137億年の物語―宇宙が始まってから今日までの全歴史

制作 : Christopher Lloyd  野中 香方子 
  • 文藝春秋
4.20
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本棚登録 : 1403
レビュー : 76
  • Amazon.co.jp ・本 (506ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163742007

作品紹介・あらすじ

137億年の歴史を42のテーマで語る。歴史を点ではなく、つながりで考える。西洋が中心ではない。アジア、南アメリカ、少数民族、イスラム、等々多元的な視点で理解する。地球的な規模で人類の文明も相対化する。豊富なイラストと写真で旅するように歴史を感じる。科学と歴史、その接点を考える。

感想・レビュー・書評

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  • あらためて言うようなことでもないのだが、拙宅の本棚が大変なことになっている。毎月ハイペースで本を購入し続けているわけだから当然と言えば当然なのだが、スペースの確保以上に頭を悩ましているのは、本の並べ方である。

    いつもジャンル毎に分けるべく整理を始めるのだが、いかんせん買う本のカテゴリーに偏りがあるため、やがてそのルールも破綻。いつの間にか買った順番に置いていくだけの、物置きスペースへと成り下がってしまうのだ。

    理想はこうだ。たとえば本棚の中には歴史という名の付くものだけでも、宇宙誕生の歴史、生物の進化の歴史、人類の歴史、文明の歴史、科学の歴史など、さまざまなものがある。これらの本と本との間に隠れた相関関係を見出し、シナジーの働く並べ方にしたいのである。

    同じようなことを考えている人が、世の中にどれくらい存在するのかは分からない。だが、読んだ本同士を相対的に位置づけ、俯瞰して眺めてみたいと思う人は意外に多いのではないだろうか。本書は、このようなニーズを満たすには、うってつけの一冊でもある。

    『137億年の物語 宇宙が始まってから今日までの全歴史』というタイトルの通り、
    第一部 母なる自然(137億年前~700万年前)
    第二部 ホモ・サピエンス(700万年前~紀元前5000年)
    第三部 文明の夜明け(紀元前5000年~西暦570年ころ)
    第四部 グローバル化(西暦 570年ごろ~現在)
    と、大きく四つのブロックに分かれており、その中で42のテーマが論じられている。

    これは、世の中に数多ある歴史本を全て包含するという壮大な試みのようにも思える。本書を参考にすれば、こと歴史と名の付くものに関しては、本棚の意味が書き換えられてしまうような、強烈なインパクトを持っているのだ。

    著者は5歳と7歳になる二人の子供を学校ではなく、家で妻とともに教育を始めたそうだ。その中で自然科学と歴史を双方向から教える必要にかられたのが、本書の執筆のきっかけであったそうだ。そのため電話帳のような見かけとはうらはらに、オールカラーで図版も約500点と非常に読みやすい。

    人類を起点に考えると周縁部分に位置するであろう、ビッグバンや人類誕生以前の時代から歴史を連ねてみるということは、人類の歴史を相対的に見ることになり、引いては別の角度からものを見るということにもつながる。地球上で最初に紙の発明を行ったのは、中国人ではなく数千年前の狩りバチであったし、グローバル化の起源を辿っていくと2億5000年前のパンゲア大陸まで行きつくのだ。

    情報の並べ方によって、新しい意味が生まれる。それは本書のページ脇からも伝わってくる。宇宙誕生137億年の時間を、24時間時計に置き換えたものが全てのページに表示されているのだ。ビッグバンを0時0分0秒とすると、生命の誕生は5時19分48秒。恐竜が登場するのが22時24分00秒。23時59分59秒になって、ようやく狩猟採集民が登場。われわれの文明社会など宇宙の歴史に比べると、最後の一秒足らずの「瞬間のドラマ」に過ぎないということを、ページをめくるたびに思い知らされることになる。

    歴史が時間を追うにつれ複雑化していくように、本書もページが進むごとに内容は厚みを増していく。さらにその中の情報同士には、無数のハイパーリンク構造のようなリファレンスが張り巡らされている。おかげで進めば進むほど前のページに戻ったりと、まるで双六(すごろく)でもしているかのようであり、なかなか前へ進まない。

    たとえばP285から始まる第4部のグローバル化。最初のテーマは「イスラームの成立と拡大」である。イスラム教はコーランを通じて神と直接つながることができ、聖職者や、教会の複雑な儀式も必要とされなかったことから、遊牧民によって急速に広められていったというのは、よく知られた話だ。

    これらが「チンギス・ハンの大帝国」へと移り変わっていくP310までも、順当な流れである。しかし、この遊牧民が世界史に登場するまでの背景には気になる点がある。1200年ごろになると、小氷期のはじまりとなる気候変化がおき、一転して気温が下がり始めたというのだ。

    こんな話、前のページにも書いてあったなと思い、遡っていくとP211に答えは見つかる。ユーラシアステップの環境が厳しくなると遊牧民は侵略者と化し、古代のペルシア人やギリシア人が嫌というほど経験したように南や西に押し寄せ、定住文明を乗っ取りにかかるのだ。

    こうした古代からの対立を引き起こした原因は、「水循環」という最も重要な自然現象のきまぐれな性質にあるそうだ。これも当然のように気になり、さらに遡っていくとP26の「地球と生命体のチームワーク」という章まで行き着く。このように頁が進んでも進んでも、いつの間にか前のページへと戻っているのだ。

    しかし過去へと遡ってばかりもいられないので、ページを進めてみる。栄華を誇ったモンゴル人は元来、草原の遊牧民であるため、農業をないがしろにして、やがて農民の若者の反乱によって陥落させられてしまう。(P338)そして、そのころヨーロッパでは海の遊牧民とも言える海洋冒険家たちによって、世界の地図が塗り替えられようとしていたのだ。(P360)

    はたして、その行く末はどうなったのか?船を橋の代わりとして孤立していた大陸同士を結びつけ、人工のパンゲア大陸として振る舞うようになった地球は、2億5千年前の恐竜たちが生存していた時代と同じような問題を抱え始めることとなったのだ。(P60)ちなみに、いつの間にかページも前の方へと大きく戻っている…

    このように大きな流れを追っていくと、移動型と定住型という民族間の争い、そこに絡み合う自然現象という2つの要素が、何度となく繰り返されていることに気付かされる。宇宙生誕からの137億年の歴史を超俯瞰的な視点で眺めてみると、まさに「やり直しの繰り返し」なのだ。

    その中でも着目したいのは、人間と自然との相関関係という点にある。動物や植物にも人間と同じように霊魂が宿っているとされたアニミズム全盛の時代から、唯一神を敬い、人間中心の考え方をするようになった三大宗教の時代への変化。自然に恐れをなして神のように敬い芸術を捧げた先史時代から、自然の制約を克服するための発明・テクノロジーが次々に生まれきた現代まで。

    このような人間と自然の関係における重心の変化を追うことは、これからの人類の在り方を占う重要な道標となるのだ。そして本書の全編を通して投げかけられているのは、現在の人類の姿が自然にとっての最適解なのかということでもある。

    さらに言及しておきたいのが、最終章「世界はどこへ向かうのか?」でのこと。著者は日本語版が出版されるにあたり、福島第一原発事故に関する記述を付け加えたそうだ。そしてこれを受け、英国版も同様にに書き直されることになったのであるという。我々がまさに今、歴史と現在の交差するポイントに立っているというダイナミズムを存分に感じとることができるのだ。もちろん11年前の今日、何が起こったのかも記されているということは、言うまでもない。

    『本は10冊同時に読め!』とは、よく言ったものである。しかし本書に限って言えば、この1冊で10冊分の本を乱読したに匹敵するような効能が得られるのではないかと思う。やはり137億年はダテじゃない。本書は用法・用量を守って、正しくお使いください。

  • 面白かった。しかし、長かった。さすが137億年の歴史、壮大だ。出来事の羅列ではなく、なぜそうなったのかを文理問わない様々な視点から、しかも最新の学説を取り上げ物語っていくので、ワクワクする。人類の歴史ではなく、地球の歴史であり、現代的問題である環境破壊や大量絶滅、人口の増加と食料不足、宗教や民族的対立、資本主義の限界、グローバリズムなどを、より広い歴史の中でとらえる事ができる。西洋中心や人間中心主義的な思考や視点の偏りを極力排除しようとして記されているのがよい。本書にとどまらない知的好奇心の広がりを得る。

  • 分厚い!
    地球や生命の誕生、古代の生物を期待してたが人類の歴史のほうが長かった。
    文章が多くて図説をもっと見たかった。

  • 歴史の流れが、何度読んでも何度読んでも、頭に入らないので、『世界史』とかたまに読むのだけれど、こちらはビジュアル満載で素晴らしい。
    人類の歴史ではなく、宇宙開闢から始まるので、ビッグバンも書いてあるのがいいですねえ。
    地球とくっついた小惑星の名前は「テイア」ですって。かわいらしい。

    アレクサンドロスがマケドニア出身の人ということがいつも理解出来なくて、クラーク共著の『時の眼 タイム・オデッセイ1』でも苦労したけれども、今回も同様だった……
    ギリシャの人じゃないんだよね。マケドニアは小国だったんだよね。
    ギリシャとローマは別の地なんだよね……(現代のギリシャとローマが別の都市なのは理解しているけれど、何故か古代では混同している;)
    アレクサンドロスがギリシャからエジプト、ペルシャあたりまで征服して、ヘレニズムを広げて。
    アレクサンドロスの急死後に古代ローマがイタリア半島を統一、ギリシャを属州化して。
    その後、カエサルがローマ皇帝になるんだよね。
    ……これ、天文の本でも読んだのに……

    イスラム、仏教、キリスト教の成り立ちや違い、植民地、どう現代につながっていったかなど、歴史の総ざらいがおもしろい。
    中間を時間がなくて読み飛ばしたので、再読しよう。

  • 5. 137億年の物語 クリストファー・ロイド
    人生の50冊 児童書 ベスト5

    宇宙誕生と人類史を一本の線で語る、歴史と科学の融合が生んだ知的冒険。

    いまのネット時代に長大な百科事典を買い与えるつもりはないが、自分の子供にはこの一冊をプレゼントしたい。
    宇宙の誕生を零時ちょうどとして、24時間計を用いて137億年で何が起きたのかを最新の科学的根拠を元に解説する。
    23時59分から人類の歴史が始まるが、その後は歴史の教科書になる。
    理系と文系の幸福な結婚によって貴重な一冊が誕生した。

  • 素晴らしい☆
    色んな科目の教科書がバラバラに説いていた出来事を、
    数珠つなぎにしてくれる!!
    解りやすくてドラマチックな文章も、なかなか。

    大人だけでなく、お子さんがいる方は、是非。
    こんな本に出会える現代っ子に嫉妬しそう。

  • これから息子に役立てばと買ったけど、自分が楽しんでしまっている。生命の起源は実はまだよくわからない事とかミステリアスで面白い。

  • 137億年を500ページで俯瞰する

    ビッグバン以来の137億年の歴史を、文系的・理系的視点の両方から見ていこうという異色の歴史書である。
    著者は大学で歴史を学んだ後、新聞の科学記者として活躍した人物。「自分の子どもにこの地球の歴史をどう教えたらいいか」を考えていて生まれた本だという。

    ビッグバンを0:00:00とし、現代を24:00:00として換算したタイムテーブルもついている。
    歴史を点や暗記事項ではなく、流れで捉えようとしており、42のテーマについて、お話形式で進んでいく。
    物知りの歴史の先生が雑談を交えて行う授業のようで、ボリュームの割に読みやすく、親しみやすいといえるだろう。

    力作であり、意欲作である。
    巻末の参考文献にも挙げられているが、『銃・病原菌・鉄』を彷彿とさせるおもしろさである。図版が多いのも美点だろう。
    アボリジニやラテンアメリカの被征服者に光を当てているところもすばらしい。中国やイスラムの科学文明の話もおもしろかった。

    ただ、このボリュームであれば、レファレンスとなることを期待するのだが、ぜひ家に1冊欲しいかと問われると、ちょっと二の足を踏む。
    なぜかといえば、1つは引用参考文献が少ないためだ。各章に注の形で参考文献は付いている。巻末にも全体を通しての参考文献が何冊か挙げられている。だが、本書を書くにあたって、ここに挙げられたものがすべてではないように感じる(注に挙げられたうち、邦訳がなく、原著でしか読めないものがかなりの割合を占めているのも日本語読者には不便だろう。が、これはまた別の問題か・・・)。
    一方で、通史という性質上、さらりと触れられるのみで話題が流れていく。中の1つのトピックに興味を感じたとしても、それをさらに発展させるには、参考文献への橋掛けが欠かせないだろう。

    もう1つ。
    ビッグバンから人類誕生まで(本書では第1部・第2部)と、文明の夜明けから現代まで(第3部・第4部)をどうしても1冊にまとめなければならなかった意義がいまひとつよくわからない。前半部分は文系的学問の出番が少ないこともあるのかもしれない。この2つの間には断絶が感じられる。
    読者の興味の対象にもよるのかもしれないが、個人的にはこの本の白眉は後半(23:59:59に相当する部分)だと思う。

    おもしろくはあったのだが、one and onlyというよりもone of manyの本だという印象を受けた。

    時間的・空間的に大きな広がりを持つ歴史を俯瞰するのは、本当に難しい。


    *個々の話題については:
    ・スパルタ教育のすごさ
    ・ローマ皇帝の狂気が鉛毒のせいという説(おもしろいと思ったが、正規の学説とはいえないようだ)
    ・アボリジニ4万年の歴史。
    ・「フィボナッチ数列」で知られるフィボナッチ(1200年頃)は、アルジェリアでイスラムの算術を学んだという。
    ・コンキスタドールの凄惨。天然痘の蔓延
    ・中国の科学に関する書を著したジョゼフ・ニーダム
    あたりが印象に残った。

    *原題は”What on earth happened”。ちょっと洒落が効いている。

  • 人類はいかなる存在か、宇宙の誕生から俯瞰できる書。ホモ・サピエンス、このいとおしくも恐ろしい生き物。
    メモ:富を得るための方法(7つ):勝ちとる、相続する、稼ぐ、盗む、脅して巻きあげる、育てる、見つける

  • よく書かれているとは思うが、一冊にまとめているので、ちと無理がある。

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