ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯

  • 文藝春秋
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感想 : 166
  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163733005

作品紹介・あらすじ

第二次世界大戦中のロンドン郊外で、足と翼に障碍を持つ一羽の小スズメが老婦人に拾われた。婦人の献身的な愛情に包まれて育った小スズメは、爆撃機の襲来に怯える人々の希望の灯火となっていく-。ヨーロッパやアメリカで空前の大ベストセラーとなった英国老婦人と小スズメの心の交流を描いたストーリーを、梨木香歩が完訳。

感想・レビュー・書評

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  • 昔からいつも身近にいて、いろいろな昔話にも登場してくるすずめですが、どこで、どのように暮らしているのか、何万羽もの雀がどのように寿命をむかえているのか、実は不思議がいっぱいです。

    本書は著者のクレア・キップスが生まれたばかりで巣から出てしまった小雀クラレンスと、第2次大戦最中のロンドンで共に過ごした12年間の記録です。
    客観的な記録ではあるが、動物行動生理学としての視点ではなく、自分の子供を慈しみ育てるような愛情と、対等なパートナーとして互いに理解し信頼している姿がすばらしい。

    コンラート・ローレンツの説く”刷り込み”と理解しても良いのかもしれませんが、著作のなかで示されたクラレンスの遊び、さえずりの能力、作者とのコミュニケーションは驚くばかりです。雀のクラレンスの”個性”が表れています。

    12年間の日々の中、幼鳥のクラレンスは大人になり、やがて年老いていきます。若い日の堂々とした”小さな鷲”のような誇り高き存在は小さくなり、自由にならない体を知恵で乗り越えていく姿に、作者は知性を感じています。皆に愛されたクラレンスはやがて静かに目を閉じていきます。

    小さな墓碑に刻まれたことば
    CLARENCE: THE FAMOUS AND BELOVED SPARROW

    訳者、梨木果歩の文章も静かで、とてもきれいです。
    原題の"Sold for a Fatering" は Fathingが1/4ペニーですが、”とても小さく愛おしいもの”という想いでしょうか。


    参考:
    ・すずめ、つかずはなれず2千年 三上修
    ・ソロモンの指輪 コンラート・ローレンツ

    • nejidonさん
      8minaさん、こんにちは♪
      今年もよろしくお願いします。

      この本、数年前に友人から誕生日プレゼントにいただきました。
      あまりにも...
      8minaさん、こんにちは♪
      今年もよろしくお願いします。

      この本、数年前に友人から誕生日プレゼントにいただきました。
      あまりにも、あまりにも大事にしすぎて、いまだに読んでいません(笑)
      梨木さん大好き、小鳥大好きなのに、大切すぎて開けないのです。
      今年は読んでみようかと、レビューを読んで思いました。
      2014/01/07
    • 8minaさん
      nejidonさん
      こちらこそ、今年もよろしくお願いします。
      コメントありがとうございます。いつも知らない絵本が沢山並んでいる本棚とコメ...
      nejidonさん
      こちらこそ、今年もよろしくお願いします。
      コメントありがとうございます。いつも知らない絵本が沢山並んでいる本棚とコメント楽しみにしております。
      この本は私も本屋で迷っていたところ、レビューを見て買いに走った次第です。
      2014/01/09
  • ・「英国老婦人と小スズメの心の交流を描いたストーリー」と帯にあるが、これはあまりにこの作品の価値をステレオタイプな分類に押込め、貶めていると思う。この作品は、よくある「動物系のお涙頂戴話」とは一線も二線も画している、珠玉の動物観察記だ。
    ・原題は“Sold for a Farthing” このタイトルで、スズメの話とくれば、新約聖書に通じている英米圏の人々はイッパツでピンとくる。「“一銭程度で売られて”いる一羽の雀さえ顧みていてくださる神は、雀以上の存在である人間に、どうしてそれ以上よくして下さらないわけがあろうか」というマタイによる福音書のキリストのたとえ話からとられているタイトル。
    ・でも、悲しいかな、日本人には「?」となってしまう。だから、月並みなタイトルにしたのだろうが、残念でならない。このタイトルこそが、この本の内容を極めて簡潔に凝縮しているというのに。
    ・そのためか、熱帯雨林のレビューも、ヒューマニズムな見地から見て「感動した」との意見が多数であって、それに反対するわけではないが、この作品に流れている思想は、ナチュラリストのそれである同時に、神の創造物として人間と動物を見る、信仰者のそれ(筆者は英国バプテスト教会の牧師の娘でもある)であることを見逃してしまうなら、この本の魅力の半分も理解したことにならないだろう。そうでなければ、筆者が「無知で取るに足りない一羽のスズメが、(無神論・唯物論の教師としての)カール・マルクスよりも偉大な教師」であると言っている文脈を到底理解できまい。
    ・ワーズワース、キップリングなどの引用、アベラールとエロイーズの逸話…随所に散りばめられた筆者の教養(あくまでも、当時の、だが)にも唸らされる。深い教養と感受性と信仰に裏打ちされた、優れた観察録。従って、文学作品にもなっている。梨木香歩が訳したいと思うのも頷ける。そして、訳も、素晴らしい。
    ・時間を置いて、また再読したい。ブラヴォ!

  • 淡々と雀との生活を描いています。
    静かで、柔らかくて、とても温かいです。

    文章に品があります、品があるから
    深々としています。

    その静けさから、私たちはこのストーリーの音を
    聴くことができるような気がするのです。

    鳥が好きだから、動物が好きだから
    この本を読む、というよりは

    本を読むことが好きな人に、読んで欲しい作品です。

  • キップス夫人のクラレンス(雀)に対する愛情をとても感じました。クラレンスの行動の一つ一つが興味深いのと同時に愛しくて仕方がないんだなと。
    犬や猫なら分かるけれど、鳥にも意思や感情がこんなにもある事に驚きました。キップス夫人によると表情まであるなんて!!
    家に来る鳥たちにもそれぞれ個性や表情があるのかな。観察してみたくなりました。

  • 人とスズメの友情の物語。

    ある日自宅の玄関前で瀕死の状態のスズメを見つけたクレア。
    そこから12年7週4日の2人の共同生活が始まる。
    クレアにとってスズメのクラレンスはペットでは断じてない。
    クレアの赤ちゃんであり相棒であり恋人であり、かけがえのない友である。
    器用なクラレンスは時にエンターテイナー、時に舞台歌手として鳥とは思えない芸を披露して観客を楽しませる。
    クレアのビアノに合わせて歌うクラレンスの可愛い歌声が聴こえてきそうだ。

    好奇心旺盛でヘアピンが大好きな愛しいクラレンス。
    2人の濃密な年月は永遠にクレアの中に生き続ける。

    鳥が大好きな梨木香歩さんの翻訳からもクレアとクラレンスへの温かな愛情が伝わってきた。

    • nejidonさん
      はじめまして♪
      お気に入りを下さり、ありがとうございます!
      レビューを読ませていただき、私もこの本を読んだのに載せるのを忘れていたのを、...
      はじめまして♪
      お気に入りを下さり、ありがとうございます!
      レビューを読ませていただき、私もこの本を読んだのに載せるのを忘れていたのを、
      思い出しました。素敵な作品でしたよね。
      次々に色々な本に手を出してしまい、しばしばそういうことがあります・笑
      mofuさんの本棚は楽しそうですね。
      フォローさせていただきます。どうぞよろしく。
      2017/08/30
    • mofuさん
      nejidonさん、コメントといいねをありがとうございます!
      私もフォローさせて下さいね♪
      色々な本が本棚にあるので、私も楽しみです。
      ...
      nejidonさん、コメントといいねをありがとうございます!
      私もフォローさせて下さいね♪
      色々な本が本棚にあるので、私も楽しみです。
      どうぞよろしくお願いします(^ー^)
      2017/08/30
  • 「一人暮らしの寡婦」と、障碍があって捨てられたスズメの暮らし。著者の落ち着いた文章の中できらめく愛情と観察の細やかさからは、彼をこれ以上ないほど愛しながらも対等な同居人として尊重していることが伝わってくる。それが翻訳者の梨木さんの、相手を尊重して包み込むような姿勢や美しく柔らかい文章と深くマッチしているのだろう、かなり読みやすく喜びが伝播するような素晴らしい作品だった。

    あとがきで梨木さんも引いている「突然迸るような歓喜の歌をひとくさり歌った」ところや、新しい寝床で「幸福感にあふれた『むにゃむにゃ』を呟く」ところなど、小さなスズメからこんなに豊かな感情の発露が見られるのには本当に胸がいっぱいになる。老衰し体がボロボロになっても新たな体の使い方を見出し、一生懸命練習してものにする生命力。それは、間違いなく彼女の愛が引き出したのだろう。
    スズメと人間という生物種を越えた関係であることや、クラレンスが特殊なスズメだった(かもしれない)から感動的というのではなく、そのような枠を取りはらって彼と彼女との関係があまりに深く、かけがえのないものであることがこれほど胸を打つのだと思う。
    12年もの歳月を生き抜いてクラレンスは息を引き取るが、喪失感とともにあらためて著者と彼の絆が強く輝いて思い返される。梨木さんが「相棒」の喪失は「自分自身の内部の、部分的な喪失とも等しい」と言い、「内的な必然から、彼女はこの『記録』を、書かざるを得なくなったのだろう。他に何ができようか」と言うのは、そういうことなのでしょう。悲しみとともに「穴」から溢れてくる、愛しくまぶしい何もかもが、一人の心を超えて、時も超えて、私たちのもとへ届いてくる。

  • 初読

    装丁の良さに長らく気になってたこの本(スズメ好きだし)
    かなり良かった!

    戦時中のロンドン市民の生活って知らなかったな…
    と思いながらキップ夫人と雀のクラレンス。

    全くウェットにならない文章もとても良い。
    俳優として、歌手としてのクラレンス。
    卒中の後、ティースプーンのシャンパンで英気を養う雀。

    老いるという事が年々身近になってゆくが、
    それへの対処としても彼の姿勢は経緯を評したい。

    プレゼントしたい小鳥好きの友人の顔が何人か浮かぶ。

  • 生まれたばかりのスズメの雛クラレンス。おそらくその持って生まれた障害のために、野生では生き抜くことができないとみなされ(たかどうかは不明だが、その障害ゆえに)親鳥の庇護を受けられなかった。
    それをたまたま拾った著者が、クラレンスの、野鳥としてはおそらくありえないほど長寿である(らしい)12年近い生涯を見届け記録した観察記。

    著者がこの小さな生き物を慈しむさまは非常に叙情的であり、初めのうちは戦火を避けながらの日々であったことも忘れさせるほど。
    最期は老衰により命を閉じたわけだが、解説によれば、それは野鳥はもちろんのこと、飼い鳥でさえほとんど奇跡に近いことらしい。
    それほど、著者がクラレンスに心を砕き愛情を注いで世話をし続けたという証であろうし、また同時にクラレンスも著者の愛情に応えてみせたという証拠でもあろう。

    読みながらローレンツ博士を思い出し、また今、竹田津実氏の本を読んでいることもあり、動物学者(著者は違うけれども)は学者である以前に、動物の生態を明らかにする云々というよりむしろ、ただひたすらに動物が好きで好きでたまらないから眺め、記録し、そして気づく、それが結果として研究になるということなのかもな~としみじみ感じた本書であった。

    蛇足ですが…図書館で借りた本書は濃紺一色の装丁。表紙写真にあるような酒井駒子の装丁画はなく、おそらく表紙カバーを取り外した状態でフィルムを貼ったと思われる。
    う~ん、残念なんだけど~。酒井駒子の表紙絵残しておいてほしかった~。

    • 8minaさん
      bokemaruさん
      ブックオフにまだありました。
      青いハードカバーに金文字のSold for a Farthing 丁寧な装丁の本です...
      bokemaruさん
      ブックオフにまだありました。
      青いハードカバーに金文字のSold for a Farthing 丁寧な装丁の本ですね。
      2013/12/23
    • bokemaruさん
      8minaさん
      お、さっそく購入されたんですね!
      そうなんです!実は本自体の装丁も素敵で、ごくごくシンプルな装丁が逆に図書館で目をひいて...
      8minaさん
      お、さっそく購入されたんですね!
      そうなんです!実は本自体の装丁も素敵で、ごくごくシンプルな装丁が逆に図書館で目をひいて、思わず手に取ったという次第です。
      2013/12/23
    • 8minaさん
      bokemaruさん
      正月休みにゆっくりと読むことができました。梨木果歩さんの翻訳も静かで美しく、確かに自然を愛される他の作品とも同じ雰囲...
      bokemaruさん
      正月休みにゆっくりと読むことができました。梨木果歩さんの翻訳も静かで美しく、確かに自然を愛される他の作品とも同じ雰囲気ですね。
      2014/01/02
  • スズメはかわいい、スズメは。

    ただ、これって鳥を飼っている人ならだれでも思うことだけど、決してこのクラレンスくんが特別なわけではないんだよね。
    雄の鳥の多くは美しい声色で歌を歌うし、トランプを引きずり回したりピンを巣に運んだりする。
    どの鳥も賢く、気高く、愛らしい。
    「うちの坊やだけがどこか特別な生き物だ」と思いたくなってしまう気持ちは分からなくないけど、特別発言の頻度があまりに多い。
    もういいよ、お腹いっぱいだよおばあちゃん。

    「スズメの見た世界」や「スズメによって励まされた人々の姿」をテーマにしていると聞いて読みはじめたんだけど、
    ひたすらにおばあさんのスズメ自慢で終わってしまった印象でした。
    もちろん、おばあさんの生活がスズメによって大きく彩られたということは伝わってきたけど。

    「うちの坊やは特別」関係で一つ驚いたのは、クラレンスが生まれつき持っていた羽の障害がだんだんよくなっていったことに対しておばあさんが残念がっていたこと。
    羽の障害が彼を他のスズメとは違う、気高く特別な存在に見せていたのに残念だ、といった記載があったこと。

    よいか悪いかは別にして、おばあさんは自分が人とつながるための手段としてスズメを利用していた面があると思う。
    他では見れない特別なスズメ。
    美しい歌をさえずり、トランプで芸を見せる羽の曲がった特別なスズメ。私だけになついている特別な特別な生き物。
    スズメがユニークであればあるほど、人々は興味を抱き、結果としておばあさんの周りには人が集まる。
    孤独なおばあさんが注目を集め人とつながるために。坊やは外のスズメが歌わぬ歌を歌い、トランプを運び、羽が曲がっている必要があったのだ。

    …なんて、はじめはものすごいゆがんだ感想を持ったけど
    読み返してみると、カナリアの抱卵や外の鳥との交流からスズメが受けた影響など。この人でしか書けないおもしろい話もたくさんあって、普通に心温まった…

    なんていうか、こんな所で物事の細部を見ずに断定的な評価を下してしまう自分のヤバさを感じてしまった。一面だけで人やものを判断するのは危険です、気をつけよお…
    (でも、おばあさんスズメ利用説も一理あるはず…はず…)

  • ある小さなスズメの生涯のお話
    死にそうなスズメが、ある婦人に拾われた
    そして、みんなに、希望を与えるスズメの感動作
    ぜひぜひみなさんさん、よんでください

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