渋沢栄一 1 算盤篇

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (477ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163735801

作品紹介・あらすじ

豪農の家に生まれた渋沢栄一は、一橋(徳川)慶喜に仕え武士となり、慶喜の弟・徳川昭武とパリ万博への参加を命じられる。そしてパリの地で「資本主義のシステム」の本質を見抜く。幕府が崩壊したためやむなく帰国、不本意ながら仕えることになった新政府で、「円」の導入など金融政策に次々関与する。明治六年、本当の国力をつけるためには民間の力が必要だと考えた渋沢は、大蔵省を辞め、「民」を育成するための生涯を送ることになる。

感想・レビュー・書評

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    渋沢栄一の伝記

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1000779736

  •  先に津本陽の小説を読んだので、私には、そちらの方が読みやすく、楽しめた。こちらは、楽しむ為のものではなく、文献や解析から真実を求めるもの。知識欲が深い人には、こちらが向いているであろう。私は、その境地に至っていない。修行中か。

  • 論語に基礎を置く『算盤』主義……明治の精神を具現する渋沢栄一の本格的評伝


    近代日本・資本主義の父とよばれる渋沢栄一の最新の評伝を手に取ってみた。執筆が仏文学者の鹿島茂氏だから驚いたが、考えてみれば、鹿島氏は、先に『怪帝ナポレオン三世 第二帝政全史』(講談社、2010年)を執筆しているから、驚くに値いしないか。

    対象に対する愛情と旺盛な好奇心が本書でもいかんなく発揮されている。

    本書は、渋沢の性格や経歴といった個別的な特性からその思想形成と経済社会への関わりを検討するところがひとつの特徴といってよい。上下二巻にわたり丹念に調査しており、本書で紹介された話題は実に豊富で多面的である。

    新撰組の土方歳三との関係や様々な逸話が幅広く渉猟・蒐集されており、鹿島氏の面目躍如といったところだろうか。

    「渋沢は、自己本位の利潤追求はかえって、自己の利益を妨げるという資本主義のパラドックスを十分に理解した上で、論語に基礎を置く『算盤』を主張しているのである」。

    さて渋沢が算盤と論語の「両刀遣い」だったことは有名だが、十分知識も経験、そして関心があるにもかかわらず、投機に走らなかったのは、「論語」に説かれる道徳倫理に基づく「自制心」がセーブしたのではないかという指摘は興味深い。

    合目的化していく人間の必然を絶えず相対化させて闘う、その足跡を辿ると、意外のようにみえる渋沢が宗教や道徳・倫理運動にも同じく力を注ぎ、支援した歴史にも頷くことができる。

    2冊で900ページ以上。読み応えがある。

  • 渋沢の資本主義観がどこでどのように形成されたのか。著者は渡仏した際に渋沢が影響を受けたとされているフランス人銀行家フリュリ=エラールに注目、そこにナポレオン3世治下で急速な近代化の教化思想の役割を担ったサン=シモン主義の影響を見て取る。第2章は、当時のサン=シモン主義についての叙述が中心となっており、本書の白眉をなす。「官」と「民」、「公」と「私」についての叙述も大いに参考になった。

  • 独自調査をもとに、渋沢栄一を捉え直しており面白い。関係する文献等をどのように集めたのかといった苦労話も多々盛り込まれており、その点も興味深かった。

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著者プロフィール

1949(昭和24)年、横浜に生まれる。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。2008年より明治大学国際日本学部教授。20年、退任。専門は、19世紀フランスの社会生活と文学。1991年『馬車が買いたい!』でサントリー学芸賞、96年『子供より古書が大事と思いたい』で講談社エッセイ賞、99年『愛書狂』でゲスナー賞、2000年『職業別パリ風俗』で読売文学賞、04年『成功する読書日記』で毎日書評賞を受賞。膨大な古書コレクションを有し、東京都港区に書斎スタジオ「NOEMA images STUDIO」を開設。書評アーカイブWEBサイト「All REVIEWS」を主宰。22年、神保町に共同書店「PASSAGE」を開店した。

「2022年 『神田神保町書肆街考』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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