コンニャク屋漂流記

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 53
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  • Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163742601

作品紹介・あらすじ

先祖は江戸時代、紀州から房総半島へ渡った漁師、屋号はなぜか「コンニャク屋」。東京・五反田から房総半島、そして和歌山へ-ルーツを探して右往左往、時空を超える珍道中。

感想・レビュー・書評

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  • 著者の家には"コンニャク屋"という屋号があります。
    千葉県岩和田の漁師の血を引く著者ですが、さらに遡ると先祖の足跡は紀州から続いているらしい。
    祖父の手記や親戚の話、そして多くの資料から著者が"コンニャク屋"のルーツを辿ったノンフィクションです。

    赤の他人のルーツを辿る本、そんなに面白いのだろうか…と半信半疑で読み始めたのです。
    …が、漁師の血を引く人々に愛着を感じ、著者が目にしたことや聞き取ったことが資料に書かれたことと結びついていく瞬間にわくわくし、本を閉じるころにはしっかり楽しんでいました。

    図書館員としては、市井の人の家系を遡る際に各市町村の町史や市史が活用されている事例を知ることができて、大変勉強になりました。
    恥ずかしながら、これまでこの種の資料を使う機会が少なかったので、勉強のためにもまずは自分の地元の市史をめくってみようかな、と思います。

  • 私の先祖は どこから来たのだろうか

  • 自分のルーツを巡る旅。伝承と資料を結びつける面白さ。星野さんの文章は本当に魅力に溢れていて今作も面白かった。ここからゲンロンβへの連載へと繫がっている。

  • ルーツ探し。過去帳が一番だと思うが。

  • 「コンニャク屋漂流記」星野博美著、文芸春秋、2011.07.20
    398p ¥2,100 C0095 (2019.05.06読了)(2019.04.25借入)
    読売新聞の「平成時代名著50」に選ばれていたので、興味をもち、図書館で借りてきました。題名からするとコンニャク屋が船に乗り遭難し漂流してどこかに流れ着いたと話かと思ったのですが、著者の話があちらこちらと定まらず漂流しているようだということのようです。
    著者の両親や自分の住んでいる界隈は、五反田、大崎、戸越銀座といったあたりです。著者の祖父が、千葉県外房の岩和田から五反田に移り住んで町工場を経営し、岩和田近郊から多くの人達を呼び寄せ、働いてもらい、修業ののち独立していった人たちも多くいたようです。とりあえず、五反田近郊がどのような街で、どのように変わってきたのかだ述べられています。工場地帯だった時代があったんですね。町工場なども多いとは知りませんでした。
    その後、祖父のふるさと岩和田辺りがどのようなところか、親類縁者の人たちの様子とどのような歴史的事件があったのかが紹介されています。
    1703年11月22日、房州沖を震源とする地震があり、4~8メートルの津波に襲われ、九十九里浜を中心に4~5千人の死者を出している。「元禄の大津波」です。(176頁)
    1609年9月5日、フィリピンからメキシコに向かうドン・ロドリゴの乗る南蛮船が岩和田の田尻が浜で難破した。岩和田の人たちは救助にあたった。(42頁)
    2009年6月に、ドン・ロドリゴの船が漂着して400年を記念してメキシコから帆船がやってきた。船の名前はクアウテモック号。(189頁)
    著者の先祖は、400年前に紀州からやってきたという言い伝えがあります。墓地にはいくつか墓石があり、その中に施主北川五良右衛門、紀刕加田俗名長三良と読める文字が刻んであるのがありました。紀刕は、紀州でした。北川五良右衛門は、北川五郎右衛門でした。加田は、加太でした。
    『御宿町史』には、
    「房総の漁業は、近世初頭における漁民の進出によって、発達してきたと言われている。とくに漁業先進地帯である紀伊地方からの漁民の渡来であった」(248頁)
    ということで、和歌山県に行って、先祖を探して歩いています。
    歴史資料に名前が残っている人たちと同じ苗字の人たちがたくさん残っていました。著者と同じ星野さんは、…。和歌山に戻った人たちと千葉に移住してしまった人たちがいたようです。
    「漁業先進地域である関西、とくに紀州から房総半島へ漁民が渡来し始めたのは、17世紀初頭だったことがわかってきた。その後、多少の盛衰はあったものの、18世紀中頃まで関東出漁は続いたという。」(253頁)
    北川五郎右衛門の名前が史料に登場するのは、1733年4月です。(279頁)
    関西から来た漁民たちが獲った魚は、鰯でした。
    コンニャク屋という屋号の謂われは、よくわかりませんでしたが、外房の人たちの生活や和歌山と千葉のつながりは興味深く読めました。

    【目次】
    はじめに―漁師宣言
    第一章 コンニャク屋の人々
    (魚六郎/かんちゃん/ドン・ロドリゴ/量治/飛んでも鯛/入れ墨の謎/博打は美しい)
    第二章 五反田
    (五反田に吹く風/ネジキリ/多喜二と量太郎/下大崎/五反田の赤い星/博物館の門番)
    第三章 御宿・岩和田
    (元禄の大津波/海が運ぶ風/メキシコから船が来た!/田中丸と清徳丸/かん、かん、かん/勘助ときく/墓場の話)
    第四章 東へ
    (紀州について/魚の王者/熱病/加田/御用金)
    第五章 紀州
    (不思議の国/加太にて/二つの舟/湯浅/広川/二つの星野)
    第六章 末裔たち
    (田中丸座礁/祭囃子/五郎右衛門のその後/船乗り/コロナとヴィッツ)
    おわりに―2011年3月11日

    (2019年5月9日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    先祖は江戸時代、紀州から房総半島へ渡った漁師、屋号はなぜか「コンニャク屋」。東京・五反田から房総半島、そして和歌山へ―ルーツを探して右往左往、時空を超える珍道中。

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  • 夏休みの自由研究作品のような本でちょっとつたないが、愛情に満ち何とも心温まる。


    [more]<blockquote>
    P068 よい漁師とは、魚の大群を見つける人ではなく、仲間を無事、陸の家族の元へ返してくれる人。【中略】「今日は鯛の大群が飛んでるのを見てよ、おったまげたお。まあ、見物だったお」不安と恐怖を麻痺させる、麻薬のようなもの。それこそ、漁師にとっての「ホラ」であり、「笑い」なのではないだろうか。

    P099 五反田はなぜか、社会主義の香りがする。
    P154 「五反田は昔から、山は金持ち、谷は貧民と相場が決まってるんだ。」

    P183 背後に広大な農地が広がる九十九里一帯で盛んだった地引網には、地主が網元、小作人が水手、という大きな特徴がある。

    P317 祖父の存在が家から消えると同時にそれまで我が家に満ちていた漁師的空気が消えた。人が消えると、その人が持っていた記憶も消えてゆく。消したくないものを私は無意識のうちに求めていたのかもしれない。
    人はどんなとき、家族の歴史を知りたくなったり、人に伝えたくなったりするのか。それは終わりが近づいている時。</blockquote>

  • 著者の祖父の家は『コンニャク屋』という屋号を持つ漁師だったそうだ。なんともふにゃふにゃした名前だ。家訓に、博打はするなとあるのに、小さな頃祖父から花札に、サイコロ(半丁)と教えられ遊んでいた。かなり大人になってから博打と気付いたらしい。なんとも適当な。そんな祖父が生前に残した手記をたよりに話は始まる。

  • 芸能人のファミリーヒストリーは、どこか小説めいてよそ事のように見てしまっていたが、市井の人々にも其々数百年綿々と続くファミリーツリーとヒストリーがあるものだと、作者の気持ちに同化してワクワク時にシンミリなりながら、感動して読み切った。外房の1漁師家系が、さむらい、家康、雑賀衆に石山本願寺の一向一揆まで絡んでくるとは!
    奇しくも作者と同年の自分も、祖先を調べたくなった。

  • 請求記号:288.3/H92
    選書コメント:
    屋号というものを知っていますか?こんにゃく屋という屋号の謎を巡って主人公(著者)が自分のルーツを辿る一冊です。
    (東松山図書課 受入担当)

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著者プロフィール

1966年、戸越銀座生まれ。ノンフィクション作家、写真家。著書に『転がる香港に苔は生えない』(2000年、第32回大宅壮一ノンフィクション賞)、『コンニャク屋漂流記』(2011年、第2回いける本大賞、第63回読売文学賞随筆・紀行賞)、『戸越銀座でつかまえて』(2013年)、『みんな彗星を見ていた』(2015年)、『今日はヒョウ柄を着る日』(2017年)、『旅ごころはリュートに乗って』(2020年)など多数。

「2022年 『世界は五反田から始まった』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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