父・金正日と私 金正男独占告白

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 95
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163751900

作品紹介・あらすじ

父上は厳しくても、愛情が深かった。「三代世襲」にはもともと否定的でした。祖父(金日成主席)に容貌だけ似ている弟の正恩が、どれだけ北朝鮮の人々を満足させられるか、疑問です。世界的スクープ!インタビュー7時間+メール150通。

感想・レビュー・書評

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  • -2012/02/12 金正男の言葉から、父正日が北朝鮮の行く末に心を砕きながら、正に最高権力者=最高責任者として苦悩して決断しているのが伝わってくる。三代世襲を否定しながら、結局そうしなければ国体が維持できなかったのだ。

  • まさお氏は、メールの内容(や場合によってはインタビューの一言一句まで)が北朝鮮や中国(あるいはアメリカ)当局に筒抜けになっていることを前提として、自分は北朝鮮の政治とは関係ないというエクスキューズを上手いこと使って、言いたいことだけを言っており、なかなかにしたたかです。
    それに、自分の女性遍歴などについては隠そうとしないなど、サービス精神もあるようです。

    メールのやりとりは敢えて直訳調にしているようですが、朝鮮語学習者としては、かえって細かいニュアンスや生々しさが伝わってきました。
    例えば、まさお氏が朝鮮半島や北朝鮮を指して言う、「韓半島」「北韓」という言い方。北朝鮮関係者としてはそのような呼称は有り得ないと思われ、読んでいて、これは大変なことだと思いました。
    また、メールのやりとりをそのままコピペしたような作りですが、手練の新聞記者としたたかなまさお氏の駆け引きがストレートに現れていて、読んでいてスリリングで、本の構成としても上手くできていると思いました。

    本書の出版にまさお氏がゴーサインを出したのかよく分からず、まさお氏の今後が心配なので、マイナス1。
    まあ、中国が悪いようにはしないと思いますが。

  • 著者の丹念な努力が実を結んだ結果のスクープ。金正男の人柄や思想を窺い知ることができ興味深い。日本では当たり前な思想も、北朝鮮という国においては命をも狙われなかねない危険思想か。事実をそのまま伝えようとしたためだろうか、メールをそのまま引用した箇所が相当のページ数を占める。どういうやり取りがされたのかそのまま知りたいと思うのはもちろんだが、他方で、どきどきわくわくを期待する気持ちがあった身としては、単調にも思われる。よって☆4つ。

  • 事の真相は不明だが、興味深い。
    北京でたまたまお会いして名刺を渡しただけで、金正男から本当にメールが来るのだろうか。
    なかなか彼に人間味を感じるね。

  • ミサイル発射で話題の北朝鮮。でもなんとなく、恐い国というイメージしかないんじゃない?金正日のもう一人の息子に日本の記者が直接取材したすごい本だ。

  • 著者の五味さんは、北朝鮮の高官を取材に行った成田空港で、偶然金正男を見つけ、名刺を渡したことからメール交換を始め、何回ものメール交換、あげくはマカオでの単独インタビューに成功した東京新聞の記者である。メール交換ができたのは五味さんが朝鮮語ができたからである。こういうとき、ことばの威力は偉大だ。(日本語訳は時にぎこちなさを感じさせるが)本書は、その何度もにわたるメールと単独インタビューの記事をもとに金正男像を組み立てたものである。金正男と言えば、あの成田空港で、偽造パスポートがばれ、つかまったへぼな男というイメージがあるのだが、本書を読むと、スイスに留学しているだけあって、自分の国を見る目も冷静だ。正男さんは、親子三代の世襲に反対であったが、親が正恩に位を譲ったのは、国の安定を保つためにはしかたなかったと親の立場を擁護する。この点だけではないが、正男さんは中国の改革開放を見て、自分の国もそうしないとどうしようもないと思い、金正日さんにも直言するが受け入れられなかった。だからと言って親を非難するわけでもなく、ひたすら北京で自分の出番を待っている。本書には人間ぽい正男さんの素顔の一面が描かれているが、正男さんはどこまでも国の利益に忠実で、めったやたらに国の恥を暴こうとはしない。少々じれったさも感じる本である。

  • 金正男は、この著者とのメールのやりとりやインタビューの中で、
    北朝鮮の体制に真っ向から歯向かう発言を連ねている。
    亡き最高指導者金正日の長男と言えども、
    許されないレベルの反体制的な立場を鮮明にしている。
    この態度の裏側には、金正男に対する
    中国公安部の後ろ盾がしっかりしていることが想定できる。

    世界の中での自分の立ち位置をちゃんと理解して発言・行動しているところに、
    彼のクレバーなバランス感覚が伝わってくる。

    マスコミのプロパガンダに隠れて見えない、
    金正日が北朝鮮の行く末に本当に熟慮し、
    苦悩して決断しているのが伝わってくるのがいい。
    三代世襲を否定しながら、
    結局そうしなければ国体が維持できなかったという金正日の無念さが。

    金正恩という最高指導者をトップにすえた北朝鮮の未来の行く末は。

  • これまで北朝鮮に関するマスコミの記事を鵜呑みにしていたけれど、やはり全てが真実だということではないと分かった。閉鎖的な国だから、デマだと判断できる根拠が少ないように思う。金正男の話も刺激的で、今後北朝鮮が良い方向に向かって欲しいと思った。長い間、金正男に根気良くアプローチしている著者も印象的だった。ここまで諦めずによくやったな、と思う。

  • 日本人のほとんどが持っていると思う、「ディズニーランドに行く為に、日本に密航した太った北朝鮮のボンボン」という金正男のイメージは、読了後、良い意味で変りました。
    社交的で紳士的、政治思想は開放的で、この男が国交交渉窓口に立っていれば、どんなに世の中平和になるか!
    今迄、よく見えなかった北朝鮮の内部事情が、信頼に値する彼からの情報を持って、少し見えてきたのではないか。
    この本が出版されたことにより、金正男とその家族の安否、また著者との友好がとても気になります。

  • この方 見た目よりずいぶんまともです。自分の立場をよく考え、自国を冷静に見ています。

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著者プロフィール

五味洋治:1958年長野県生まれ。82年早稲田大学第一文学部卒業。83年東京新聞(中日新聞東京本社)入社、政治部などを経て97年韓国延世大学校に語学留学。99~2002年ソウル支局、03~06年中国総局勤務。08~09年、フルブライト交換留学生として米ジョージタウン大学に客員研究員として在籍。現在、論説委員。主に朝鮮半島問題を取材。著書に『朝鮮戦争は、なぜ終わらないのか』(創元社)、『金正恩 狂気と孤独の独裁者のすべて』(文藝春秋)、『父・金正日と私 金正男独占告白』(文春文庫)、『女が動かす北朝鮮 金王朝三代「大奥」秘録』(文春新書)などがある。

「2021年 『金正恩が表舞台から消える日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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