小川洋子の「言葉の標本」

  • 文藝春秋 (2011年9月30日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784163738604

みんなの感想まとめ

言葉を博物館のように丁寧に標本化したエッセイ集で、著者の言葉が静かに存在し続ける様子が描かれています。人の気配がない中で、言葉たちが主張せず、ただ静かに佇む姿は、まるで忘れられた海辺の博物館を思わせま...

感想・レビュー・書評

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  • 人の気配がしないエッセィだなーと思った。

    永遠に留めておきたい、失いたくない、と願うものが有るからこそ人は、
    「博物館」の建造を始めたのだと思う。

    時の流れに逆らう事の出来る空間。
    現在から過去へ。
    現在から未来へ。

    透明なガラスケースの中で静かに眠ってさえいれば、
    消える事なく、失われる事なく、いつまでも存在し続ける事が可能なこの場所に、
    著者は言葉を持ち込んだ。

    言葉の博物館…

    に、してはどうして人の気配がしない?(私には。)

    それは、彼ら(言葉達が)
    主張もしない、
    メッセージ性もない、

    まるで昨日も見た風景の様であったから、だと感じた。

    だが、
    息をするように心地良い言葉の数々を
    (消えてしまわぬ用に…)(忘れられてしまわぬ様に…)

    と、願いを込めつつ
    標本にする為に切り抜いた(これまでの著者の書物の中から)言葉を読み進めていくうち、

    冒頭で著者が述べていた
    <彼らは間違いなくこの世界でなんらかの役割を果たしていた名残>
    として大切に思われている幸せな子達なんだなぁと、しみじみ感じ入った。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「そこにいる時と同じ感覚が」
      良いですねぇ~
      最近、展覧会も土日にしか行けないので、人の多さにダウン気味。。。
      リフレッシュにならないのでし...
      「そこにいる時と同じ感覚が」
      良いですねぇ~
      最近、展覧会も土日にしか行けないので、人の多さにダウン気味。。。
      リフレッシュにならないのでした。
      開館時間が長い金曜に、ダッシュで駆けつけた方が、時間は短いけど気分良く鑑賞出来ます。
      2012/06/20
    • MOTOさん
      先日初めて「ナイトミュージアム」に行ってみました。
      訪れる人もまばら、監視員の人数も少なかった様な…
      ゆっくり作品と向き合う時間に癒されまし...
      先日初めて「ナイトミュージアム」に行ってみました。
      訪れる人もまばら、監視員の人数も少なかった様な…
      ゆっくり作品と向き合う時間に癒されました。
      (確かに土日は大変かも…!)
      2012/06/20
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「先日初めて「ナイトミュージアム」に」
      通常が17:00で、金・土が20:00で3時間延長されているのですが、後もう1時間延ばして貰えると、...
      「先日初めて「ナイトミュージアム」に」
      通常が17:00で、金・土が20:00で3時間延長されているのですが、後もう1時間延ばして貰えると、もう少しゆっくり観られるんですけどねぇ~(我侭言ってみました)
      2012/06/21
  • 画と文字との配列にぐっときた。4、5行の短い文章がぽつんぽつんと書かれているところもある。この本はぜひ本を読まないという人に読んで欲しい。すうっと言葉が入ってゆく。本が消える世の中になってしまったことを憂いつつ、ああ、本を読もうって思いました。

  • 小川洋子ファンブックにしても、「作品を標本化する」というのはぴったりです。
    世界の端っこの海辺に建つ忘れられた博物館(何故か海辺にあるイメージ)。ここにひっそり静かに、行儀よく並んでいる。その目録です。
    うっっっっっとり。廃墟がたくさん載っているのも好きです。
    福武書店版「冷めない紅茶」が収録されているのも嬉しい。「完璧な病室」で読めるとはいえ。

    惜しむらくはこの博物館の収録作品が「原稿零枚日記」までだということです。10年前くらいの本だから。
    あれからまた作品も増えているので、どんなふうに標本化されるんだろうと思います。また出るといいなぁ。
    こちらも絶版になってるようなので再版してほしい。図書館で借りるしかなかった…

  • 作者のこれまでの著作の中から選ばれた言葉たちがビジュアルとともに展示されています。あらかじめこれらの作品を読んでからのほうがいっそう楽しめそうです。

  • 小川洋子さんの紡ぎだす言葉。
    それらを"標本"という新しい形で楽しめるのが本書です。

    「言葉を標本にする」という試みは、小川作品であればこそ!
    こっそりと大切にしまっておき、時々1人で取り出してみては心ゆくまで味わいたい、宝物のような言葉たち。
    それらが写真やコラージュで、また違った味わいを与えられています。

    小川さんは、ご自身の小説に登場する人々をすでに死んだ人々だと感じるそうです。
    小川さんは死者の物語を紡いでいるのです。
    だからでしょうか、小川作品からは通奏低音のように、静かで穏やかな空気が立ち上ってくるのです。

    『完璧な病室』から『原稿零枚日記』までの作品から採集された言葉たちが展示されている様子は、まるで博物館です。
    これまでは後期の小川作品を読むことが多かったんだなぁ…。
    まだまだ読んでいない作品も多いです。
    これからの読むのが楽しみですっ!

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「"標本"という新しい形で楽しめる」
      文藝春秋のサイトで写真を見て、福住一義が写真家だと勝手に思っていました。
      「男の隠れ家」「一個人」等で...
      「"標本"という新しい形で楽しめる」
      文藝春秋のサイトで写真を見て、福住一義が写真家だと勝手に思っていました。
      「男の隠れ家」「一個人」等で編集長を勤められた方だったとは、、、文藝春秋も粋な本を出すなぁ~
      ※文庫待ちで実物未見
      2012/07/20
  • 「言葉の標本」という単語だけで、ドキドキ・ゾクゾクする。
    今までの小川洋子作品から、言葉を見える形で標本化している。
    綺麗で、静かで、無機質だけど、蠢きを感じたり。
    読んでない作品がたくさんあるので、目録・図録的に手元に置きたい。

  • 小川洋子さんの作品から、「標本」にして残したい言葉を厳選、博物館に展示された標本たち、という設定の本書。

    紙媒体としての本の行く末を案じて「標本」を残そう、というところからの試みと断っているが、事実、本書の体裁のためだけでなく、紙でこそ味わえる、においとか手触りとか装丁といった楽しみ方ができなくなってしまうのではないか、という寂しさは、お二方とも確実に感じておられるのだろうことは想像に難くない。

    小川洋子さんが本書に寄せた文章あり、文庫に掲載された解説あり、関連書からの引用あり、またその選ばれた言葉たちに沿った数々の写真、写真の中に取り込まれたその言葉たちなどなど、小川洋子作品を読み漁ったファンなら垂涎ものでしょう。

    残念ながら小川作品は十数冊を読んだだけの私には、初めて触れる作品も多く、ひとつひとつの作品の言葉に特別な思いを寄せるようなところまではなかったのだが、また新たな作品に挑戦したくなったのも確か。
    彼女が自分の作家としての原点を「アンネの日記」に見ていることは知っていたが、本書で取り上げた「アンネ・フランクの記憶」には非常に興味をそそられた。映画「悲しみは星影と共に」も気になる。

    どこかひんやりとした空気感の漂う、小川洋子さんの文章のエッセンスが詰まった本です。

  • どっぷりと小川洋子さんの世界に浸れる一冊です。

  • やっぱりこういう…建築物も崩れかける最果てのどこか、文明が呼吸を止めているような世界観が似合うな…小川洋子先生の作品は…。
    標本にして博物館に収納したくなるのも、なんか分かる。

  • 小川洋子さんが紡ぎだす言葉たち
    それを“標本”という新しい形で楽しめる作品_

    標本にされた言葉はただ無機質に並べられるのではなく、一つひとつの言葉に相応しい場所に置かれ、その麗しい写真を眺めることで
    さらに言葉をそっと愛玩するような気持ちにさせてくれる

    心地よい言葉の数々が
    この世から忘れられてしまわない様に…
    消えてしまわない様に…と願いが込められている

    小川さんの作品の中から
    標本にするために選びぬかれた言葉たちを
    読み進めていくうちに

    “彼らは間違いなくこの世界で
      何らかの役割を果たしてきた名残_”として

    大切に思われている幸せな言葉たちなのだと
    しみじみと感じさせてくれる作品でした

  • 小説を「言葉の標本」と表現する感性が素敵です。
    確かに。図書館や本屋で本を手にしたときの高揚感は、博物館で恐竜の化石や動物の剥製を生で見たときと似ている。

    小川さんの美しい言葉がたくさん詰まった標本。もう一度手に取ってドキドキしたい。

  • 小川洋子の言葉(物語)を標本化し、一冊の本を”博物館”に見立てた意欲的な作品。

    2010年は紙の本が消えていく始まりの日かもしれないという不穏なはじまり。
    電子書籍の台頭だけでなく、そもそも紙というものは脆く傷みやすく、それ自体が時間を経れば消えてなくなってしまうものだ。
    そして標本とは永遠でないものをある状態で時間軸から切り取り保存することである。
    そんな風に考えれば本(物語)を標本にするという行為が矛盾しなくなる。

    小川洋子の思想をまとめたパートと、デビュー作から2010年頃までの作品の紹介という構成になっている。
    作品紹介については、それぞれの物語から印象的なテキストを抜粋している。
    ここで趣向が見られるのはその背景。
    風景や人物写真とのコラージュなどよくあるものだけでなく、テキストが収められた紙が試験官に入っていたり、物語を最大限魅力的に見せる趣向が凝らされている。

    そうして標本化された物語は魅力的なのだが、小川洋子作品を1,2冊しか読んだことがないとか、イマイチ面白さがわからない、という人には響くものが乏しいかもしれない。
    作品の全体像を知ってこそ、どうしてこのテキストが抜かれたのか、なぜこの演出なのかを考えることができる。

    やはり最もよかったのは『密やかな結晶』のページ。
    ここしかない、という最高のパートを抜いてある。

    読んで(眺めて)いるとき、今後紙の本が減っていく中で紙の本である価値はこんなふうな形に落ち着くのではないかと思った。
    ただ文字を印刷した紙を束ねたものではなく、物語世界を盛り上げる装飾。

    手にとってじっくり眺めていたい一冊である。

  • 小川洋子の作品を標本として分解、写真のイメージで保存。いい感じです。

  • 小川洋子の小川洋子による小川洋子ファンのためだけの贅沢な作品集、という気がした。「言葉の標本」。

  • 一見、写真を多用した美しい詩集のよう。
    企画者自身が終章で「試み」といっている通り、あまり完成された本という感じはしない。

  • 変わったスタイルの本 本への独自の視点

  • 小川洋子の作品目録を味わい深くした感じ?

  • 小川洋子さんの小説の中の言葉たちを「標本」にしたもの。

  • 発想が面白い本ですね。
    小川洋子という作家の作品や本人のこと、小説自体のこと。
    「言葉の標本」博物館。
    町から本が消え始めた今、言葉を標本にして残そうという試み。

    作者の作品を沢山読んでいる人の方が、よりこの本を楽しめると思います。でも今から読む人にも楽しんでもらえるよう作ったものでもあります。

    作者の小説の数々と、「本」のあり方について考えさせられた一冊です。

  • 2011 11/21

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著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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