中野京子と読み解く名画の謎 ギリシャ神話篇

著者 :
  • 文藝春秋
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  • / ISBN・EAN: 9784163738505

作品紹介・あらすじ

『怖い絵』の著者が贈る神々と人間の20の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 本を読む時間が取れなくて、久しぶりのブクログです。
    そして、読みかけていた別の本も読み切れなくて…。
    「わくわくできない事に使う時間はもったいないかな」と
    ついに リタイアしました。
    そして手に取ったのがこの本。
    美しい絵に添えられる中野氏の語り口が軽妙です。

    この本でギリシャ神話が理解できたわけではないけれど
    びっくり仰天、そして大いに興味をそそられました。
    『我々は古典絵画を崇める傾向がありますが、
    テレビや映画のなかった昔、
    宗教画ですらエンターテインメント性を帯びていた』と中野氏。
    けっこうなドロドロ愛憎劇が渦巻いていて、
    昼メロなんか 到底足元にも及ばない世界が広がっていたようです。

    例えば、全能の神ゼウスは大変な好色家だったとか。
    実の姉である妻(ここでまず、びっくり仰天!)のヘラがいながら、
    数多くの女性を孕ませてしまいます。
    相手が幽閉されていれば黄金の雨に姿を変えて忍び込み、
    拒絶されれば女性の夫に変身して思いを遂げるのです。
    なんですかっ!

    そして、“パンドラの箱” で知られるパンドラって、
    ゼウスによって創られた人類最初の女性の名前だそうです。
    調子に乗っている人間(男しかいなかったそうで)を懲らしめようと、
    ゼウスが泥でこねた人形に命を吹き込んで作ったとか。
    これをどう解釈しましょうか?

    また、大地の女神ガイアが息子に夫を殺害させるエピソードも衝撃的。
    その身体を切り刻んで七つの海に投げ入れます。(えっ~!)
    そして、その海のひとつから生まれ出たのがヴィーナス。
    『世界最初の殺人事件、それも息子の父親殺しから生を得たこの美女は…』
    と、中野氏の軽快な口調で 物語はさらに混迷を深めます。

    ギリシャの神々の、なんと自由でのびやかなこと。
    こういった物語と共に掲載されている絵画の写真を見て
    ちょっと愉快な気分になりました。
    今度 美術館に行ったら、絵の前でニンマリしてしまいそう。

    • 松子さん
      yyさん、こんばんは(^^)
      yyさんのレビュー、『へぇー!』と驚きながら読んでいたのですが、途中はいるyyさんの、『なんですかっ!』や『ど...
      yyさん、こんばんは(^^)
      yyさんのレビュー、『へぇー!』と驚きながら読んでいたのですが、途中はいるyyさんの、『なんですかっ!』や『どう解釈しましょうか?』のツッコミがおかしくて、笑ってしまいました♪
      ギリシャ神話って面白いんですねっ
      初めて知りました(^^)

      先日教えて頂いた、『ジョーブラックによろしく』観ました♪

      【死神の精度】に雰囲気が似ていて、
      こちらも伊坂幸太郎さん原作かと思ったのですが違うんですねぇ。
      若かりし頃のブラピがキラッキラッしてました。
      楽しい時間をありがとうございました♡
      2022/10/14
    • yyさん
      まっちゃん☆彡

      コメントありがとう。
      ギリシャ神話って、中野さんにかかると面白いのです。
      ドラマ化しようにも、テレビでは放映できな...
      まっちゃん☆彡

      コメントありがとう。
      ギリシャ神話って、中野さんにかかると面白いのです。
      ドラマ化しようにも、テレビでは放映できないかもってくらい
      どろどろだったり、えげつなかったり…。
      びっくりですよ、ホントに。
      神々の方が人間臭い感じで。

      ところで、映画、観てくださったのね。
      嬉しい ‼
      ブラピのキラキラ具合が眩しくて、胸がキュンキュンしました。
      共有できて嬉しいです。




      2022/10/14
    • 松子さん
      どろどろ…、たしかに「実の姉である妻」には
      ビックリしました♪
      中野さんのギリシャ神話、メモしちゃお♪(´ε` )

      また、きゅんきゅん映画...
      どろどろ…、たしかに「実の姉である妻」には
      ビックリしました♪
      中野さんのギリシャ神話、メモしちゃお♪(´ε` )

      また、きゅんきゅん映画のおすすめがありましたら教えてくださいね(〃ω〃)
      どうぞ良い週末を〜♪
      2022/10/14
  • ギリシャ神話好きの人は読むべし。ギリシャ神話の名画が集まっているよ。

  • 有名な絵もあれば、初めて見る絵もあったが、どれについても面白く興味深い解説がついている。イカロスの墜落のある風景は有名だけど、最近は贋作ということになっている。前景の人物の足の向きがおかしいという指摘で納得。確かにピーテル・ブリューゲル(父)だったらありえないわ。

  • ”太り過ぎ?” こんな直球を名画に投げられるのは、筆者ぐらいだろう。そして、確かに・・とうなずく読者の気持ちを察するかのように、それは我々が「痩せ礼賛」の文化に浸かっているだけだと、筆者は説く。

    本書は厳選したギリシャ神話の20の物語からなり、名画たちがそれぞれの話の中に、数点おさめられている。ゼウスにまつわる話が4話、ヴィーナスにまつわる話が6話、アポロンにまつわる話が4話、その他の神にまつわる話が6話で構成されており、一話あたり83円だ。カラーページの絵画も含めてこの値段とは、実に安い買い物ではなかろうか。

    筆者は絵画を鑑賞する際、構える必要は決してない、と説く。当時の人達にとって絵画は「娯楽」であったのだから、もっと肩の力を抜いて、気軽に楽しむべきだと力説する。

    そうは言っても、現代人にとってギリシャ神話の絵画鑑賞となると、ある程度の基礎知識が必要であるし、物語を知れば知るほど、謎に満ちていて理解に苦しむ。それに加えて、じっくり鑑賞するにはヌードが多すぎて、凝視するのは抵抗がある。そんな我々を最高神のゼウスは天空から俯瞰し、絶対的な余裕でヌーディな美女を次々と口説き、確実に愛を満たしてゆく。羨ましくもあるが、かなり度を超えている。他の神々も負けてはおらず、不倫、近親相姦、ボーイズラブと自らの愛欲を貫く。もう、何でもありなのだ。人々が親しみ連綿と伝えてきた神話を堅苦しい道徳に当てはめるなど、ばかげているのかもしれない。やはり筆者のように、娯楽と思って楽しむべきなのだ。

    そんなギリシャ神話を、天才画家たちはそれぞれの想像と筆にまかせて、自由に描く。
    繊細で物悲しく、優美でやるせなく、官能的で忘れがたく、名画は語る。その悩ましい作品すべてを、余すことなく解説してゆく筆者はまさしく見巧者だ。日本人にとって縁遠いギリシャ神話は、本書を読んだ者にとっては遠い過去の話となる。心ゆくまで神々のいたずらな人生を堪能しよう。

  • 美術はやたらありがたがるのではなく、こうやってツッコミを入れながら鑑賞するのが正しい方法だと思う。でもツッコミを入れるには、深い知識や教養が必要。次の『陰謀の歴史篇』、『旧約・新約聖書篇』も楽しみ。

  • 中野京子氏の著書はすべからく面白い。
    名画に対する気負いめいたものが払拭され、作品の魅力がより一層よくわかる。
    加えて、ギリシャ神話の面白さときたら、現代の物語よりも理不尽で、恐ろしく甘美である。
    そのふたつが合わさったこの本が面白い事はいうまでもないことです。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「そのふたつが合わさったこの本」
      依汐さんも上手く言いますね。読んでみようかな?(「名画で読み解く ハプスブルク家12の物語」と「歴史が語る...
      「そのふたつが合わさったこの本」
      依汐さんも上手く言いますね。読んでみようかな?(「名画で読み解く ハプスブルク家12の物語」と「歴史が語る 恋の嵐」しか読んでません)
      2012/03/22
  • 私自身、ミュージアムが大好きでヨーロッパの絵画が大好きなので、この中野京子さんのシリーズは楽しみに読んでいる。
    今回は、ギリシャ神話編。名画を紹介しつつ、「怖い絵」シリーズにも通じる少し辛口で楽しく解説が楽しめる。(解説、というほど堅苦しくない)紹介された絵の中で一番印象的なのは、表紙にもなっている、「ピグマリオンとガラテア」by ジェロームだろうか。彫刻であったガラテアが、神の計らいにより、上半身から人間となっていき熱烈にピグマリオンにキスしている。この感動的な?色っぽさはぜひ見てほしい。(でも少し悲しいかも)

  •  オリンポス12神の関係と人間像が分かって良かったなぁ。

     わたし、表紙にもなってるピグマリオンのお話が好きだな。

  • ギリシャ神話の神々のエピソード満載。
    ディアナをカチカチ山の兎に見立てた太宰治の話は、面白かった。「御伽草子」再読しなければ。
    太宰治、昔読んだ時は、このくらいの短編はこれから山のように読めるのだろうなと思って、小説の入門くらいなら気軽さで読んでいたけど、太宰治以上の短編の書き手に未だ出会っていないことに最近気づいた。
    恐るべし太宰治。中野京子にも教えられる。

  • ギリシャ神話についての知識が全くなかったのですが、絵画を通してよくわかりました。
    また読み返したい一冊です!

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著者プロフィール

早稲田大学、明治大学、洗足学園大学で非常勤講師。専攻は19世紀ドイツ文学、オペラ、バロック美術。日本ペンクラブ会員。著書に『情熱の女流「昆虫画家」——メーリアン』(講談社)、『恋に死す』(清流出版社)、『かくも罪深きオペラ』『紙幣は語る』(洋泉社)、『オペラで楽しむ名作文学』(さえら書房)など。訳書に『巨匠のデッサンシリーズ——ゴヤ』(岩崎美術社)、『訴えてやる!——ドイツ隣人間訴訟戦争』(未来社)など。

「2003年 『オペラの18世紀』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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