年代がそのあと二十年も続くなどとは、到底予測できなかった。
    −p.11-12 著者が『ライアーズ・ポーカー』を書いた当時を振り返って</blockquote>
    <blockquote>「市場にあれほどの非効率性が存在したことに、心が和みましたね。」
    −p.40 ヴィンセント・ダニエル 1997年、アナリストとしての初仕事でサブプライム業界を調査しての感想</blockquote>
    <blockquote>バーリはうかつにも、みずからいちばん苦手としている投資家たちとの論争を始めてしまったのだった。「投資家と観念論を戦わせるのが大きらいなのは、そうすると自分がその観念の”擁護者”になってしまって、それが思考過程に影響を及ぼすからです」と、バーリ。いったんある観念の擁護者にされると、それについて考えを改めるのがむずかしくなってしまう。
    −p.96</blockquote>
    <blockquote>債券市場のほうは、おもに大口の機関投資家によって成り立っていたので、株式市場のような大衆型の政治的圧力にはさらされなかった。株式市場をはるかにしのぐ規模にまで発展しながら、きびしい規制を免れていたということだ。債券セールスマンは、当局への通報を恐れずに、なんでも言えたし、なんでもできた。(略)それが一因となって、債券部門はウォール街の収入源として、しだいに大きな部分を占めるようになる。つまり、債券市場ではいまだに、顧客の不安と無知につけ込むことで、莫大な金を稼ぎ出すことができたのだ。
    −p.105</blockquote>
    <blockquote>CDSを買うという行為は、アメリカの住宅所有者が債務不履行に陥るまでのあいだ、つまりは数年間、プレミアムを支払い続けることを意味する。債券市場の投資家は、債券市場のトレーダーと同じく、参入に金のかかるトレードを直感的に拒み、午前中に顔を出すだけで稼げるトレードを本能的に求める。
    −p.131</blockquote>
    <blockquote>さらに、ふたりは、公開株や債権を扱う金融市場には大局に関心を持つ投資家がいないように感じていた。アメリカの株式市場にいる人間は、アメリカの株式市場の範囲内で判断を下し、日本の債券市場の人間は、日本の債券市場の範囲内で判断を下す、というように。「ヨーロッパの中型株ヘルスケア債にしか投資しないという人が、ほんとうにいますからね」と、チャーリー。「金融に限った問題じゃないと思います。そういう偏狭さは、現代の知的生活の共通項になっているようです。分野をまたぐ大きな発想がないんですよ」。
    −p.171-172</blockquote>
    <blockquote>もし株価が翌年ゼロか百ドルになる株があるとしたら、それをひと株五十ドルで買うための一年ものオプションを三ドルで売るのは、愚行でしかない。なのに、市場ではそれに類することが頻繁に起こっている。
    ウォール街が数兆ドル分のデリバティブの価格設定に使っていたモデルは、金融界を、連続性のある秩序正しい工程と見なしていた。しかし、金融界は連続性のある場所ではない。非連続的な変化が、それもしばしば偶然に起こる場所なのだ。
    −p.179</blockquote>
    <blockquote>業界全体が、格付け機関の支えによって発展したきたというのに、格付け機関で働く社員たちはほとんど業界の一員とは見なされていなかった。格付け機関の社員がロビーを歩いていると、ウェルズ・ファーゴのような二流商業銀行の行員か、オプション・ワンみたいなモーゲージ金融の平社員など、九時から五時までの仕事しかしない人間とよく間違えられた。
    −p.235 ラスヴェガスでの債券市場業界懇談会の様子より</blockquote>
    <blockquote>「ちょうど、メリル・リンチをショートしたところです。」と、アインズマン。
    「なぜかね。」
    「素朴な持論に従っただけですよ。災難は必ず訪れる。災難が訪れたとき、そこには必ずメリル・リンチがいる。」
    (略)図体の大きなゴールドマン・サックスは、この界隈のがき大将で、ゲームを取り仕切っている。小柄で太っちょのメリル・リンチは、いつもいちばんうだつの上がらない役をあてがわれるが、仲間に入れてもらえるだけで喜んでいる。
    −p.260</blockquote>
    <blockquote>毎日の終業時に、バーリはちょっとした精算をしなければならなかった。サブプライムの相場が下落していたら、投資銀行がバーリに送金をし、上昇していたら、バーリが投資銀行に送金する。サイオン・キャピタルの運命はその賭けに左右されるが、短期的に見れば、その運命を決めるのは、開かれた自由市場ではなかった。(略)
    マイケル・バーリが売買しているものは、ほかに売買する人間がいないのだから、価値を示す確たる証がなく、したがって、ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーが付けた値段が市価になるというわけだ。
    (略)投資銀行側は、自分たちには持ち高がない−売りと買いが常に拮抗している−と言い張っていたが、そうではないことはふるまいを見ればわかった。(略)つまり、投資銀行がバーリの賭けの成功を認めようとしなかったのは、自分たちがその賭けの相手方だったからだ。
    −p.274-275</blockquote>
    <blockquote>この勝負の複雑かつ奇妙な点は、敵味方に分かれた重要人物たちのほぼ全員が、財布をずっしり重くしてテーブルを離れたということだ。(略)
    賢い決断を下す必要がないとしたら、つまり、お粗末な決断を下しても金持ちになれるとしたら、どれくらいの数の人間が賢い決断を下そうとするだろう?ウォール街の報奨制度は全面的に間違っていた。今でも、間違っている。
    −p.372-373</blockquote>
    <blockquote>ありきたりの金融恐慌においては、知覚が独自の現実性を創り出す。満員の映画館の中で、誰かが「火事だ!」と叫べば、観客はわれ先に非常口へ突進する。二〇〇八年のウォール街においては、最終的に、現実のほうが知覚をねじ伏せた。満員の映画館が、館内に大勢の観客を残したまま焼け落ちたのだ。(略)問題は、リーマン・ブラザーズが破産を許されたことではない。リーマン・ブラザーズがそれまで繁栄を許されていたことだった。
    −p.379</blockquote>

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