君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 193
レビュー : 43
  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163746609

作品紹介・あらすじ

言葉の魔術に、酔いしれる。生き別れた母を想い、馬と戯れ、小説の神様と向き合う。人気作家の「心わしづかみ」エッセイ集。

感想・レビュー・書評

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  • 浅田次郎さんの小説が好きだ。正直、そう公言できるほどに多く読み込んではいないが、今まで読んだものはすべて面白かった。このエッセイには、彼の小説への思い入れや、やめられぬ博奕である競馬との付き合い方などが懇々と書かれている。この本を読んだことがきっかけとなり、浅田さんを真似て1日1冊の読書を己に課してみることにした。幼い頃、無類の本好きだった自分を思い出す。浅田さんは本好きのまま読書を重ね、私は病で集中力を失ってからろくに本を読まなくなった。もちろんその差は埋められるものではないが、自分の人生に、やはり読書は欠かせないものであってほしい。

  •  過去20年の間に書かれた、単行本未収録のエッセイをおもに集めたもの。ゆえに「落ち穂拾い」的印象もあって内容は玉石混交だが、よいエッセイも多い。

     私が浅田のエッセイ集で好きなのは、『勇気凛凛ルリの色』シリーズ(よいのは2巻まで。3巻以後は小説で売れっ子になりすぎたせいか、ガクッと質が落ちる)と『極道放浪記――殺(と)られてたまるか!』シリーズ。
     その2つが基本的にユーモア・エッセイであったのに対し、本書は真面目なエッセイばかりで、笑いの要素はごく少ない。

     タイトルは、浅田が小学生時代に担任教師に言われたという言葉。このタイトルが示すように、小説家としての自分を見つめ直し、振り返るエッセイが多い。また、自作解題的なエッセイもいくつかある。
     作家・浅田次郎その人に関心のある人、もしくは作家志望の人は読むとよいと思う。逆に、浅田のファンではなくたんに「よいエッセイ集が読みたい」と思う読者には、やや物足りない内容かも。

     浅田次郎は天才型の作家ではなく、努力の人、克己の人である。少年時代に作家を志し、営々と文学修行をつづけるも、中年期まで芽が出なかった。作品が初めて商業誌に載ったのは35歳のとき、初の単行本を上梓したのは39歳のときだ。
     本書の各編からは、そこまでの雌伏の日々と、現在もつづけている努力が垣間見える。

    《一見して多趣味であり、さまざまの経験をしてきたようでありながら、作家としてデビューするまでの四十年間を顧みれば、読むことと書くことのほかには何もなかった。むろんそれから今日も同様である。このさきもずっと、私から小説を奪ったならば、たぶん骨のかけらも残らない(「『鉄道員』縁起」)》

     そして、小説家という仕事の内実が、エッセイの形式で絶妙に表現された一冊でもある。たとえば――。

    《この稼業は農耕に似ている。良い種子を手に入れ、選別し、蒔き育て、たゆまずに肥料をやったり雑草をむしったりして、何ヶ月も何年も先の収穫をめざす。その間には日照りも嵐もあるが、意志を失わず、努力を怠ってはならない。実によく似ている。
     似て非なる点といえば、耕作面積も労働力も同じであるにかかわらず、毎年の収穫量が定まらぬことであろう(「豊作」)》

     ただ、浅田のもう一つの面である馬券師としての顔があらわれた競馬エッセイも多く、競馬に興味のない私はナナメに読み飛ばしてしまったが……。

  • 新選組を題材にした作品が多い作者が、西郷隆盛をどうとらえているかを知ることができておもしろかった。浅田氏が描く明治時代をもっと読みたい。

  • この人の文章はいつ読んでも気持ちがいい。ごつごつと難しい言葉を交えながらも、読みやすく、ビートに乗れる。不幸は怠惰の結論であるという言葉は、長い下積み時代から努力を続け、このような文体を獲得した人の言葉だから説得力がある。

  • 我が読書の師、浅田大先生のエッセイ集。

    収録されているエッセイは、1990年代のものから2000年代後半のものまで幅広く、その時々の事情もうかがえ、なかなか面白いものでした。

    浅田さんは、社会人時代を中心に、何でもソツなくこなしてしまうから人の避けることばかりを率先してやり、いわゆる「器用貧乏」だったらしいですが、全く他人事ではないのです。自分も何かのスペシャリストになりたいと思い、セコくニッチに色々チャレンジしたりしましたが、瞬間風速的に抜け出すことはあっても継続は難しく、上には上がいるものです。最近はすっかりあきらめモードで、それならいっそ、器用貧乏のスペシャリストを目指そうかと思ったりします。

  • 浅田さんのエッセイを読むのはこれが初めてだったのですごくわくわくした。実際に読んで吃驚したのも事実、励まされ、意外に納得し、所々で戸惑い、様々な発見をもたらした一冊だった。文体もどちらかというとかためなのに、小説になると途端にスイッチが入ったように人物が浮かび上がって生き生きと動き回る。こういった目線で書いているのか、とか、本当に好きなものには目がないのだなとそこかしこで感じさせられる。うちは頭がかたいので会得するにも時間がかかる。速読でもないが飛ばし読みもしばしばやるのだが、これはじっくりと読んでしまった。だったら小説の方をじっくり読めばいいのにと思うが、小説は引き込まれて読んでいることを忘れるのでじっくり読むということができない。何はともあれ、すごく楽しい時間を過ごすことができるエッセイだった。

  • 以前読んだ、浅田次郎さんのエッセイは結構爆笑物のエピソードが多かったですがこれはどちらかというと真面目な感じです。

  • 座右の銘は孔子の「論語」から。
    訳すと、ボーッとしているくらいなら博奕でもしているほうがまし、だって。
    さすが生粋のギャンブラーですね。

  • エッセイ。
    さすが先生!と言いたくなるぐらい豪快。
    小説家って大変な職業です。

  • 本当に文章が好きなんだなってわかるエッセイ。作家になるために生まれてくる人もいる。「小説家という聖職」にこの人の文章に対する愛がギュッと詰まってるように思った。

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著者プロフィール

浅田 次郎(あさだ じろう)
1951年、東京都出身。
1995年『地下鉄に乗って』で吉川英治文学新人賞、1997年『鉄道員』で直木三十五賞、2000年『壬生義士伝』で柴田錬三郎賞、2006年『お腹召しませ』で中央公論文芸賞と司馬遼太郎賞、2008年『中原の虹』で吉川英治文学賞を、2010年『終わらざる夏』で毎日出版文化賞、2016年『帰郷』で第43回大佛次郎賞それぞれ受賞。2015年には紫綬褒章も授与されている。
2018年現在、日本ペンクラブ会長、直木賞、柴田錬三郎賞、山本周五郎賞の選考委員を務める。2018年12月15日、『輪違屋糸里』が藤野涼子、溝端淳平、松井玲奈らの出演で映画化。

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