あらすじで読み解く古事記神話

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 70
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (158ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163752303

作品紹介・あらすじ

日本人なら一度は読んでおきたい日本の始まりのものがたり。ベストセラー『口語訳 古事記』の著者が「あらすじ」でさらにわかりやすく、「解説」でその謎と魅力に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 古事記日本書紀の解説本は読んだことがありますが、その時はわかったつもりでも振り返るとしっくりこないことばかりなので、もっと易しい初心者向けの本を探していたら本書を見つけました。
    古事記の中でも出雲神話の部分に焦点が当てられ、とっつきやすいし分かりやすくてためになりました。
    特に解説部分がいいんです!著者独特の解釈の説明に納得感があり、すっきりする箇所多数。。

    中でも一番印象に残ったのは、「人間」の存在です。
    古事記の神話に登場するのは神ばかりで人が活躍することはありませんが、地上には最初から人が棲んでいるのです。そのことをはっきり教えてくれたのは本書がはじめてでした。
    ちなみに「人」の起源を語るのが、イザナキが桃の実を追っ手に投げつける場面に青人草が登場し、これが「青々とした人である草」だとのことで、人は草だったという発想のもと書かれたものと思われるそうです。。

    それから、ここに取り上げられた8つの神話のうち、スサノヲがヤマタノヲロチを倒す神話は特に興味深い解説がいっぱいでした。
    以下まとめておきます☆

    ヤマタノヲロチの正式名は「コシノヤマタノヲロチ(高志之八俣遠呂知)」
    八つの頭と八つの尾、木々が生えた体を持ち、腹は血がにじんで赤くただれてる生き物として描かれています。
    このヲロチの正体は氾濫を繰り返す島根県の斐伊川(ひいかわ)の暴れ川をさしているそう。自然神としての恐ろしい川の神なのです。
    (多頭多尾は支流の幾つもの流れを、胴体の木々は川の両岸と土砂を、腹が赤いのは斐伊川が鉄の産地ゆえ鉄分が多く山肌や川水が赤かったことを表している)

    ヲロチ退治神話の構造は、
    今までは、娘の両親が毎年娘をヲロチに差し出して(食べさせていた)いたものを、スサノヲに差し出すこと(嫁がせた)に変えたに過ぎません。
    では何が違うかと言えば、スサノヲが人文神として人の姿をとる神であるのに対し、ヲロチは自然神です。
    水をもたらす川の神ヲロチは娘を消費するだけですが、スサノヲは食べるのではなく結婚することによって、もう一つの実りを与えてくれる存在だということです。
    それゆえにこの神話は、結婚の起源を語る神話にもなっているそうです。。
    有名でなじみ深い話なのに、ヲロチの正体も神話の意味も、初めて知りました。感動~

    いくら簡単に書かれた訳本でも、時代背景や古事記編纂の動機など、いろいろな前提の上で丁寧に解説してくれる本はなかなかありません。
    そういう意味でもこの本は、神話をかいつまんだだけのものではありますが、私にとってはかなり良書。古事記を少し理解できました。
    また再読したい1冊です♪

    ちなみに、著者は三浦しをんさんのお父様だそうです。びっくり!

  • これまで数冊の古事記本を読んできたがようやく理解できた感じがする。上巻の神武天皇が橿原まで来るところまで。あらすじの後の解説が秀逸で,理解に至らないあやふやな状態に意味をもたらす。この意味形成もこれまでの読書による知識が生じさせているとは思うが。
    北方系と南方系の神話の統合,男系社会を正統とするための神話の形成,日本書紀との違い,バナナと石,など興味深い知識を得た。
    それにしても見るなと言われても見ちゃうのね,神様も。禁止の無視という行為は原始的で,最も人間らしい行動かもしれない。研究の価値があるな。

  • 結構細かなところが、結構興味を引くような形で書かれていて、古事記の記述はそれなりに知っているつもりだけど新たに知ることが多かった。
    著者の解説も知的好奇心を満たすのに最適だし、古事記にまつわる各書の写真も神秘的で、僕の中にある「日本人」の古層があらわになった感じ。

    古事記をまったく知らない人も、結構知っているつもりの人も、一読の価値あり。

  • 分かりやすいですが、出てくる名前が長いので、そこだけがくろうしました。マサカツアカツカチハヤヒアメオシホミミとか…

  • 日本の神話は当時、天皇、大和朝廷を正当化するために権力者によってつくっれたつくりばなしともいえる。

    しかし、当時の社会を反映した土着の民話伝承の集成であり、日本語形成途上の未分化な状態で語られる(記述されている)(漢字一文字が一音[p23]、記述方法が口述筆記の可能性[p23,24、「語り」体p42])こと、そしてなによりも生理的エロティシズムが積極的に、当たり前のようにとりいれられていることが大きな魅力である。

    たとえば、当時の重要な交易品の翡翠の産地が重要な末端(追い詰められるタケノミナカタ[p107]など)で幾度か登場する。岩戸開きでは、アメノウズメの妖艶な踊りはもとより、アマテラスを誘い出すために差し入れた鏡の作り方にもエロティシズムが色濃い[p44]。ヤマタノヲロチが斐伊川であった[p55]というのも美しい。

    また、アマテラスが鏡を知らない[p45]とか、アメノウズメは踊りだけではなくにらめっこが得意[p128]など、パッチワーク(キルト?)のような記述にも口述筆記の息づかいがあるのではないか。そこから意図しない滑稽さや不可思議さも生まれている。

    前半のくにうみ、スサノオの追放あたりまでの魅力に比べると、葦原の中つ国(地上)が成熟する辺りからは権力の恣意性が直にあらわれているよう。植民地社会の成熟と独立運動に似ている。派遣した神が戻って来ないなど[アメノホヒp102]。

    物語の視野自体が後半になると小さくなり煩雑のなる。初期の神々などをうむ交わりの段階でも確かに性交に限定されるなど狭いのだが、目を洗っただけで神が生まれる[p21]など、神ともなるとひとつひとつの行為のスケールが大きい。

  • SLBA選定図書 2012年度 第2期 Aセットから

    古事記編纂1300年に当たる今年、ベストセラー「口語訳古事記」の著者が「あらすじ」でさらにわかりやすく、その謎と魅力を伝えます。

    分類 913/ミ

  • 20121030~1107
    古事記にゆかりのある神社や場所の写真が多くて行ってみたくなる。神武天皇即位迄なので、続きも知りたいな(^O^)/

  • 資料ID:81200453
    請求記号:913.2||M
    配置場所:普通図書

    【IM科2年】
     この本は、古事記の神話部分をあらすじで紹介している本です。
    あらすじだけでなく、系譜などの解説も載っているので、古事記に関する知識がなくても読めます。
     古事記に関係する場所や行事を写真と共に紹介しているページもあるので、長い文章を読むのが苦手な人にもおすすめします。

    【IN科3年】
     私が書くものは紹介文ではないか!が、普段本を読まない方に紹介しよう。本書は本を読む気になる方法から筆を執るまでを優しく助けてくれる。感想文の例文として名作がいくつか使われているので、興味を惹かれればこれを機会に手を伸ばしてほしい。特に「老人と海」は多く引用され、うっかり私も借りに走らされた。例文の質も保証しよう。悪い例文が併記されている点もよい。本を読むきっかけが無い方へ、入口はこちらです。

  • 古事記としては、非常に分かり易く書かれている。また時折解説をおりこむことで、読者の理解を助けている。解説部にはわりと作者の独自解釈な部分もあるものの、理論立てて語られているため説得力があり、興味深く読ませてもらった。特に青草人に関する考察は印象に残った。

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著者プロフィール

千葉大学名誉教授。1946 年、三重県生まれ。『古事記』を中心に古代文学・伝承文学に新たな読解の可能性をさぐり続けている。共立女子短期大学・千葉大学・立正大学等の教員を歴任し、2017年3月定年退職。著書に『浦島太郎の文学史』『神話と歴史叙述』『口語訳古事記』(第1回角川財団学芸賞受賞)『古事記を読みなおす』(第1回古代歴史文化みやざき賞受賞)『古代研究』『風土記の世界』『コジオタ(古事記学者)ノート』など多数。研究を兼ねた趣味は祭祀見学や遺跡めぐり。当社より『NHK「100分de名著」ブックス 古事記』を2014年8月に刊行。

「2022年 『こころをよむ 『古事記』神話から読む古代人の心』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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