- 本 ・本 (328ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163759104
作品紹介・あらすじ
人気漫才コンビ・浅草キッドの一員であり、芸能界ルポライターをも自任する水道橋博士。現実という「この世」から飛び込んだ芸能界という「あの世」で二十数年を過ごす中で目撃した、巨星・名人・怪人たちの生き様を活写するのが『藝人春秋』です。
たけし軍団の先輩、そのまんま東が垣間見せた青臭すぎるロマンチシズムを描きだす。古舘伊知郎の失われた過激実況に、過激文体でオマージュを捧げる。苫米地英人と湯浅卓の胡散臭すぎる天才伝説に惑乱させられる。稲川淳二が怪談芸を追い求める、あまりに悲劇的な真の理由に涙する。
爆笑問題、草野仁、石倉三郎、テリー伊藤、ポール牧、三又又三、ホリエモン……選りすぐりの濃厚な十五組。
中学時代の同級生・甲本ヒロトのロック愛に博士自らも原点を見出すエピソードは、感動的ですらあります。
そしてその原点・ビートたけしと松本人志という、並び立たぬ二人の天才が互いへの思いを吐露した一瞬に見える、芸人の世界の業の深さよ。博士が「騙る」暑苦しく、バカバカしく、そして少し切ない彼らの姿からは、「父性」を乗り越えようとする男の哀しい物語が浮かび上がり、その刹那「藝人」は「文藝」をも超えてゆきます。
電子書籍で話題沸騰した作品を完全全面改稿・加筆し、博士生誕五十年を(自分で)記念する、渾身の一冊です。
感想・レビュー・書評
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R3.4.10 読了。
甲本ヒロトさんと石倉三郎さんと草野仁さんと稲川淳二さんの章がとても良かった。
この本の中で昔あったテレビ番組で目にした「熱湯風呂」について書かれていた部分が衝撃的だった。
『熱湯風呂なんてのは、全部ヤラセの演出なんで、本当に何十度もある熱湯だったら、みんな大ヤケドしてるぜってね。ぬるいお湯をいかに熱く見せるかという、そのリアクションの芸がお笑いの芸なんだから。熱さを芸で見せるってのがわかってないんだよな。…(中略)今は親までが本気でやっていると勘違いしているから本当にバカなんだよ。』
当時、テレビの前で笑ってみていたが、その芸にすっかり騙されていたことに、この年齢で気づかされて恥ずかしい。
・「楽しいことは楽(ラク)じゃないんだよ。同じ字だけど、よく勘違いしている人がいるんだあ。」
・「辛抱ってのは、辛さを抱きしめるってことだからな。」
・「学校のいじめは個性を消すが、お笑いのいじりは個性を生かす!」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
何故かブクログの「あなたへのおすすめ」で本書が登場し、あまりにインパクトのある表紙だったので、つい手に取った。
藝人(とは分類されない筈の人も数人混じっているが)15人の烈伝。
市井の一般人とはまったく異なる世界なので、何とも毒気に当てられた感じで、特にテリー伊藤の話は正直ゲンナリした。
その中で、面白かったのは、草野仁、甲本ヒロト(二度登場)の二人。
草野さんは、陸上短距離でも(高校2年生の時の指導者無しでの100m走の持ちタイムが11秒2で、インターハイ優勝者と同タイム)、相撲・レスリングでも、突き抜けた才能の持ち主だったそうで、アナウンサー以外の職業を選んでいたとしても、いずれにせよ著名人になっていたようだ。(室伏広治のような才能か)
水道橋博士と甲本ヒロトは岡山県の名門中学校の同級生らしい。同じクラスになったことはないもののお互い認知はしていたそうだ。
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芸能人って、異常者。それの集まってくるものは一般の常識なんてクソくらえ、売れる芸人と売れない芸人は紙一重。良い例がこの本にもでてくる堀江貴文さん、億万長者、時代の寵児と言われても監獄暮し。
この世のものとは思えぬあの世。非日常への限りない渇望。本来平凡で安全な日々とは違う芸能界、それを生業とする芸人は日常とは隔絶されている。
そんな世界とは、言えなくなった、許さなくなった、糾弾される芸人さん。
でも時代って恐いですよね、政治家さんにも言えること、価値観のズレ、これを感じないと聞く耳を持つとか言ってる場合ではなく、裸の王様、まさに時代遅れですよね。 -
有吉弘行氏いわく「ゲス神様」こと水道橋博士。
その彼が「あの世」の如き芸能界を生きる十五柱もの神将たちを語った、笑いのカーマ・スートラ。
殿・ビートたけし(北野武)はもちろん、松本人志、太田光、テリー伊藤、そのまんま東、ポール牧、石倉三郎、稲川淳二、草野仁、古館伊知郎、果ては三又又三、湯浅学、苫米地英人、堀江貴文なんて人たちまで。そして甲本ヒロトが二度も登場。
この分類し難いパンチの効いた人選は、さながら芸能魔界紳士録と言った風情。
なかでも甲本ヒロトがかっこいいのは当然として、意外にもと言っては失礼だが、いかにも昭和の芸人といった風のポール牧、石倉三郎、両師匠の「芸談」が男前でしびれた。
目次を見て「なんでラストが稲川淳二?」と思ったが、読んで納得。あまりにも求道的な男の生き様に涙。
硬軟織り交ぜた語り口で描かれる芸人達の人生に、一つとして同じものはないが、ポール牧さんが色紙に揮毫したといわれる言葉を借りるならば
『どうらんの下に涙の喜劇人』
これは誰しもに共通することだろう。
その他にも立川談志、伊集院光、ピエール瀧らのエピソードもチラリ。ピンと来る人にはグッと来るメンツ。
グイグイ読めてとても面白かったが、博士一流の愛にあふれた「お下劣」な表現とエピソードも満載なので苦手な方は要注意。
あとがきに代えて書かれた、本物の紳士、故・児玉清さんとの逸話は貴重。氏の人柄が偲ばれるいい話だった。 -
そのまんま東(東国原英夫)、甲元ヒロト、石倉三郎、草野仁、古舘伊知郎、三又又三、堀江貴文~フジテレビ買います~、湯浅卓~ロックフェラーセンター売ります~、苫米地英人~ロックフェラーセンター買います~、テリー伊藤、ポール牧、甲元ヒロト再び、爆笑“いじめ”問題、北野武と松本人志を巡る30年、稲川淳二
目次だけでも圧巻。にわかに信じられないようなエピソード満載でハカセの記憶力と記録する力には心底驚かされた。
2022年4月、維新の松井一郎大阪市長は水道橋ハカセのTwitter投稿を理由に訴えたけれど、記録マニアのハカセ相手にどうなることやら。 -
「俺のほうがより凶暴で、俺のほうがよりやさしい」
北野武が松本人志のことに触れて発したのがこのフレーズらしいが、すごく惹かれる言葉だ。
このフレーズを紹介しているブログを見てこの本を手に取った。
さまざまな人を取り上げていてどの項目も見どころがあるが、特に面白かったのは最後の稲川淳二の項目。「『たけしとひとし』の項目だけでも読むか」と思って読み始めたが、その次のこの稲川淳二の背景に迫った項目がなかなか読ませる。この項目が面白かったから最初から通して読むことにした。
水道橋博士をちょっと舐めてたんだけど、なかなかいいこと書いてて見直した。 -
博士が出会った芸人達を描いたエッセイ。
実は、こんな人だったんだというのもあり、ぶっ飛んだエピソードもありで面白い。でも、なんか自己陶酔っぽい感じが引っ掛かるな・・・ -
芸人が少ない! というのは置いといて、芸能界の異能力者たちの列伝といった趣があって楽しい。
水道橋博士さんの番組は、かつて『博士の異常な鼎談』とかを楽しみに観ていて、その「変な人」を活かす手腕には舌を巻いたけれども、今作ではそれが文字情報になっていて、ムチャクチャなエピソードの数々が惜しげもなく披露されていてとても読み応えがあった。
ちょっと意外だったのは、岡山出身でブルーハーツやハイロウズの甲本ヒロトと同じ中学に通っていたということで、そのエピソードはちょっと読んでて涙腺が刺激されまくりだった。心に師匠を抱えている人の話や、中学の頃は疎遠だったのが、縁によって再開して、最初はスターダムの度合いに差があったけれども、それがどんどんなくなるところとか、時代の流れみたいなところを強く感じさせられた。あと、巻末の『龍馬伝』の児玉清を観た博士の子供が言う言葉とかも、涙がどんどん出てきた。
個人的に面白かったのは、芸人を採り上げた話よりも、テレビの周辺で蠢く「芸人ではないけれども異能の持ち主」たちの話。草野仁、ホリエモン、湯浅卓、苫米地英人、テリー伊藤のエピソードは最高すぎる。湯浅卓と苫米地英人のシンメトリーな構造とかも上手いし、テリー伊藤の情景が目に浮かぶようなテレビ業界の一人修羅場とか、読んでて笑い転げてしまった。
湯浅卓はテレビに出ていたのを観て「胡散臭い人が出てきたな~」と思っていたけれども、希有壮大なホラ話かと思いきや、意外にバックボーンがしっかりしている人なんだな~とはじめて知った。でも、あの苫米地英人と同じことを言ってる(というのは博士の文章操作もあるだろうけれど)のを読んで、アメリカでバチバチやりあうにはこういうデカくて希有壮大な山師的発言をしてこそ、あそこでは大きな仕事を任せられるのかなぁ……と、映画『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』なんかを思い出した。
でも、やっぱり採り上げられている人数が少ないかな~と思った。もっといろいろな列伝が語れるはずだし、ちょっと(章立てをはじめとして)散漫なところが垣間見られたので、この本の評判を勢いに、本腰を入れて『芸人春秋』の先の『芸人史記』や『芸人三国志』を書いてほしい。 -
落語が好きということもあり、もともとお笑いには興味があったのですが、この本を読んでさらにこの世界を奥深さを知れた気がします。北野武、松本人志、爆笑問題……、彼ら芸人たちの生き様、価値観、等々が、水道橋博士の味のある文体で綴られている、中身のつまった一冊です。なにより、水道橋博士が「芸」というものにどれだけ人生をささげているのかが、読んでいると伝わってくるんです。すごいなあ、と思いました。芸人ってすごいなあ。
著者プロフィール
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