本のなかの旅

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163758305

作品紹介・あらすじ

18人の旅びとたち。旅をせずにはいられない「歩く人びと」が書き残した、旅の本をめぐるエッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 18人の「旅をする人」を、その人の著作を中心に紹介するエッセイ。紹介されているのは、例えば宮本常一、内田百閒、開高健、金子光晴、ヘミングウェイ、イザベラ・バード、大岡昇平等、多彩。それぞれ、1冊、せいぜい数冊の著作の紹介なので、ブックガイド・書評としても読める。実際にいくつか読んでみたい本を見つけた。
    私自身も旅行が好きだし、また、旅行記・紀行文の類も好きでよく読む。本書の中で紹介されている人で、よく読んだのは開高健のものだ。本書の中で、開高健のものとしては、「私の釣魚大全」「フィッシュ・オン」「オーパ!」が紹介されている。ブグログの検索機能で調べたら、私は3冊いずれも2009年に読んでおり、特に「オーパ!」は、それまでに読み傑作と思っていた旅行記「深夜特急」「何でも見てやろう」、更には本書でも紹介されている金子光晴の一連の放浪記と並ぶ傑作、と褒めていた。
    開高健は29歳のときに、日本文学代表団の一員として中国に渡り、それが口火となって、「何か熱病にとり憑かれたみたいに、チャンスがあれば外国へ出るように」なったと自分で書いている。そして、それは、本書の筆者である湯川豊によれば、ひとつは純粋に旅行記の形で表現され、ひとつは、「輝ける闇」「夏の闇」「珠玉」といった小説に活かされることとなった。
    これも、湯川豊の書いていることであるが、「私の釣魚大全」の中で、北海道の根釧原野にイトウ釣りに出かけ成功した開高健が、その日のことを、「完璧な、どこにも傷のない、稀な日。」と紹介しているそうである。私自身の「完璧な一日」はどのようなものだったかな、と思い返したりしたが、釣りが、あるいは、旅が、そのような一日をもたらしてくれるのであれば、開高健にとって釣り旅行は、より良く生きるために必須のものであったに違いない。

  • 湯川豊というエッセイスト(?)の本を読むのはこれが初めて。もっと著作を追い掛けたくなった。『夜の読書』を読んでみようか……本書で紹介されている作家たちの内、取り分け金子光晴を読みたくさせられる。文章は平たくて深い。小難しいところがない。伸びやかな文章で、こちらを唸らせる。読んで良かったと思った。ただ、もう少しディープな評論を読みたくもさせられたのだけれど、池澤夏樹のような体質を持つ書き手と見受けたので、そういうコアな批評眼を期待するのは酷というものなのかもしれない。金子光晴の『どくろ杯』を早速読んでみたい

  • 旅をすることが好きです。でも、旅について書かれた本を読むことの方が実は好きかもしれない。さらにいうと、旅について書かれた本について書かれた本が…うん、一番好きかもしれないね。

  •  古今東西、旅はたくさんの小説家・著述家に愛され、いくつもの名作を生んできた。本書は、さまざまな作品の中に現れた旅を、文芸評論家である著者の視点で紹介する書評集だ。
    「用事がないから旅に出る─内田百閒」「永遠に、幸わせになりたかったら─開高健」「かへらないことが最善だよ─金子光晴」「川には鱒がいて─ヘミングウェイ」などなど、魅力的なタイトルが目次に並ぶが、著者はおのおのの著者の主要な経歴をテキスト中に紹介しながら、彼らにとって旅が何を意味していたのか、ということにまで踏み込んだ考察をする。
    「夜、書き、夜、読むことは、あらゆる旅のうちでもっとも驚くべき、もっとも簡単な旅だ」というル・クレジオの言葉をかみしめて、多忙な現代人はせめて本の旅へ出かけよう。

  • 「寂しい」という言葉は、純粋に自分の時間と向き合うことではないか。その時寂しさが現れる あらゆる生命は、環をなして結ばれている。そして生命は死んで大地に還り、別の生命としてまた甦る アルカディア(桃源郷)

  • チャトウィン、宮本常一、柳田国男、開高健、田部重治…読んでみたい本が増えました。

  • 論文が落ち着いたら、たっくさん本を読みたい。

  • 宮本常一、内田百けんの本が読みたくなりました。

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著者プロフィール

1938年新潟県生まれ。慶應大学文学部卒業後、文藝春秋に入社。「文學界」編集長、同社取締役を経て、東海大学教授、京都造形芸術大学教授を歴任。『須賀敦子を読む』で読売文学賞を受賞。著書、編著多数。

「2019年 『大岡昇平の時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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